発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.324)
発行年月日:2022年1月28日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2022年1月20日 智慧局ニュース全訳)
1-1 CPTTPに対応した「著作権法」及び「商標法」一部条文改正草案を行政院が20日に可決
2. 知的財産権紛争
(2022年1月14日 自由時報電子報全訳)
2-1 電子部品大手の120億台湾元相当の機密の中国流出を直前で阻止
3. 模倣品関連
(2022年1月20日 聯合報電子報全訳)
3-1 保二総隊がLVマスクの模倣品を差し押え 権利侵害市場価格4億台湾元超
1.智慧局ニュース
(2022.01.20 智慧局ニュース全訳)
1-1 CPTTPに対応した「著作権法」及び「商標法」一部条文改正草案を行政院が20日に可決
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-901583-030dd-1.html
台湾の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」加盟推進のため、智慧局は2016年から台湾の法規とCPTPPの前身である「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」との違いを検討し、「著作権法」及び「商標法」の一部条文改正草案を提出した。前回(第9期)の立法院の会期が終了するまでに審議が間に合わなかったため、2020年に再度行政院へ提出し、2022年1月20日、行政院第3787回院会での審査を経て可決され、今後立法院での審議へと送られる。立法手続きが完了すれば、著作権、商標権の侵害をさらに有効的に阻止し、権利者及び消費者の利益を保護することができ、国際参加及び地域経済貿易競争力の向上に資するものとなる。
1.「著作権法」改正のポイントは次のとおり
(1) 権利侵害の状況が深刻な不法デジタル海賊版、頒布及び公開伝送行為を非親告罪(公訴罪)に改め、「他人が有償で提供している著作物の侵害」、「丸ごと複製」、「権利者に100万台湾元(約413万円)以上の損害をもたらした」を権利侵害が深刻な状況であるとする認定の三要件とし、著作権者の保護を強化した。(改正第100条)
(2) 光ディスクが少なくなり、すでに主な権利侵害の態様ではなくなり、また、海賊版光ディスクは改正第100条のデジタル海賊版の範囲に含まれることから、現行法の光ディスクの複製、頒布に対する公訴罪の刑事罰の加重規定を削除し、一般の複製、頒布罪の刑事責任規定を適用することとし、関連する没収規定も削除した。(第91条第3項、第91条の1第3項、第98条及び第98条の1を削除)
2.「商標法」改正のポイントは次のとおり
(1) 現行商標法におけるタグの模倣について民事責任を問う行為者に対し「明らかに知っていた」ことを権利侵害構成の主観的要件とすることを削除し、一般的な民事損害賠償責任の「故意」又は「過失」を帰責条件とすることに変更した。(改正条文第68条)
(2) 商標又は団体商標のタグ等の模倣行為を刑事罰とする規定を新設し、模倣商標タグ、包装を輸入し権利侵害を準備及び補助する行為に刑事責任を科すことで、商標権者の商品販売と利益確保を向上させ、商標保護を強化することができる。(改正条文第95条)
(3) 証明標章タグの模倣、販売又は他人が権利侵害した商品を意図的に販売する等は刑事責任に係る行為であり、社会の正義及び期待に合致するよう、その「明らかに知っていた」という主観要件を削除し、「故意」を刑事処罰の要件とし、侵害を予見することができる間接的故意の行為を含めた。(改正条文第96条及び97条)
2.知的財産権紛争
(2022.1.14 自由時報電子報全訳)
2-1 電子部品大手の120億台湾元相当の機密の中国流出を直前で阻止
台湾最大の総合電子部品サプライヤーである台湾TDKで、営業秘密が窃取され中国へ流れる寸前であったことが発覚した。胡、魏、張、周という4人の元エンジニアがスマホレンズのずれ防止モーターのマイクロアクチュエータ研究開発等の営業秘密をダウンロードした嫌疑がかかっている。そのうち胡、魏はTDKのライバル企業の香港新科公司に転職する準備を進めていて、TDKの営業秘密を提供することで転職の保障とし、「新しい仕事の引継ぎに役立つように」と述べていた。検察側は昨日捜査を終え、営業秘密法に基づき4人を起訴した。
検察側は、台湾TDKは日本TDK株式会社が1968年に台湾投資して設立したTDKグループで初の海外拠点であり、現在はグループの電子製品部品の主要供給拠点で、台湾最大の総合電子部品サプライヤーでもあり、主に受動素子、ワイヤレス充電設備、パワーサプライ、マイクロアクチュエータ等の製品を研究開発及び販売しており、桃園市楊梅工場が研究開発の拠点であると示した。
