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知財ニュース353号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.353)
発行年月日:2023年10月31日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2023年10月18日 智慧局ニュース全訳)
1-1 「専利出願書類チェック補助システム」教育訓練動画を公開

2. 知的財産権紛争
(2023年10月18日 経済日報第C3面全訳)
2-1 HTCの権利侵害案件 控訴を検討
(2023年10月25日 工商時報第A5面全訳)
2-2 帝宝工業、メルセデス・ベンツの意匠権訴訟で逆転

3. 模倣品関連
(2023年10月24日 聯合報第B2面全訳)
3-1 文字商標の登録無しで「熊讃」の海賊版がはびこり正規品の売り上げ半減

1.智慧局ニュース

(2023.10.18 智慧局ニュース全訳)
1-1 「専利出願書類チェック補助システム」教育訓練動画を公開
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-929289-72d5b-1.html
「専利出願書類チェック補助システム」教育訓練が9月13日、27日に本局18階ホールで2回開催された。当該システムは、出願人の出願における文字の誤りを減少させ、出願書類を専利法及び専利法施行細則の関連規定に符合させる一助となる。
出願人は専利出願書類(.docxファイル)を完成させた後、本局のe網通(eネット通信:https://tiponet.tipo.gov.tw/030_OUT_V1/home.do)サイトにログインし、「専利申請文件輔助偵錯系統【測試版】」(専利出願書類チェック補助システム【テスト版】)をクリックし、当該システム画面のダッシュボードを開いたあと、上述の専利出願書類を「専利出願書類チェック補助システム」に入れ込むと即使用可能である。
当該システムは専利出願書類のミスをチェックできるほか、出願案件の品質及び効率を更に向上させることができ、智慧財産局の公文書の往来の時間を短縮させ、ウィンウィンの局面を作り出す。
教育訓練の関連動画は本局Youtube又は以下のサイトを参考にしていただきたい。
動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=-04NsJgdLv4

2.知的財産権紛争

(2023.10.18 経済日報第C3面全訳)
2-1 HTCの権利侵害案件 控訴を検討
外電によると、米国デラウェア州連邦裁判所陪審員団は16日、宏達国際電子(HTC)がルクセンブルクの特許ライセンス会社である3G Licensingの無線通信特許を侵害したとして、HTCに890万米ドル(約13億3千万円)超の賠償金を支払うよう命じる判決を下した。HTCは昨日(17日)、控訴を検討している旨を示した。
HTCは、陪審員団の努力には感謝するが、この案件の判決については失望しており、この判決によりHTCに重大な影響はでないが、会社の権益を守るため、控訴の手段を検討すると強調した。
3G Licensingは数年前、HTCとのライセンス交渉決裂後、2017年にHTC傘下のLTE支援のOne、Bolt、Desire等の様々なスタイルのスマートフォンが、3G Licensingの2つの無線標準特許を侵害したとして提訴し、HTC側は当時、関連する提訴内容を否認し、特許の無効を主張している。

(2023.10.25 工商時報第A5面全訳)
2-2 帝宝工業、メルセデス・ベンツの意匠権訴訟で逆転
6年近くにおよぶ台湾の帝宝工業(Depo)とドイツのメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz Group AG)の意匠権侵害案件において、Depoは第一審、第二審で連続敗訴していたが、Depoは24日、最高法院第三審の判決書の通知を受け、第二審判決に誤りがあったことが認められ、第二審判決を破棄して知的財産及び商業裁判所に審理が差し戻され、Depoに「逆転勝訴」の機会が与えられることとなった。
Depoの許叙銘・総裁は、係争商品は、Depoがランプシェル及びスタンドの構造においてデザイン回避を行った物であり、高等法院はすでにDepoの商品について外観調査を進めていると言明しているが、実際の関連手続には入っておらず、Depoに答弁の機会も与えていないことから、最高法院は手続的瑕疵のおそれがあるとの判決を下したと示した。
許叙銘・総裁は、原審(第二審判決)によれば、Depoの商品に「二つの瞳(の視覚効果)」が現れているか否か対比する理由は、Depoが提出した当該商品が「二つの瞳(の視覚効果)」を有するとする証拠に対応するから、再調査に入るべきであるとして、第三審では第二審の判決を棄却し、知的財産及び商業裁判所に審理を差し戻す判決が下されたと述べた。
Depoは、引き続き当該意匠が無効であり、商品に権利侵害の事実はなく、公平交易法違反であるとの事実証明を提出し、Depoの権益を守ると同時に台湾のアフターマーケット(アフターサービス、スペアパーツ)自動車部品産業のために声を上げていき、当局がこの年間生産高2,200億台湾元(約1兆190億円)にも達する産業を重視するよう喚起していくと示した。
またDepoは、近年各国が注目している「修理する権利」(Right to Repair)の議題について、消費者が修理するサービス又は部品を取得することができるよう、商品の使用サイクルを延長させていると示した。アフターマーケット市場についての国際趨勢は消費者権益の方向に調整する向きが始まっており、米国を例に挙げると、米国のバイデン・大統領も行政命令に署名し、消費者の修理する権利を守り、米国の二大政党も法改正を推進していると述べた。
Depoは、外国の自動車メーカーが自由に台湾に進出し、台湾のアフターマーケット産業に打撃を与え、判決により台湾での生産を禁止した場合、今後台湾消費者が自動車を修理する際に、高価格で購入したオリジナルメーカーの部品又は「分解した部品」を使うこととなり、良質の台湾アフターマーケットスペアを選択して修理することができなくなると示した。
許叙銘・総裁は、政府が台湾アフターマーケット産業の永続的な発展を更に重視すると同時に、台湾市場における消費者権益を考慮し、迅速に「修理条項」の立法を完成させることを望んでいる。
ドイツのメルセデス・ベンツは2017年に台湾で、Depoに対し民事訴訟を提訴し、Depoの商品はその台湾意匠第D128047号「車両用ヘッドライト」意匠権を侵害していると主張。2019年、第一審判決ではDepoが敗訴となり、権利侵害商品の生産モジュールの処分が要求され、台湾自動車部品産業を驚かせた。
知的財産及び商業裁判所は昨年(2022年)7月14日、Depoに対し、元々の3,000万台湾元(約1億3,900万円)から1,812万台湾元(約8,390万円)に引き下げた賠償金の支払いを命じる第二審判決を下したが、依然として権利侵害判決は維持され、Depoは法に基づき最高法院に上告を申し立て、24日、第二審判決を破棄し、知的財産及び商業裁判所に審理を差し戻すという判決書の通知を受理した。

