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知財ニュース332号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.332)
発行年月日:2022年7月15日・7月29日合併号

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2022年7月26日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2022年上半期の知的財産権趨勢
2. 知的財産権紛争
(2022年7月14日 知的財産及び商業法院プレスリリース全訳)
2-1 メルセデス・ベンツと帝宝工業(Depo)の意匠権侵害民事事件に関するプレスリリース

1.智慧局ニュース

(2022.07 .26 智慧局ニュース全訳)
2022年上半期の知的財産権趨勢
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-911869-25ac8-1.html
2022年上半期における特許、実用新案、意匠の三種の専利の新規出願件数は34,753件(前年同期比1%減)で微減となったが、商標登録出願件数は46,578件(前年同期比0.4%増)と微増となった。台湾人による特許出願件数は、大企業及び高等教育機関の出願件数がそれぞれ前年同期比3%増となり、外国人による同件数は前年同期比6%増となった。出願人において、台湾積体電路製造(TSMC)が1,163件と6年連続の台湾人出願人のトップとなり、外国人出願人においては、アプライド・マテリアルズが438件で最多となった。商標出願件数は「農業食材」産業が最も多く、台湾人及び外国人による出願件数はそれぞれ「農業食材」(13,240件)及び「技術研究」(3,964件)産業の出願件数が最多となり、直近2年においていずれもプラス成長を維持した。出願人においては、台湾法人では統一企業が548件、外国法人では廣東龍順國際物流が85 件で最多となった。

今期の専利出願の動向
特許出願受理件数は小幅な成長
台湾が受理した特許、実用新案、意匠の三種の専利出願件数のうち、特許は24,316件で最も多く、前年同期比2%増と小幅な成長となった。これは外国人による出願件数の増加が主因であり、実用新案及び意匠はいずれもマイナス成長となった(表1参照)。

TSMC及びACERはそれぞれ台湾人による特許出願件数及び意匠出願件数の最多
台湾企業全体における特許出願件数は7,454件で、前年同期比3%減となり、主として中小企業の出願件数(1,332件)の減少が原因となったが、大企業の出願件数(6,122件)は前年同期比3%増となり、依然として研究開発力を維持した(図2参照)。
台湾法人による特許出願件数上位10社及び意匠出願件数上位5社の多くは企業である。特許においては、TSMCの出願件数が1,163件で、上半期では既に6年連続の台湾法人におけるトップとなった。また、南亜科技(NANYA)及び群創光電(INNOLUX)がそれぞれ出願件数249件及び179件となり、その件数はそれらの企業が2016年に本局の上半期統計で公布されて以来の最高となり、ランクも2016年以来の最高となり、INNOLUXの成長率は5,867%と突出した成長を見せた(図4参照)。
意匠出願件数においては、上位5位のうち、宏碁(ACER)が74件で最多となり、仁寶(28件)と皇冠金属(26件)、長庚科大(26件)のそれぞれの成長率は64%~550%と成長が著しく、なかでも長庚科大は上位5位にランクインした唯一の高等教育機関となった(図5参照)。

台湾の高等教育機関及び金融三業の特許出願件数はいずれもプラス成長
台湾の高等教育機関の特許出願件数は840件、前年同期比3%増となり、国公立大学の出願件数の増加が主因となった(図2、図6参照)。出願人においては、国立清華大学が特許出願件数65件と高等教育機関におけるトップとなり、また私立大学の特許出願件数は崑山科技大学が25件で最多となり、高等教育機関上位10校に唯一ランクインした私立大学でもある(表3参照)。
研究機関における特許出願件数は131件、前年同期比減となり、そのうち、工業技術研究院(ITRI)は55件と最多となった(図2、表4参照)。金融三業においては、特許出願件数は84件、前年同期比17%増となり、そのうち兆豊国際商業銀行は29件と最多となった(表6、図7参照)。

外国人出願人による特許出願件数は前年同期比6%増
外国人出願人による専利出願件数は特許が中心で、特許出願件数14,960件(前年同期比6%増)(表1参照)となった。特許出願の出願上位5ヵ国(地域)のうち、日本が6,193件で最多となり、中国を除くいずれの国(地域)もがプラス成長となり、特に米国(3,759件)は二桁成長(前年同期比16%増)となり、積極的な姿勢が見られた。また、意匠出願件数は1,864件で、日本が出願件数519件で最多となった(表1、図3参照)。

