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知財ニュース406号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.406)
発行年月日:2026年5月29日発行

主要ニュース目次

1. 知的財産権紛争
(2026年4月24日 聯合報全訳)
1-1 弘塑科技の元総経理が営業秘密漏洩で告訴された 裁判所は本日、保釈金250万台湾元と渡航禁止を決定した
(2026年5月6日 聯合報全訳)
1-2 中国への重要技術流出疑惑···検察側は新証拠を提出 TSMCのサプライチェーン大手の元総経理ら2人を勾留、接見禁止
(2026年5月22日 中国時報第A7面全訳)
1-3 競合他社の機密を盗んだとして晶呈科技の董事長が起訴された
(2026年5月22日 経済日報全訳)
1-4 董事長が訴えられたとの報道!晶呈科技は「技術は独自開発したものであり、法に基づいて説明を行う予定」との声明を発表
(2026年5月22日 聯合報全訳)
1-5 TSMCの営業秘密を漏洩したエンジニアに重刑 台湾高等検察署は上訴せず
(2026年5月22日 聯合報全訳)
1-6 台湾富士ゼロックスの資金の不正流用事件において新たな展開 呉経明は機密窃取の疑いで再び起訴された

1.知的財産権紛争

(2026.04.24 聯合報全訳)
1-1 弘塑科技の元総経理が営業秘密漏洩で告訴された 裁判所は本日、保釈金250万台湾元と渡航禁止を決定した
半導体湿式プロセス装置大手の弘塑科技股份有限公司(Grand Process Technology Corp.、弘塑科技)は台湾積体電路製造(TSMC)のCoWoSのサプライヤーであるが、最近、重要技術が中国へ流出したとの疑惑に巻き込まれ、市場の注目を集めている。弘塑科技は昨晩重大情報を発表し、現時点では設備や装置等の重要な機密技術が中国へ漏洩した事実は確認されていないことを強調し、また、会社の権益を守るため黄富源・元総経理及び関係する職員を告訴したことを明らかにした。新竹地方裁判所は今朝「羈押更裁庭」を開き、黄、陳の2人の保釈金をそれぞれ250万台湾元(約1,256万円)、150万台湾元(約753万円)に決定し、両人に対し出国、航海及び住居の制限を命じた。
弘塑科技は台湾におけるTSMCの重要なサプライチェーンパートナーの一つで、長年半導体湿式プロセス設備の分野に注力してきた。今年に入り株価は大幅に上昇していたが、重要技術が中国に漏洩した疑惑があるとの噂が広まり、業界で話題となっている。なお、黄富源は過去にチームを率いてTSMCの先端パッケージングサプライチェーンに参入し、会社の主要な貢献者の一人と見られていたにもかかわらず、今年2月に総経理と董事の職を辞任しており、その後すぐに今回の疑惑が明るみに出たことにより、外部の注目をさらに集めることになった。
弘塑科技は営業秘密侵害の疑いがある事案を発見した後、黄富源と陳を告訴しており、本件は司法の捜査段階に入った。新竹地方検察署は捜査後、営業秘密法及び背信罪の疑いで裁判所に勾留を請求した。しかし、第一審裁判所は、関連する証拠の多くが押収されており、共犯及び証人の口裏合わせの可能性が低いとして、3月28日、黄(男)と陳(男)に対しそれぞれ100万台湾元(約502万円)と80万台湾元(約402万円)の保釈金と、出国、航海及び住居の制限を命じた。
検察側は当該保釈決定に対して不服を申し立て、依然として口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあり、勾留の必要があると主張した。第二審の知的財産及び商業裁判所は、原決定には再検討及び補充調査の必要があるとして、原決定を取り消して差し戻した。新竹地方裁判所は本日午前に「羈押更裁庭」を開き、最終的に保釈金額の増額を決定した。黄、陳の2人に対し、それぞれ250万台湾元(約1,256万円)、150万台湾元(約753万円)の保釈金を命じ、出国、航海及び住居等の制限を命じる強制処分を維持した。
検察・捜査機関は事件解明のため、今後引き続き関係者を出頭させて事情聴取を行っていく。新竹地方検察署は、この事件は司法捜査の段階にあり、捜査の非公開原則に基づき、事件の詳細を対外的に公表することは控えるとした。
外部からの疑問に対し、弘塑科技は次のとおり重大発表を行った。会社は知的財産権、営業秘密及び顧客情報の保護を非常に重視しており、厳格な管理体制を構築している。全ての職員は、その役職によらず同社の関連規定を遵守しなければならない。報道にあった当事者に対しては、営業秘密侵害の疑いによる訴訟が提起されており、現在、本件は司法捜査の段階にある。捜査の非公開原則に基づき、事件の詳細について対外的に公表することはできないが、会社の権益を守るため、検察・捜査機関の捜査に全面的に協力する。同社は現在のところ、設備や装置等の重要機密技術が中国へ流出した事実を発見していない。メディアの報道は根拠のない憶測であることを、この場を借りて明確に説明する。

