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知財ニュース395号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.395)
発行年月日:2025年11月14日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2025年10月31日 智慧局ニュース全訳)
1-1 智慧局における2025年第3四半期の知的財産権動向
(2025年11月4日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「商品及び特定商品の小売役務の個数計算ガイドラインと例」の改訂を公表
(2025年11月5日 智慧局ニュース全訳)
1-3 智慧局が2025年産業専利分析とポートフォリオコンテスト成果を発表

2. 知的財産権紛争
(2025年11月5日 経済日報全訳)
2-1 家登とインテグリスの訴訟について、第三審の最高裁判決が確定 同社は今後の対応について引き続き法律顧問と協議する

3. 模倣品関連
(2025年11月4日 刑事警察局ニュース全訳)
3-1 刑事警察局は産業界で著名なソフトウエアを違法に不正使用した企業を検挙 権利侵害市場価格は8億台湾元超
(2025年11月6日 刑事警察局ニュース全訳)
3-2 刑事局がクラウド型カラオケSTB「金○○」による大規模権利侵害を取締り 権利侵害市場価格は120億台湾元に上る

1.智慧局ニュース

(2025.10 .31 智慧局ニュース全訳)
1-1 智慧局における2025年第3四半期の知的財産権動向
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-63194.html
一、専利商標全体の出願動向
2025年第3四半期に台湾で受理した三種類の専利(特許、実用新案、意匠)の出願件数は合計17,991件(特許12,695件、実用新案3,608件、意匠1,688件)で、前年(2024年)同期比2%減となり、このうち特許は0.3%減の微減となった(図1参照)。台湾人と外国人による3種の専利出願件数の割合は、それぞれ49.5%と50.5%であった。台湾人と外国人による出願件数は、前年同期比でそれぞれ1%減、2%減となった。
商標登録出願受理件数は27,038件(34,043区分)で前年同期比16%増となり(図2参照)、このうち台湾人出願人が79%、外国人出願人が21%を占めた。商標出願件数は、四半期ベースで1998年第4四半期以来の最高記録となっており、また、台湾人出願人の出願件数は初めて2万件を超えた。

二、台湾出願人による専利出願状況
(一)特許出願件数の上位10位出願人
台湾出願人による特許出願は4,776件、そのうち企業による出願は3,727件であり、78%を占めた。特許出願件数上位10出願人は、台湾積体電路製造(TSMC)が出願件数283件で1位となり、以降、友達光電(AUO)91件、南亜科技(NANYA)87件、英業達(Inventec)82件、台達電(DELTA)78件、鴻海(Foxconn)76件、聯發科(MediaTek)70件、瑞昱(Realtek)69件、聯電(UMC)52件、群創(INNOLUX)44件と続いた(図4参照)。TSMCは2016年第3四半期から10年連続で首位となっている。

(二)意匠出願件数の上位5出願人
台湾出願人による意匠出願は855件となった。出願件数上位5出願人は、聯府塑膠(KEYWAY)が54件で1位となり、以降、創未來科技(Tron Future Tech Inc.)22件、台亞半導體(Taiwan-Asia Semiconductor Corporation)14件、台達電(DELTA)13件、神基科技(Getac)12件と続いた(図5参照)。このうち創未來科技と台亞半導體は初めて上位5位以内にランクインし、件数も各社の歴代最多であった。

(三)教育機関による特許出願の件数上位10出願人
台湾の教育機関による特許出願は459件となった。出願件数上位10出願人は、国立成功大学が40件で1位となり、以降、崑山科技大学26件、中興大学22件、国立陽明交通大学及び明志科技大学各21件、国立台湾大学19件、国立清華大学17件、国立台湾科技大学及び台北医学大学各16件、南開科技大学14件と続いた(表1参照)。このうち崑山科技大学は私立の教育機関として最高位であり、台北医学大学の出願件数は同大学史上最多となった。

(四)研究機関及び国営事業による特許出願
台湾の研究機関による特許出願は124件で、工業技術研究院(ITRI)が42件で最多であった(表2参照)。台湾の国営事業による特許出願件数は20件で、台湾中油が8件で最多であった。