アプライド・マテリアルズ及びフォードグローバルがそれぞれ外国法人の特許及び意匠出願件数の最多
外国法人の出願件数上位10社において、アプライド・マテリアルが特許出願件数438件(前年同期比44%増)となり、同時にその他の出願人を大きく引き離した(図4参照)。意匠においては、フォードグローバルが出願件数89件で首位となり、また成長率ではカルティエ(43件)の1,333%が最も顕著となった(図5参照)。

今期の商標出願の動向
商標登録出願件数は小幅なプラス成長
商標登録受理件数は46,578件、前年同期比0.4%増の微増(60,963区分、前年同期比2%増)となった。台湾人による出願件数は36,449件(前年同期比4%増)となり、外国人による出願件数は10,129件で、前年同期比減となった(表1、図8参照)。また、台湾人による商標出願件数の商標出願件数全体に占める割合は78%で、前年同期比2%増となった。台湾人による出願件数及びその占める割合は直近2年のいずれもが上昇傾向を見せた(図1参照)。

統一企業が台湾人による商標登録出願件数の首位
台湾人による出願件数は第35類(広告、企業経営及び小売・卸売役務等)の7,378件が最も多く、第30類(コーヒー、茶及びケーキ等)が前年同期比67%増と成長幅が最大となった(図9参照)。商標出願件数の上位10社のいずれも前年同期比プラス成長となり、そのうち、統一企業は出願件数548件、成長率294%となり、件数はその他の出願人を遥かにリードした(表7参照)。

廣東龍順國際物流が外国人による商標登録出願件数の最多
外国人による出願件数は第9類(コンピュータ及びテクノロジー商品等)が2,329件と最多となり、第42類(科学及び技術的サービス)の出願件数は前年同期比11%増となり比較的早い成長となった(図10参照)。外国人による出願件数全体は減少したものの、出願件数上位法人10社のうち、9社がいずれもプラス成長となり、なかでも中国の廣東龍順國際物流は昨年同期0件であったが、今期は85件と最多で急成長となった(表8参照)。

台湾人・外国人による出願件数はそれぞれ「農業食材」及び「技術研究」産業に集中
産業方面において、台湾が受理した商標出願件数は、「農業食材」(15,092件)が最も多く、台湾人の出願件数(13,240件)が飛躍的に伸びたことが主因であり(図11参照)、該産業は台湾人と外国人の出願件数の差(11,388件)が最も大きい産業でもある。上位3産業において、台湾人の出願件数は「農業食材」及び「商業金融」産業がいずれも2年連続でプラス成長の傾向を見せ、そのうち、「農業食材」の出願件数は2022年上半期において前年同期比25%増と相当なスピードで成長した。また、外国人による出願件数では「技術研究」産業が直近2年で安定した成長を見せた。

※2022年上半期知的財産権趨勢図表は、上記リンク先の智慧局サイトの「檔案下載(ファイルダウンロード)を参照。(中国語:智慧局公布111年上半期智慧財產權趨勢-圖表)

2.知的財産権紛争

(2022.07.14 知的財産及び商業法院プレスリリース全訳)
2-1 メルセデス・ベンツと帝宝工業(Depo)の意匠権侵害民事事件に関するプレスリリース
ipc.judicial.gov.tw/tw/cp-663-1300541-765d6-091.html
知的財産及び商業法院は、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz Group AG)と台湾の帝宝工業(Depo)の意匠権侵害に関する知的財産権争議等の民事事件(108年(2019年)民専上字第43号)について、2022年7月14日午前9時25分、判決を下した。その判決主文、案件事実及び判決理由は以下のとおり。:

Ⅰ、判決主文:
一、 原判決のDepoとその責任者である謝綉氣氏に連帯で支払いが命じられていた1,812万3,279台湾元(約8,300万円)を超える部分、及び上記判決における一部の仮執行宣告と訴訟費用の裁判はいずれも破棄とする。
二、 上記、破棄部分について、メルセデス・ベンツの第一審での訴え及び仮執行の申立てはいずれも棄却する。
三、 Depo、謝綉氣氏によるその他の控訴は棄却する。
四、 メルセデス・ベンツによる控訴は棄却する。
五、 第一審、第二審の訴訟費用はDepo、謝綉氣氏が連帯で三分の二を負担し、残りはメルセデス・ベンツの負担とする。
六、 本判決で命じたDepo、謝綉氣氏の連帯支払い部分について、メルセデス・ベンツは605万台湾元(約2,800万円)をDepo、謝綉氣氏に担保を供出した後、仮執行することができる。ただし、Depo、謝綉氣氏が1,812万3,279台湾元(約8,300万円)を反担保とした場合、仮執行を免れることができる。

Ⅱ、案件事実:
一、 メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz Group AG)の提訴の主張:
メルセデス・ベンツは、台湾第D128047号「車両のヘッドライト」意匠権(以下、「係争意匠」と称する)の意匠権者であり、意匠権の期間は、2009年3月21日~2023年4月22日までとなっている。Depoが生産、製造したヘッドライト製品(DEPO型番「440-1179MLD-EM」、「440-1179MRD-ED」)、「340-1133L-AS」及び「340-1133R-AS」製品、以下「係争製品」と称する)は、メルセデス・ベンツが所有する係争意匠権を侵害していることから、専利法第142条準用の同法第96条、第97条第1項第2号及び同条第2項、民法第184条第1項前段及び会社法第23条第2項の規定により、Depo及び当該企業の責任者である謝綉氣氏に連帯して6,000万台湾元(約2億7,800万円)の賠償金の支払いを請求する。

二、 帝宝工業(Depo)の答弁:
係争製品の全体外観は、係争意匠の外観とは明らかに異なり、同一又は類似に該当せず、係争意匠権を侵害していない。係争意匠は、意匠権の重複付与禁止の規定に違反している。係争意匠の図面は十分に開示されておらず、それに基づき実施することはできない。係争意匠は新規性のグレースピリオド事由に符合しておらず、優先権を主張してはならない。新規性不備であり、創作性不備でもあり、取消事由があるため、メルセデス・ベンツはDepoに対し権利行使をしてはならない。メルセデス・ベンツは、係争意匠の権利行使について、公平交易法第9条第1号、第4号、第20条第2号及び第25条の規定に違反しており、また、民法第148条の権利濫用の規定にも違反している。メルセデス・ベンツは、早くは2014年10月にDepoに権利侵害の事実について書簡で通知していたが、2017年3月になって本件訴訟を提起したため、提訴前の2年の損害賠償請求権については、消滅時効である。Depoは損害賠償の金額について、モジュール製作のコスト及び費用の差し引きを主張できるが、原審判決はコスト費用を差し引いていなかったことは不当である。また、Depoはすでに設計回避を行ったため、故意による権利侵害ではないはずであるが、原審判決では故意による権利侵害の規定に基づき、Depoの係争製品の売り上げ総額2,316万2,107台湾元(約1億700万円)の1.295倍として懲罰性損害賠償額3,000万台湾元(約1億4,000万円)と計算したことは明らかに誤りである。

Ⅲ、本院第一審判決(106年(2017年)度民専訴字第34号)では、メルセデス・ベンツによる侵害の排除の請求が認められ、Depo及び責任者である謝綉氣氏に連帯で3,000万台湾元(約1億4,000万円)の損害賠償の支払いが命じられ、メルセデス・ベンツのその他の損害賠償請求は棄却され、双方はいずれも控訴を提起した。

Ⅳ、主要理由:
一、 権利侵害について:
本院は、係争製品と係争意匠を全体観察で対比したところ、その共同の特徴はいずれも消費者の注意をひきやすいものであり、違いのある特徴は、普通の消費者なら注意しにくい部位であったり、違いが僅かだったりで、全体の視覚的効果に影響しないため、係争製品と係争意匠の外観は類似し、係争意匠権を侵害している。

