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知財ニュース351号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.351)
発行年月日:2023年9月15日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2023年9月7日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2022年の台湾及びWIPOにおける特許出願受理件数の趨勢比較分析
(2023年9月13日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「意匠の明細書及び図面作成時の注意事項(2023年9月版)」の改訂を発表

2. 法律・制度
(2023年8月30日 司法院プレスリリース全訳)
2-1 新制「智慧財産案件審理法」の施行で営業秘密訴訟の保護強化

1.智慧局ニュース

(2023.09 .07 智慧局ニュース全訳)
1-1 2022年の台湾及びWIPOにおける特許出願受理件数の趨勢比較分析
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-925674-b9adf-1.html
2022年に台湾が受理した特許出願の技術分野では「半導体」が全体の14.5%を占め最も多く、WIPOでは「コンピュータテクノロジー」(10.4%)が最高となった。台湾、日本、米国、中国、韓国は、台湾においていずれも「半導体」に重点を置いている。WIPOにおいては、「コンピュータテクノロジー」、「デジタル通信」及び「電子機械エネルギー装置」を重視している。台湾では台湾積体電路製造(TSMC)が出願件数1位となり、WIPOでは中国のファーウェイ(HUAWEI)が1位となった。

一、 台湾における特許出願件数は引き続き成長、WIPOの成長率は直近13年の最低
2022年の台湾における特許出願受理件数は50,242件(前年比2.3%増)となり、米国、中国、韓国のプラス成長(前年比9.4%~16.1%増)が主因として挙げられる。WIPOにおいては、推定出願件数は278,100件(前年比0.3%増)で、成長率は2009年以来の最低を記録し、上位3位は中国、米国、日本で、増減幅はいずれも1.0%以内となった(図1、図2参照)。

二、 台湾人出願人は6直轄市及び新竹県市に集中、うち台北市、新北市、新竹市の合計は全体の55%
台湾が受理した特許出願件数のうち、台湾人による出願は主に6直轄市及び新竹県市からであり、2022年の合計は全体の92.3%を占め、そのうち台北市、新北市及び新竹市の合計は全体の55.4%に達し、2018年(50.7%)比4.7%増となった。うち、新竹市が4,455件で1位となり、次いで台北市(3,154件)、新北市(3,129件)となった。このほか、苗栗県は前年比84.9%増、538件と大幅成長し、初の500件突破となった(図3参照)。

三、 台湾における特許出願分野は「半導体」が1位、WIPOは「コンピュータテクノロジー」が最多
2022年の台湾における特許出願件数は「半導体」分野(全体の14.5%)が1位で、次いで「コンピュータテクノロジー」(全体の9.0%)となった。WIPOにおいては、「コンピュータテクノロジー」(全体の10.4%)が最も多く、次いで「デジタル通信」(全体の9.4%)となった(図4参照)。さらに比較すると、台湾とWIPOにおける上位10位の技術分野では、いずれも「半導体」、「コンピュータテクノロジー」、「電子機械エネルギー装置」、「音楽・映像技術」、「計測」及び「製薬」等6分野が含まれている。しかし、台湾における特許出願件数1位の「半導体」は、WIPOにおいてはランキング10位(全体の3.3%)となっており、「半導体」の台湾における技術の優位性を示した。WIPOにおいてランキング上位5位の「デジタル通信」、「医療技術」は、台湾では上位10位にはランクインしなかった(図4参照)。

四、 主要国(地域)の台湾における出願は「半導体」が中心で、WIPOにおいては「コンピュータテクノロジー」、「デジタル通信」及び「電子機械エネルギー装置」を重視
台湾、日本、米国、中国、韓国はいずれも2022年の台湾における「半導体」分野への出願が最多で、11.7%~22.5%を占める。ドイツは「有機精密化学」分野(10.8%)が最も多く、その上位3技術分野には「半導体」は含まれていない。(表1参照)。
WIPOにおいては、中国(15.7%)、米国(13.1%)、の出願最多技術分野は「コンピュータテクノロジー」で、日本とドイツは「電子機械エネルギー装置」(それぞれ約11%)、韓国は「デジタル通信」、「コンピュータテクノロジー」「電子機械エネルギー装置」を重視し、それぞれ全体の約10~11%を占めた(表1参照)。

五、 台湾における特許出願人はTSMCが1位、WIPOにおいては中国のファーウェイが1位
2022年、台湾における出願人はTSMC(1,534件)が4年連続の1位となり、次いで米国アプライド・マテリアルズ(847件)、米国クアルコム(763件)、韓国サムスン電子(666件)となった。WIPOにおいては、中国ファーウェイが7,689件で6年連続の1位となり、次いで韓国サムスン電子(4,387件)、米国クアルコム(3,855件)となった。米国クアルコム及び韓国サムスン電子は、台湾及びWIPOにおける出願人上位10社のいずれにもランクインとなった(図5参照)。