三、外国出願人による専利出願状況

(一)特許出願人の国籍分析
外国出願人による特許出願は7,919件で、上位5か国(地域)は、日本が出願件数3,150件で1位となり、以降、米国1,825件、中国952件、韓国826件、ドイツ219件と続いた(図3参照)。このうち日本、米国及び中国の出願件数はいずれも増加し、特に米国は2年連続で増加した。台湾が世界の技術サプライチェーンにおいて重要な役割を果たしていることが明らかであり、ますます多くの外国企業が、自社の技術優位性と市場競争力を確保するため、台湾を選んで特許を取得している。

(二)外国出願人による特許出願の件数上位10出願人
外国出願人による特許出願の上位10出願人は、米国のアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)が出願件数302件で1位となり、以降、順に、日本の東京エレクトロン217件、韓国のサムスン電子(SAMSUNG)197件、米国のクアルコム(Qualcomm)155件、韓国の韓領(クーパン)152件、日本のキオクシア130件、日本の信越化学106件、日本の日東電工91件、日本の富士フイルム88件、日本のレゾナック64件と続いた(図4参照)。
アプライド・マテリアルズは2年連続で首位となり、同社と日本の信越化学の出願件数は、共に単一四半期当たりの史上最多を記録した。半導体設備と材料分野のリーディングカンパニーが積極的に台湾で特許を出願しており、台湾市場に対する重視とポートフォリオ展開を深化する意図が反映されている。

(三)意匠出願の国籍分析
外国出願人による意匠出願は833件で、上位5か国(地域)は、日本が223件で最多となり、以降、中国146件、米国118件、スイス116件、フランス68件と続いた(図3参照)。そのうち日本、スイス、フランスの件数はいずれも増加しており、特にスイスとフランスの増加率は5割を超える著しいものであった。

(四)外国出願人による意匠出願の件数上位5出願人
外国出願人による意匠出願の件数上位5出願人は、中国の北京石頭世紀(BEIJING ROBOROCK TECHNOLOGY CO., LTD.)及びスイスのハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON S.A.)が各35件で最多となり、以降、スイスのWonderland Switzerland AG及びフランスのルノー(RENAULT S.A.S)が各27件、フランスのルイ・ヴィトンが17件と続いた(図5参照)。上位5出願人による出願件数は、中国の北京石頭世紀以外いずれも増加した。このうち、フランスのルイ・ヴィトンが上位5位以内に初めてランクインし、その件数は同社の史上最多記録となった。

四、商標登録出願状況

(一)台湾人による商標登録出願の件数上位10出願人
台湾人による商標登録出願は21,305件で、上位10出願人は、富邦人寿が360件で1位となり、以降、統一企業137件、台鋼運動行銷股份有限公司105件、龍巖(Lungyen Life Service Co., Ltd.)100件、金利華食品82件、星翰有限公司76件、大云永續科技(Chase Sustainability Technology Co., Ltd.)72件、冠軍建材(Champion Building Materials Co. Ltd.)65件、極光創視有限公司(AURORA VISION CO., LTD.)64件、逸點亦旅股份有限公司(Eylandt Resort Company Limited)が60件と続いた(表3参照)。上位10出願人のうち統一企業以外はいずれも増加傾向となった。

(二)台湾人による出願の区分
台湾出願人による出願の上位3区分は、順に、第35類(広告、企業経営等)4,219件、第43類(レストラン、宿泊施設等)1,849件、第41類(教育、娯楽)1,848件となった(図7参照)。サービス業の市場の発展を反映し、主に広告、小売サービス及び飲食の分野でポートフォリオが構築されている。

(三)外国出願人の国籍分析
外国出願人による商標登録出願は5,733件で、上位5か国(地域)は、中国が1,687件で最多、以降、日本872件、米国774件、韓国606件、香港245件と続いた(図6参照)。香港以外の国(地域)の出願件数は増加しており、2年連続で増加しているところが多い。台湾市場への前向きな投資と積極的なブランドのポートフォリオ展開が示されている。

(四)外国人による商標登録出願の件数上位10出願人
外国人による商標登録出願の件数上位10出願人は、中国の瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)が71件で1位、以降、中国の北京光線(Beijing Enlight Pictures Co., Ltd.)36件、韓国の杰偉品(JYP)及び中国の華潤(CHINA RESOURCES INTELLECTUAL PROPERTY MANAGEMENT CO., LTD)各34件、フランスのロレアル(L’OREAL, S.A)28件、ドイツのオスピカ(OSYPKA MEDICAL GMBH)及び中国の黃承芳(各26件)、シンガポールのPOP MART(POP MART (SINGAPORE) HOLDING PTE. LTD.)25件、米国のブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)23件、中国の全棉時代(Purcotton)22件と続いた(表4)。上位10出願人のうちフランスのロレアルは例年並みだったが、それ以外はいずれも増加した。

