発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.394)
発行年月日:2025年10月31日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2025年10月13日 智慧局ニュース全訳)
1-1 「台湾AI関連発明事例集」の公表
(2025年10月17日 智慧局ニュース全訳)
1-2 国家発明創作賞の専利が2025創博会に集結 台湾産業の国際市場におけるビジネスチャンスの拡大を支援
(2025年10月23日 智慧局ニュース全訳)
1-3 「商標登録出願の方式審査基準」改訂草案
(2025年10月23日 智慧局ニュース全訳)
1-4 智慧局が各国のAI専利技術ポートフォリオ分析を公開
(2025年10月27日 智慧局ニュース全訳)
1-5 「特許及び意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業要点」改訂草案の予告
(2025年10月29日 智慧局ニュース全訳)
1-6 標準必須特許(SEP)サービスプラットフォームを多いにご利用いただきたい
2. 知的財産権紛争
(2025年10月20日 聯合報全訳)
2-1 小雲電視盒で違法映画・ドラマ鑑賞 8,000台販売で権利侵害11億台湾元 警察は12人を逮捕・送検
3. その他一般
(2025年10月5日 中国時報第A5面全訳)
3-1 グリーン商標実らず 出願件数はこの10年で最少2024年は1万件に満たず エネルギー分野の減少が最多 智慧局はコーポレートガバナンスにおけるESGの変更を評価 企業のポートフォリオ展開を奨励
(2025年10月23日 聯合報全訳)
3-2 ITRIイノベーション知財フォーラム 企業は無形資産を活用して機会を掌握
(2025年10月23日 聯合報全訳)
3-3 ITRIイノベーション知財フォーラム ITRIが「造山者」としての重要な役割を担う
(2025年10月23日 聯合報全訳)
3-4 ITRIイノベーション知財フォーラム 知財戦略を組み合わせて専利訴訟に対応
(2025年10月23日 聯合報全訳)
3-5 ITRIイノベーション知財フォーラム TSMCが研究開発と法務の戦線を構築
1.智慧局ニュース
(2025.10.13 智慧局ニュース全訳)
1-1 「台湾AI関連発明事例集」の公表
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-61316.html
専利の品質向上とAI関連の特許審査の向上のため、本局は「台湾AI関連発明事例集」を編集し、産・学・研で発明の創作に従事する専門家・学者を「TIPA2025台湾AI関連発明事例集ワークショップ」に招聘し、事例についての討論と交流を行った。また、2025年9月18日に「台湾AI関連発明事例集」をPRする説明会を開催し、対外的に説明を行った。参加した専門家の意見を参考に事例集を修正し、「台湾AI関連発明事例集」を完成させたことを、ここに公表し、周知する。専利出願人の参考となるよう、広くご利用いただきたい。
詳細については以下の添付資料(上記リンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」(中国語))を参照いただきたい。
(2025.10.17 智慧局ニュース全訳)
1-2 国家発明創作賞の専利が2025創博会に集結 台湾産業の国際市場におけるビジネスチャンスの拡大を支援
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/891-63090.html
アジアを代表する技術取引プラットフォームである「2025台湾イノベーション技術博覧会(Taiwan Innotech Expo、TIE、創博会)が10月16日から10月18日まで開催される。優良専利業者のビジネスチャンスの開拓を支援するため、経済部智慧財産局(智慧局)は発明競技エリアに特設した「台湾専利超級站」に2024年「国家発明創作賞」の受賞専利40件を展示して、各界が核心技術を探索し無限の未来を体感できるよう促した。
出展企業の状況を把握するため、智慧局の廖承威・局長は博覧会の開幕初日に各出展技術を一つ一つ巡回し、業者を激励した。今回の創博会は主にイノベーション経済館、未来科学技術館、スマートサステナブル館、発明競技区等の展示エリアに分かれており、「AIクロスドメインイノベーション 知能は未来を動かす」をテーマに、台湾の五大信頼産業とAIや半導体等の優位産業のレベルアップの成果を展示する。産学研の各界からの参観・交流を歓迎する。
智慧局は、発明競技エリアに特設した「台湾専利超級站」に展示された受賞専利の五割を企業が占め、産業界が専利の研究開発を重視して投資していることが十分に示されていること、受賞した専利は医療テクノロジー、スマート製造、車両応用及び生活農業等の四大分野の最新のブレークスルー技術に集中していることを説明した。智慧局は、国家発明創作賞の受賞を奨励することを通じて革新的な思考の促進と産学研の協力の深化を図り、展示とPRにより専利成果と産業応用の調和を継続的に推進して、研究開発技術の国際市場への進出を支援したいと考えている。
