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知財ニュース312号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.312)
発行年月日:2021年4月15日・30日合併号

 

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2021年4月8日 智慧局ニュース全訳)
1-1 「著作権法」及び「著作権集団管理団体条例」等の一部条文改正草案が行政院会を通過
(2021年4月21日、2021年4月23日 智慧局ニュースの要訳)
1-2 著作権法改正についてのレコード業界及び一般からの意見への回答と説明
(2021年4月27日 智慧局ニュース全訳)
1-3 2021年第1四半期の知的財産権動向

 

1.智慧局ニュース

(2021.04.08 智慧局ニュース全訳)
1-1 「著作権法」及び「著作権集団管理団体条例」等の一部条文改正草案が行政院会を通過
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-888476-75dbe-1.html
デジタルテクノロジー及びインターネットの高度な発展に合わせ、智慧局は国際条約及び先進国の著作権法制を参酌し、「著作権法」一部条文改正草案を提出した。草案では9つの条文を新設、37の条文を改正し、直近20年で最大の改正幅となる。このほか、良質で調和の取れたライセンス市場の構築により、著作物の流通・利用を促進し、著作権者の権益を保障すべく、智慧局は「著作権集中管理団体条例の一部条文改正草案」も提出した。上記2つの草案は、2021年4月8日の行政院第3746回院会で審査され、立法院の審議に送られる。

 

一、 「著作権法」の改正のポイントは以下のとおり:
(一) 「公開放送」及び「公開送信」の定義を調整
デジタルコンバージェンスに対応して権利を規定する。ネットワーク帯域幅の向上及び日々進歩するテクノロジーにより、インターネットを通じたテレビ番組やラジオの送信が普遍的となっており、消費者は送信技術により異なる権利タイプであることを区分しにくいため、今回の改正後、同様の番組が一般のテレビ局による放送であろうと、放送局又はインターネットライブ配信(再生不可)であろうと、いずれも「公開放送」に属するものとし、ネットワーク技術により「公開放送」又は「公開送信」に区別することはしない。例えば、漢聲廣播電台(ラジオ放送局)の番組が中華電信のhichannelを通じてインターネット配信することは、改正後は公開放送に属することとなる。

(二) 「再公開伝達権」を新設
著作権者の保護を向上させるため、再公開伝達権を新設する。例えば、大型ショッピングセンターでYouTubeの映像を流す場合、法改正後は再公開伝達として、著作権者の権益を保障する。

(三) 著作財産権の制限を改正(合理的使用)
著作権法は著作権者の権益を保障すると同時に社会の公共利益との調和も考慮するものであることから、著作に関する民衆の合法的利用の保護について、以下のように改正する。
1. 学校における遠隔授業の合理的使用を新設する。テクノロジーの発展に伴い、インターネットテクノロジーを活用して学校教育の遠隔授業を行って教育効果を拡大させるというニーズに応えるため、教師が他人の著作(教科書以外)を使用する場合、使用許諾を取得する必要はないとすることで、デジタル時代の教育政策を実現する。
2. 電子書籍の趨勢を考慮し、図書館等のアーカイブ機関は適切な制限の下で、読者に館内で所蔵書籍のオンライン閲覧を提供することができるようにする。
3. 各美術館の所蔵文化資産の利用を推進するため、民衆に閲覧を提供するとともに、どこの機関が所蔵しているのかを告知するため、アーカイブ機関による所蔵著作のガイド目的とした再編を合理的使用とすることを新設し、文化伝承の流通目的を達成する。
4. 経常的に実施される非営利活動で、使用許諾を取得せず利用した場合、刑事責任に問われる可能性がある問題に対して、今回の改正後、経常的に実施される非営利活動は非犯罪化され、適切な使用料を支払うだけで利用が可能となり、著作権者の使用許諾を取得する必要はない。例えば、劇団が毎週行う非営利活動で使用料を支払えば権利侵害とはならない。また、民衆が日常、公園でダンス等の心身の健康の為にする活動について、民衆の慣習に合わせるため、例えば自分の設備を携帯して音楽を放送する場合は、使用料を支払わなくても使用できるとの規定を特別に新設した。

