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台湾知的財産権ニュース(No.299)

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.299)
発行年月日:2020年5月1日・30日合併号

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2020年4月28日 智慧局ニュース全訳)
1-1 新型コロナに対する防疫IP国家チームとしての智慧局の6措置
2. 法律・制度
(2020年5月12日 工商時報第A13面、聯合報第A11面の要訳)
2-1 国際宅急便受取人の実名認証制、5月16日から正式実施
3. 知的財産権紛争
(2020年5月5日 経済日報電子報、工商時報電子報の要訳)
3-1 帝宝とヒュンダイがヘッドライト意匠権侵害訴訟で和解
(2020年5月20日 経済日報電子報要訳)
3-2 台湾PGIが米国PacBioを特許権侵害で提訴
4. その他一般
(2020年5月13日 自由時報電子報要訳)
4-1 知的財産及び商業法院の院長に陳駿璧最高裁判所裁判官が就任予定

判例コラム

1. 智慧局ニュース

(2020.04.28 智慧局ニュース全訳)
1-1 新型コロナに対する防疫IP国家チームとしての智慧局の6措置
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-875526-a20c9-1.html
 新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に蔓延する中、智慧局では「専利分析によるマスク国家チーム支援」、「防疫に関する世界的専利技術の公開」、「潜在力を有する医薬品に関する台湾の特許情報を整理」、「防疫に関する商標の問い合わせ専門対応窓口の設置」、「新型コロナに起因する期間徒過の救済」、「在宅電話問い合わせと電子出願」の6措置を打ち出した。これにより防疫IP国家チームを組織し、イノベーション技術を迅速に拡散して、各界の研究開発への投資を奨励し、防疫イノベーション力を発動する。
 感染拡大を受け、全世界が研究開発に相次いで力を注いでいる中、特に試験試剤、薬物及びワクチンが最も注目を浴びている。智慧局では研究開発の動向を注視し、産業界で必要な資料及びサービスを提供していく。

