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知財ニュース361号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.361)
発行年月日:2024年3月15日発行

主要ニュース目次

1. 知的財産権紛争
(2024年2月28日 中国時報第A8面全訳)
1-1 違法セットトップボックス「安博盒子」による権利侵害で責任者に4年の有期懲役、1.3億台湾元の賠償金判決
(2024年3月5日 聯合報第A12面全訳)
1-2 中国メーカーへ転職のため製造プロセスを窃取 採用されず実刑判決

1.知的財産権紛争

(2024.02.28 中国時報第A8面全訳)
1-1 違法セットトップボックス「安博盒子」による権利侵害で責任者に4年の有期懲役、1.3億台湾元強の賠償金判決
台湾安博盒子会社の黄博詮・責任者は、複数のテレビチャネル信号を不法配信、公開放送する違法セットトップボックス(STB)「安博盒子」で利益を貪り、また、OTTプラットフォームから著作物映像を窃取して安博盒子で不法放送したとして、新北地方裁判所は、著作権法違反により4年の有期懲役を科し、犯罪により取得した200万台湾元(約935万円)を没収する判決を下した。また、安博盒子会社にも100万台湾元(約467万円)の罰金を科し、別途、民事についても1チャンネルごとに250万台湾元(1,170万円)で、合計1億3,250万台湾元(約6億1,933万円)の支払いを命じる判決を下した。
2021年の東京オリンピックの際に、台湾にもスポーツ熱が巻き起こり、陳建州等を含む芸能人が安博、EV和瘋潮唱等の不法セットトップボックス(STB)を使用してオリンピック観戦していたことがネット民により明らかにされた。これを見てテレビ会社は次々に訴訟を提起し、新北地方検察署は「著作権法」違反により黄博詮を起訴し、裁判官により重い量刑を科すよう提案した。
検察によると、実名不詳の「許氏」が、多数のOTT業者の会員アカウントで得たチャネル信号を、同意を得ずにデコーダーでリセットしてクラウドサーバーにアップし、安博盒子の消費者に別途費用支払いなしに視聴可能として販売していた。
黄博詮・責任者は安博盒子で金儲けを企み、身元不詳の「許氏」の犯罪グループに入り、2017年に台湾安博会社を設立した。盛智会社名義で安博科技商標を出願し、台湾委託検証機関で認証検査して合格したラベルを「許氏」に渡して安博盒子上に表示させるという許諾を結んで、許諾金として利益を得ていた。
黄博詮・責任者は、友人名義で多数の台湾OTTアカウントを申請し、会員が視聴できる信号を取得できるようアカウントを「許氏」に渡し、映像を安博盒子に転送して著作財産権を侵害していた。
合議法廷は、現在合法で映像視聴著作物に接触できるチャネルは多岐に渡っており、知的財産権の尊重、著作権の保障もまた全国民の共通認識となっていることを斟酌し、黄博詮・責任者は私欲で「許氏」の犯罪グループに参加し、民衆の法規尊重概念を4年にわたり損ない、台湾の知的財産権保護の国際的名誉と関連産業の発展に影響したと判示した。
また、被告は犯行後に犯行を否認し、事件の携帯電話のパスワードの提供を拒絶し、和解の賠償もなく、高学歴でビジネス頭脳を有していながら、「許氏」の犯罪グループに甘んじたとして、合議法廷は、台湾地区の責任者に4年の有期懲役の判決を下し、付帯民事賠償については、黄博詮・責任者及び台湾安博盒子会社が連帯で18社のテレビ会社計53チャネルの1チャンネルごとに250万台湾元(1,170万円)、合計1億3,250万台湾元(約6億1,933万円)の支払いをするよう命じた。

(2020.03.05 聯合報第A12面全訳)
1-2 中国メーカーへ転職のため製造プロセスを窃取 採用されず実刑判決
南亜科技(Nanya)錦興工場の李というグループリーダーは、中国半導体メーカーの紫光に転職を試み、20nmDRAMウェハ製造プロセスをこっそり記録して中国西安へ面接に行ったが、コア技術を熟知していなかったため採用されなかった。最高裁判所は、中国での使用を企て無断で営業秘密を複製した罪で、李に対し1年10か月の有期懲役の判決を下した。
南亜科技は台塑(台湾プラスチック)グループ傘下の南亜プラスチックが再投資した企業で、李は2006年6月から2017年2月9日まで在職していた。南亜科技は2015年、2016年に、米国のマイクロン・テクノロジーより20nmDRAMウェハの製造プロセス技術を導入し、謝というプロジェクトマネージャーが関連業務部門のスタッフに対しオンライントレーニング課程を実施したが、李は「コピーが間に合わない」という理由でパワーポイントのスライドショーの内容をスクリーンショットしていた。
2016年11月、李は離職の意を上司に伝え、翌月の15日に上司と当年の業績評価乙等(レベルB)とレイオフについて話し合い、同月21日、紫光国芯半導体新竹事務所にて面接を受けた。李は今後のオンライン面接、対面面接を順調に行うため、24日土曜日の出勤日ではない無人の時間を利用して事務所に入り、20nmDRAMウェハ製造プロセスの紹介スライドショーファイルをプリントして暗記し、2017年1月17日に求職のため西安へ向かった。
南亜科技は発見後警察に通報し、李はスライドショーは営業秘密ではなく、自己知識の充実のためにプリントしたもので、域外使用の意図はないと主張した。
桃園地方裁判所は、これらの資料は秘密性及び経済価値を有しており、李が取り調べの際、2016年11月4日にヘッドハンティング会社の紹介で西安の紫光で働く予定だと話したことから、裁判所は李が紫光の面接を受けることを知っていたとして、ファイルのプリントは「自己知識を充実」させるものではなく、面接に対処するためであったと判示した。
一審では、李は転職のため重大な経済価値を有し企業の存続と関連する先進製造プロセス技術の営業秘密を複製し、且つ犯行を否認し、態度も悪かったことから、営業秘密法に基づき、懲役1年10か月の有期懲役の判決を下した。李と検察側はいずれも控訴し、知的財産及び商業裁判所は、量刑の軽重は裁判所の職権である自由裁量権に属するとし、双方の控訴を棄却した。最高裁判所は、知的財産及び商業裁判所の見解に誤りはないと認め、控訴を棄却した。

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