(2026.05.06 聯合報全訳)
1-2 中国への重要技術流出疑惑···検察側は新証拠を提出 TSMCのサプライチェーン大手の元総経理ら2人を勾留、接見禁止
半導体湿式プロセス装置大手の弘塑科技股份有限公司(Grand Process Technology Corp.、弘塑科技)は、台湾積体電路製造(TSMC)のCoWoSのサプライチェーン企業であるが、最近、重要技術が中国に流出したとの疑惑に巻き込まれ、元総経理の黄富源及び関係者を告訴した。新竹地方検察署が営業秘密法等の罪の容疑で捜査している。新竹地方裁判所は先月、黄、陳の2人に対してそれぞれ250万台湾元(約1,256万円)、150万台湾元(約753万円)の保釈金を決定したが、検察側から不服が申し立てられたことを受けて、二度差し戻されていた。検察側は今回新たな証拠を提出して勾留を請求していたところ、新竹地方裁判所は本日午後「更羈押庭」を開き、黄(男)、陳(男)の勾留と接見禁止を命じた。
新竹地方検察署の捜査の過程で事件に新たな進展があった。当初の被疑者である黄富源及び陳という男性に加え、今回、別の陳という男性にも事情聴取を行い、新たな証拠を得た。検察側は、被告には重大な犯罪容疑がかけられており、口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあるとして、昨日勾留を請求した。昨日新竹地方裁判へ送られたが、深夜のため審理されず、本日午後に「羈押庭審理」が開かれた。その結果、裁判所は黄富源に対し勾留と接見・通信の禁止を命じた。また、当初の被疑者とは別の陳(男)に対しては、60万台湾元(約301万円)の保釈金と居住、出国及び航海の制限を命じた。
情報筋によると、検察側は関連する証拠を握っており、黄富源が営業秘密をダウンロード・複製して私用機器に保存し、陳(男)に保管させた可能性があるとみている。また、関連する通信データの内容を分析したところ、陳(男)は第三者と連絡を取り、関連する情報を提供した疑いがある。本件の核心は関連する技術資料が実際に域外に流出したか否かという点にあり、司法による解明を待つことになる。
営業秘密侵害の疑いが発覚した後、弘塑科技は黄富源及び陳(男)を告訴し、事件は司法捜査の段階に入った。新竹地方検察署は捜査の後、営業秘密法及び背信等の罪の疑いで裁判所に勾留を請求した。第一審裁判所は、関連する証拠の多くが押収されており共犯及び証人の口裏合わせの可能性は低いとして、3月28日に黄(男)と陳(男)に対し、それぞれ100万台湾元(約502万円)、80万台湾元(約402万円)の保釈金と、出国、出港及び住居の制限を命じた。
検察側は保釈決定に対して不服を申し立てた。第二審の知的財産及び商業裁判所は、原決定には再検討及び補充調査の必要があるとして、原決定を取り消して差し戻した。新竹司法裁判所は4月24日に裁庭を開き、黄、陳の2人に対する保釈金をそれぞれ250万台湾元(約1,256万円)、150万台湾元(約753万円)に変更し、出国、航海、住居等の制限を命じる強制処分については維持した。
新竹地方検察署は再び不服を申し立て、差戻しの二度目の裁庭が開かれた。裁判所は本日、黄(男)に対して勾留と接見禁止を命じたほか、原決定で150万台湾元(約753万円)の保釈金で保釈を認めた陳(男)に対しては勾留と接見・通信の禁止を命じた。