今回の国家発明創作賞の受賞者には多くの有名企業が含まれている。例えば緯創資通股份有限公司(WISTRON CORPORATION)は、「歩行補助器」でスマート補助の可能性を示した。英華達股份有限公司(INVENTEC APPLIANCES CORPORATION)は、「輸液方法」と「計測機器」で精密医療の青写真を描いた。上銀科技股份有限公司(HIWIN TECHNOLOGIES CORP.)は、「防塵コーポネントを備えたボールねじ」で精密製造のブレークスルーを示した。鴻海精密工業股份有限公司(HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,)は、「端末装置及び健康管理方法」を研究開発し、情報通信とヘルスケアを融合させ、世界のスマートライフと健康医療の最新動向に呼応した。
民衆に各受賞専利の応用製品分野を理解してもらうため、今回の展示エリアは「シチュエーション展示」と「インタラクティブ体験」を設計の特徴とし、専利技術がどのように生活に応用されるのか、参観者が臨場感を持って直感的に体験できるように案内する。特に言及に値するのは、中強光電股份有限公司(CORETRONIC CORPORATION)と協力して、受賞専利の「投影システム及び投影方法」を今回の展示に組み込んだことである。展示エリアの入口にプロジェクションブレンド技術を展示したほか、画期的なインタラクティブ体験エリアを設けた。遊びを通して学ぶ形式により、参観者に受賞作品の独自の魅力と応用の特徴を深く理解してもらう。
さらに、民衆の参加を増やすため、会場に「専利新聲牆(専利の声ボード)」も設けた。親指を立てた「いいね」のハンドサインをテーマに、各受賞専利を称賛し、イノベーションと研究開発への称賛を象徴している。参観者は、文字や図によって自身のイノベーションに対する考えや意見を表し、紙に記載して残すことができる。受賞専利を展示することで、台湾専利超級站と大衆が相互に交流するプラットフォームを構築したいと考えている。
展覧初日、台湾専利超級站には大勢の人が訪れ、多くの国のバイヤーが積極的に商談し、盛んな交流が行われた。また、政府関係者は、会場を巡回して受賞専利のイノベーション成果を称賛するとともに、今回の展示では台湾のスマート医療、スマート製造と生活農業の実力が際立っているだけでなく、受賞専利の国際的な市場開拓を支援する重要な契機にもなっていることを強調した。智慧局は、「台湾専利超級站」の国家発明創作賞の受賞専利の集中展示を通じて技術研究開発、産業応用、国際交流の結び付けに成功しており、台湾のイノベーションとともに知性と持続可能性が発展する青写真を描写していると述べた。今後も専利成果の実用化を推進し分野横断的な協力を深化して、産業のレベルアップをもたらし、専利による経済成長と社会進歩という中核的使命を実践していく。
今回の国家発明創作賞の展示イベントは10月18日まで開催中である。この機会を見逃がさずにご参加いただきたい。参観事前登録(https://www.taiwantradeshows.com.tw/zh_TW/login/p/index.html?syid=IN2025)により優先入場が可能。会場において近距離で専利イノベーションの魅力を感じ、世界の産業のトレンドに接していただきたい。
(2025.10.23 智慧局ニュース全訳)
1-3 「商標登録出願の方式審査基準」改訂草案
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/890-63134.html
商標法は2024年5月1日に改正施行され、商標登録出願人として適格な主体(商19Ⅲ)、商標代理人が具備すべき資格条件(商6Ⅱ、Ⅲ)が追加され、商標登録出願の加速審査メカニズム(商19Ⅷ)等が新設された。同法の施行細則では、出願人が法に基づき設立した非法人団体又は商業登記法に基づき登記した事業者である場合について、設立登記又はその他の設立に関する証明書類(商施2Ⅱ、12)を添付すべき点や、商標の名称の様式(商施13Ⅱ)等に関する条文が追加され、併せて改正施行された。そこで、商標法及びその施行細則の改正施行に合わせ、「商標登録出願の方式審査基準」の改訂草案を作成した。改訂ポイントは以下のとおり。
一、 パートナー組織、法に基づき設立した非法人団体及び商標登記法に基づき登記した商業者等が適格な商標登録出願人である点、出願人の署名方式等の手続規定について、追加・修正する。
二、 商標登録出願の加速審査の受理要件を新設し、振込、口座振替、クレジットカード等の多様な手数料納付方法を新設する。
三、 代理人が具備すべき資格と代理人の変更の手数料の納付規定を新設する。
四、 願書に記載すべき事項、商標名称は商標図形の内容と整合しなければならない点、優先権を主張できる出願人の資格、優先権の証明書類等の手続規定を追加・修正する。
五、 商標図形にグリーン用語や機能性を有する部分が含まれる場合、並存登録同意書発行の署名方式、添付すべき証明書類等の、実体審査に関する手続処理規定を追加・修正する。
六、 方式審査の実務ニーズに関連した審査原則を追加・修正し、各界の参考として提供する。
今回の改訂草案は、下線を付した形式で提供する。11月5日までに各界の貴重なご意見をお待ちしている(意見反映E-mail: 商標権組ipotr@tipo.gov.tw)。本局は意見をまとめ、修正内容を検討・統合し、適切な日に公布・実施を行う。
※商標登録出願の方式審査基準の改訂草案(中国語PDF)は上記リンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能。
(2025.10.23 智慧局ニュース全訳)
1-4 智慧局が各国のAI専利技術ポートフォリオ分析を公開