(四) 著作権者が不明の場合の強制許諾を新設
文化産業の発展を促進するため、年代の古い又はその他の原因で著作権者が不明又はその所在が不明の著作(孤児著作)に対して、許諾による利用ができない場合、文化伝承と流通の障害となる。今回の改正後は、現行の文化創意産業発展法の権利の所在が不明な著作物の強制許諾に関する規定を著作権法へ移行し、速やかに利用できるよう、申請者等が主務官庁の利用承認査定を待つ時間を短縮するために、審査期間において、申請者が保証金を支払った後、先行利用ができる規定を新設した。

(五) ネット上の模倣品販売の広告掲載を権利侵害と見なすことを新設
現在、インターネット上で販売商品情報を掲載し販売する方法は主流であり、例えば、模倣品を販売した場合、著作権者への影響は甚大であり、模倣品の流通を迅速に阻止するため、インターネットに模倣品の広告等の情報を掲載することを権利侵害とみなすこととする。例えば、サイトに掲載されている販売物に海賊版音楽データのUSB、又はゲーム機購入の際に海賊版ゲームソフトを進呈等がある場合、2年以下の懲役及び民事責任に処する。

(六) 権利金(ライセンス料)を民事損害賠償計算の基礎として請求できることを新設
権利侵害の被害者が民事訴訟を提起し、裁判所へ賠償額の判定を請求する際、刑事訴訟にかわって民事訴訟による賠償意向を向上させるため、使用許諾で取得する権利金を損害賠償の計算の依拠とし、被害者の立証責任を軽減させることを選択できるよう新設する。

(七) 現状に合わない刑事責任規定を改定
現行の一部の著作権侵害規定は法定刑の下限を6ヶ月としており、軽微な事件の刑事責任が重すぎてバランスに欠けているという問題が生じる可能性があった。今回の改正後は、この下限規定を削除し、裁判所が個別の事件ごとに考慮し、刑事責任の過重問題が起きないようにする。

 

二、 「著作権集中管理団体条例」の改正のポイントは以下のとおり:
「審査メカニズムの設立」、「良き統治メカニズム」及び「監督機能の強化」の三大方向で法改正作業を行う。改正のポイントは以下のとおり:

(一) 著作権集中管理団体(以下「集管団体」と略称)新規設立についての公衆諮問メカニズムを新設
集管団体の設立申請は、著作権の使用許諾市場に変化をもたらし、産業の発展及び利用者権益に影響を与えるため、社会大衆に対し新集管団体が管理する著作及びその運営計画を理解する機会を与えるべきであることから、公衆からの意見提供、及び主務官庁による許可するか否かの審査の参考となるよう、新規設立案を主務官庁の公式サイトで公告することを新設する。

(二) 集管団体の管理者階層の任期及び内部制御メカニズムを新設
集管団体が善良なる管理義務を果たすよう、董事(取締役)、監察人(監査役)の消極的資格及びその任期、再任の制限を新設し、董事・監査人が長期にわたり同一人が担当しないようにし、また財務報告書の内容には合理的、慎重及び適切な方法で集中管理団体の業務を確実に実行するようキャッシュフロー計算書及びその内部制御制度を含むことを新設する。

(三) 主務官庁の監督指導機能の強化:
集管団体の財務状況を監督する職権を強化するため、主務官庁は集管団体へ期日を設けて財務処理状況を提出させ、並びに期日を設けて財務改善計画を提出させることができることを新設する。また、主務官庁は職権により違法行為を行う董事、監査人及び苦情を申し立てられた委員の職務を停止、解任させることができ、また、集管団体に対しての設立許可の廃止理由を明確に規定することで、管理不善な集管団体を淘汰する。

 

(2021.04.21、2021.04.23 智慧局ニュースの要訳)
1-2 著作権法改正についてのレコード業界及び一般からの意見への回答と説明
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-889161-4f71f-1.html
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-889186-d7093-1.html
「著作権法」一部条文改正草案は、今年(2021年)4月8日に行政院での審査を通過し、すでに同12日、立法院への審議へと送られたが、今回の法改正について、レコード業界及び一般から寄せられた意見及びそれに対する智慧局からの回答を説明する。

