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知財ニュース318号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.318)
発行年月日:2021年9月15日発行

 

主要ニュース目次

 

1. 智慧局ニュース
(2021年9月7日 智慧局ニュース全訳)
1-1 コロナ状況下における2020年台湾特許出願の技術分野分析
(2021年9月9日 智慧局ニュース全訳)
1-2 商標「誤認混同」審査基準改訂草案の公告
2. 法律・制度
(2021年9月15日 関務署プレスリリース全訳)
2-1 「税関による商標権益保護措置実施弁法」第7条、第9条を改訂
3. その他一般
(2021年8月31日 聯合報全訳)
3-1 自動車部品メーカーへの保障 業者は修理条項立法を望む

 

1.智慧局ニュース

(2021.09.07 智慧局ニュース全訳)
1-1 コロナ状況下における2020年台湾特許出願の技術分野分析
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-896156-8df45-1.html
2020年に智慧局が受理した特許出願件数は43,921件で、台湾人出願人による出願件数は横ばいとなったが、外国人出願人による出願件数は前年比6.0%減となったことから、全体では前年比3.4%減のマイナス成長となり、韓国が前年比5.5%増のプラス成長となったほかは、日本、米国、中国、ドイツのいずれもが2%減~8%減のマイナス成長となった。技術分野では、「半導体」、「コンピューティングテクノロジー」が出願件数上位2位となったものの、「デジタル通信」を含め前年より出願数が大幅な減少となったことから、2020年における出願件数減少の主因となった。また、「医療技術」、「バイオテクノロジー」分野は2桁成長となった。

 

一、 台湾の特許出願件数においては、「半導体」、「コンピューティングテクノロジー」分野がそれぞれ1位、2位を占め、「医療技術」、「バイオテクノロジー」の成長が最多
台湾の特許出願の技術分野では半導体(4,775件)がトップとなり、コンピューティングテクノロジー(3,999件)がそれに次いだ。成長率においては、台湾は医療技術(1,496件)が前年比15.3%増で最高となり、バイオテクノロジー(1,020件)が前年比11.3%増でこれに次いだ。また、半導体、コンピューティングテクノロジー、デジタル通信(1,388件)分野はそれぞれ前年比13.3%減(-735件)、6.8%減(-291件)、21.1%減(-372件)、合計1,398件の減少となり2020年全体の減少件数(-1,536件)の9割を占めた(図1参照)。

台湾人出願人による出願件数上位2分野はそれぞれコンピューティングテクノロジー(2,329件)、半導体(1,952件)で、外国人出願人による上位2分野は半導体(2,823件)、コンピューティングテクノロジー(1,670件)となった。成長率でみると、台湾人出願人では医療技術(955件)が前年比28.7%増のプラス成長で最も顕著で、その他の特殊機械(495件)が前年比16.5%増、機械操作処理(433件)が前年比12.2%増、医薬品分野(327件)が前年比6.5%増となったが、コンピューティングテクノロジー、半導体、デジタル通信(509件)は前年比3%減~12%減となった。外国人出願人においては、バイオテクノロジー(840件)が前年比18.1%増で最高となったが、医薬品分野(864件)が前年比9.2%減、半導体、コンピューティングテクノロジー、デジタル通信(879件)が10%減~26%減となった(図2参照)。

二、 台湾積体電路製造が「半導体」分野における出願人のトップ、「コンピューティングテクノロジー」及び「デジタル通信」分野ではそれぞれ台湾の瑞昱半導体及び米国クアルコムがトップ
2020年のコンピューティングテクノロジー、半導体、デジタル通信分野における出願人トップはそれぞれ瑞昱半導体(REALTEK、118件)、台湾積体電路製造(TSMC、788件)、クアルコム(395件)となった(表1参照)。

さらに観察してみると、中国、米国、韓国のいずれもがコンピューティングテクノロジー分野のポートフォリオに重点を置き、中国は前年比27.7%増で最高となり、出願件数では初の米国越えとなった。半導体分野においては日本が外国人出願人による出願件数最多となった。デジタル通信分野においては、米国の出願件数の成長率が他国をリードし、前年比12.6%増となった。(図3参照)。

