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知財ニュース310号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.310)
発行年月日:2021年2月28日・3月15日合併号

 

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2021年2月25日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2020年の台湾における商標出願の趨勢分析
(2021年3月10日 智慧局ニュース全訳)
1-2 智慧局が受理した2020年度の専利・商標出願概況
(2021年3月10日 智慧局ニュース全訳)
1-3 智慧局公布の2020年専利出願ランキング上位100社
2. 知的財産権紛争
(2021年3月6日 経済日報第A5面要訳)
2-1 大立光電、営業秘密侵害訴訟で先進光電と和解

 

1.智慧局ニュース

(2021.02 .25 智慧局ニュース全訳)
1-1 2020年の台湾における商標出願の趨勢分析
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-887372-0d856-1.html
本局は、昨年(2020年)初めてWIPO IP統計データセンター(WIPO IP Statistics Data Center)が毎年定期的に発表している「世界知的所有権指標(World Intellectual Property Indicators、WIPI)」の統計方法を参考に一定の割合で加重した計算方法で、2010~2019年の台湾における商標出願をまとめて整理し、商標出願で採用している「商品・サービス国際分類表(ニース分類、Nice Classification)」を十大産業に分類し台湾産業の約10年間の発展を深く分析すると共に、WIPIの同年度の各主要経済体のデータとの比較を行い、大きな反響を得た。今年、本局は2016~2020年の直近5年における商標出願データの分析を行い、産業変動の趨勢を迅速に観察した。
直近5年における台湾が受理した商標出願案件数は年ごとに成長し、2019年には初めて11万区分を超え、2020年には更に12万区分(119,096区分)に迫った。2016年から2019年においては、外国人による出願区分数での割合は34.8%~37%の間で小幅に変動したが、2017年以降は外国人による出願区分数はマイナス成長となり、2020年にはわずか30%で、前年比マイナス3.91%と大幅に減少したが、台湾人による出願数の成長幅が10.69%に達したため、通年の成長幅は依然としてプラス6.78%となった。WIPI 2020の2019年におけるデータによると、中国の商標出願数は膨大で、依然として世界における商標出願1位の大国で、783万区分に達し、2位の米国の11.6倍超となった。しかし、中国での商標登録出願の大部分は中国人による出願で、外国人による出願はわずか3.2%であり、他国における外国人による出願の占める割合と比較すると低かった。
産業別で観察すると、直近5年における台湾が受理した商標出願の上位3大産業類別はそれぞれ、「農業食材」、「健康医療」及び「商業金融」であった。台湾人出願人による商標出願上位3大産業はそれぞれ、「農業食材」、「商業金融」及び「健康医療」であった。外国人出願人による上位3大産業はそれぞれ、「技術研究」、「健康医療」及び「農業食材」で、2018年の趨勢と同様で、構成比は韓国と非常に近い。
出願人を国籍別にみると、直近5年におけるランキング上位3位はいずれも日本、米国、中国 の順で、3国の合計は、外国人による商標出願案件の半数を超える。日本の台湾における商標出願上位3大産業はそれぞれ、「健康医療」、「技術研究」及び「服飾小物」であった。米国の台湾における商標出願上位3大産業はそれぞれ、「技術研究」、「健康医療」及び「レジャー教育」であった。中国の台湾における商標出願上位3大産業はそれぞれ、「技術研究」、「健康医療」及び「農業食材」であった。欧州、フランス、米国、日本等の先進工業国のいずれも「技術研究」が一位で、且つ「レジャー教育」もいずれも上位を占めていることから、先進国のテクノロジー力は依然として強勢を維持しており、同時に人間の精神面のソフトパワー産業のポートフォリオ展開を重視していることを示している。このほか、他国と比較し、2019年の日本の「技術研究」分野が占める割合は非常に高く25%を超え、日本の「テクノロジーイノベーション立国」の看板が今なお色褪せていないことを表している。
昨年のレポート発表時を振り返ると、この時ちょうど新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延が人々に不安を与え、台湾人は充分な防疫商品の備蓄をしたほか、経済見通しに対しての不確定性にも溢れたが、幸いにも台湾はいち早く水際対策を強化し、適切な防疫措置により、他国のような大規模なロックダウン、作業停止及び生産停止の状況には至らず、経済全体の新型コロナウイルス感染症によるダメージは比較的小さかった。2020年の商標出願を観察すると、産業のブロック変動は発生しておらず、且つ新型コロナウイルス感染症により台湾人は国内消費へと転換し、内需力が維持され台湾の出願は依然として相当な飛躍を見せた。しかし、観察すべきは外国人による出願区分数の減少で、新型コロナウイルス感染症の影響でその他の経済体にも同様な趨勢をもたらしているか否かであるが、これについては、WIPI 2021発表の同時期のデータ観察を待たなければならない。