意見1:著作権法改正は録音著作物の保護を矮小化するのではないかとのレコード業界からの懸念について
(1) 説明:
1. 改正草案(第26条及び第26条の2)では録音著作物にその他の著作物と完全に同等の保護を与えていない。
2. 改正草案(第29条の2)には、映画、演劇に使用された録音著作物については権利を主張することはできないと明文化されている。
(2) 回答:
1. 現行の録音著作物の保護を維持:
今回の改正において録音著作物については、現行の保護レベルを維持するものであるが、レコード業者は「公開放送(例:カフェでCDをかける)」及び「再公開伝達権(例:コンビニでラジオ番組をスピーカー放送する)」の保護を拡大し、報酬請求権を専属権に改めるよう要望している。つまり、民衆が使用料を支払うことなく使用許諾を得ずに使用することは刑事責任となるため、刑事責任の追加という問題については慎重にならなければならない。
2. 法改正により録音著作物は視聴媒体への収録に同意した後、録音著作者は権利を主張することはできない旨を明確化:
国際条約及び多くの国家の規定によると、録音はCD等の録音物に収録する時に限り権利を享有するもので、一旦合法的に映画又はテレビドラマ等の視聴媒体(例:DVD)に録音されたら、その後のDVDの流通に影響することのないよう、録音著作者は当該DVDの利用について権利を主張することはできない。よって今回の改正は、改正草案第29条の2を新設し、両者の権利関係をクリアにし、国際基準と一致させただけにすぎない。ここで強調しておくが、録音単独での使用(例:CD)の際には、影響はなく、依然として完全に権利を主張することができることである。また、作詞作曲者だけでなく、曲を改作する編曲についても、編曲者も音楽著作の創作者であり本来著作権の保護を享有するもので、録音とは関係がなく、法改正の問題とは関わりがない。
3. 台湾の録音著作物に対する保護はハイレベル:
録音は歌詞・楽曲の創作者の歌詞又は楽曲音声を機械設備又は録音技術により録音するものであることから、世界の多くの国において録音の保護は隣接権(著作権の隣接)しかなく、著作権の保護より低い。しかし、台湾の現行の著作権法ではすでに国際基準を超えており、録音著作権者に相当多くの専属権(例:ラジオテレビによる番組放送)を付与している。
意見2: 公園で老人が使用料を支払わずにダンスの際に音楽を流すことは音楽家の権利のはく奪であるとする音楽家からの意見について
(1) 説明:
現行の著作権法では、公共場所における経常的に放送される音楽は、音楽著作物を利用して公開放送を行う行為で、原則的に許諾を得なければならず、さもなければ刑事責任を負うことになると規定されている。
(2) 回答:
1. 現行の刑事責任を改正後には合理的使用へ:
現行の規定によると、非営利活動で未許諾使用には刑事責任があるため、2015年の著作権法改正の際に、このような老人のダンス音楽の非営利活動について費用を支払えば刑事責任を負わないという案が提出されたことがあったが、誤解を招き社会的に大論争となり反発が起きた。著作権法は著作者の権益を保護するだけでなく、社会公共の利益も考慮するという立法目的に従い、また、台湾の民情及び利用者と権利者の利益のバランスを考慮して改正草案第55条の規定において、一般民衆がともすれば違法になり刑事責任を負うことのないよう、公道、公園、建築物等の開放的空間又はその他公衆向けに開放された屋外で開催される社会救助、公共安全、公共衛生及び個人の心身の健康を目的とした活動で、自分で設備を携帯して放送することは、合理的使用に属し、許諾を取得する必要はないとした。
2. 国際調和:
米国、日本では公園での運動、ダンスで音楽伴奏を放送する非営利的状況について、著作権法でいずれも費用を支払う必要のない合理的使用であるとしており、他国に比べて台湾の現行の著作権法の規定は厳格過ぎるため調整する必要がある。

 

(2021.04 .27 智慧局ニュース全訳)
1-3 2021年第1四半期の知的財産権動向
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-889196-302e6-1.html
2021年第1四半期における特許、実用新案、意匠の三種類の専利出願件数は合計17,156件(前年同期比3%増)、商標出願件数は22,385件(前年同期比10%増)といずれもプラス成長となった。また台湾人出願人による特許出願及び商標登録出願件数はいずれも2桁以上の成長率となった。台湾積体電路製造(TSMC)及びクアルコムが特許出願件数で再び台湾法人及び外国法人のそれぞれ1位となり、TSMCの出願件数は過去最高となった。台湾企業の特許出願件数は前年同期比28%増となったほか、中小企業は12四半期連続のプラス成長となった。全体から見ると、2021年第1四半期の知的財産権動向は顕著な成長をみせた。