三、 台湾の大江生医が「医薬品」分野のトップ、「医療技術」及び「バイオテクノロジー」分野ではそれぞれ日本大王製紙、米国GENENTECKがリード
2020年の医療技術、バイオテクノロジー、医薬品分野における出願人トップはそれぞれ大王製紙(34件)、GENENTECK(17件)、大江生医(40件)となった(表2参照)。
医療技術分野においては、外国人による出願件数成長率では日本が最高となり、前年比12.9%増となった。バイオテクノロジー分野においては、米国が出願件数でその他の国(地域)をリードし、日本、中国とともにポートフォリオを拡大し、成長率では前年比10%増~26%増となった。医薬品分野においては、米国が出願件数で外国人出願人の最高となったが、成長率では米国、日本はそれぞれ前年比18%減、13%減となり、中国は前年比20%増となった(図4参照)。

四、 外国人による出願件数減少の下、2020年の台湾特許出願件数は3年連続のプラス成長からマイナス成長へ
2019年年末、中国でコロナ感染症が発生してから感染状況は急速に世界に拡散し、世界保健機関(WHO)は2020年3月、世界的大流行(パンデミックス)であると表明した。2020年に台湾が毎月受理した特許出願件数は、3月を除いていずれも減少し、主として外国人による出願件数が4月から引き続き減少し、台湾人出願人による出願件数成長率も4月より伸び悩み、6月以降は2%減~3%増となった(図5参照)。2020年の出願件数は43,921件(前年比3.4%減)で、前年比1,536件の減少となり、そのうち台湾人は18,244件(前年比0.5%増)、外国人は25,677件(前年比6.0%減)となった(図6、図7参照)。

五、 主要出願国(地域)では韓国のみがプラス成長、日本、米国、中国、ドイツはいずれもマイナス成長
2020年の外国人による出願件数を国籍別にみると、日本(11,356件)が1位となり、次いで米国(5,521件)、中国(2,608件)、韓国(1,667件)、ドイツ(875件)となり、台湾への出願について異なる傾向が見られた。毎月の出願件数成長率を観察してみると、韓国は4月に前年同月比9%減となったが、すぐに上昇に転じ、前年比は5.5%増となった。また、米国及びドイツの傾向は韓国に類似しているが、いずれも8月以降にようやくプラス成長に転じ、それぞれ前年比2.4%減、6.2%減となった。一方、中国は第2四半期の成長率が顕著に上昇したものの、第3四半期はマイナス成長に転じ、全体では前年比3.4%減となった。日本は3月以降継続的なマイナス成長となり、前年比8.1%減となった(図7、図8参照)。

 

関連資料は下記リンク先の智慧局サイトの「2020我國與WIPO受理發明專利申請趨勢比較分析」(中国語)を参照。
www.tipo.gov.tw/tw/cp-174-219414-a1c98-1.html

 

(2021.09.09 智慧局ニュース全訳)
1-2 商標「誤認混同」審査基準改訂草案の公告
www.tipo.gov.tw/tw/cp-86-896230-41625-1.html
1. 審査品質と審査の一致性を高めるため、また、商標の誤認混同のおそれの判断基準をより明確にするため、「誤認混同のおそれ」審査基準を改訂する。今回の改訂のポイントは次のとおり。
(1) 商標の類似について:商標を構成する要素の識別性の強弱と全体観察について、分解できる文字商標の対比の態様、特定の対応するフレーズと発音の中国語と外国語での類似の判断原則を新設し、関連案件の類型説明を例示した。
(2) 商品・役務の類似について:「マーケティングチャネル又は場所」を商品・役務の類似を考慮する際の要素の一つに取り入れる。商品・役務の相補機能や組合せて使用する関係を説明し、商品本体とその部品、原料又は中間製品との類似関係について説明を補充し、各項目の要素に含まれるもの及び適用基準を例示した。
(3) その他の混同誤認を判断する際の各要素について、商標識別性の強弱、先権利者の多角経営の状況、実際の混同誤認の状況、関連する消費者のその商標に対する熟知度、係争商標の出願人は善意であるのか、又はその他の要素、また、商標法第30条第1項第10号但書の「明らかに不当」等の認定原則について文言修正を行い、関連内容の段落などを調整した。
2. 本草案では、下線を引く方式で今回の改正ポイント及び内容を示している。ご意見がある場合、15日以内(9月24日まで)にメールにて意見提出すること(意見提出メールアドレス:ipotr@tipo.gov.tw)。改訂草案は上記智慧局リンク先からダウンロードのこと(中国語)。本局では寄せられたご意見をまとめた後、時期を見て実施を発表する。