(2026.05.22 中国時報第A7面全訳)
1-3 競合他社の機密を盗んだとして晶呈科技の董事長が起訴された
台湾の有名な半導体化学原料メーカーで上場企業である「晶呈科技」(晶呈科技股份有限公司、INGENTEC CORPORATION)の董事長兼総経理の陳亜理氏は、競合他社である「基佳電子」(基佳電子材料股份有限公司、GIGA GAS & ELECTRONIC MATERIALS COMPANY)の陳昭栄・前総経理を通じて、長期にわたり半導体の特殊エッチングガス等の化学原料に関する「基佳電子」の機密情報を盗んだ疑いが持たれている。台北地方検察署は21日、《営業秘密法》違反の疑いにより、陳亜理、陳昭栄の2人と晶呈科技を起訴した。
インターネット上の情報によると、晶呈科技は2010年12月に設立され、本部は苗栗竹南に置かれている。経営陣は、利機企業股份有限公司(NICHING INDUSTRIAL CORPORATION、利機)から分離独立して結成され、利機は2012年に株式を手放した。主な業務項目は、各種半導体及びオプトエレクトロニクス産業の精密化学品の製造・販売、原材料、部品及びその装置の輸出入売買である。また、基佳電子は日本のセントラル硝子株式会社の子会社である。両社は特殊エッチングガスを販売しており、競合関係にある。
2024年、刑事局知的財産権捜査大隊は基佳電子から通報を受けた。同社の内部調査の結果、幹部が同社の半導体化学原料に関する複数の営業秘密を競合他社である晶呈科技に長期間にわたり漏洩していたことが発覚したとのことであった。刑事局の捜査の結果、当時同社の総経理であった陳昭栄による犯行であると判明し、台北地方検察署の検察官に捜査の指揮を要請した。検察・警察は2024年6月、3グループに分かれて晶呈科技及び陳亜理と陳昭栄の両人の住居を捜索した。取り調べを行った後、陳亜理、陳昭栄の2人は、それぞれ40万台湾元(約200万円)の保釈金で釈放された。
起訴状によると、陳昭栄は2015年12月から基佳電子に在籍しており、2019年6月から2022年8月まで基佳電子の総経理に就任していたが、2017年1月から2021年12月の間、同社の環境保護洗浄剤、giga容器の技術指導資料等の機密資料を競合他社である晶呈科技の陳亜理・董事長や張という人物に漏洩し、さらには「Innokenty」というメールアドレスのロシア人にも送信したとして、営業秘密法違反の疑いが持たれている。

(2026.05.22 経済日報全訳)
1-4 董事長が訴えられたとの報道!晶呈科技は「技術は独自開発したものであり、法に基づいて説明を行う予定」との声明を発表
晶呈科技(晶呈科技股份有限公司、INGENTEC CORPORATION)は22日、同社及び董事長が日本企業の基佳電子材料股份有限公司(GIGA GAS & ELECTRONIC MATERIALS COMPANY、基佳電子)の営業秘密を侵害した疑いで起訴されたとするメディアの報道について、声明を発表し、当社は設立以来、先進プロセス材料と生産技術の研究開発に尽力し、研究開発、製造、品質管理システムに継続的に多大な資源を投入してきており、全ての製品及び技術は独自の研究開発成果に基づいて完成されたものであって他社の知的財産権や営業秘密を侵害するものでは断じてない旨を述べた。
晶呈科技はまた、同社と董事長はまだ起訴状を受け取っていないが、メディアの報道内容が事実であれば、同社及び董事長は根拠のない告発と検察の起訴を大変遺憾に思うこと、同社と董事長は今後の司法手続きの中で、法に基づいて十分な説明と関連する証拠提出を行い、その潔白と合法的な権利を守っていく方針であることを表明した。
晶呈科技は、この争いは同業者間の商業的な競争が背景にあり、基佳電子による主張は事実と大きく異なり、同社の商業的信用に深刻な影響を与えていると認識している。同社は、いかなる虚偽の主張、誤った報道、同社の信用を毀損する行為に対しても、法に基づき必要な措置を講じ、同社と株主の権益を守っていく所存である。