六、 台湾における上位10出願人の多くは「半導体」分野、WIPOにおける上位10出願人は「デジタル通信」分野を重視
2022年の台湾における上位10出願人が2019年~2021年に出願した上位3技術分野のうち、TSMC等6社の出願人は「半導体」分野への出願が最多となり(全体の37.2%~80.6%)、南亜科技(NANYA)は全体の80.6%を占め、最高となった(図6参照)。WIPOにおいては、中国ファーウェイ等6社の出願人は「デジタル通信」分野(全体の26.9%~70.4%)を重視し、スウェーデンのLM艾瑞克生(エリクソン)は全体の70.4%を占め最高となった(図7参照)。
また一方で、韓国サムスン電子は台湾でのポートフォリオにおいて「半導体」の占める割合が最高となり、WIPOにおいては「デジタル通信」の占める割合が最高となり、ポートフォリオが明確に異なった。また米国クアルコムは台湾及びWIPOにおいていずれも「デジタル通信」分野に占める割合が最高となり、次いでそれぞれ「音楽・映像技術」、「通信」分野、またいずれも「コンピュータテクノロジー」分野は上位3位となり、ポートフォリオの差異は比較的小さかった。

七、 長期の出願傾向を顧みると、台湾と比較しWIPOはデジタル通信及び医薬関連分野を重視
1999年の智慧局設立から現在までを顧みると、特許出願受理件数は毎年平均3.6%成長しており、技術分野においては半導体が最も多く、次いでコンピュータテクノロジー、電子機械エネルギー装置、光学、音楽・映像技術となった(図8参照)。またWIPOは1978年に特許協力条約(PCT)を通した特許出願を受理し始めてから、毎年平均11.5%の成長となり、技術分野においては、コンピュータテクノロジーがトップとなり、次いで医療技術、デジタル通信、電子機械エネルギー装置及び製薬と続き(図9参照)、台湾と比較してデジタル通信及び医薬関連分野が重視されている。

関連資料については、上記リンク先の智慧局サイト先「檔案下載(ファイルをダウンロード)」(中国語)を参照。

(2023.09.13 智慧局ニュース全訳)
1-2 「意匠の明細書及び図面作成時の注意事項(2023年9月版)」の改訂を発表
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-926454-02696-1.html
1. 今回の改訂は、意匠登録出願で送付される六面図について、2020年の基準改訂時に緩和されたことに基づき、意匠登録出願の図面の多様化に対応するため、改訂版で一部の内容を更新及び修正したものである。
2. 今回の改訂のポイントは、一部の図面の例、範例及び記述内容について改訂したものである。(例:変更箇所に下線あり版の第5、20、26、29、34~37、41、43~45、57~58、67~69、81~85ページの注釈の箇所)

※「意匠の明細書及び図面作成時の注意事項(2023年9月版)」の変更箇所下線あり版と清書版は上記リンク先の智慧局ウェブサイトの「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能(中国語)。

2.法律・制度

(2023.08.30 司法院プレスリリース)
2-1 新制「智慧財産案件審理法」の施行で営業秘密訴訟の保護強化
www.judicial.gov.tw/tw/cp-1473-931368-13850-1.html
15年ぶりの大幅な法改正となる新「智慧財産案件審理法」は本日(30日)正式に施行された。行政訴訟及び懲戒庁の程怡怡・庁長は、今回の法改正は台湾の知的財産訴訟制度をより専門的で効率良いものにし、国際潮流に合致させ、営業秘密の保護をより完備させたもので、台湾産業の競争力を向上させ、最新技術を持つ台湾企業に安定的な発展をもたらすものとなると述べた。

15年ぶりの大幅法改正 法改正の9つのポイント
程怡怡・庁長は、今回の法改正は台湾の知的財産訴訟制度の重要なマイルストーンであり、新制の9つのポイントは、営業秘密訴訟の保護の完備、弁護士強制代理の拡大、専門家の審理参加の拡大、知的財産案件の集中審理、訴訟紛争の一回的解決(裁判見解の相違の回避)、審理効率促進、テクノロジー設備を用いた審理(司法の電子化)、被害者の訴訟参加制度の新設及び実務争議の解決であると示した。

