台湾知的財産権ニュース(No.227)
発行:特許庁委託(公財)交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.227)
発行年月日:2016年1月28日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2016年1月13日 智慧局ニュース全訳)
1-1 著作権法全般法案まもなく完成
(2016年1月14日 智慧局ニュース要約)
1-2 1月14日付けの各メディア報道「著作権法大改正、公共場所でのCD放送の際許諾が必要」に対する本局からの説明
2. 知的財産権紛争
(2015年12月17日 工商時報第B1面要約)
2-1 Twiファーマがエイズ関連ジェネリック薬の特許侵害訴訟で勝訴
(2015年12月24日 工商時報第A19面、判決文書の要約)
2-2 米フランクリン・テンプルトンの商標侵害で台湾の富蘭徳林に改名命令判決
3. 模倣品関連
(2016年1月8日 聯合報第B2面要約)
3-1 フェイスブックでブランド模倣品を販売していた個人商店を摘発
4. その他一般
(2016年1月14日 経済日報第A5面、聯合報第A11面、工商時報第A6面、中国時報第A1、A8面、自由時報第A10面の要約)
4-1 著作権法全面改正草案に対する台湾各紙の反応
(2015年12月27日 経済日報第A4面要約)
4-2 台湾大学 学内から技術を生かして会社設立
1.智慧局ニュース
(2016.01 .13 智慧局ニュース全訳)
1-1 著作権法全面改正草案まもなく完成
著作権の利用と民衆の日常生活は各方面で切っても切り離せない。インターネット、デジタルコンバージェンス、クラウド技術、電子書籍及びインターネットテレビIPTV等の新興テクノロジーの応用は、続々と古いものを退けて新しいものを生み出しており、現行の著作権法規定は時代とともに進むべきだとする考えに影響を及ぼした。現在、米国、EU、日本等の世界各国は、著作権法制の検討に積極的で、台湾は1998年の著作権法改正後、いく度か改正を行ったものの、いずれも本来の構造を基礎とし、大幅な変更は行わなかった。インターネット時代とデジタルコンバージェンスの発展に合わせ、智慧局は2014年に著作権法改正草案第一稿を提出後、5回の公聴会を実施し、さまざまな改正に関する意見を集め、積極的に研究・分析、また関係機関、業者への問い合わせをし、学者や専門家の意見を収集後、引き続き2015年5月11日及び10月30日に、著作権法改正草案第二稿、第三稿を提出し、各界からの意見に具体的に回答しただけでなく、第一稿より若干の規定を新設し、著作権法をより現代社会の需要に合わせた。
今回の法改正は全面改正であることから、智慧局は法改正の経緯と効果を簡潔に説明する。
一. デジタルコンバージェンス環境への適応:
デジタルコンバージェンスは権利の境界線をあいまいにする。テレビ番組は伝統的な放送以外に、インターネット(例.MOD)等を通して伝送することも可能で、いったい公開放送に属するのか、或いは、公開伝送に属するのかといった争議を常にもたらしており、産業ライセンスの利用にも不利であった。今回の法改正では、公開放送と公開伝送の定義を明らかにし、「同時」伝送を「公開放送」に帰属させ、「相互式」発信を「公開伝送」に帰属させることとし、今後は、技術によって区分しないため、適用はより明確になる。このほか、インターネットと伝達設備の発展について、再公開伝達権を新設し、著作権者の権益保護を強化した。
二. デジタルコンバージェンス時代に対応した合理的使用規定:
テクノロジーの発展により遠隔学習が教育の趨勢となっているが、現行の著作権法では遠隔教育の合理的使用の規定が欠けている。今回の法改正は遠隔教育に関する合理的使用の規定を新設し、法に基づいて設立された各種学校や教師が、登録手続き済みの学生に対し遠隔教育を行うことができる。一般民衆に開放された非営利の遠隔課程(例えば非営利のMOOCs課程)については著作財産権者に対し、使用料を支払わなければならない。その他、社会の劇的な変化とともに文化保存デジタルアーカイブの需要もまた増加している。今回の法改正では、国家図書館が文化保存の目的に基づきデジタルアーカイブ等を合理的使用できる規定を新設した。
三. 孤児著作物の強制許諾の規定を新設:
テクノロジーは古い著作に新しい用途をもたらしたが、著作財産権者が見つからず許諾を得られない問題に直面している。台湾の文化創意産業発展法第24条に著作財産権者不明の場合の強制許諾制度が規定されているが、文創(カルチャークリエイティブ)産業への適用に限られている。著作の流通利用を促進するため、利用者が相当の努力をし、それでもなお権利者が見つからず、許諾を取得できない場合にも、孤児著作物の利用というルートを作る必要があるため、著作財産権者不明時の強制許諾の規定を新設した。その他、著作財産権者不明時の利用申請者の早期著作利用、及び著作権主務官庁による審査効率の促進の双方のバランスをとるため、日本の立法例を参考に、著作権主務官庁の審査期間において、利用者が保証金を供託すれば、先に利用可能になる規定を認めた。
四. 時代にそぐわない刑事責任規定の改正を検討:
一部の著作権の刑事責任規定では、例えば正規品の頒布は刑事責任及び6ヶ月の法定刑を下限としているが、刑罰バランスの不均衡問題がみられる。その結果、罪と求刑の不一致をもたらし、刑法謙抑主義に違反するため、今回の法改正で併せて改正の検討を行った。
今回の著作権法改正草案は、デジタル時代がもたらした各種議題に対応したもので、適宜調整を行い、優良な著作権法制環境を構築することで、台湾の文化発展と創意を促進するものである。智慧局は第三稿を基礎とし、積極的に各界の共通認識を集め、また各界の意見をくみとり、調整し、迅速に法改正を進めて行く予定である。
最後に、台湾は積極的に環太平洋パートナーシップ(TPP)加入に向けており、行政院はすでに各機関に対し、速やかに国内関係法規の法改正内容を提出するよう要求済みである。行政院の法改正スケジュールに合わせるため、智慧局は著作権保護期間の延長及び、実演家の議題について、すでに改正著作権法の研究に着手しており、今年初めには文化部と共同で産業諮問会議と公聴会を開催し、各界との対話と説明を行う計画である。
(2016.1 .14 智慧局ニュース全訳)
1-2 1月14日付けの各メディア報道「著作権法大改正、公共場所でのCD放送の際許諾が必要」に対する本局からの説明
一.著作権法は著作権者の権利と著作利用のバランスを規範した法律で、著作の利用は原則上、著作権者の許諾を得て始めて合法的に著作利用が可能となり、国内外にかかわらず著作権法規はいずれもこのようになっている。著作の利用は、広く複雑に関係しているため、各著作の利用の形態を明らかにし、合理的使用の範囲を明確に規範するため、智慧局は長年にわたり研究討論の協議を重ね、各界の意見を聴取し、ようやく改正案を提出した。
二.報道内容(当知財ニュース4-1参照)に関して、一般民衆や営業場所等での著作利用の情況に関し、使用料支払いの要否及び法的責任の有無について、以下のように簡単に説明する。
1. 営業場所(例.喫茶店、軽食店、理髪店)がCDを放送し客に音楽を聴かせること:
現行の著作権法規定に基づくと、営業場所が購入したCDはそのCDの所有権のみを取得しており、CD内の音楽著作物(歌詞又は楽曲)の著作権を取得したものではない。もし、営業場所が客に音楽を聴かせる場合、著作の利用行為にかかわり、また音楽放送は雰囲気を良くし、客をひきつけるのに役立つ。これは法改正前も同様で、法改正の前後いずれも許諾取得が必要であるため、法規が変動したわけではない。
2.営業場所でのテレビ・ラジオ放送:
現行法では、商店等でのテレビ・ラジオ放送について、これまで行政解釈を用いて単純に電源を入れることは著作の利用にあたらないとしてきた。それにより常に議論が生じていたため、改正草案では、商店等が一般の家庭用設備を用いて放送しており、且つ別途コード又は分岐コード(例.スピーカーの数量を増加)を引かない場合、合理的使用を主張することができ、費用を支払う義務はないと規定した。改正草案は、商店の行為の合法性を更に明確化したもので、費用の支払い義務を増加させるものではない。
3.公園での健康ダンスにおけるCD音楽の放送:
公園で音楽を流すことも、音楽の公開利用に属する。現行法では恒常的活動ではない場合のみ合理的使用の主張が可能である。そのため、もし毎朝公園でダンスや体操等の恒常的活動で音楽を流しているにもかかわらず、許諾を取得していない場合、刑事責任に直面する可能性がある。本局は今回の改正草案で、その社会大衆生活への影響を考慮し、かつ、音楽製作者の利益とのバランスも考慮して、刑事責任を削除し、合理的な使用料を著作権者に支払えば使用を可能とした。
2.知的財産権紛争
(2015.12 .17 工商時報第B1面要約)
