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知財ニュース259号

台湾知的財産権ニュース(No.259)

発行:特許庁委託(公財)交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.259)
発行年月日:2017年11月02日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2017年10月20日 智慧局ニュース全訳)
1-1 知的財産権侵害の通報メールアドレスの変更のお知らせ
(2017年10月26日 智慧局ニュース全訳)
1-2 行政院院会が26日、「著作権法」改正草案を可決
2. 知的財産権紛争
(2017年10月17日 工商時報第A3面、経済日報第A1面の要訳)
2-1 TSMCの元研究開発責任者が中国SMICのCo-CEOに就任
(2017年10月18日 聯合報第A4面、経済日報第A1面の要訳)
2-2 米クアルコムへの重罰に対し経済部が公平会に物言い
(2017年10月25日 自由時報電子報、2017年10月26日聯合報第A11面の要訳)
2-3 公平会の重罰余波が浮き彫りに 米クアルコムが5G提携を中断

1. 智慧局ニュース

(2017.10.20 智慧局ニュース全訳)
1-1 知的財産権侵害の通報メールアドレスの変更のお知らせ
保安警察第二総隊刑事警察大隊(旧名称:保護智慧財産権警察大隊)は2017年10月6日、通報受理メールアドレスを以下のように変更した。
(旧)yell@tipo.gov.tw →(新)0800016597@iprp.spsh.gov.tw(なお、旧メールアドレスは使用不可)。
知的財産権侵害に関する通報は、上記新メールアドレスまたは通報電話:0800-016-597までご連絡いただきたい。

(2017.10.26 智慧局ニュース全訳)
1-2 行政院院会が26日、「著作権法」改正草案を可決
2017年10月26日、行政院(「内閣に相当」)は第3573回院会(「閣議」に相当)にて、「著作権法」改正草案を可決した。台湾の著作権法は20年近く全面改正がなされておらず、デジタルテクノロジーとインターネットの高度な発展に対応すべく、智慧局は2010年から法改正を開始しており、これまでに法改正諮問会議47回、公聴会6回を開催し、国際条約及び先進国の著作権法制度を参考にして著作権法全面改正草案を提出した。行政院院会では5度の審査会議を経て可決された。可決された草案で、法改正後には合計145条となり、改正:93条、新設:17条となり、8割が改正されることとなる。
今回の著作権法の改正ポイントは以下のとおり。
1. 「公開放送」及び「公開伝送」の定義を変更し、「再公開伝送権」を新設
(1) デジタルコンバージェンスに対応するため権利規定を併合する。インターネット帯域幅の向上とテクノロジーの日進月歩により、インターネットブロードバンド番組又はラジオはもはや普遍的となっており、今後も技術により権利の類型を区分することは、実務の現状とは適合しなくなる。よって、今回の改正後、一般のテレビ放送であるか、又はネットプラットフォームを通したライブ番組であるかを問わず、いずれも公開放送に属するとし、ネットワーク技術により区別されることはない。
(2) 著作権者の保護の向上のため、再公開伝送権を新設。営業場所でネットワーク及びスクリーン設備を通じて映像放送する場合、権利者に同意又は許諾を得なければならない。これが再公開伝送権である。
2. 実演者の権利を改正
国際趨勢に対応するため、今回の改正で、DVD等の視聴覚物における実演家は、現行のCDを収録した歌手と同等の権利を享有できることとなる。
3. 著作財産権の制限を改正
著作権法は著作者の権益を保障すると同時に、社会の公共利益との調和も必要であることから、民衆による著作物の合法的使用の保護について、以下の改正を行った。
(1) テクノロジーの発展に伴い、テクノロジーを運用して授業課程を教学する遠隔教育により教育効果を拡大するというニーズに応え、学校での遠隔教育での合法的使用を新設。
(2) 電子書籍化の趨勢を考慮し、図書館等の書物貯蔵機関は、適切な要件制限のもと、館内で読者にオンライン閲覧を提供することができることを新設。
(3) 経常的に開催される非営利活動について、許諾を得ずに使用することは刑事責任になる虞があるとの問題があった。今回の改正後、経常的に開催される非営利活動は、適切な使用報酬を支払えば、権利者の同意又は許諾を得ずに使用できることになる。また、民衆が日常公園でダンスをする等の心身健康のための活動については、生活習慣に合わせるため、自ら設備を携帯して音楽を放送する場合、許諾の取得や支払いをせずとも使用できる旨を特別に新設した。
4. 著作財産権者が不明な場合の強制許諾を新設
文化産業の発展を促進するため、年代の古い、又はその他の原因により著作財産権者が不明、又はその所在が不明である著作物について、許諾がないと使用できないとする場合、文化の伝承と流通の妨げとなる。今回の改正後、現行の「文化創意産業発展法」の不明著作(孤児著作)の強制許諾に関する規定を著作権法に移行し、また、時効との兼ね合いも考慮し、審査期間において、出願人が主務官庁からの許可を待つ期間を短縮できるよう、出願人は担保金を供託すれば、先に使用できるとする規定を新設した。
5. 時代にそぐわない刑事責任規定を改正
現行の一部の著作権侵害が6ヶ月の法定刑を下限としている規定は、軽い罪の案件が過重な刑事責任になる虞もあり、バランスを欠くという問題がもたらされていた。過重な刑事責任の問題を回避するよう、今回の改正後、当該下限規定を削除し、裁判所が個別案件を参酌することとした。また、許諾を得ずに海外から正規版を輸入した後、国内で販売する行為については、改正後には刑事責任では規範されなくなる。また、許諾を得ずに正規品を頒布する行為については、民事ルートで解決することが好ましいとし、海賊版の頒布の帰責性とを区別しただけでなく、民情にもより適合するものとなった。