(五)外国人による出願の区分
外国人による出願の上位3区分は、順に第9類(コンピュータ及びテクノロジー製品等)1,015件、第35類(広告、企業経営等)695件、第3類(化粧品、洗浄剤等)620件となった(図8参照)。外国人は主に情報科学技術、小売サービス、日用品の分野でポートフォリオを構築しており、台湾市場の消費のポテンシャルを見込んでいることが読み取れる。

(六)産業別分析
台湾が受理した商標登録出願は、「農業食材」が6,323件で全産業の中で1位となり、以降、「商業金融」5,590件、「ヘルスケア」5,502件と続いた(図9参照)。
商標登録出願の上位3産業に関しては、台湾出願人の場合、「農業食材」が5,347件で最多であり(図10参照)、主にレストラン及び宿泊サービスの商標登録出願であった。外国出願人の場合は「ヘルスケア」が1,607件で最多であり、2021年第1四半期以降で初めて「技術研究」(1,595件)を上回ることになった(図11参照)。
また、台湾出願人の上位3産業「農業食材」、「商業金融」、及び「ヘルスケア」、外国出願人の「ヘルスケア」、「技術研究」、及び「服飾装飾品」の全てで、出願件数が増加した。出願人が健康、飲食及び金融に関する商標のポートフォリオ展開を重視していることが分かる。

注:上述の統計データの出願人及び国籍ランキングは、出願の「第1出願人」を計算の基礎とする。

2025年第3四半期の「四半期統計表」は、智慧局サイトの「季統計(四半期統計)」(https://www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/181.html)に掲載されている。参照いただきたい。

(2025.11.04 智慧局ニュース全訳)
1-2 「商品及び特定商品の小売役務の個数計算ガイドラインと例」の改訂を公表
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-63378.html
商業市場の発展動向に伴い非代替性トークン(Non-Fungible Tokens : NFTs)によって認証されるデジタル商品及びメタバース仮想商品が台頭することにより生じる、個数計算への疑問を考慮して、本局は、「商品及び特定商品の小売役務の個数計算ガイドラインと例」を改訂し、仮想商品及び関連する特定の小売・卸売役務の計算基準を明確にした。
改訂後の新しいガイドラインの例では、多機能ソフトウエアは単一の製品単位で算出することとし、重複計上を回避して審査プロセスを簡素化する。NFTs認証済み製品と未認証製品については、性質及び取引対象が異なるため、その特定商品の小売・卸売数量を別々に算出し、公平性と一貫性を確保する。さらに、「小売」、「卸売」及び「小売・卸売」等の役務名称の認定方法を明確化し、算出基準を統一して、出願時のトラブルを低減する。参考にしていただきたい。

※「商品及び特定商品の小売役務の個数計算ガイドラインと例」は上記リンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能。

(2025.11.05 智慧局ニュース全訳)
1-3 智慧局が2025年産業専利分析とポートフォリオコンテスト成果を発表
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/891-63376.html
経済部智慧財産局は本日(5日)、「2025年産業別専利分析とポートフォリオコンテスト」の受賞と成果発表会を開催した。今回のコンテストでは、昨年好評だった「企業による出題×チームによる課題解決」形式を引き続き採用した。専門人材がチームを組んで産業界の実務ニーズに合わせた専利分析とポートフォリオ構築を提案することを奨励し、産業の発展と専利戦略の的確な融合を促進する。今年のコンテストでは、昨年の2倍以上に規模を拡大した。出題企業数は15社から30社に、参加チーム数は50チームから70チームに増加し、各業界が専利分析の応用と革新的なポートフォリオ展開に高い関心を持っていることが示された。予選及び準決勝の厳正な審査と熾烈な競争を経て、最終的に優秀な8チームが目覚ましい成績を収め、本コンテストで賞を獲得した。賞金総額は30万台湾元(約150万円)であった。