検察・調査機関は、TDKのマイクロアクチュエータ(スマホレンズのずれ防止モーター)の営業額は4億1,200万米ドル(約120億台湾元/ 約498億円)に達し、同社のデータ分析、デザイン変更、耐衝撃性向上工程パラメータ等の資料、ファイル及び技術のいずれもがマイクロアクチュエータ事業部の研究開発の営業秘密であり、高度なビジネス価値を具えていることから、営業秘密を保護するため、職員に秘密保持条項へのサインを要求するだけでなく、関連ファイルはサーバへ保存し、職員により職級を分け、作業に応じて権限を制限し、コンピュータも外部記憶ができないようにコントロールしていたと述べた。
香港新科公司はTDKグループが買収した子会社で、コンピュータハードディスクドライブ(HDD)の部品装置を研究・生産しており、台湾TDKと同じくTDKグループに属するものの、互いに独立経営をするライバル関係であった。
桃園地検署は昨年、TDKの営業秘密が窃取されているという桃園市調査処の情報を入手し、企業犯罪兼知財組の廖栄寛・検察官を捜査の指揮に当たらせ、証拠収取後4人の元エンジニアの居住地、オフィス等をそれぞれ捜査し、関連ディスク、クラウドデータを差し押さえた。
検察・調査機関は台湾TDKの元エンジニアの胡(33歳)、魏(31歳)が香港新科の中国東莞工場に転職する予定で、離職前の昨年8月~10月に台湾TDKの内部営業秘密資料を個人のスマホ、ノートパソコンにダウンロードし、周(32歳)、張(27歳)の元エンジニアも各自で会社の内部資料を公務用コンピュータにダウンロードしたあと、クラウドにアップロードする方法で個人のコンピュータ設備に保存した嫌疑がかかっていると指摘した。
検察側の調査の際、胡は新しい仕事に役立つよう資料をダウンロードしたことを認め、魏は新しい仕事にTDKのファイルを参考にできると思いつき、使用許諾を得ずTDKの技術秘密をダウンロードしたと発言した。また周、張も会社資料をダウンロードしたことを認めた。検察側は4人が営業秘密を何度もダウンロードしており犯意は明らかであるとみている。
3.模倣品関連
(2022.1.20 聯合報電子報全訳)
3-1 保二総隊がLVマスクの模倣品を差し押え 権利侵害市場価格4億台湾元超
新北市の黄という商人はコロナ期間の物資不足を利用し、高額な暴利ビジネスのチャンスを見込んで、中国からLV商標の模倣品マスクを大量に買いだめしていた。保安警察第二総隊(以下、「保二総隊」と略す)刑事警察大隊偵査第二隊は、先月新北市の黄という男の倉庫に向かい3万9千枚のLV商標の模倣品マスクを差し押えた。権利侵害に係る市場価格は4億台湾元(約16億4千万円)余りで、警察側は商標法違反等の罪で黄という商人を新北地検署に書類送検した。
保二総隊刑事警察大隊偵査第二隊の楊志雄・隊長によると、昨年コロナ期間に黄という商人(30歳余)が防疫物資不足に対する民衆の心理を予期し、LV商標の模倣品マスクを大量に買いだめして著名インターネットオークションプラットフォームで掲載・販売していた。LV公式サイトを検索すると確かにマスク商品の販売をしているものの、様式や上述した出品場所が完全に異なり、模倣品であると判断した。また、関連の取引記録を調査すると、当該販売者の商品、物流件数・金額が相当多く、コロナ期間を鑑み、医療マスクは防疫用品として重要であり、国民の健康を保護するため、積極的に調査を行った。
警察側は数カ月にわたり調査・証拠収集し、黄の模倣品保管先倉庫をつかんだ。当該販売者は警察の取締りを逃れるため、模倣品を居住地に隠していたため、警察側のターゲット設定の困難度を増加させた。当該地は普段ドアの鍵が閉められており買いだめ商品の隠し場所かどうかの確定は難しく、待伏せ調査で容疑者が物流の引渡し商品を待つ際に鉄門を開ける僅かな瞬間に買いだめした大量の商品、段ボール箱が内部にあるのを発見し、また容疑者が商品発送のため出入りしていたため、当該地が商品保管場所であると判断した。
警察側は証拠収集の完備を待ち、裁判所に捜索願発行を依頼し、現場にあった3万9千枚のLV商標の模倣品マスクを一挙に差し押えた。商標権者が台湾の商標鑑定人に依頼して提出された関連の鑑定報告によると、権利侵害市場価格は4億台湾元(約16億4千万円)余りであった。
警察によると販売者はコロナ禍を利用し、防疫物資不足の際の高額な暴利ビジネスチャンスを見越し、権利侵害で法に触れるリスクを冒しながら中国メーカーと提携契約を結び、偽物を本物として模倣品販売をし、いきさつを知らない消費者へ販売していた。商標法違反並びに合法的企業の商標専用権を厳重に侵害したことは明らかであり、買いだめした商品の倉庫内には模倣品ブランドマスクが多数あり、現場の段ボール箱は山積みされほぼ歩くスペースもないほどで、これらの粗悪なマスクは中国から輸入されたもので、販売価格もオリジナルメーカーの1万元以上する真正品との差が極めて大きく、全てを販売した場合の利益は相当なもので、災害時の大儲けとなるところであった。
今回、警察によって押収された未検査マスクの大量販売は避けられたが、これらの模倣品は質、防護力のいずれもが劣悪品で、市場に流通販売され、新型コロナ感染爆発期間に消費者が大量購入・使用した場合、商標権者の知的財産権を侵害し、その信頼度を損なうだけでなく、更には消費者の生命、健康にダメージを与える懸念があった。
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