「2016~2020年の産業別商標出願の趨勢分析」は、上記リンク先の智慧局サイトの檔案下載(ファイルダウンロード)「2016-2020年產業申請商標案件趨勢分析」(中国語)を参照。

 

(2021.03.10 智慧局ニュース全訳)
1-2 智慧局が受理した2020年度の専利・商標出願概況
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-887608-24507-1.html
2020年に智慧局が受理した専利(特許・意匠・実用新案)出願件数は72,238件(前年比3%減)で、そのうち特許が46,664件(前年比3%減)、意匠が8,019件(前年比9%減)となり、実用新案は17,555件で前年横ばいとなった。また商標登録出願件数は94,089件(119,660区分)で、1999年以来の最高を記録した。審査実績においては、特許及び商標の平均審査終結期間はそれぞれ13.9カ月、6.5カ月を維持し、出願人に迅速で良質な審査サービスを提供している。

一、 台湾人出願人による特許出願件数は2014年以来の最高となり、企業・高等教育機関はいずれも増加
台湾人出願人による特許出願件数は19,012件で2014年以来の最高を記録した。これは、企業が前年比1%増加(そのうち中小企業の件数は17%増の大幅成長)となり、高等教育機関も前年比16%増となったことが要因であり、実用新案件数は16,445件(前年比0.2%の微増)となった(表1、図2、図3参照)。また、外国人による特許、実用新案、意匠出願件数はそれぞれ27,652件、1,110件、4,072件といずれもマイナス成長となった(図2参照)。

二、 日本が外国人による専利出願件数のトップ
専利出願人を国籍別でみると、日本が引き続き外国人のトップとなり、3種類の専利(特許、実用新案、意匠)の出願件数は13,247件となった。次いで米国(7,358件)、中国(3,761件)となり、ドイツは1,165件で5位に返り咲いた。専利別でみると、特許及び意匠の出願件数はいずれも日本がトップで、実用新案は中国が最多となった(図4参照)。

三、 台湾人による出願件数が大幅増、商標登録出願件数は過去最高を記録
商標では、台湾の商標登録出願受理件数(案件による計算)は94,089件で、1999年以来の最高を記録し、これは台湾人による出願件数が72,170件(前年比17%増)と大幅成長したことが主因で、外国人による出願件数は21,919件でマイナス成長となった(表1、図5参照)。

台湾における商標登録出願件数の上位5国(地域)では、中国が4,575件で第1位となった。次いで日本の4,013件、米国3,814件となった。成長率でみると、米国が前年比5%増、中国、日本はマイナス成長となった(図7参照)。

四、 商標登録出願上位5大分野:台湾人による出願はいずれも2桁成長、外国人による出願は薬品類の増加幅が最大
台湾人による商標登録出願区分数は、第35類(広告、企業経営及び小売り・卸し等)が13,230件と最多で、上位5大分野はいずれも13~29%のプラス成長となった(図8参照)。台湾法人のうち、統一企業(749件)が最多で、次いで王品餐飲(284件)、悠遊卡公司(183件)となった(図9参照)。

外国人による商標登録出願区分数は第9類(コンピュータ及びテクノロジー製品等)が4,389件と最も多く、上位5大分野は第5類(薬品等)の成長が最多で前年比3%増となった(図8参照)。外国法人のうち、ファーウェイが(121区分)で最も多く、資生堂(114区分)、花王(96区分)があとに次いだ(図9参照)。

五、 専利商標審査の安定的で効率的な審査終結時間の維持で、企業の迅速な産業ポートフォリオ展開の一助に
智慧局は全力で審査にあたり、積極的に効率アップを図り、特許の平均審査終結期間を14カ月以内に維持したほか、商標については6.5カ月と2009年以来の最短を記録し、特許及び商標審査待ち案件数を4.9万件レベルに維持し企業が速やかに権利を取得し、産業ポートフォリオを展開するための一助となった(図10、11参照)。

智慧局公布の109年(2020年)度専利商標出願概況の詳細については、上記リンク先の智慧局サイトの檔案下載「圖表_智慧局公布109年受理專利商標申請概況」(中国語)を参照。

 

(2021.03.10 智慧局ニュース全訳)
1-3 智慧局公布の2020年専利出願ランキング上位100社
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-887455-6e0fc-1.html
経済部智慧財産局は2020年の専利出願及び証書発行の統計ランキングを発表した。三種類の専利(特許、実用新案、意匠)出願において、台湾法人では台湾積体電路製造(TSMC)が1,096件と5度目の1位となり、外国法人ではクアルコムが720件で1位に返り咲いた。三種類の専利の証書発行数については、台湾積体電路製造(TSMC)が680件、中国創新先進技術公司が588件でそれぞれ台湾法人及び外国法人のトップとなった。このほか、高等教育機関上位100の特許出願件数は前年比24%増となった。