コンテストの結果、台湾経済新聞チームで構成された「星系3B(ギャラクシー3B)」チームが、「乳酸菌由来のエクソソーム技術とポートフォリオ分析」で1位を獲得した。2位は、台湾大学の「游俠吳雙(侠客 呉双)」チームが「低消費電力高精密ディスプレイ技術産業の専利分析とポートフォリオの展開」であった。そして3位は、財団法人生物技術開発センターの「生技最智慧(バイオは一番スマート)」チームによる「ガンとの闘いの最終目的地を目指して全力疾走―NKG2D CAR出発!」となった。受賞チームの分析テーマは、最先端の人気分野や産業転換の鍵となる技術に焦点を当て、産業発展の動向を注意深く捉えたものであり、その卓越した分析結果は、企業が技術トレンドを理解しブルーオーシャン戦略を策定するのに役立つだけでなく、将来の市場機会を開拓するための重要な基礎となる。

今回の出題企業には、高通半導體有限公司(Qualcomm Semiconductor Limited)、鴻海精密工業、デルタ電子、群創光電(Innolux)、中華電信研究院、神達數位股份有限公司(MiTAC Digital Technology Corporation)、益福生醫股彬有限公司(Bened Biomedical Co., Ltd)、工業技術研究院(ITRI)、臺灣土地銀行、威剛科技股份有限公司(ADATA Technology Co., Ltd)等の、台湾内外の様々な分野の企業が含まれている(詳細は別表2参照)。出題内容にも現在の産業動向がよく反映されており、去年と同じスマート医療、AIoT技術の分野だけでなく、今年度はさらに「金融詐欺検出技術」、「細胞治療」、「低電力高精密ディスプレイ技術」等の最先端の応用にも焦点が当てられている。参加チームの深い分析結果を通じて、企業が専利情報を研究開発イノベーションの鍵となるエネルギーに変換することを支援する。

今回のコンテストでは、智慧局が構築した「グローバル専利検索システム(GPSS)」の使用が指定された。このシステムには、世界中の1億7,300万件以上の専利文献が収録されており、毎年800万件以上の新規資料が追加されている。効率的な検索機能と専利ポートフォリオ分析機能を備えており、参加チームは技術動向や革新的なブレークスルーの方向性を迅速に把握することができる。また、参加チームの実力向上のため、理論と実務を融合させた一連の特別研修が企画された。「ケーススタディ」、「GPSSシステムの実践練習」、「専門家による経験共有」といった単元が含まれており、専利検索と分析において直面する実践的な課題を取り上げ、専利の核心的な価値と戦略的ポートフォリオ展開への理解を深め、参加チームの分析力と応用力を全面的に向上させる。

智慧局は次のとおり説明した。イベントでは表彰式に加え、準決勝に進出した16チームの専利分析・ポートフォリオ結果も披露された。出題企業である卡洛生物醫藥股份有限公司(Caarlogic Biomed Co. Ltd.)と達擎股份有限公司(AUO Display Plus)から出題の動機と企業の技術革新、競争力強化、専利保護における専利ポートフォリオ展開の実用的メリットについて情報共有された。財団法人専利検索センターは、「インテリジェント移動支援装置」と「ホームセーフティモニタリング」という2つの高齢者向け技術の技術トレンド分析を発表し、参加者にベンチマークを学ぶ機会を提供した。これらのことにより、企業の戦略的ポートフォリオ展開の応用をさらに強化し、実務的スキルを備えた産学の専利分析人材をさらに育成することを目指す。

智慧局は、専利分析は研究開発と市場を結ぶ重要な架け橋であり、智慧局は今後も専利分析力の育成と産業応用を推進し、産官学研の協力を深化させ、知的財産イノベーションエコシステムを構築していくと強調した。

※「2025年産業専利分析とポートフォリオコンテスト」の受賞者リスト(別表1)と出題企業リスト(別表2)は、上記URLの「檔案下載(ファイルをダウンロード)」からダウンロード可能。

2.知的財産権紛争

(2025.11.05 経済日報全訳)
2-1 家登とインテグリスの訴訟について、第三審の最高裁判決が確定 同社は今後の対応について引き続き法律顧問と協議する
家登精密工業(家登、台湾の半導体製造関連メーカー)は5日、「米国のインテグリス(安堤格里斯公司、Entegris.Inc.)」、「台湾インテグリス(Entegris Taiwan Technologies Co., Ltd.)」等の7者に対し提起していた知財訴訟について、第三審である最高裁の判決が確定したと発表した。

