台湾知的財産権ニュース(No.298)
発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.298)
発行年月日:2020年4月30日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2020年4月17日 智慧局ニュース全訳)
1-1 「専利法施行細則」第17条、第39条の改正予告
(2020年4月21日 智慧局ニュース全訳)
1-2 智慧局の専利商標オープンデータにおけるファイル形式の変更
(2020年4月22日 智慧局ニュース全訳)
1-3 2020年第1四半期の知的財産権動向
(2020年4月28日 智慧局ニュース全訳)
1-4 日台特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)の本格実施が2020年5月1日より正式施行
2. その他一般
(2020年4月16日 中国時報電子全訳)
2-1 医療界が強制実施権発動を呼びかけ
(2020年4月20日 中央社要訳)
2-2 「銅鑼湾書店」商標をめぐる物議に智慧局は識別性の立証必須と説明
1. 智慧局ニュース
(2020.04.17 智慧局ニュース全訳)
1-1 「専利法施行細則」第17条、第39条の改正予告
www.tipo.gov.tw/tw/cp-86-875496-436d9-1.html
経済部は2020年4月6日付けの経授智字第10920030410号書簡にて、「専利法施行細則」一部条文改正を以下の通り公告した。
主旨:「専利法施行細則」第17条、第39条の改正予告
根拠条文:行政手続法第151条第2項を準用する第154条第1項。
公告事項:
1. 改正機関:経済部
2. 改正根拠条文:専利法第158条
3. 専利法施行細則第17条、第39条改正草案は上記サイトからダウンロード可能(中国語:專利法施行細則第十七條、第三十九條修正總說明)。
4. 内容についての意見、要望などは当ニュース掲載日(2020年4月17日)の翌日から起算し60日以内に以下の担当者まで連絡のこと。
連絡先:智慧財産局法務室(台北市辛亥路2段185号3F)
電話:(02)2376-7489 FAX:(02)2735-1946
専利法施行細則第17条、第39条改正草案総説明
専利法施行細則(以下、「本細則」と略称する)は、1947年9月26日に制定公布、1949年1月1日に施行され、16回の改正を経て、最近の改正公布は2019年9月27日である。法規緩和及び専利審査の実務のニーズに合わせ、本細則第17条、第39条を改正する。改正の要点は以下となる。
一、 特許が一つ又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸配列を含む場合は、明細書に配列表を記載しなければないが、専利主務官庁規定の書式に符合する電子データを添付する場合、出願人の書面による配列表の提出義務は免除される。(改正条文第17条)
二、 第三者による意見書提出期間を改正する。特許出願の出願公開後に第三者は専利主務官庁へ参考資料の提出ができるという制限を削除し、第三者は査定前であれば専利主務官庁に参考資料の提出ができることとする。(改正条文第39条)
(2020. 04.21 智慧局ニュース全訳)
1-2 智慧局の専利商標オープンデータにおけるファイル形式の変更
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-875502-58abb-1.html
智慧局のオープンデータ保存スペースの使用効率を高めるため、2020年4月18日より最新巻の公開特許公報の目録(複数ページのスキャンファイル)と公開特許明細書(複数ページのスキャンファイル)の資料集のファイル形式をZIP形式の圧縮ファイルに変更し、同時に過去の公報のファイル形式も次々とTIFFからZIPに変更していく。ご不便をおかけすることになるがご了承願いたい。
(2020.04 .22 智慧局ニュース全訳)
1-3 2020年第1四半期の知的財産権動向
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-875506-f2e44-1.html
2020年第1四半期における特許、実用新案、意匠の三種類の専利出願件数は16,680件(前年同期比3%減)となったが、外国人出願人による意匠出願件数は前年同期比2%増と小幅な成長となった。また商標登録出願件数は20,310件(前年同期比4%増)となり、そのうち台湾人出願人による出願件数は前年同期比7%増となった。特許出願においては、台積電(TSMC)及び日東電工(NITTO)が、台湾法人及び外国法人のそれぞれ1位となった。このほか、台湾の中小企業特許件数が9%増と顕著な成長を見せた。
一、 今期の専利出願の動向
(一) 台湾人出願人による特許及び実用新案出願件数はいずれも小幅な減少