 

2.法律・制度

(2021.09.15 関務署プレスリリース全訳)
2-1 「税関による商標権益保護措置実施弁法」第7条、第9条を改訂財政部令
発行期日:2021年9月15日
発行番号:台財関字第11010241464号

「税関による商標権益保護措置実施弁法」第7条、第9条の改訂。

部長 蘇健栄
発行部署:関務署秘書室 発行期日:2021/9/15

 

改訂条文は以下のとおり:
「税関による商標権益保護措置実施弁法」第7条、第9条の改訂条文

 

第7条
税関は職務の執行時において、輸出入貨物に明らかに商標権の侵害の虞があると発見した時、商標権者及び輸出入者へ通知しなければならない。
商標権者及び輸出入者は、前項通知を受けた時より、下記の手続きを則って処理する。
1、 航空便輸出貨物の場合、商標権者は4時間以内、航空便輸入及び船便輸出入貨物の場合、商標権者は24時間以内に税関又は税関が許可したプラットフォームで権利侵害であるか否かの認定を行い、3執務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害であるか否かの事実及び証拠を提出しなければならない。但し、正当な理由があって、期限内に提出できない場合は、当該期間満了の前に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で理由を説明し3執務日の延長を申請することができるが1度限りとする。
2、 輸出入者は、3執務日以内に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で権利侵害の事情がないことの証明書類を提出しなければならない。但し、正当な理由があって期限内に提出できない場合は、当該期間満了前に書面又は税関が許可したプラットフォームにおいて電子データ伝送の方式で理由を説明して税関に3執務日の延長を申請することができるが、1度限りとする。

税関は第1項の通知を口頭、書面、電話、電子メール、ファクシミリ等で通知することができ、並びに記録してファイリングする。
税関は第1項の通知を行う際、商標権者の連絡先の資料がなければ、商標主務官庁に1執務日以内に提供するよう協力を要請することができる。
商標権者は、第1項の通知を受けた後、税関が許可したプラットフォームにおいて税関が摘発時に撮影した権利侵害疑義貨物の写真データを取得し、権利侵害の認定を行うか否かを判断する際の参考とすることができる。ただし、税関が提供した写真ファイルを、権利侵害であるか否かの認定の唯一の根拠としてはならない。

 

第 9 条
税関は、前2 条で規定する商標権保護措置を執行する際に、以下の事情の一つがあり、且つ他の通関規定違反がない場合は、輸出入貨物通関に関する規定に基づき処理しなければならない。
1、 税関が商標権者と連絡が取れなかった又は第7条第4項の規定の期限内に商標権者の連絡先資料を取得できず、商標権者に通知できなかった。
2、 商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に税関又は税関が許可したプラットフォームにおいて、権利侵害であるか否かの認定を行わなかった。
3、 商標権者が第7条第2項第1号規定の期限内に権利侵害であるか否かの証拠を提出しなかった。
輸出入貨物が商標権者により商標権侵害の事情が無いと認定された。

 