1. 専利分析によるマスク国家チーム支援
新型コロナウイルスの感染が引き続き拡大していることに対応し、経済部が工具機メーカーを取りまとめ、マスク国家チームを組織し、迅速にマスク生産力を拡大しており、現在ではすでに、20ヵ国以上の国が台湾からマスク製造設備の購入を希望することにつながっている。マスク国家チームが国際舞台に出ていく際には、国家チームが販売過程において特許の地雷を踏み紛争が生じることのないよう、智慧局はマスクの製造設備及び技術についての世界における特許ポートフォリオの概況について情報提供する。防疫国家チームで専利情報の分析が必要な産業があれば、智慧局は積極的に協力提供していく。
2. 防疫に関する世界的専利技術の公開
智慧局の検索システム「全球専利検索系統(GPSS)」に「防疫専門エリア」を設け、マスク、防護服、検査、ワクチン、医薬品等14項目の防疫ニーズが比較的高い産業ごとに分類し、ワンクリックで世界の防疫技術に関する専利が検索できるようにする。このほかに、登録して会員になれば、産業界が迅速に世界の防疫技術発展のキーとなる情報を掌握できるよう、注目している技術分野について検索条件を設定することができ、システムが自動的に最新の専利を推薦してくれ、また、統計分析、図表分析等多くの機能を使用することができる。
3. 潜在力を有する医薬品に関する台湾の特許情報を整理
新型コロナウイルス感染症のワクチンがまだ出来上がらない現在において、国内外の医薬専門家は有効な医薬品を探すことに尽力しており、「老薬新用(既存薬の新用法)」が短期間内で最も早く且つ安全なよい方法であるとされている。
 智慧局では3月から国際的に新型コロナウイルス感染症に効く見込みのある既存医薬品とされる「レムデシビル」、「ヒドロキシクロロキン」、「ファビピラビル」及び寄生虫駆虫薬の「イベルメクチン」等の注目されている医薬品合計52項目の医薬品について、それらの台湾における医薬品許可証の状況及び台湾での特許情報について検索して開示している。それらの特許状況は次の3種に分けられる。1.主要な活性成分のコア特許が台湾で特許保護を受けているもの、2.主要な活性成分のコア特許が台湾で特許保護を受けておらず、その他のコアでない特許のみ、3.台湾で特許保護されていないもの。
 智慧局は以上の情報をとおして、医薬品メーカーが特許状態を把握し、許諾交渉、特許回避又は特許侵害の恐れの有無等を含め、迅速に市場参入戦略を選択できること、そして将来的に新型コロナウイルスの薬の研究開発が順調にいき、迅速に市場に販売し国民のためになるよう希望している。
4. 防疫に関する商標のお問い合わせ専門対応窓口の設置
次亜塩素酸水、抗菌ハンドジェル、マスク減圧カバー、医療用防護服等の防疫商品が新たなビジネスチャンスとなっている。智慧局では「防疫商品及び役務の名称」分類一覧表を整理し、出願人が電子出願で一覧表の名称で商標出願すれば、手数料減免(1類別300台湾元)できる。同時に、問い合わせ専門対応窓口を設置し、専門スタッフが商標の図案検索を指南し、登録査定となる可能性を分析して提供することで、業者が迅速に出願しマーケティングリスクを低減できるよう手助けする。本サービスは2020年5月31日まで実施し、感染症拡大の状況をみて、臨機応変にサービス時間を延長していく。
5. 新型コロナに起因する期間徒過の救済
専利と商標について、新型コロナウイルスの影響で出願及びその他の手続の法定期間(例:証書費の納付、専利年金の納付、実体審査請求、再審査の請求等の帰還)を徒過してしまった場合、証明書類を智慧局に添付の上で原状回復を申請することができる。原則的に個別案件の状況を斟酌し、柔軟に出願人の権益を確保する。
6. 在宅電話問い合わせと電子出願
コロナ禍期間であっても智慧局は専利・商標に関する問い合わせサービスは中断しない。民衆は防疫のため外出せずとも電話で専門スタッフに問い合わせることができる。専利・商標の出願の郵送についても心配ない。オンラインで電子出願すれば、新規出願について専利出願では600台湾元、商標出願では300台湾元の割引がある。

 これらの6措置は、智慧局公式サイトに構築された「新型コロナウイルスに関する知財情報」(https://www.tipo.gov.tw/tw/lp-853-1.html)に公告済みである。智慧局としては、特許情報の公開、専門の問い合わせ、現状回復等の措置により、民衆の権益を確保し、イノベーション技術の拡散を加速させ、研究開発をとおして一日も早く疫病解決することを望んでいる。

2. 法律・制度

(2020.05.12 工商時報第A13面・聯合報第A11面の要訳)
2-1 国際宅急便受取人の実名認証制、5月16日から正式実施
 財政部関務署は11日、国際宅急便受取人の実名認証制を5月16日から正式に実施すると発表した。民衆が、公式アプリ「EZ WAY易利委」の認証を通さない、又は紙による通関書類を添付しない場合、初回は「イエローカード」として警告通知され、二回目からは「レッドカード」とし通関できなくなる。
 5月7日時点での関務署の統計によると、公式アプリ「EZ WAY易利委」への実名認証登録者数は68.4万人で、輸入通関簡易申告の全体の約25%を占める。関務署職員によると、常態的個人輸入者数は年間約250万人で、年内にその50%にあたる125万人の登録を目指す。
 関務署は、台湾における輸入宅急便の多くは淘宝(タオバオ)及び蝦皮購物(ショッピー)プラットフォームであり、タオバオ台湾はすでに当該措置に協力し、会員が正確な氏名、電話番号、身分証番号を記入(又は入力)しない場合、決済がスムーズにできなくなり、また、物流会社のS.F.エクスプレス(順豊速運)及び捷豊国際物流(Jet-F)も実名認証しない場合は荷物を輸送しないこととし、ショッピーについては5月末までに会員実名認証を完了する予定で、これにより実名認証者数は100万人に達する予定と示した。
 台湾では輸入小包について段階的に制限政策をとっており、2018年に関務署は海外ネットショッピングの免税対象の上限額を3,000台湾元(約10,700円)から2,000台湾元(約7,100円)に引下げ、同時に、半年で6回以上輸入した場合は、個人輸入者の宅急便を全額課税とし免税対象とはならないと規定した。
 関務署の彭英偉・副署長は、すでに「EZ WAY易利委」のカスタマーサービス人員を20名以上増員し、登録の流れも引き続き簡素化し、今後は荷物の追跡サービス等の更に多くの通関サービスを提供すると強調した。
 実名認証制の実施後、民衆は小包輸入の際、必ず実名で資料登記しなければならない。関務署関係者は、実名認証制はこれまでの虚偽資料問題を効果的に解決し、禁制品や受取人不明の問題を防止するほか、宅急便価格の透明化により、「実際の価格よりも低く申告」、「小口分散」等の税金逃れを減らすことができるとの見解を示した。