家登は、「米国のインテグリス(Entegris.Inc.」、「Bertrand Loy氏」、「台湾インテグリス(Entegris Taiwan Technologies Co., Ltd.)」、「謝俊安氏」、「米国企業の英特格有限公司(Entegris Asia LLC)」、「シンガポール企業の英特格技術研發股份有限公司((Entegris Singapore Pte. Ltd.)」、「オランダ企業の英特格國際控股有限公司(Entegris International Holdings Ⅷ B.V.)」の7者が同社の特許権(中華民国特許第I238804号)を許諾なしに侵害し、同社に損害をもたらしたとして、知的財産及び商業裁判所に対して当該7者を相手取る損害賠償訴訟を提起し、提訴対象者が連帯して賠償金1億台湾元(約5億円)を支払うよう求めていたが、一審、二審ともに求償の理由がないとして棄却されていた。第三審に対し上告していたところ、2025年11月5日に確定判決が下された。

本件について家登は、判決が確定したものの、会社の合法的な権益を保護するため、今後の対応について引き続き法律顧問と協議していくと説明した。家登は今後の対応について、引き続き法律顧問と協議していく。

※台湾知的財産権ニュース322号に関連記事あり(3-1 家登が米インテグリスを権利侵害により提訴 求償1億台湾元)。
台湾知的財産権ニュース322号URL:

知財ニュース322号

3.模倣品関連

(2025.11.04 刑事警察局ニュース全訳)
3-1 刑事警察局は産業界で著名なソフトウエアを違法に不正使用した企業を検挙 権利侵害市場価格は8億台湾元超
www.cib.npa.gov.tw/ch/app/news/view?module=news&id=1885&serno=5eb0b3f4-fe7d-4659-9bb4-5fd710b97fcf
1. 捜査部署:刑事警察局知的財産権捜査大隊
2. 捜査時期:2025年1月~6月
3. 捜査場所:台北市大安区、台南市新営区、仁徳区。
4. 容疑者:駱(男、1962年生まれ)、蔡(男、1971年生まれ)、邱(男、1968年生まれ)ら3名。
5. 押収された証拠物:ホストコンピュータ8台、 USB5個、海賊版ソフト44セット等の関連証拠物を押収した。
6. 事件の概要:
(1) 刑事警察局知的財産権捜査大隊は、米国企業「西〇〇股份有限公司」及びフィンランド企業「天〇股份有限公司」という2社の国際的に著名なソフトウエア企業から、当該2社が研究開発した高レベルの専門的なソフトウエアプログラムが、台湾の悪質な企業によって長期にわたり違法に不正使用されているとの通報を受けた。米国企業のソフトウエアプログラムはIC設計者が機能を完成、検証するためのもので、ファクトリーオートメーション(FA)、IC設計、プリント基板(Printed Circuit Board、PCB)等に広く応用され、1セットの価格は90万台湾元(約445万円)であり、100回超の不正使用により権利が侵害されていた。また、フィンランド企業のソフトウエアプログラムは建築業の鉄骨設計専用のもので、1セットの価格は約110万台湾元(約544万円)であり、1,000回超不正使用され、知的財産権がひどく侵害された。
(2) プロジェクトチームが追跡調査をした結果、台湾内の3社の企業がソフトウエアを違法にダウンロードし、繰り返し使用していた明確な証拠を発見した。今年に入ってすぐの1月に台湾台北地方裁判所が発行した捜索令状を持参して1回目の捜査を行い、台北市大安区にある駱容疑者が経営する会社内で、米国企業の海賊版プログラムを違法にインストールしたコンピュータ2台、海賊版ソフトウエア2セットを押収した。また今年6月には、台湾台南地方裁判所が発行した捜査令状を持参して2回目の捜査を行い、台南市新営区の邱容疑者が経営する会社内で、フィンランド企業のソフトウエアプログラムを違法にインストールした海賊版コンピュータ1台とUSB5個を押収し、台南市仁徳区の蔡容疑者が経営する会社内で、フィンランド企業の海賊版プログラムを違法にインストールしたコンピュータ5台を押収した。
(3) 権利者が海賊版ソフトウエアの鑑定と不正使用回数を確認した。米国企業が被害にあった海賊版プログラム2セットを押収し、不正使用回数は104回、市場価格で約9,000万台湾元(約4億4,500万円)の権利侵害であった。また、フィンランド企業が被害にあった海賊版プログラム42セットを押収し、不正使用回数は1万回以上に達し、権利侵害市場価格は約7億4,000万元(約36億5,900万円)となり、著作権者の権益侵害は甚大である。駱容疑者ら3人は、著作権法80条の2(無断複製防止措置の回避)、87条第1項第5号(コンピュータプログラムの著作財産権を侵害する複製物の業としての使用)、91条(無断複製による他人の著作財産権の侵害)等の罪で、それぞれの管轄の地方検察署へ送検された。
(4) 刑事局は企業経営者に対し、知的財産権を尊重し、合法的に使用が許諾されたソフトウエアを購入して営業に使用すべきであり、コスト節約のために危険を冒して違法行為を働いた結果、権利者への賠償による損失だけでなく著作権法違反の刑事責任に直面し、自身の会社の信用・評判を落とすという割に合わない事態にならないよう注意すべきであると呼び掛けている。刑事局は引き続き科学捜査と国際協力を強化し、海賊版と権利侵害行為を徹底的に撲滅し、産業界と共にイノベーションと公平な市場秩序の保護に努める。

