発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.309)
発行年月日:2021年1月31日・2月15日合併号
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2021年1月19日 智慧局ニュース全訳)
1-1 ハイエンドプリント基板及び5G小型基地局の専利ポートフォリオ分析
(2021年1月25日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「商品及び役務ニース分類の日台類似群コード対応表(第11-2021版)」の公告
(2021年1月28日 智慧局ニュース全訳)
1-3 「コンピュータソフトウェア関連発明」審査基準改訂草案公聴会のお知らせ
(2021年2月2日 智慧局ニュース全訳)
1-4 2020年第4四半期の知的財産権動向
2. 知的財産権紛争
(2021年1月30日 経済日報第B3面全訳)
2-1 先進光電に対し大立光電へ15.2億台湾元の賠償支払い命令
1.智慧局ニュース
(2021.01.19 智慧局ニュース全訳)
1-1 ハイエンドプリント基板及び5G小型基地局の専利ポートフォリオ分析
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-885175-bb897-1.html
台湾企業の専利ポートフォリオの展開、有効なマーケティング商機の把握に協力するため、智慧局は専利検索運用環境計画を専利検索センターへ依頼し、産業専利分析を行い、2020年度に「ハイエンドプリント基板の専利ポートフォリオ分析」及び「5G小型基地局の専利ポートフォリオ分析」の2つの分析レポート(詳細は下記を参照)を完成させた。
ハイエンドプリント基板の専利ポートフォリオ分析
台湾のPCB(プリント基板)メーカーは世界市場の3割強を占めており、2020年の売上高は6,811億台湾元(約2兆5,200億円)の見込みで、世界最大のPCB供給国となっている。本研究ではHDI(高密度実装配線)技術をもって、全層自由接続のエニーレイヤー基板(Any-Layer HDI PCB:1,365件)とサブストレート基板(SLP:3,298件)について、専利検索と分析を行った。
本研究分析によると、エニーレイヤー基板とサブストレート基板の技術ポイントはPCBの製造方法(H05K 1/00)、プリント基板のレイヤ間の接続技術(H05K 3/00)、エポキシ樹脂組成物材料(C08L 63/00)であり、導体パターン製作技術(B32B 15/00)は、サブストレート基板の主な技術ポイントであった。
専利ポートフォリオの展開と脅威においては、エニーレイヤー基板とサブストレート基板の両者の技術的効果のランキングは、「樹脂材料」、「その他の材料」、「回路製作」、「レイヤ構造」、「微孔/銅柱/パット(ランド)製作」及び「金属材料」等の技術であった。また、「金属材料」に合わせた「回路製作」技術はサブストレート基板の重点技術であった。
現在世界の専利出願人は引き続きエニーレイヤー基板とサブストレート基板の技術について引き続き専利ポートフォリオを展開していくことから、関連業者は自身の製品のポートフォリオ展開を強化し、製品の専利検索調査の研究を実施し、関連する専利の法律状態を監視し、早めに専利権侵害のリスクをコントロールすることを提案する。
5G小型基地局の専利ポートフォリオ分析
5G-第5世代移動通信技術は、高帯域幅、高速、低遅延等のメリットを有している。しかしながら5Gの主流な伝送技術はミリ波であるが、カバー範囲が非常に狭いという問題があるため、信号の伝送サービスのためにより多くの基地局が必要となる。構築コストを考慮すると、小型基地局(スモールセル)のニーズが大幅に上昇している。Market and Marketの予測によると、5G小型基地局の市場規模は、2019年の5億米ドル(約519億円)から、年平均成長率(CAGR)31%で成長し、2025年の市場規模は24億米ドル(約2,489億円)に達する見込み。ネットコム産業研究機関のMobile Expertsは更に、小型基地局の市場は2024年には52億米ドル(約5,393億円)に達すると予測している。