3. 知的財産権紛争

(2020.05.05 経済日報電子報、工商時報電子報の要訳)
3-1 帝宝とヒュンダイがヘッドライト意匠権侵害訴訟で和解
 自動車用ランプ大手の帝宝工業(Depo)は5月5日、帝宝及び米国の子会社Maxzone Vehicle Lighting Corp.は、韓国の現代自動車(ヒュンダイ)との意匠権侵害訴訟でヒュンダイと和解したと発表した。
 帝宝工業はヒュンダイから2019年1月21日に米国カリフォルニア州裁判所に訴訟を提起されていた。今回の和解内容については、和解契約の秘密保持条項に基づき開示されることはない。
 この和解を受け帝宝工業は、現在双方で正式に和解契約が締結されており、この和解が会社の財務及び業務に影響することはないと改めて強調した。

(2020.05.20 経済日報電子報要訳)
3-2 台湾PGIが米国PacBioを特許権侵害で提訴
 台湾遺伝子解析ツール開発会社の体学バイオ(Personal Genomics, Inc. : PGI)は、米国パシフィック・バイオサイエンシズ・オブ・カリフォルニア(PacBio)がPGIの特許(米国特許US7767441及び中国特許CN101743321B)を侵害したとして、2019年9月27日に米国デラウェア州地方裁判所に、また、2020年5月18日に中国武漢の裁判所に提訴した。
 PGIはコアラボラトリーを台湾新竹に置き、最先端の第三世代単一分子連続シークエンシング技術の開発に専念しており、PacBioのロングリードDNAシークエンシング市場における技術的ライバルである。
 今回、PGIが提訴した内容は、主にPGIが有するCMOS半導体の感光チップにある単一分子シークエンシング特許技術をPacBioが侵害しているというものである。
 またPGIは訴状において、PacBioが2010年と2015年に複数回にわたりPGIと商談を行い、半導体チップ及び光電技術を第三世代DNAシークエンシングにどのように運用するのかについて知ろうと試みたほか、PGIに対し何度も技術提携の提起及び特許の実施許諾案を提出したが実現できず、これはPacBioが当該特許の存在を明らかに知りながら、許諾を得ず、シークエンシング商品の製造及び販売の権利侵害をおこない、故意に権利を侵害したことを示していると言及している。

4. その他一般

(2020.05.13 自由時報電子報要訳)
4-1 知的財産及び商業法院の院長に陳駿璧最高裁判所裁判官が就任予定
 智慧財産法院に商業法院が新設され「知的財産及び商業法院」となるため、現在関連の作業が進められているが、司法院人事審議委員会は5月12日、次期院長に現最高裁判所の陳駿璧裁判官を院長とすることを決議した。
 陳駿璧・次期院長(62歳)は、台湾大学法律学部卒で司法院民事法廷長をつとめた際、「消費者債務清理条例」等の法改正作業に従事し、2015年には最高裁判所の裁判官に昇格している。
 智慧財産法院の陳国成・前院長は2019年末に最高行政裁判所の裁判官として異動し、現在は李維心・法廷長が院長代理をしている。院長就任日は、知的財産及び商業法院の合併作業にまだ時間が必要なため8月27日になる予定。