3.その他一般

(2021.08.31 聯合報全訳)
3-1 自動車部品メーカーへの保障 業者は修理条項立法を望む
専利法において修理条項を推進する公聴会が本日(8/31)午前、立法院で開催された。業者は、台湾の車用外観部品、バンパー、プラスチック部品、ライトは世界でもシェア1位を誇っており、修理条項は台湾の3,400社以上の業者や52社以上の上場企業のコア業務に係ることから、法改正により公平で開放的な競争市場環境の創造を期待すると指摘した。
今回の公聴会について、自動車ランプ大手の帝宝は中央社の記者の取材を受け、次のように述べた。台湾の政策法規は部品産業が国際的発展を具体的に推進することができるためのもので、各界から当産業への支持をいただけたことに感謝する。また、堤維西(TYC)も、各界からの支持に感謝し、修理条項が順調に推進されることを期待すると述べた。
立法委員の邱議瑩、邱志偉、何欣純、蔡易餘の4名は、専利法第136条条文改正草案(修理条項)について本日午前に公聴会を開催し、政府部署及び専門家・学者を招聘し、今後の法改正の参考となるよう広く各方面から意見を聴取した。
その中で、虎山実業の陳映志・総経理は、台湾のAM産業の年間生産高は2,000億台湾元(約7,900億円)以上を維持し、引き続き成長しており、台湾の毎年のGDPにおいても3,000億台湾元(約1兆1,900億円)近く貢献していると述べた。
また、陳総経理は、修理条項は台湾の3,400社以上のメーカー、メンテナンス工場、海外貿易、OEM中小企業等、それに52社の上場企業のコア業務、そして15万人の家計と年間消費力約500億台湾元(約1,990億円)に係るもので、海外の自動車メーカーがAM市場を独占することのないよう、また、他国の自動車部品が台湾メーカーの地位を争奪することを阻止するため、法改正により公正でオープンな競争市場の環境が創造されることを期待していると指摘した。
これに対し経済部智慧財産局は次のように述べた。海外企業による台湾投資、産業研究開発イノベーションはいずれも知的財産保護の環境と重々関係しており、「修理条項」は架空の意匠の保護を生じさせる恐れがあり、政府の「イノベーション立国」という政策に反することとなる。「修理条項」は知的財産の投資環境、産業イノベーションの研究開発、国際経済貿易、国内の部品産業発展と消費者権益とのバランスに係るものであり、各部会を跨いだ議題であることから、やはり慎重に全体を評価しなければならない。
今回の公聴会について、自動車ランプ大手の帝宝は、台湾の政策法規は部品産業の国際発展を具体的に推進することができるもので、産業界の一員としてこれは非常に喜ばしいことで、各界からの産業への支持に感謝申し上げると述べた。また、堤維西(TYC)も、各界からの支持に感謝し、修理条項が順調に推進されることを期待すると述べた。
AM市場産業従事者の分析によると、修理条項の有無で影響が一番大きいのは外観部品で、それは、車用外観部品は車全体の造型に係ることからであるが、台湾の部品メーカーの製品には多くの尽力と研究開発が注がれており、オリジナルメーカーの部品より良いものもある。修理条項は外観部品の外形が同じであるからといって被告としての権利侵害責任を除外するもので、台湾は車用AM部品の研究開発大国として、米国と欧州で修理条項導入の趨勢にあることに順応すべきである。
また、産業従事者は、修理条項の精神と範囲には車の改造は含まれておらず、AM部品はオリジナルの外観と正常な機能の使用目的に回復させることだけを目的とするものであると強調した。
台湾の自動車ランプ大手は次々に海外メーカーから訴訟を提起されており、2019年1月にはヒュンダイが米国カリフォルニア州裁判所で帝宝と米国の子会社に専利侵害民事訴訟を提起し、去年5月には双方は和解を達成したが、和解契約の詳細については秘密保持条項に基づき開示されなかった。
メルセデスベンツの親会社ダイムラーも帝宝に対し、ドイツの「車両ヘッドライト」意匠権を侵害したとして訴訟を提起し、帝宝はドイツの弁護士へドイツ連邦裁判所に控訴請求するよう委託し、2019年8月、帝宝は、台湾の知的財産法院の帝宝とダイムラーとの専利権侵害事件についての第一審判決においてダイムラー勝訴とする判決に対して、弁護士に依頼し控訴提起を依頼した旨を発表した。
堤維西(TYC)は今年6月上旬にも、韓国のヒュンダイと起亜自動車が米国カリフォルニア州裁判所で、堤維西(TYC)と米国の子会社に対し、専利権侵害民事訴訟を提起したことを発表した。
台湾車両工業同業公会の統計によると、今年上半期の台湾自動車部品の海外輸出金額は1060.85億台湾元(昨年同期比19.75%増)で、上半期の米国市場における海外輸出の割合の50.67%を占め、日本では約5.9%、中国では約3.9%を占め、今年上半期の台湾の自動車部品の生産高は1,112億台湾元(年成長率21%)である。
智慧局の統計によると、昨年の台湾のランプの海外輸出金額の規模は約319億台湾元(約1,260億円)(昨年同期比16.4%減)で、台湾自動車部品メーカーの海外販売金額に占める割合は約16%、車体の海外販売金額は約342.7億台湾元(約1,360億円)で前年同期比9.6%減、海外販売金額に占める割合は約18%で、その他の自動車部品の海外販売金額は1,266億台湾元(約5,022億円)で、海外販売金額に占める割合は約66%であった。
中でも去年の車用ランプの海外販売先では、米国が48.5%、日本が約4.35%を占め、去年の車体の海外販売先は米国が約62%、中国が約6.3%であった。

 

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