台湾メーカーはこの5Gの波を前にして欠かすことはできず、2019年に経済部工業局が主導する「5G智慧路燈建置計画(5Gスマート街燈設置計画)」では、中華電信とノキアが共同で、台湾初となる屋外型5G小型基地局の設置とテストを完成させた。このほかに、中磊(SERCOMM)、智易、合勤(Zyxel)、正文等の台湾ネットコム機器メーカーはいずれも小型基地局の量産と出荷経験を有する。
本研究における5G小型基地局の専利技術の調査と専利ポートフォリオの現況は、各国及び台湾の発展動向と産業応用ニーズへの理解をとおし、関連メーカーのポートフォリオ概況の提供と今後の研究の方向性についての提案の参考となることを望むものである。
(2021.01.25 智慧局ニュース全訳)
1-2 「商品及び役務ニース分類の日台類似群コード対応表(第11-2021版)」の公告
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-885212-515c2-1.html
世界知的所有権機関(WIPO)によるニース協定の商品及び役務の国際分類第11版-2021(Nice Classification, 11th Edition–Version 2021)の改訂に合わせ、智慧局は日台双方の出願人が商標登録出願を提出する際の参考となるよう「商品及び役務ニース分類の日台類似群コード対応表第11-2021版」を更新した。
※上記リンク先の智慧局サイト「臺日尼斯分類商品及服務類似組群碼對應表第11-2021版」(中国語)を参照。
(2021.01.28 智慧局ニュース全訳)
1-3 「コンピュータソフトウェア関連発明」審査基準改訂草案公聴会のお知らせ
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-885249-309ed-1.html
1. 開催時間:2021年2月24日(水)9:00、3月3日(水)9:00
2. 開催場所:智慧局19階会議室
3. 議長:廖承威副局長
4. 連絡先:朱浩筠専利高級審查官(02)23767354
5. 会議資料は、上記リンク先のファイル1(改訂説明:以下、参照)、ファイル2(変更履歴なし基準草案本文)、ファイル3(変更履歴あり基準草案本文)を参照。
6. 公聴会は全2回を予定しているが、1回で討論が終わった場合2回目の開催は取消。
コンピュータソフトウェア関連発明審査基準(草案)改訂説明
近年AI、ビッグデータ等のテクノロジーの発展により、各分野に新形態の応用と発明がもたらされており、コンピュータソフトウェア関連発明の特許出願件数も随時増加している。産業の変化とイノベーション保護というニーズに合致するよう、明確で一致性のある審査基準の構築のため、現行の審査基準の内容を調整する必要がある。今回の改訂のポイントは以下のとおり。
1. 発明の定義(適格性)の判断原則を明確化(草案第3節)
更なる技術効果及び「単純にコンピュータを利用するもの」等に関する内容を削除し、請求項の発明を適格性の判断対象とし、関連する判断ステップとフロー図を定めると共に、各小節に事例説明を補うことで、判断原則をより明確にする。
2. 進歩性に関する内容を総則と一致するよう改訂(草案第4.2節)
現行の総則における進歩性の内容に合わせ、「当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」、「進歩性を否定する要素」と「進歩性を肯定する要素」に関する節を新設し、現行基準の「技術分野の転用」、「人類が行っている業務のシステム化」、「先行技術のハードウェアが行っている業務の機能のソフトウェア化」等を「単なる変更」の進歩性の否定要素に盛り込み、また、その他の態様を新設。
3. AI関連の審査事項と事例を新設
(1) AIの応用分野は非常に広範であることから、出願された特許が医療に応用されるものの場合、その方法の発明が人類又は動物の診断、治療方法に属すもので、法定の特許を付与しない対象に該当するのか注意するよう審査官に注意喚起する。
