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知財ニュース282号

台湾知的財産権ニュース(No.282)

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.282)
発行年月日:2019年4月15日・4月30日合併号

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2019年4月1日 智慧局ニュース要訳)
1-1 「台湾の金融機関における特許ポートフォリオ分析と意見報告」が完成
(2019年4月2日 智慧局ニュース全訳)
1-2 修正「専利無効審判請求案件のヒアリング作業方案」を公布日より施行
(2019年4月10日 智慧局ニュース全訳)
1-3 「著作権集中管理団体条例の一部条文改正草案」の公聴会を2019年5月3日に開催
(2019年4月16日 智慧局ニュース全訳)
1-4 立法院で4月16日「専利法一部条文改正草案」可決
(2019年4月16日 智慧局ニュース全訳)
1-5 「著作権法第87条、第93条条文」が16日立法院で可決

2. 法律・制度
(2019年3月28日 立法院ニュース全訳)
2-1 違法STBの販売で重罰 著作権法改正草案初審で通過

3. その他一般
(2019年4月22日 中国時報要訳)
3-1 台米「デジタル権利侵害と営業秘密シンポジウム」を開催

1. 智慧局ニュース

(2019.04.01 智慧局ニュース要訳)
1-1「台湾の金融機関における特許ポートフォリオ分析と意見報告」が完成
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=700347&ctNode=7127&mp=1
智慧局が2018年3月31日に公告した「フィンテック特許とそれに関連するコア技術特許の発展トレンドの研究・分析」プロジェクト報告では、台湾におけるフィンテック特許の総出願件数のうち台湾の金融機関による特許出願件数の占める割合は僅か7%であることが分かった。同報告は、金融を専門とする台湾の金融機関はテクノロジー分野の人材不足から、フィンテック特許の出願ポートフォリオにおいてその他のテクノロジー企業に比べかなりの遅れを取っていることが明らかであると指摘した。
しかし、近年、台湾の金融機関の特許出願件数の急増傾向には注目する価値があることから、智慧局は引き続き、台湾の金融機関を研究対象とし、特許出願の傾向を分析していく。国際的なフィンテックの技術発展動向を比較の基礎とし、自らのフィンテック発展の構想を推進できるよう、台湾の金融機関に対し、技術研究開発情報と特許ポートフォリオを参考として提供するものである。
本研究においては、金融機関の参考となるよう台湾の金融機関の出願における登録・拒絶査定概況を分析し、拒絶査定問題の核心をさぐった。
「台湾金融機関の特許ポートフォリオ分析と意見報告」は、以下のリンク先からダウンロード可能(中国語:我國金融機構專利布局分析與建議報告)。
www.tipo.gov.tw/public/data/932916354771.pdf

(2019.04.02 智慧局ニュース全訳)
1-2 修正「専利無効審判請求案件のヒアリング作業方案」を公布日より施行
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=700568&ctNode=7127&mp=1
専利無効審判請求のヒアリング作業を実務ニーズに近づけるため、智慧局は外界からの意見聴取及び内部検討を経て、「専利無効審判請求案件のヒアリング作業方案」の一部内容を修正した。当該修正方案は、2019年3月19日に予告手続きを完成し、即日より正式施行された。今回の修正ポイントは以下の通り:
(1) 当事者が提出するヒアリング申請の規定について、二当事者のうちどちらか一方の申請だけで可能とするよう緩和し、二当事者による同意が必要との制限をなくした。
(2) 当事者が審査官に忌避事由があると認めた場合、ヒアリング通知の受領後10日以内に理由を添付し申請しなければならない旨を新設。
(3) 当事者がヒアリングの日程変更、非公開、忌避又は中止等の申請をした場合の智慧局によるその後の処理方法を新設。
(4) 当事者がヒアリング通知を受領後、提出できる書類の類型について、ヒアリング陳述書又は既存の資料の補充でなければならない旨を新設。
(5) 当事者がヒアリング当日に遅刻をした場合、理由を説明し進行役の裁量を経て始めてヒアリングに出席できるという規定を新設。
修正後の「専利の無効審判請求案件のヒアリング作業方案」の内容は以下の智慧局サイトのリンク先からダウンロード可能(中国語:專利舉發案件聽證作業方案):
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=700568&ctNode=7127&mp=1