今回の「著作権法」改正草案は約20年来の全面改正となり、改正後には著作権者の保護が向上し、権利侵害を有効的に撲滅でき、社会利益と適度に調和して、民衆が権利侵害を受ける懸念がないよう、著作の合理的使用が保障されることとなり、台湾の文化産業の発展と創意の付加価値を促進し、国家全体の競争力を強化するものとなる。今回の改正草案は、行政院が主導する「アジアのシリコンバレー推進計画」の法制度の整備の一環にも属しており、智慧局は、親しみやすいデジタル経済法制の構築により、デジタル時代における台湾の優良な著作権法制度の環境を向上させるため、積極的に立法院での三読通過(最終可決)を推進していく。
行政院で可決された「著作権法」改正草案の新旧条文対照表は、以下のリンク先からダウンロード可能(中国語):
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=646449&ctNode=7123&mp=1

2. 知的財産権紛争

(2017.10.17 工商時報第A3面、経済日報第A1面の要訳)
2-1 TSMCの元研究開発責任者が中国SMICのCo-CEOに就任
中国最大手の半導体ファウンドリー会社の中芯国際(SMIC)は16日、台湾積体電路製造(TSMC)の元研究開発責任者・梁孟松とSMICの首席執行官・趙海軍が連合首席執行官兼執行董事(Co-CEO)に就任すると発表した。
梁孟松はかつてTSMCの研究開発処処長を務め、2009年に離職後、台湾清華大学にて半年間の教鞭ののち、韓国の成均館大学でも教鞭をとっていた。2011年、TSMCとの競業避止期間が終了後、韓国サムスンへ転職、研究開発副総経理に就いていた。その間、TSMCのFinFET(Fin Field-Effect Transistor)技術をサムスンに漏洩した容疑でTSMCが梁氏を提訴。4年にわたる裁判の結果、2015年、裁判所は梁氏に対しサムスンでの勤務禁止を言い渡していた。
今年65歳の梁氏の半導体業界での経歴は33年で、かつてはストレージ及び先端ロジックプロセスの技術開発などに従事し、所有する半導体特許は450を超える。
今回の梁氏のSMIC加入は、今後、中国半導体業界がTSMCに追いつけるかのキーとなると見られている。SMICはかつて、28ナノ製造技術には非常に自信を持っていると述べており、現在全世界のトップシェアを占めるTSMCを目標としていることは明らかである。
SMICの周子学・董事長は、梁孟松の加入により当社の技術計画は強化され世界水準との差を縮め、顧客サービスや技術水準が高まると述べた。

(2017.10.18 聨合報第A4面、経済日報第A1面の要訳)
2-2 米クアルコムへの重罰に対し経済部が公平会に物言い
携帯電話用ベースバンドチップ最大手の米クアルコムが、今月11日に公平会により234億台湾元(約870億円)の課徴金を科せられたことが発表されたことを受け、経済部は、公平会の決定はクアルコムの台湾産業全体への貢献及び将来の連携商機を評価しておらず、外資の台湾投資に影響が出る恐れがあると指摘した。
資策会(Institute for information industry、III)の統計によると、昨年クアルコムの台湾への半導体とパッケージング産業の発注額は1,557億台湾元(約5,850億円)で、ネットワーク産業の生産額は約3,147億台湾元(約1兆1,800億円)を創出し、今年のネットワーク産業の生産額は約4,324億台湾元(約1兆6,200億円)に達すると見込まれている。
経済部は、クアルコムはこれまで台湾の情報通信及び半導体産業にとって不可欠なパートナーであり、その業務範囲は携帯、タブレットPC、ノートパソコン、IoT等のインフラ、ネットワークオペレータ、検査等のモバイルコミュニケーション生態系を含み、今後は、第5世代移動通信システム(5G)や人工知能(AI)を基礎とし、自動車、医療保険、スマートファクトリーにまで分野を拡大する見込みであると述べている。
経済部は、経済の安定と繁栄を考慮し、産業の発展と公平な取引の相互調和を希望するとして、今回の公平会の決定に対し非常に憂慮すると表明した。

(2017.10.25 自由時報電子報、2017.10.26聨合報第A11面の要訳)
2-3 公平会の重罰余波が浮き彫りに 米クアルコムが5G提携を中断
先日、公平会が米クアルコムへ234億台湾元(約870億円)の課徴金を科したことを受け、工業技術研究院(以下「工研院」と略称)は昨日、クアルコムが双方の5G(第5世代移動通信システム)提携を中断すると口頭にて通知してきたことを明らかにした。クアルコム側は、この件に関してコメントを差し控えている。
情報筋によると、クアルコムの執行長(CEO)が先日訪台し経済部長など政府高官と話し合いをした結果、クアルコム側は依然として提携中断の決定を変更しなかったが、経済部は中断が長引かないよう、引き続き協議を重ねて行きたいとしている。
クアルコムは、行政院が主導するアジア・シリコンバレー計画の提携パートナーになる等、ここ2年ほど積極的に台湾行政院の各投資計画に参与しており、台湾でのイノベーションセンターの設立や5G技術実験室の設立等、台湾の5G発展に協力してきた。工研院資訊通訊研究所(情報通信研究所:資通所)によると、クアルコムとの5G提携期間は4年であるが今年は1年目に入ったばかりで、研究開発チームは、工研院、国家中山科学研究院、資策会(Institute for Information Industry,III)の約200人から構成される。
アジア・シリコンバレー計画は、イノベーション創業、IoTの発展を中心としており、経済部の龔明鑫・政務次長は、クアルコムは5G情報の鍵を握っているため、台湾がIoTを発展させたければ、クアルコムは絶対に重要な提携パートナーであり、どのように対応するか来週の会議で討論すると語った。

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