(2025.11.06 刑事警察局ニュース全訳)
3-2 刑事局がクラウド型カラオケSTB「金○○」による大規模権利侵害を取締り 権利侵害市場価格は120億台湾元に上る
www.cib.npa.gov.tw/ch/app/news/view?module=news&id=1885&serno=bdf5ada0-a689-4389-9ec8-ef6c6b216ad4
(1) 台湾台中地方検察署は先日、○○モーテル(○○汽車旅館)で視覚的・聴覚的著作物の権利を侵害する楽曲を流すカラオケマシンが客のカラオケ利用のために提供されているという著作権者からの通報を受け、刑事警察局知的財産権捜査大隊に捜査を指示した。プロジェクトチームは2024年8月14日、台中地方裁判所の捜索令状に基づき、当該モーテルに対する一回目の捜索を実施し、会社の責任者の魏○○と営業部長の陳○○を出頭させ、現場では「金○○」クラウド型カラオケセットトップボックス(STB)4台及びタッチスクリーン1台等を証拠として押収した。
(2) 調査の結果、次のとおり判明した。「金○○」クラウド型カラオケSTB(以下「カラオケマシン」)は中国の業者である「広東○○会社」が製造したもので、インターネットを経由して中国本土のクラウド音楽ライブラリから台湾でのライセンスを取得していない楽曲の視覚的・聴覚的著作物をダウンロードするものであった。「○○信息科技有限公司」は輸入の代理と台湾での運営を担い、インターネットで販売するだけでなく、新北市、台中市、雲林県、高雄市等に営業拠点を設置し、KTV、モーテル、クラブ、バー、パブ、飲食店等の営業施設に対し、客のカラオケ利用のためにカラオケマシンをレンタル・販売してレンタル費及び関連サービス料を得ることにより、不法な利益を取得していた。2020年に営業を開始してから警察が取り締まるまでの間に1,000台以上の違法カラオケマシンがレンタルされており、著作権の侵害は深刻である。
(3) 長期にわたる追跡と証拠収集により、プロジェクトチームは、「○○信息科技有限公司」の責任者である陳○○らがカラオケマシンを提供していた実店舗の位置と関連施設を突き止めた。その後、2025年3月20日に、台湾台中地方裁判所が発行した捜索令状発行により、陳容疑者が経営する本社、新北、台中、雲林、高雄の4つの支店、及び台中市のモーテルに対し、二回目となる捜索を実施した。本社責任者の陳○○、台中支店の営業部長の楊○○、モーテル責任者の紀○○及び営業部長の鄭○○を出頭させ、現場でカラオケマシン802台、タッチスクリーン69台、輸出商品購入契約書、電子送金伝票、中国音楽映像著作権集団管理協会の証明書、同社の2022年と2023年の売上領収書、メインコンピュータ5台、ハードディスク、銀行通帳のコピー、出荷伝票等の証拠物を押収した。権利者の推定では、権利侵害市場価格は120億台湾元(約595億円)を超えるとされる。本件は、著作権法違反の容疑で、台湾台中地方検察署に送られる。
(4) 今回のプロジェクトにより、カラオケに使用可能な違法カラオケマシンの営業拠点を一網打尽にした。台湾の知的財産権の保護と市場における合法的な競争の維持に対する警察の決意が示された。また、民衆に対し、合法的なライセンスを受けていないカラオケマシンを違法なルートでレンタル・購入するといった犯罪行為を行わないよう、民衆に強く呼びかける。警察は、台湾の知的財産権の強固な保護を徹底するため、関連事件の取締りを引き続き強化していく。

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