(2019.04.10 智慧局ニュース全訳)
1-3 「著作権集中管理団体条例の一部条文改正草案」公聴会を2019年5月3日に開催
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=700990&ctNode=7127&mp=1
著作権集中管理団体条例(以下、「集管条例」と称する)が2010年2月10日に公布・施行されて以降、実務運営の過程において著作権集中管理団体(以下、「集管団体」と略称)の善き統治(Good governance)と主務官庁の監督・指導における規定について、不足がみられる又は改正が待たれる箇所を含む若干の問題が発見されている。例えば、新たに集管団体設立許可を申請する際、申請案の発起人資格及び真実性に疑義がある、一部の集管団体は内部統制システムに欠けていることから効果的な運営ができない等の問題が生じている。また、集管団体は利用者から使用報酬を徴収し、また使用報酬費を著作財産権者へ分配することに協力しており、公益色の強い役割を務めている。集管団体と利用者の調和を促進して、集管団体の組織機能を発揮し、著作利用の迅速で簡便な許諾という目的達成のためその業務及び財務状況は適度に民衆へ公開しなければならない。このほか、集管団体は著作権主務官庁による許可の廃止並びに解散命令を経て、会員との管理契約終了問題と利用者がすでに締結した使用許諾が継続して有効であるのか否かについては、現行法では明確に規定されていないため、市場運営に利するよう管理契約の期限について明文化することが好ましい。
台湾の集中管理制度の運営を更に円滑にするため、集中管理団体条例改正案に対する皆様からのご意見を奮ってご提供いただきたい。
今回の公聴会の申込みは2019年4月15日午前9時から開始。詳細は下記リンク先の智慧局サイトを参照(中国語)。
activity.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=37177&ctNode=817&mp=1

(2019.04.16 智慧局ニュース全訳)
1-4 立法院で4月16日「専利法一部条文改正草案」可決
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=702364&ctNode=7123&mp=1
立法院は本日(16日)、「専利法一部条文改正草案」を可決した。これにより、意匠権存続期間が12年から15年に延長され、台湾の意匠産業の発展に寄与することになり、また特許及び実用新案の登録査定後の分割制限が緩和され、専利救済案件の審査機能を向上でき、より整備された専利保護制度が構築されることになる。
規制緩和に合わせ、国際規範との調和及び専利審査実務の整備のため、智慧局が提出した専利法一部条文改正草案は2018年12月27日に行政院会議で可決され、立法院での審理へと送られた。今回の改正条文は全部で17条文あり、改正ポイントは以下のとおりとなる。
1. 登録査定後の分割の適用範囲及び期限の緩和
現行規定では特許登録査定後30日以内に限り分割できるとする期限について、特許出願の初審における登録査定書又は再審査における登録査定書の送達後3ヶ月以内であれば分割出願できるよう緩和し、実用新案についてもこれを適用できると緩和した。
2. 無効審判の審理機能の向上
無効審判手続中に、双方の当事者が絶えず理由、証拠を補充、又は訂正請求を繰り返し審理の遅延となることを避けるため、今回の改正では無効審判請求人は3ヶ月以内に理由補充すべきとし、期限を過ぎた場合、斟酌しないこととした。また、協力規定として無効審判の審理期間、特許権者が訂正請求できる時点を新設した。
3. 実用新案の訂正請求できる時点を制限、並びに実体審査に改める
実用新案は実体審査を経ていないため、実用新案権の範囲が事後に訂正により任意に変動させ、第三者の権益に影響を与えることのないよう、実用新案における訂正請求できる期限を訂正し、且つ現在採っている形式審査から実体審査に改める。
4. 意匠権存続期間を12年から15年へ延長
ハーグ協定の意匠権存続期間が15年であることを参考にし、意匠権の保護の強化のため、また、台湾意匠産業の発展に寄与するよう、意匠権存続期間を12年から15年に延長する。
5. 専利包袋保存スペース不足の問題解決
現行規定では専利包袋は永久保存となっているが、すでに累計210万件以上にも達しており、包袋保存スペースを絶えず拡大せねばならない重大な問題になっている、そこで、国際規範を参考にし、分類して定期保存するよう改正し、保存価値の無い場合は定期的に廃棄することにして包袋保存スペース不足の問題を解決する。
智慧局は今回の改正法における規制緩和の実施、専利審査機能の向上を実施することで、企業の専利ポートフォリオの展開並びに台湾意匠の発展に寄与し、今後も一般市民に今回の法改正の内容について理解を深めていただけるよう積極的に啓蒙・宣伝を行っていく。