一、 台湾法人の専利出願ではTSMCが5度目の1位
台湾法人においては、TSMCが2016年から5年連続の専利出願件数1位となり2020年には再び1,000件を超え、宏碁(ACER、523件)、友達(AUO、466件)がこれに続いた。瑞昱半導体(REALTEK、420件)及び仁宝電脳(COMPAL、209件)の出願件数は2001年以来の最高となり、それぞれランキング4位、9位となった。英業達(INVENTEC、236件、7位)、鴻海(FOXCONN、231件、8位)もそれぞれ前年比27%増、同16%増となった(表1参照)。
台湾の三種類の専利における上位100社の出願構成から考えると、企業が台湾のイノベーション研究開発の推進力となっており、2020年のランキング上位100の企業による出願件数の多くは特許に集中し(構成比78%)、実用新案、意匠の出願件数は増加傾向で、それぞれ前年比19%増、同29%増となった(図1~図4参照)。

二、 台湾の銀行8行が100位内にランクイン:台湾土地銀行が銀行でのトッ
プ、華南銀行は特許出願件数が最多
台湾の銀行8行が100位内にランクインし、その専利出願件数合計は736件(前年比18%増)で3年連続のプラス成長となり、台湾土地銀行(133件)が銀行でのトップとなった。このほか、ランキング上位100社の銀行による特許出願件数合計は224件(前年比8%増)となり、そのうち華南銀行が43件で最多となった(表3参照)。

三、 成功大学が高等教育機関における特許出願件数のトップ、台大、清大、交大がいずれも2桁成長
台湾法人による三種類の専利出願件数ランキング上位100社に27の高等教育機関がランクインした。台北城市科技大学は181件で初の高等教育機関1位となりその出願は実用新案(174件)を中心に上位10にランクインした。特許でみると、国立成功大学(109件)が台湾の高等教育機関の1位を占め、国立清華大学(102件)、国立交通大学(86件)、国立台湾大学(82件)がこれに続き、いずれも前年比10%~64%の成長となった(表4参照)。

四、 工業技術研究院の特許出願件数は各研究機関のトップ
研究機関においては、台湾法人による3種類の専利出願ランキング上位100社に5つの機関がランクインした。ランキング5位の工業技術研究院(ITRI、352件)は、各研究機関の首位に落ち着き、次いで財団法人金属工業研究発展中心が97件となった(表5参照)。

五、 クアルコムが外国法人の専利出願1位に返り咲き
外国法人上位10社において、クアルコムが720件で首位に返り咲き、前年比24%増となった。半導体設備メーカーが3社ランクインし、そのうちアプライド・マテリアルズ(652件)、東京エレクトロン(460件)がそれぞれ2位、4位となり、DISCO(291件、6位)は件数においてもここ10年の最高となった。このほかメモリ産業のキオクシア(338件)は5位に浮上した。フォード・グローバルも243件で初の外国法人上位10社にランクインした(表2参照)。

2020年外国法人による三種類の専利出願件数ランキング上位100社の出願件数は、その多くを特許が占め、全体の87%となった。また、特許、意匠は前年比マイナス成長となったが、実用新案は同11%増となった(図5参照)。

智慧局公布の2020年専利出願ランキング上位100社の関連図表・統計については、上記リンク先智慧局サイトの檔案下載「圖表_智慧局公布109年專利百大排名」(中国語)を参照。

 

2.知的財産権紛争

(2021.03.06 経済日報第A5面要約)
2-1 大立光電、営業秘密侵害訴訟で先進光電と和解
大立光電(ラーガン)と先進光電(AOET)は長年に渡り訴訟で争っており、先日、大立光電が仮差押を勝ち取っていたが、3月5日、双方は営業秘密侵害等の関連案件について和解した旨を発表した。
先進光電は大立光電に関連する賠償金及びライセンス料を謝罪の一部として支払い、また今後大立光電の著作権を侵害、或いは大立光電の営業秘密を盗用することのないようすでに措置を採ったことを強調した。
大立光電は、先進光電との営業秘密侵害に関する案件には、智慧財産法院の107年(2018年)度民営上字第1号民事案件、台湾台中地方法院の104年(2015年)度智易字第45号刑事案件、104年(2015年)度智附民字第20号刑事附帯民事訴訟案件、110年(2021年)度司執字第19967号仮差押事件及び保全執行事件が含まれ、すでに秘密保持の和解契約書を締結したと述べた。
大立光電は、当該和解契約書の約定により、先進光電に対する関連案件の執行、損害賠償請求及び告訴を取り下げ、その他の部分については当事者の機密に係ることから和解内容は秘密保持とされる。先進光電は午後に二回目の発表を行い、高維亜・董事長は、大立光電の専利、著作権、営業秘密に対して採った不当行為について、会社と本人を代表して大立光電に謝罪するとし、その謝罪の一部分として大立光電に関連する賠償及びライセンス料を支払うと述べた。

 

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