二、 意匠の有効性について:
係争意匠と同日出願のD128048号意匠は、意匠権の重複付与禁止の規定に違反していない。また、係争意匠の図面はすでにその意匠内容を十分に開示済みで、当業者であればその内容を理解し、それに基づき実施することができる。係争意匠の図面は、優先権基礎出願の全ての内容と比べて、異なる視覚的効果を生じておらず、「同一意匠」と認定すべきで、優先権を主張することができる。Depoが提出した先行意匠の証拠は、いずれも係争意匠の新規性不備又は創作性不備を証明するには足らず、係争意匠は有効である。

三、 公平交易法第9条第1号、第4号、第20条第2号及び第25条及び民法第148条規定違反について:
(1) 本院は以下のとおり認める。本件車両販売の「メインマーケット」とその後の部品修理の「アフターマーケット」の間に実質的な連動性があり、メインマーケットの競争約束が、アフターマーケットに伝わり、メイン、アフターマーケットの連動現象が生じるに足ることから、メインマーケットとアフターマーケットは、同一の関連マーケットと見なすべきである。アフターマーケットを一つの単一マーケットと見なし、メルセデス・ベンツがアフターマーケットで独占的地位を得ていると認めることはできない。自動車販売のメインマーケットにおけるメルセデス・ベンツの占有率は6%~8%で、独占又は支配的地位にはないことから、公平交易法第9条第1号、第4号の事業独占禁止行為に関する規定違反とは認めることはできない。また、メルセデス・ベンツのメインマーケットにおける占有率が高くなく、また、意匠権者は他人にその意匠を許諾する義務もないことから、メルセデス・ベンツはDepoへ許諾する意向がなく、本件の意匠権を行使する行為は、公平交易法第20条第2号違反の正当な理由なく他の事業者に差別待遇をする行為、及び公平交易法第25条の取引秩序に影響するに足る欺瞞又は公平性欠如の行為であると認めることはできない。
(2) Depoは、ドイツ自動車連盟が2003年に、ドイツ自動車産業は意匠保護法を運用し、サードパーティのスペアパーツ業者と市場占有率を奪うことをしないことを承諾し、部品マーケットの競争を妨げないと正式に声明した。また、メルセデス・ベンツは10数年に渡りその意匠権を行使しなかったため、Depoの信頼を得るに足るもので、大量の人材、金銭的資源を投入して係争ヘッドライト製品を製造していたが、メルセデス・ベンツは承諾に反しそれぞれドイツ及び台湾で訴訟を提起し、Depoの係争製品の製造及び販売を禁止した。その裏切り行為は、民法第148条の信義誠実の原則に反する行為に属し、権利失効が適用されるものであると主張した。しかし、本院は、ドイツ自動車連盟がかつて上記の声明を発表していたとしても法律的効力を有するものではなく、上記声明が永久的に世界的に法的拘束力を有するとは認めがたく、Depoの抗弁は採用するに足りないと判示した。

四、 侵害の排除及び損害賠償について:
(1) Depoが製造した係争製品が係争意匠権を侵害したため、メルセデス・ベンツは侵害の排除、つまり、係争製品を製造販売してはならず、また、係争製品の完成品、半製品、係争製品を組み立て製造するモジュール又はその他器具は全て廃棄すべきで、Depo及び責任者は連帯で損害賠償責任を負うべきであると請求したことは正当である。
(2) Depoは時効の抗弁を提出したが、本院は、メルセデス・ベンツが2013年にDepoに書簡を発行した際に、カタログ写真を根拠にしたのみで、係争製品について権利侵害の対比を行っておらず、Depoが権利侵害行為と知っていたかも明確ではないため、Depoの時効消滅の抗弁は、採用するに足りない。また、損害賠償の金額について、Depoはモジュール製作のコスト・費用を差し引くべきとする主張については、本院は、Depoが提出した一部の財産リストとその前述したモジュール型番が符合しておらず、採用することはできないとし、その残りの型番で符合する部分のコスト・費用について本院は差し引くことを許可した。また、Depoはアフターマーケット部品の車両ライトを専門に生産する業者で、メルセデス・ベンツの車両ライトの外観及び関連する意匠権について熟知しているはずで、その製造する係争製品が係争意匠を侵害していることは故意に属するべきで、裁判資料の書状1枚1枚を参酌し、専利法第97条第2項の規定により、すでに証明済みの損害額1.5倍の賠償金とした。

五、 本件判決は確定しておらず、双方いずれも第三審に控訴することができる。

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