(2019.04.16 智慧局ニュース全訳)
1-5 「著作権法第87条、第93条条文」が16日立法院で可決
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=702365&ctNode=7123&mp=1
立法院は4月16日、「著作権法第87条、第93条条文」の改正草案を可決した。今後、セットトップボックス(以下、「STB」と称する)又はアプリ応用プログラム(以下、「APP」と称する)を利用し、権利侵害ウェブサイトへのリンクを提供した業者は、2年以下の有期懲役の刑事責任に処し、又は科料又は最高50万台湾元(約180万円)以下の罰金が併科される。新興テクノロジーが派生する権利侵害の形態に対応するため、立法規範を強化し、悪質で重大なネット権利侵害問題を効果的に抑止する。
近年、一部の市販のSTB又はAPPは、迅速で簡便なルートで権利侵害ウェブサイトにリンクし民衆に違法な映像・音楽コンテンツを提供しているが、業者は許諾を経ず月額料金を徴収、又はSTBを販売する方法で暴利を得ており、著作財産権者又は合法的に許諾を受けているOTT(Over The Top:動画・音声等のコンテンツ・サービスを提供する)業者の権益に深刻な被害を与え、さらには台湾のコンテンツ産業の発展に影響を与えている。
台湾が重視する智慧財産権の保護を実施するため、立法委員は改正草案を提出した。下記三種類の行為を著作権侵害とみなし、行為者は民事損害賠償を負担しなければならないほか、2年以下の有期懲役の刑事責任又は科料又は最高50万台湾元(約180万円)の罰金が併科される:
1. 違法の映像・音楽ネットワークへのハイパーリンクを集めたAPP(俗に言うドラマ視聴神器)をGoogle Play商店、Apple Store等のプラットフォーム又はその他ウェブサイトにアップロードし民衆にダウンロード使用を提供。
2. 直接的にコンピュータプログラムを提供しないが、別途、指導、協力又は取り付けをして民衆にコンピュータプログラムのダウンロード使用を提供する。例:STBには前述のAPPを内蔵していないが、民衆にインストール使用を提供するため、民衆にインストールの指導又は協力をする、又はSTB内に取り付けを提供する。
3. 前述のコンピュータプログラムに接続可能な設備又は器材を製造、輸入又は販売する。例:この種のAPP応用プログラムが内蔵されているSTBを製造、輸入又は市場で販売。今後、販売するSTBが民衆に権利侵害コンテンツにリンクさせることが可能と明らかに知りながら継続して販売した場合も法に触れることとなる。
悪徳業者は「月額料金無料」又は「第四台(ケーブルテレビ)費用は生涯無料」などの広告で多くの権利侵害コンテンツにリンクするSTBを消費者に購入するようあおるため、改正法案ではこの手の悪質で重大なSTB又はAPPの撲滅にのみ焦点を当てる。テクノロジー中立原則に基づき、権利侵害コンテンツにリンクするAPPを内蔵していない一般のスマホ、タブレット又は合法的OTTのSTB等の装置に対して影響はでない。このほか、この種のSTB又はAPPをすでに購入してしまった民衆は法に触れないが、この種のSTB又はAPPを提供する著作コンテンツは非合法であるため、随時取り締りにより切断させられる。智慧局も素性がはっきりしないSTBを購入しないよう民衆に注意喚起する。
今回の法改正の可決は、権利侵害の抑止及び台湾のカルチャークリエイティブと映像・音楽産業の発展促進に寄与するものとなり、民衆が今回の法改正の内容について理解を深めることができるよう智慧局では積極的に宣伝・啓蒙していく。