台湾人出願人による三種類の専利出願件数は8,381件で、そのうち特許及び実用新案はいずれも前年同期比3%減少となった。企業による特許出願件数及び個人による実用新案出願件数が減少し、専利全体の出願件数が4%減少した主因である(表1参照)。
(二) 外国人出願人による意匠出願件数が小幅なプラス成長
外国人出願人による三種類の専利出願件数は8,299件で、そのうち意匠は2%増と小幅な伸びとなり、6四半期連続のプラス成長となった(表1参照)。
(三) 台湾の中小企業による特許件数がプラス成長
台湾人出願人による特許出願件数に占める割合のうち、台湾企業による出願件数が76%近くを占め(図2参照)、イノベーション研究開発の主な原動力となった。そのうち、中小企業による成果がめざましく、件数においては前年同期比9%増となり、8四半期連続のプラス成長となり、台湾における研究開発イノベーションの重要性が徐々に上昇してきていることを示している。また、台湾法人による特許出願においては、台積電(TSMC、129件)が最も多く、次いで友達(AUO、114件)、瑞昱(REALTEK、111件)が続く。そのうち、瑞昱は前年同期比66%増(図4参照)と顕著な成長ぶりを見せた。
(四) 交通大学と成功大学が並んで台湾の高等教育機関のトップ
台湾の高等教育機関における特許出願件数は前年同期比15%増となり、主要な高等教育機関の出願件数はプラス成長となった。国立交通大学及び国立成功大学はいずれも出願件数19件となり、高等教育機関において同位トップとなり、私立大学においては崑山科技大学が出願件数12件で最多となった(表3参照)。このほか、国公立大学と私立大学の特許出願件数の割合はそれぞれ64%、36%となり、国公立大学の出願件数が前年同期比8%増となった(図5参照)。
(五) 外国法人においては、日東電工及びフォード・モーターがそれぞれ特許及び意匠のポートフォリオに積極的
外国人出願人の特許出願件数を国籍別にみると、日本が3,525件と最も多く(図3参照)、出願人においては日本の日東電工が148件と最多で、前年比92%増となった(図4参照)。
意匠出願件数においては、米国が260件と最も多く、出願上位5か国(地区)では日本だけが減少したが、その他米国等はいずれも2桁成長となった(図3参照)。出願人においては米国のフォード・モーターが93件と最も多く、前年比145%増となった。
二、 今期の商標出願の動向
(一) 商標出願件数は小幅な成長
2020年第1四半期における商標登録出願件数は20,310件(前年同期比4%増)となり、台湾人出願件数は15,008件(前年同期比7%増)、外国人出願件数は5,302件で小幅に減少した(表1参照)。台湾人出願件数は4四半期連続のプラス成長となり(表1参照)、総出願件数に占める割合は2018年第1四半期の71%より上昇し、2020年第1四半期では74%となった(表2参照)。
(二) 外国人では日本の出願件数が最多
外国人出願件数を国籍別でみると、日本(1,042件)が最も多く、出願件数上位5か国(地区)では、米国、韓国及び香港がいずれもプラス成長となった(図3参照)。
(三) 台湾人及び外国人の出願はそれぞれ第35類、第9類が最多
商標登録出願のうち、台湾人は第35類(広告、企業経営等)への出願が2,729件、外国人は第9類(コンピュータ及びテクノロジー製品等)への出願が1,091件とそれぞれ最多となった。成長率においては、台湾人は第37類(建設、修理等)が前年同期比41%増、外国人は第12類(交通手段)が前年同期比18%増となった(図6参照)。
出願人においては、台湾法人の楽活家居(ROEHL)及び大漢建設が、また外国法人の詠強控股(香港、Turritopsis Holdings Limited)がいずれも出願件数80件となり、台湾人出願人及び外国人出願人のトップとなった(表7、8参照)。
2020年第1四半期季報は、下記リンク先の智慧局サイトの「統計季報」を参照。https://www.tipo.gov.tw/tw/lp-167-1.html(中国語:109年第1季)
(2020.04.28 智慧局ニュース全訳)
1-4 日台特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)の本格実施が2020年5月1日より正式施行
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-875530-5a0fe-1.html
日台特許審査ハイウェイ(PPH MOTTAINAI)施行プログラムは2020年4月30日で満期を迎える。実施成果が非常に良いことから日台双方は5月1日から同計画を本格実施とし、引き続き双方の出願人に安定して迅速なサービスを提供していくことに合意した。