一、 今期の専利出願の動向
(一) 台湾人出願人による特許出願件数は2割近い成長
台湾における三種類の専利出願件数のうち特許は11,888件で、台湾人出願人及び外国人出願人による件数はいずれも前年同期を上回り、特に台湾人出願人による出願件数は前年同期比19%増と特許全体の成長の主力となったが、実用新案、意匠は減少となった(表1参照)。
(二) 台湾企業による特許出願件数が3割近い成長
台湾企業全体による特許出願件数は3,821件(前年同期比28%増)となり、台湾人出願人による特許出願総件数の構成比で81%を占めた(図2参照)。大企業及び中小企業による特許出願件数はそれぞれ前年同期比31%増、16%増となった。また、各四半期を前年同期と比べてみると、中小企業は12四半期連続のプラス成長で、コロナウイルス感染拡大が収まらない中、依然として安定した成長となった。
出願人においては、TSMCの特許出願件数は678件(図4参照)で、単四半期における出願件数の過去最高を記録したほか、8四半期連続の台湾法人の特許出願件数のトップとなった。また、意匠出願においては宏碁(ACER)が21件で最多となった(図5参照)。
(三) 陽明交通大学が特許出願件数における台湾の高等教育機関のトップ
台湾の高等教育機関における特許出願件数は前年同期比横ばいで、出願人中、国立陽明交通大学が出願件数30件でトップとなり、私立大学においては台北医学大学が13件で最多となった(表3参照)。このほか、2021年第1四半期における国公立大学の特許出願件数は前年同期比4%増で、高等教育機関全体の67%を占めた(図6参照)。
(四) 研究機関における特許出願件数は1割以上の増加
台湾の研究機関における特許出願件数は前年同期比14%増で、そのうち工業技術研究院(ITRI)は60件で最多となった(表4参照)。
(五) 金融三業は実用新案への出願を重視
台湾の金融三業(銀行、保険、証券)による出願件数は、実用新案が106件、特許が32件で、特許では銀行業(25件)に集中し(表6参照)、出願人においては合作銀行及び中国信託銀行がそれぞれ5件で最多となった(図7参照)。
(六) 外国法人においては、クアルコム及びハリー・ウィンストンがそれぞれ特許及び意匠出願件数の最多
外国人出願人の特許及び意匠出願件数を国籍別にみると、いずれも日本が最多で、それぞれ3,376件及び259件となり、実用新案出願件数は中国が185件で最多となった(図3参照)。
出願人別では、米国のクアルコムが特許出願件数215件(図4参照)で、3四半期連続の1位となり、意匠出願件数ではハリー・ウィンストンが42件で最多となった(図5参照)。

二、 今期の商標出願の動向
(一) 台湾人出願人による出願件数は8四半期連続のプラス成長
商標登録出願件数は22,385件(28,827区分)で、前年同期比10%増となり、台湾人及び外国人による出願件数はそれぞれプラス13%及び3%となった。
各四半期を前年同期と比較すると、台湾人による出願件数は2019年第2四半期以降、すでに8四半期連続のプラス成長となっており、且つ直近の4四半期においていずれも2桁成長と急速な成長となった(表1参照)。
(二) 台湾人及び外国人の出願件数はそれぞれ第35類、第9類が最多
商標登録出願案のうち、台湾人出願人は第35類(広告、企業経営及び小売・卸売・サービス等)への出願が3,205件と最も多く前年同期比17%増となった。また、外国人出願人では中国の出願が1,029件と最も多く、区分別では第9類(コンピュータ及びテクノロジー製品等)への出願が980件で最多となった(図10参照)。
出願人においては、台湾人出願人のうち「統一企業」及び「金車」が昨年及び本年第1四半期の上位10社に同時に名を連ねた(表7参照)。また、外国人出願人のうち、昨年第1四半期にランクインしなかった香港の「兔女孩」とイギリス領バージン諸島の「富爾康」がそれぞれ1位、2位を占めた(表8参照)。
(三) 台湾の農業食材産業の出願件数は余裕の第1位
産業別においては、台湾人による「農業食材」への商標出願件数が5,255件と、他産業を遥かに上回り、また同時に外国人による各産業への出願件数を大幅に超えた。外国人出願人においては「健康医療事務」産業への出願が1,761件で最多となった(図11参照)。

2021年第1四半期季報は、下記リンク先の智慧局サイトの「統計季報」を参照。
www.tipo.gov.tw/tw/lp-167-1.html(中国語:110年第1季)

 

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