(2) 改訂後の適格性及び進歩性に関する内容に基づき、AI関連発明と事例を盛りこみ(草案4.2.2.1.1.1節、4.2.2.1.1.2節、5.2節の事例2-12、2-13、3-5)、十分に開示されていないことから実施可能要件に符合しない状況を事例で説明する(草案5.1節事例1-1、1-2)。
4. その他の審査関連事項
(1) 出願及び審査実務に合わせ、「物の請求項」には構造上の記載で制限する必要はない旨を明記(草案2.2.1.2節)。
(2) 「請求項が不明確な状況」及び「明細書によるサポート」の節を新設(草案2.2.3節及び2.2.4節)。
(3) 一般機能による物の特定、手段機能用語の立証責任について明記(草案2.3節の注意事項(2))。
(2021.02 .02慧局ニュース全訳)
1-4 2020年第4四半期の知的財産権動向
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-885460-883bf-1.html
2020年第4四半期における三種類の専利出願件数(特許、実用新案、意匠を含む)は19,389件(前年同期比4%減)となった。商標登録出願件数は24,591件(前年同期比9%増)となり、台湾人による出願件数が前年同期比16%増となったことが主因で2019年第2四半期以降、台湾人による出願件数はいずれもプラス成長になった(表1参照)。特許出願においては、台湾積体電路製造(TSMC)及びクアルコムが台湾法人、外国法人の出願人中トップとなった(図4参照)。このほか、台湾中小企業による特許出願件数は11四半期連続のプラス成長となり、高等教育機関も15%以上の増加となり、顕著な成長ぶりを見せた。
一、専利出願の動向
(一) 台湾中小企業の特許出願件数が11四半期連続のプラス成長
台湾企業全体の特許出願件数は前年同期比微増となり、件数では台湾人による特許出願件数全体の72%(図2参照)を占めた。そのうち、中小企業件数が14%増で、各四半期の前年同期と比較すると、すでに11四半期連続のプラス成長となり、中小企業のイノベーション研究開発能力が徐々に上昇し、その競争力の強化に対し積極的で前向きな意義があることを示している。出願人について、特許は台湾積体電路製造(TSMC)が332件と最も多く(図4参照)、第4四半期でいうと、6年連続の台湾法人の1位となった。また、意匠については、宏碁(ACER)が32件で最多となった(図5参照)。
(二) 国立清華大学の特許出願件数は高等教育機関におけるトップ
台湾の高等教育機関における特許出願件数は前年同期比15%増となり、出願人中、国立清華大学が特許出願件数42件で再び1位に返り咲いた。特許出願件数では、2015年以降の各四半期の最高となり、私立大学では遠東科技大学が27件で最多となった(表3参照)。該大学は特許出願件数上位10大学において、唯一の私立大学となった。このほか、国公立・私立大学の2020年第4四半期における特許出願件数はいずれも前年同期を上回り、高等教育機関における特許出願件数の割合では、国公立大学が63%まで上昇した(図6参照)。
(三) 工業技術研究院の特許出願件数はその他の研究機関をリード
台湾の研究機関による特許出願件数合計は前年同期より減少となった。そのうち、工業技術研究院(ITRI)の出願件数は183件で最も多く、次いで金属工業研究発展中心(MIRDC)の58件であった(表4参照)。
(四) 外国人による特許及び意匠出願件数のトップはそれぞれクアルコム、ダフ・トラックス
外国人による特許及び意匠出願を国籍別でみると、いずれも日本の出願件数が最も多く、それぞれ2,929件及び279件となり、実用新案では中国が179件で最多となった(図3参照)。出願人では、特許では米国クアルコムが203件で再び1位の座を占め(図4参照)、意匠ではオランダのダフ・トラックスが68件で最多となった(図5参照)。
二、今期の商標出願の動向
(一) 台湾人による出願件数が7四半期連続プラス成長