台湾と日本の経済貿易関係は従来密接で、日本は長年台湾における海外からの特許出願最多国家であり、昨年(2019年)の日本から台湾への特許出願件数は13,198件であった。また、台湾から日本への特許出願件数は1,548件であった。迅速に出願を審査し、出願人が迅速に特許権を取得することができるよう、日台は2012年5月1日からPPH試行プログラムの実施を開始し、2014年には拡大版であるPPH MOTTAINAIにグレードアップし、2017年には試行期間を3年延長していた。
日台PPH MOTTAINAIの本格実施の願書及び作業方案については、下記(台湾)智慧局又は(日本)特許庁の公式サイトのリンク先を参照のこと。
・智慧局:https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/lp-723-101.html
・特許庁:https://www.jpo.go.jp/e/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_taiwan_highway.html
2. その他一般
(2020.04.16 中国時報電子報全訳)
2-1 医療界が強制実施権発動を呼びかけ
台湾の(新型コロナウイルスに対する)防疫は好成績を奏している。こうした中、医療界は次のように呼びかけている。すなわち、部署横断体制で呼吸器国家チームを設立すべきであるが、現実には多くの特許技術が国外大手メーカーに握られている。したがって、智慧局は「強制実施権」の発動に協力すべきであるとの呼びかけである。
これに対し智慧局は、「それは最後の手段」であり、下手をすると台湾の名声に影響が出る恐れがあることから慎重に進めなければならないとの見解を示した。一方、専門家は(特許ライセンスではなく)「買取保証」方式を採用して国外の大手メーカーと提携関係を構築することを提案している。
医療界では、台湾内には重症呼吸器の製造力はあるが、特許が国外の五大メーカーの寡占状態であり使用することができないという問題があると見ている。
台北医学大学医療バイオテクノロジー法律研究所の李崇僖所長は、メディアにおいて、防疫情勢の中、智慧局が「国家緊急危機」のため、特許の強制実施権を発動し台湾業者の使用を許可すれば、回り道をしなくて済むと呼びかけている。
智慧局の洪淑敏局長は、このような訴えに対し慎重な態度であり、これは智慧局が一方的に決定できるものではなく、指揮センターが国家緊急命令を発表して始めて、智慧局は強制実施権手続を進めることができるが、「これは最後の手段」であると述べた。
洪淑敏局長はさらに、国外企業が心血を注いで取得した特許に強制実施権を発動すれば、「諸刃の剣」となり、下手をすると台湾の名声に影響することになると強調した。一番良いのは双方が協議した上で関連特許を取得することがベストであると述べた。
また、これについて工業技術研究院(ITRI)の張慈映バイオメディカル組長は、次のように分析した。台湾メーカーが自力で重症呼吸器を生産するには少なくとも2~3年かかると思われ、この間には多くの検証、パラメータ設定、安定度抑制等すべきことがたくさんある。強制実施権は確実に早いが、難度は高い。主に、台湾はこれらの国外の大手メーカーに管轄権がないため、本当に強制実施権を発動して台湾メーカーに商用させる場合、中国が過去に犯してきた知財権侵害の紛争が引き起こされることになるだろう。そこで、台湾メーカーには次善の策として、国外の次のレベルの呼吸器メーカーと提携し、一定の機器数量を分けてもらうやり方もある、と提案した。
(2020.04.20 中央社要訳)
2-2 「銅鑼湾書店」商標をめぐる物議に智慧局は識別性の立証必須と説明
かつて香港で中国共産党を批判する「禁書」を扱い閉店に追い込まれた「銅鑼湾書店」の林栄基店長が、台湾での再開に向け4月に智慧局へ「銅鑼湾書店」商標を登録出願したところ、すでに先取り出願されており登録できないとのニュースが物議を醸しだしている。
これに対し、智慧局商標組の劉蓁蓁組長は、次のように述べた。一般的に地名に普通名称を加えた商標は、出願人がこの商標は特殊で識別性又は関連性があると立証することができなければ商標登録されることはない。「銅鑼湾書店」を例にすると「銅鑼湾」は香港の地名で、「書店」は普通名称であるため、出願人は商標に識別性があることを立証する必要がある。また、通常、商標出願は出願から5カ月して審査に入るため、先取り出願された「銅鑼湾書店」商標はまだ審査待ちの段階である。また、「銅鑼湾書店」は過去に林栄基店長が香港で経営していた書店で、一連の事件により有名になったが、台湾で商標登録出願をする際には、やはり台湾の一般民衆が「銅鑼湾書店」を見てすぐに特定の役務提供者と結びつけることができることを立証して初めて登録することができる。
なお、林栄基店長の「銅鑼湾書店」は予定どおり、4月25日に開店する予定である。
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