2-1 Twiファーマがエイズ関連ジェネリック薬の特許侵害訴訟で勝訴
台湾の製薬会社である安成国際薬業(Twiファーマシューティカルズ;以下「Twiファーマ」と略称)が米国製薬会社パーファーマから、エイズ患者食欲不振治療用のジェネリック薬Megace ES(酢酸メゲーストロール)がパーファーマの特許権(登録番号第7,101,576号)を侵害していると提訴されていた特許侵害訴訟について、同特許権が2015年7月に米国メリーランド州地裁により無効判決とされていたことにつき、米国連邦巡回控訴裁判所は2015年12月16日、当該地裁の判決を確認し、Twiファーマの勝訴となった。
これにより、パーファーマが以前1,600万米ドルの担保金を供託して、Twiファーマのジェネリック薬Megace ESを判決が出るまで販売禁止を要求した「予備的差止命令(preliminary injunction)」により被った損失について、Twiファーマは正式に損害賠償請求を正式に提出する予定で、当該賠償金は1,600億米ドル以上になる見込みである。
(2015.12 .24 工商時報A19面、判決文書の要約)
2-2 米フランクリン・テンプルトンの商標侵害で台湾の富蘭徳林に改名命令判決
米国の資本運用会社グループであるフランクリン・テンプルトン・インベストメンツ(中国語名:富蘭克林、以下「フランクリン」と略称する)は、台湾の富蘭徳林証券投資会社(以下「富蘭徳林」と略称する)が、故意に類似した社名を付け、顧客にフランクリンの子会社又は関係会社だと誤解させており、これは商標のフリーライドにあたるとして、商標権侵害の排除を求めて訴訟を提起した。
なお、フランクリンによると富蘭徳林はかつて「富蘭徳林上海」という社名であり、中国投資、税務コンサルタントに従事する会社だとの認識から商標異議は申し立てなかったが、近年、富蘭徳林はフランクリンと同じ業務分野である証券・投資コンサルティング分野にも参入し、富蘭徳林の玉石混合の戦略は、フランクリンの業務にも損失をもたらすようになった。
智慧財産法院は2015年11月23日、以下の理由から富蘭徳林による商標権の侵害を認め、富蘭徳林に改名を命じる判決を下した。
① フランクリンは2003年の米フォーチュン・グローバル(世界企業売上高ランキング)で第419位(売上高95.5億米ドル)の大手で、台湾でも1990年から商標登録し、資産管理の広告や講座などが紙媒体やテレビ番組でも報道され、同社の商標は広く知られた著名商標である。富蘭徳林はそれを知りながら「富蘭徳林」を社名に使用し、フランクリンと類似する業務を行うことはフリーライド行為に当たり、フランクリンの商標の識別性と信用を損なう虞がある。
② フランクリンの漢字表記である「富蘭克林」と「富蘭徳林」はいずれも「Franklin」の訳語で、中国語の文字、音も類似し、消費者に誤認・混同を引き起こす虞がある。
<智慧財産法院の判決>
智慧財産法院判決「104年度民商訴字第4號」 判決日:2015/11/23
判決書検索サイト: jirs.judicial.gov.tw/FJUD/FJUDQRY03_1.aspx
裁判類別:民事 判決字号:104, 民商訴, 4 裁判案由:排除侵害商標權行為等
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3.模倣品関連
(2016.1 .8 聯合報B2面要約)
3-1 フェイスブックでブランド模倣品を販売していた個人商店を摘発
保安警察第二総隊刑事警察大隊偵二隊は、フェイスブックでブランド物の模倣品が販売されているという通報を受け、1ヶ月の証拠収集を経て、LVやCHANEL等のブランドの模倣品を販売していた個人商店を摘発した。
警察の調べによると、林氏(25歳女)は中国のショッピングサイト「淘宝網」から商品1点あたり300~2,400台湾元(約1,040~8,350円)で購入し、それを1,000~10,000台湾元(約3,500~3.5万円)で販売しており、対外的には生産工場から流出したブランド物の訳あり商品として、国際運送費も無料としていた。
警察は新北市と台中の林氏の自宅を捜索し、ネックレス、バッグ、皮財布、服飾品、スカーフ及び靴等のブランド模倣品を押収し、商標法違反で書類送検した。権利侵害額は1,000万台湾元(約3,500万円)に上ると見られる。
4.その他一般
(2016.01.14 経済日報第A5面、聯合報第A11面、工商時報第A6面、中国時報第A1面、第8面、自由時報第A10面の要約)