2. 法律・制度

(2019.03.28 立法院ニュース全訳)
2-1 違法STBの販売で重罰 著作権法改正草案初審で通過
www.ly.gov.tw/Pages/Detail.aspx?nodeid=5251&pid=181680
立法院経済委員会は3月27日に初審で著作権法一部条文改正草案を可決した。今後、違法のセットトップボックス(以下、「STB」と称する)を販売又は取付け協力し、違法の映像・音楽コンテンツにリンク可能なアプリ(以下、「APP」と称する)又はプログラムを提供し、利益を得た場合、最高50万台湾元(約180万円)又は2年以下の有期懲役が科せられる。
一部の民衆はSTBを購入し、APPをダウンロードしてドラマを視聴しているが、器材又はソフトの提供業者は許諾を得ていないため、合法的に行っている業者と著作権者が損失を被っている。例えば、中国の「ドラマ視聴神器」である安博盒子(Unblock TV BOX Pro)、千尋盒子(QBOX)等は、一度の出費でSTBを購入又はソフトをダウンロードすれば一生無料で「見放題」というキャッチコピーで、巷では一時大流行となった。しかし、この種の業者は合法的に許諾を取得しておらず、著作権所有者の権益を侵害しているだけでなく、台湾の合法的OTT(Over The Top:動画・音声等のコンテンツ・サービスを提供する)業者は概算で1年当たり280億台湾元(約1,015億円)を越える損失を受けていると見られる。
この種の新手の権利侵害ビジネス行為を抑止するため、民進党の蘇震清・立法委員、邱志偉・立法委員等は、著作憲法第87条、93条の条文を改正し、権利侵害ウェブサイトにリンク可能なコンピュータプログラムの提供、または指導・協力或いは取付けをして利益を得た場合を含む「コンピュータプログラム提供者」の法的責任を新設し、且つ権利侵害STBを製造・輸入又は販売した場合も違法となると明文化するよう提案した。
言い換えれば、違法の「ドラマ視聴神器」の製造、指導、販売といった行為全てが対象になり、例えば①ドラマ視聴APPをGoogle Play又はApple Store等のプラットフォームに他人がダウンロードできるようアップロードする、②販売したSTBにはドラマ視聴神器を設置していないが、インストールの指導又は協力する、③違法のドラマ視聴神器が内蔵されているSTBを製造、輸入又は販売する等の場合、2年以下の有期懲役、拘留に処し又は科料又は50万台湾元以下の罰金を併科することができる。
経済部智慧局の洪淑敏・局長は、以前はこの種の行為に対し、当事者が自主的にリンク整理に協力しているだけ又はソフトを皆に共有しているだけと主張した場合、現行法ではこの種の共犯関係の処理は難しく、実務上それと海外で提供されている違法コンテンツのウェブサイトとの「犯意ある意思連絡」を証明することが難しかったと説明。
また洪・局長は、この種の行為は合法OTT業者に大きなダメージを与えるほか、合法的に購入・使用していると誤って思っている消費者に映像・音楽の途切れ又は接続不安定をもたらしている。法改正が可決されれば、刑事責任を新設するほか、違法STB業者の違法行為に対し、証明・罰則がより容易になり、処罰対象は使用している消費者ではなく提供する業者であると明確に規範されることになると述べた。

3. その他一般

(2019.04.22 中国時報要訳)
3-1 台米「デジタル権利侵害と営業秘密国際シンポジウム」を開催
法務部は近年日増しに厳重になりつつあるデジタル権利侵害と営業秘密侵害問題の対応し、検察・警察・調査局の事件処理専門能力の向上と台米双方の知財政策と法執行戦略の協力交流増進のため4月11日、12日の2日間、国家図書館国際会議ホールにて、米国司法部と「2019年デジタル権利侵害と営業秘密国際シンポジウム」を共同開催した。
同シンポジウムには米国から連邦及び州裁判所、司法部、連邦捜査局(FBI)、国土安全部及び特許商標庁(USPTO)の法律及び技術専門家が参加し、台湾からは法務部、地方検察署、智慧財産法院、調査局、智慧局等の法律専門家が参加。合計170人以上が参加し、デジタル権利侵害の予防と営業秘密保護という2つの議題への関心の高さが示された。

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