専門法廷(専門科)審理、在職研修の実施により審理の専門性を強化
程怡怡・庁長は、新制は専門的審理を実現するもので、各レベルの裁判所に設置した知的財産専門法廷(専門科)、知的財産及び商業裁判所の知的財産法廷で、民事・刑事の分散制度を実施するほか、司法院も引き続き知的財産訴訟、国家安全営業秘密訴訟の保護等の研修課程を行い、裁判官の専門知識を強化すると強調した。

13の関連子法で知的財産審理法制度を完備
程怡怡・庁長は、司法院はすでに別途、知的財産案件審理細則の新設(改訂)、裁判所が実施する営業秘密案件の訴訟資料及び非公開審判弁法、裁判所が営業秘密案件を実施する際に注意すべき事項等13の法規命令及び行政規則の関連子法法制作業措置が完成しており、各裁判所に案件処理時に遵守するよう提供し、また各界が随時情報を把握し、制度内容を理解できるよう、司法院は公式サイトにおいて「新智慧財産案件審理法」の専門ページを構築すると説明した。

新制「智慧財産案件審理法」の9つのポイント

1. 営業秘密訴訟の保護を完備:営業秘密侵害案件はいずれも知的財産及び商業裁判所(以下「智商裁判所」と称する)が審理し、訴訟における営業秘密保護を強化する。
新制は営業秘密案件の専門的審判及び保護を向上。

A) より専門的に
・営業秘密の第一審刑事事件は、智商裁判所の第一審知的財産法廷での審理に改める。
・ 国家コア技術を侵害する営業秘密の第一審刑事事件は、智商裁判所の第二審知的財産法廷が審理するものとする。
・最高裁判所は専門法廷又は専門科を設立し、知的財産案件を審理する。
B) より安全に
・ 営業秘密の証拠資料内容を保護。
・ 秘密保持命令の運用制度を強化。
・ 営業秘密の証拠資料を非識別化するコードネーム又はコード。
・ 秘密保持命令に違反する罪は刑事責任として量刑はより重くし、域外での秘密保持命令違反罪を導入。

2. 弁護士強制代理を拡大
知的財産事件は高度な法律専門性を有することを考慮し、当事者の権益を保護し、審理の効率向上のため、特定の類型の知的財産民事事件(例:専利権、コンピュータプログラム著作権、営業秘密に係る第一審民事訴訟事件、第二審民事訴訟事件、控訴第三審及び再審事件等)について、当事者は弁護士を訴訟代理人として委任しなければならないと明文化した。

3. 専門家の審理参加を拡大:査証制度と専門家による証人制度の導入
裁判所の新興高度テクノロジーと専門的な訴訟事件における真実発見の一助となり、証拠が偏る問題の解決、当事者の訴訟上の武器の平等化促進のため、日本特許法の規定を参考にし、裁判所は当事者の申立てにより証拠収集手続きを執行する中立の技術専門家の選任ができる「査証」制度を導入した。また、専門的で適切、迅速な当事者紛争の解決のため、商業事件審理法で採用している「専門家による証人」制度の準用を新設した。

4. 知的財産案件の集中審理:審理計画制度の導入
新設された弁護士強制代理制度を採る特定事件、またはその他の事件で事情が煩雑である、もしくは必要である場合、裁判所は当事者と協議のうえ審理計画を立てなければならない。また、訴訟効率向上のため、審理計画事項に違反した際の法律効果を規定した。

5. 紛争の一回的解決、裁判見解の相違を避ける:司法と行政の情報交流制度を構築
裁判見解の相違を避けるため、裁判所と知財主務官庁の間での情報交流制度、知財主務官庁からの意見聴取制度、専用実施権に係る訴訟の告知義務及び知的財産権の有効性の判断の相違による再審請求の制限を新設した。

6. 審理効率促進:技術審査官報告書を公開
審理効率を促進するため、技術審査官が作成した報告書について、裁判所は必要に応じ、全部または一部の内容を公開することができ、かつ、当事者に弁論の機会を付与することを新設したほか、被害者の立証の程度を低減させ、また、権利侵害行為被害者に具体的な答弁義務を課すと改正した。

7. テクノロジー設備を用いた審理、司法の電子化を促進
テクノロジー設備使用による訴訟手続参加対象を拡大し、判決書の正本を電子ファイルで送達できる旨を明文化した。

8. 被害者がより積極的に権益防衛できるよう、被害者の訴訟参加制度を新設
被害者の権益を保証するため、知的財産刑事事件はいずれも刑事訴訟法の被害者訴訟参加の規定を準用する旨を明文化した。

9. 実務争議の解決
専利の「訂正の再抗弁」制度、及び「民事附帯訴訟手続」等の規定を改正し、実務争議の解決により、訴訟の紛争解決機能を強化する。

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