3.模倣品関連

(2023.10.24 聯合報第B2面全訳)
3-1 文字商標の登録無しで「熊讃」の海賊版がはびこり正規品の売り上げ半減
台北市の公式マスコットである「熊讃Bravo」は、4千万台湾元(約1億8,500万円)以上をマーケティングにかけており、平面商標及び立体商標は出願登録済みだが、「文字商標権」がないことから、夜市やネットショッピングで未許諾の「熊讃」商品がはびこり、合法許諾業者の完売率は2018年の100%から大幅に減少して52%となっている。台北市政府観光伝播局(以下、「観伝局」という)によると、文字商標権が取得できていないのは、経済部智慧財産局(以下、「智慧局」という)が「熊讃」は慣用語であり出願することはできないとのことだったからであるが、数年に渡り国内外で熊讃が台北市の公式マスコット、公式キャラクターであることが知られてきていることから、近く出願する予定であると述べた。
台北市の柳采葳議員は昨日(22日)の台北市議会教育委員会で「熊讃の海賊版」の議題について質疑し、熊讃のマスコット自身も登壇し、その可愛らしい様子や仕草は、厳粛な議題と大きな対比となった。
柳議員は、熊讃は首都台北のマスコットとして、毎年大小様々な公益イベントで台北市のマーケティングに大きな責任を担っており、広く市民に知られているが、「文字商標権」が無いことで熊讃の海賊版が市場にはびこり、多くの「中国熊讃」がネットや夜市に出回っているが、無秩序なネット販売が処罰された記録もなく、台北市政府の消極的放任、無作為の態度は到底受け入れることができないと指摘した。
台北市の統計によると、台北市政府の2018年から現在までの「熊讃Bravo」のプロモーション予算は累計4,200万台湾元(約1億9,500万円)を超えているが、文字商標権がないため、市政府は毎回未許諾業者による広告を助ける形になっており、ひいては模倣品が市場にはびこり、合法的な許諾商品の販売率と実際の販売金額は年々減少している。2018年の許諾金は167万台湾元(約780万円)で完売率100%だったが、去年(2022年)の許諾金は81万台湾元(約380万円)で完売率52%、実際の販売金額は42万台湾元(約195万円)であった。市政府は合法的許諾業者の保護について考えるべきである。
柳議員は、熊讃の平面商標及び立体商標の権利が2028年に権利期間満了になる前に、観伝局が「熊讃」又は「熊讃Bravo」等の文字商標権を取得するだけでなく、定期的なネット巡回、実体チャネルのチェックで不法があれば処罰し、市場で販売されている熊讃の真贋不明や質の悪い製造品が出回る状況を阻止できれば、公式マスコットによる台北市のイメージ促進に役立つと提案した。
これに対し、観伝局の担当者は、ネット上で熊讃ぬいぐるみの売買がされていることは知っているが、これについては、個人の売買行為に属するもので、「熊讃」の2文字は商標とすることができないため、処理することができないと述べ、観伝局の王秋冬局長は、熊讃は絶対的に台北市のマスコットで、台北のイメージを代表することができるものであるため、近いうちに智慧局へ登録出願し登録商標となることができるよう対応に尽力すると強調した。

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