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《判例コラム》

 新型コロナウイルス感染がなかなか収まりません。一説によると笑いは免疫力を高めるそうで、ユーモアやジョークはコミュニケーションを円滑にするだけでなく、健康にも良いそうです。今回紹介する判例*1は、被告が「商標のパロディ」を主張して勝訴した第一審判決*2を不服として商標権者が控訴した第二審の民事訴訟です。両当事者間では米国でも訴訟が行われ、商標権者の敗訴が確定しています*3。

概要;
ルイ・ヴィトン(商標権者、原告)が化粧品ショップ「THE FACE SHOP」を展開する企業(被告)を商標権等の侵害で訴えた民事訴訟で、台湾知財裁判所第二審は係争商品の商標権侵害及び著作権侵害を認定し、原告の訴えを認めました。

(1) 商標権侵害について
係争商品の「白地に四つ葉/花模様」の視覚的印象は、原告商標と類似度が高く、原告商標の指定商品分類と同一か類似の商品であり、原告商標は著名な革製品メーカーによる台湾の消費者によく知られている著名商標であり、係争商品の広い面積に類似の商標を使用しているなど善意でなく、関連の消費者に誤認混同を生じさせる可能性があるとして、商標権侵害と判断しました。
被告の、商標パロディのフェアユースであり米国の裁判でも認められているとの主張に対しては、外国と台湾では法制度が異なり、商標法は属地主義の原則を採用し、台湾の使用者の実際の使用態様が台湾の商標法*4に基づいてフェアユースの要件に該当するか否かを具体的に判断すべきとした上で、フェアユースでは無いと判断しました。

(2) 著作権侵害について
原告の「モノグラム・マルチカラー」*5のデザインは著作権法で保護する美術著作に該当し、2004年に米国で著作権登録され、台湾著作権法4条2号で外国人の著作物は台湾で保護される。係争商品に使用した模様は、重層している外国文字「LV」を「MOB」に変更していることや、ひし形や円形の四つ葉/花びらの模様にわずかな差異がある他は、著名な「モノグラム・マルチカラー」のデザインと極めて類似しており、係争商品は美術著作の著作財産権を侵害する物品であると判断しました。
また、著作権法のフェアユースに該当するかは、外国裁判所の判断基準は参考にはできるが、使用者の実際の使用方法が台湾著作権法*6の規範に立ち帰って判断すべきとして、該当しないと判断しました。

補足説明;
米国では「my other car is a Mercedes」とのステッカーを安い小型車に貼って見栄を張るジョークが流行っていたようで、係争商品にはそれを真似たのか「my other bag」や短縮した「MOB」をブランド名のように表示しています。その点、裁判官は商標権侵害の判断の中で、『係争商品に表示した「my other bag」に関するジョークは、米国人が「my other car is a Mercedes」のステッカーを古い車に貼る事実に由来する。米国の訴訟ではフェアユースと認定されたが、台湾の文化背景は米国と同じではなく、台湾の消費者は米国の消費者のように「My Other..」をジョークやユーモアと解せず、パロディがフェアユースの抗弁になるとの被告の主張は採用できない。』と判事しました。外国の判例に左右されず、台湾の法律に基づいて判断する一貫した姿勢がみられます。
日本でも知的財産権とパロディは時々話題になり、「白い恋人」と「面白い恋人」、「フランクミューラー」と「フランク三浦」などがあります。(後)

註釈(*):
1.智慧財產法院108年度民商上字第5號判決 (判決日2020年1月16日)
2.智慧財產法院107年度民商訴字第1號判決 (判決日2019年1月23日)
3.米国最高裁判所 (判決日2017年10月2日)
4.台湾商標法36条1項
5.原告が日本の芸術家村上隆氏とコラボして2003年に発表したデザイン
6.台湾著作権法65条2項

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