4-1 著作権法全面改正草案に対する台湾各紙の反応
智慧局は1月13日、18年ぶりに全面改正を行う著作権法改正草案を発表した。これに対する台湾各紙の反応は様々で、経済日報と聯合報は今回の大改正のポイントである、①デジタルコンバージェンス時代に対応したMODやOTT(Over The Top)業者によるネット送信について、テレビ放送と「同時」であれば「公開放送」に属し、同時でなければ「公開伝送」に属するとの区別、②遠隔教育における合理的使用、③孤児著作物の強制許諾制度、④非営利活動に対する合理的使用の適用、⑤商店、カフェ等の営業場所での番組放送に対する合理的使用の適用、等を網羅して報道した。
一方で、工商時報、中国時報、自由時報は、④非営利活動に対する合理的使用の適用、⑤商店、カフェ等の営業場所での番組放送に対する合理的使用の適用に焦点を当てて報道した。それぞれの報道概要は以下のとおり。
<工商時報>
長年議論の絶えなかった、商店やカフェ等の営業場所で番組を公開放送することは違法になるのか否かの問題について、今回の著作権法改正により、家庭用設備により番組を放送する「公開伝達」は、合理的使用となり、使用料の支払いは必要ないが、CD、DVD等であれば許諾が必要で、さもなければ権利侵害行為となり、3年以下の有期懲役又は罰金75万台湾元の併科となると明文化された。
議論の激しかったパロディの合理的使用に関しては、法律で明確に規定することは難しいため、改正草案では独立した規定は作られなかったものの、必要に応じて合理的使用の包括的条文に回帰して個別案件ごとに裁判所が最終判定をすることとなったことは注目に値する。
<中国時報>
新著作権法により最大の衝撃を受けるのはカフェや理容店、商店などの営業場所であると報道。法改正により家庭用設備で放送するCD、DVD等も許諾を得なければ刑事責任になる。また、非営利活動ついても「恒常的及び定例的」であれば、例えば公園でお年寄りが毎日音楽をかけてダンスをする際に使う音楽についても著作権者に使用料を支払わなければならない。法改正の内容を受けて、軽食店業者と理容業者からの不合理だとする不満の声も掲載した。
<自由時報>
非営利活動ついて「恒常的及び定例的」であれば許諾が必要とする改正内容と共に、パロディの合理的使用について独立した規定は作られず、個別案件ごとに裁判所の判断にゆだねるとされたことから依然として権利侵害の可能性があることを報道。改正内容を不服とする主婦の怒りのインタビューも顔写真入りで掲載。また、自らもミュージシャンである音楽創作公会(MCU)の陳建寧・常務理事からの著作権法改正に対する不満(多くの詳細についてまだ充分に対話がなされていないのに改正草案を決めるやり方はブラックボックス改正だと揶揄)も掲載。
(2015.12 .27 経済日報第A4面要約)
4-2 台湾大学 学内から技術を生かして会社設立
学内の研究開発成果を市場経済に生かすため、台湾大学(以下「台大」と略称する)は、早ければ来年(2016年)、台大100%持ち株の「技術商業化会社」を設立する計画である。台大実験室から商業化可能なターゲットを探し出し、ベンチャー企業の設立、ベンチャーキャピタルのマッチングを指導し、1年で5件の技術の商業化を目標とする。これは台湾の国立大学にとって初の大学発派生企業となる。
教育部高教司(文部科学省高等教育にあたる)李彦儀・司長は、国立大学から企業を生み出し研究開発の商業化を推進する件については、教育部はすでに「高等教育創新轉型條例(高等教育機関イノベーション転換条例)」において法的根拠を付与しており、現在行政院での審査に送付済みで、今後立法院での可決に向けて送付されると述べた。
台大が設立する「技術商業化会社」の構想は、陳良基・台大副学長によるもので、陳良基・台大副学長は、最初の数年の初期運営として数千万元の資金を必要とするが、大学運営に影響を及ぼさないという条件の下で、まずは産学提携関係の収入で対処し、当該企業の財務が年々向上して自給自足できることを希望すると発言した。また、「技術商業化会社」で大事なのは、台大実験室から商業化の可能性のある潜在的計画を見つけ出し、研究開発を商業化、市場化へ向けて推進し、ベンチャーキャピタルのマッチングを含め、サービス的性質の会社に発展させることだと強調した。
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