(2026.05.22 聯合報全訳)
1-5 TSMCの営業秘密を漏洩したエンジニアに重刑 台湾高等検察署は上訴せず
台湾積体電路製造(TSMC)の元エンジニアである陳力銘、呉秉駿、戈一平、陳韋傑がTSMCの2ナノメートルプロセス及び更に先端的な「14 Å(オングストローム)」プロセスの重要技術を窃取したとして、知的財産及び商業裁判所は先月、国家安全法等の5つの罪により、陳力銘に懲役10年、他の3人に懲役2年から6年の重刑を言い渡した。台湾高等検察署は、この判決の事実認定と法の適用に誤りはないと判断し、上訴しないことを決定した。
陳力銘、台湾東京エレクトロンのマーケティング担当幹部の盧怡尹(懲役10月、執行猶予3年)、及び唯一無罪を主張したエンジニアの陳韋傑は、判決結果を不服とし、最高裁判所に上訴した。呉、戈が上訴するかは未確定である。
陳力銘が転職した台湾東京エレクトロンは、監督責任を十分に果たしていなかったとして、同様に営業秘密法、国家安全法等の罪で起訴された。知的財産及び商業裁判所は、TSMCに1億台湾元(約5億600万円)を支払い、国庫に5,000万台湾元(約2億5,300万円)を納付するという条件付きで、1億5,000万台湾元(約7億5,900万円)の罰金と執行猶予3年という判決を下した。台湾東京エレクトロンが上訴しなかったため、本判決は今月19日に確定した。
陳力銘はTSMCの第12工場の歩留まり部門のエンジニアを務めていたが、TSMCの半導体製造装置のサプライヤーである台湾東京エレクトロンのマーケティング部に転職した。同社をTSMCの先端プロセス技術のより多くの拠点に対する装置サプライヤーとすることを支援してアピールするため、知人である呉秉駿、戈一平、陳韋傑を利用してTSMCの機密ファイルを撮影するよう繰り返し要求し、東京エレクトロンのエッチング装置の改良に利用しようとした。
2023年8月から昨年6月までに、陳力銘はTSMCの新竹工場の会議室、台南のパッケージング・テスト工場及び呉、戈の自宅等で、在職中のエンジニアが社用ノートパソコンでアクセスした機密ファイルを撮影したり、他人が撮影した後陳へ転送したものを撮影したりしていた。鑑定後、14件は国家核心技術に関わる物と認定され、さらに、盧怡尹は陳力銘から送信されたクラウド上のデータを削除していた。
陳韋傑が漏洩したのはTSMCの最先端プロセスである「14 Å」製造プロセスの資料で、TSMCの半導体プロセス技術がナノメートルの時代からオングストロームの時代へ突入する際の先端技術に関わるものであり、TSMCが世界の先端製造プロセスの主導的地位を維持し続けることに対して深刻な影響を与えた。
陳力銘、呉秉駿、戈一平は罪を認めたため、合議体は減刑した。陳力銘は、入手した14 Åファイルを提供した上流の共犯者が陳韋傑であることを供述しており、国家安全法の「自主によりその他の共犯者を逮捕」という規定に該当することから、この部分については刑が免除された。陳韋傑は犯行を否認し、TSMCから許されず合議体からも寛大な判決を受けられなかった唯一の被告となった。

(2026.05.22 聯合報全訳)
1-6 台湾富士ゼロックスの資金の不正流用事件において新たな展開 呉経明は機密窃取の疑いで再び起訴された
台湾富士フイルムビジネスイノベーション(旧台湾富士ゼロックス)の元営業本部長の呉経明は、調達の権限を利用した不正取引を行い会社の2億8千万台湾元(約14億1,500万円)を不正流用したとして告発された。検察・調査機関は2021年に捜査を開始し、呉は起訴され、第一審で懲役4年10月の判決を受けた。事件の審理中、台湾富士フイルムビジネスイノベーションは呉の陳述に機密内容が含まれることを偶然発見し、機密窃取行為が発覚した。台北地方検察署は昨日、営業秘密法に基づき呉を起訴した。
呉経明は2013年から2018年の間、偽調達に協力する聚碩科技等の会社を探し、偽の領収書の発行に協力させ、業者に価格差による利益を取得させ、さらに、呉が資金の流れを偽装することに協力させ、資金流用の犯行を隠蔽した。検察・調査機関は、呉が不正に流用した2億8千万台湾元(約14億1,500万円)の資産のうち、2億6,100万台湾元(約13億2千万円)が自身と妻の懐に入っていたことを突き止めた。
調査局が当時呉の自宅を捜索した際に大量の現金を発見し、呉経明、妻の陳慧珍、妹の呉熙筠、協力業者の曽文娟らの多くの者を事情聴取した。検察側は呉の勾留を請求したところ、これが認められ、その他の者は保釈された。
調査によると、呉経明は1986年に台湾富士ゼロックスに入社して20年以上勤務しており、情報センター処長、営業本部副部長、部長等の要職を歴任した「ベテランクラス」の人物であったが、50万台湾元(約252万円)以下の調達案件を決定できる権限を利用し、社外で会社を設立し、業者に対し、調達金額が小さくかつ検収しにくいコンピュータソフトウェアを購入するよう要請し、ひそかに取引を偽装していた。呉は会社の資金を私的に流用しており、検察側は証券取引法等の罪で起訴した。
台北地方裁判所による審理において、呉経明は犯行を否認し、無罪を証明するため営業秘密を含む陳述書を提出した。台湾富士フイルムビジネスイノベーションが訴訟記録を確認したところ、呉が2018年に離職する前に多くの営業秘密データを複製、ダウンロードしていたことを発見し、陳述書が機密窃取の確実な証拠となったため、検察に告訴した。
台湾台北地方検察署の調査によると、呉経明は台湾富士ゼロックスとの間で職業倫理と行為の規範協議に合意し署名しており、許可を得ず機密情報を業務外で使用してはならないとされていたが、権限を越えて同社の営業秘密を窃取し、同社の利益に損害を与えた。
台湾富士ゼロックスは日本の親会社がゼロックスとの提携を終了し、富士フイルムが完全に株を所有することとなり、2021年、台湾富士フイルムビジネスイノベーション株式会社に社名変更した。

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