商標登録出願件数は24,591件(31,422区分)で、前年同期比9%増となった。そのうち台湾人出願件数は18,834件(前年同期比16%増)、外国人出願人は5,757件でマイナス成長となった(表1参照)。各四半期と前年同期と比較してみると、台湾人による出願件数は2019年第2四半期以降7四半期連続のプラス成長となり、且つ直近の3四半期では成長幅が12%~30%となった(表1参照)。
(二) 台湾人による出願の上位5区分件数はいずれも急成長
台湾人による第35類(広告、企業経営及び小売・卸売等の役務)への出願件数は3,489件と最も多く、上位5区分の成長率はそれぞれ14%~26%で、そのうち第5類(薬品等)は前年同期比26%増となり増加幅は最大となった(図7参照)。台湾人出願人では統一企業が306件で1位となった(表7参照)。
(三) 外国人による出願件数は第9類が最多
外国人出願人を国籍別でみると、米国が出願件数1,162件と最も多かった(図3参照)。区分でみると、外国人による出願件数では第9類(コンピュータ及びテクノロジー製品等)の1,151件が最も多かったが、第5類(薬品等)は上位5区分で唯一成長した区分となった(図7参照)。出願人別では、アップルが45件で最多となった(表8参照)。
2020年第4四半期季報は、下記リンク先の智慧局サイトの「統計季報」を参照。
www.tipo.gov.tw/tw/lp-167-1.html (中国語:109年第4季)
2.知的財産権紛争
(2021.01.30 経済日報第B3面全訳)
2-1 先進光電に対し大立光電へ15.2億台湾元の賠償支払い命令
台湾株価トップの大立光電(ラーガン)が、商業秘密を侵害されたとして先進光電(AOET)を提訴していた民事訴訟第二審について、智慧財産法院は28日、第一審の判決を維持し、先進光電に対し大立光電へ15.22億台湾元(約57億円)の賠償金支払い命令を下した。先の刑事部分の判決では、罰金を科すほか、その他の訴えの一部に関しては無罪となり、刑事付帯民事訴訟の賠償も台中地方法院に棄却された。
刑事告訴における民事部分棄却のニュースは利益情報に影響することから、先進光電の株価はこのところ大幅値上がりし、29日はストップ高45.35台湾元(約170円)、前日比4.1台湾元(約15円)高で終了し、最近の株式市場4営業日で累計28%上昇した。
大立光電は29日、先進光電が侵害した営業秘密案件は第一審、第二審を経て判決が下され、7年間ずっと先進光電の「誠意ある」解決方法の提示を期待していたが、先進光電は法律責任を正視せず、避けてきたと示した。判決結果について先進光電側は、現時点でまだ判決書を受け取っておらず、この案件は上告が可能であり、今後弁護士に訴訟手続を委任すると回答した。
該案件は2013年5月、大立光電が社内スパイを発見し警察に通報後、検察・調査部署が調査。同年9月、大立光電は仮差押額15.2億台湾元(約57億円)を申立て、刑事訴訟のほか、著作権侵害及び営業秘密の刑事・民事訴訟を提起し、賠償金140億台湾元(約525億円)の支払い請求をした。
刑事告訴について1月25日、台中地方法院の一審判決において、先進光電の元職員等が著作権法にかかわり、無断で他人の著作財産権を複製した事件で先進光電に対し60万台湾元(約225万円)の賠償金の支払い命令が下され、その他の提訴された部分に関しては全て無罪となった。大立光電が提出した刑事付帯民事訴訟は、先進光電及びその他の被告に対し140億台湾元(約525億元)あまりの連帯支払いを請求し全て棄却されたが、智慧財産法院は大立光電が先進光電及び林忠和・前董事長等の営業秘密損害賠償等の民事案件を審理し、28日午後、第二審も第一審判決を維持し、先進光電に対し大立光電へ15.22億台湾元(約57億円)の支払い命令を下した。
智慧財産法院の判決について先進光電は、判決書をまだ受け取っておらず、また第三審で上告が可能であり、引き続き弁護士へ後続の訴訟手続を委任するため、該事件による財務及び業務への影響はないと示した。15.22億台湾元(約57億円)の賠償金は、先進光電の資本金を超えると見られており、先進光電の2020年第3四半期までの純資産は24.53億台湾元(約92億円)で、その約60%を占める。
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