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/891-63091.html
人工知能(AI)技術によって世界が変化している中、政府は各国のAI技術の発展に引き続き注目している。企業がAI技術の研究開発と応用を強化してAI専利技術のポートフォリオを向上させることを奨励するため、智慧局は、AI専利の技術全体とAIハードウェア(AI hardware)、知識処理(Knowledge processing)、機械学習(Machine learning)、進化的計算(Evolutionary computation) 、マシンビジョン(Vision)、自然言語処理(Natural language processing)、スピーチ(Speech)及び計画と統制(Planning and control)の8項目の技術について、智慧局が構築したグローバル特許検索システム(GPSS)を使用してAI専利出願の近年の動向分析を行い、調査結果を公表した。AIの今後の潜在的な発展のチャンスと課題について企業が理解を深めるための一助となることを期待している。
AIコア専利を各国が追い求める AI応用研究開発に積極的にリソースを投入
今年(2025年)6月に日本が公布した「AI関連発明の出願状況調査」は、各国のAI専利技術の競争状況を描き出している。中国はAI専利全体の技術における出願件数がその他の国を大きく上回る。米国は莫大な研究開発投資と資金支援を通じて、画像処理、自然言語処理、大規模言語モデル(LLM)等のAIコア専利で優位な地位を保っているが、2020年から増加が鈍化しており、報告では、優位な技術を営業秘密として保護する「クローズ戦略」を一部の企業が採用している可能性があると指摘している。韓国のAI専利出願は安定的に成長し、スマート家電、医用画像、小売業への応用に集中している。日本のAI専利は近年緩やかに減少傾向で、診断及び医用画像への応用に重点を置いている。
機械学習とマシンビジョンがAI専利ポートフォリオにおけるホットな分野
智慧局も同様の結果を確認した。世界のAI専利出願動向分析によると、AI技術全体の出願件数は直近10年で大幅に増加し、2020年には3万件を突破した。技術分野別では、機械学習とマシンビジョンが各国のAI専利出願のホットな技術となっている。台湾では、全体の出願件数動向は世界と同様で、2017年から大幅に成長を続け、2021年は2014年から9倍近く増加しており、機械学習とマシンビジョンの出願が大きな割合を占めていることも同様である。
統計期間内のAIの各技術分野の専利出願件数を合計すると、機械学習とマシンビジョンがAIの技術分野では突出してホットな分野であり、世界全体で見ても、台湾で見ても、両分野の合計は過半数を超えている。全体的にみると、AI技術は成熟するにつれて実験室を離れ各業界・各業種に浸透しており、今後も引き続き人類の生活に深く入り込み、人類のニーズを満たして問題解決を支援していくだろう。
台湾AI専利出願は引き続き増加 重要性はますます高まる
AI専利の技術全体及び機械学習とマシンビジョンの両技術分野の専利出願の上位10特許庁はほぼ同様で、1位から3位、6位、7位の特許庁は完全に同一である。台湾は、AI専利の技術全体の出願件数では9位にランクインし、機械学習及びマシンビジョンでは、それぞれ8位、9位にランクインしており、世界のAI専利ポートフォリオにおいて台湾も重要な選択肢になっている。台湾におけるAI専利出願件数は近年増加し続けており、台湾におけるAI専利ポートフォリオの重要性は間違いなくますます高まると考えられる。
世界のAI専利出願首位はIBM 台湾のAI専利出願首位は鴻海
世界のAI専利出願に占める各国の出願人のうち、米国出願人は1位、3位、5位、9位、10位の5社、中国人出願人は2位、6位、7位の3社がランクインしており、両国のAI専利技術が高い総合的な競争力を有することが明らかとなった。台湾の場合は、鴻海(FOXCONN)、工業技術研究院(ITRI、工研院)、中華電信、資訊工業策進会(III、資策会)及び英業達股份有限公司(INVENTEC CORPORATION)といった台湾の主要な5の企業又は法人が、それぞれ、1位、2位、4位、7位、9位にランクインした。台湾企業又は研究機関がAI専利技術に相当に注目して投資していることが示されており、台湾産業が今後も持続的に邁進する力となり得る。
機械学習の各国出願人を見ると、米国人出願人は1位、3位、4位、7位、9位、10位の6社であった。1位の米国IBMと2位の間には顕著な差があり、米国はAIモデル開発及び計算能力において依然として主導的地位にある。台湾の場合、台湾の主要な出願人は1位の工研院、6位の中華電信、8位の鴻海であった。工研院、中華電信及び鴻海は近年積極的にAI技術の研究開発に投資しており、その成果がどんどん顕著になっていることがわかる。
マシンビジョンの各国の出願人を見ると、中国人出願人は9社で、出願件数は首位であった。韓国は4位にランクインした。台湾の場合は、鴻海、工研院、中華電信、国立陽明交通大学及び資策会といった台湾の主要な5の企業又は法人の出願人が、それぞれ1位、2位、6位、7位、8位となった。ハードウェア機能のマシンビジョン分野が特に重視されており、台湾の今後の重要な発展分野であることが示されている。
引き続き研究開発を行い台湾の技術的優位性を強化
台湾は世界をリードする半導体製造能力及び良質なシステムインテグレーションサービス能力を有している。輝達(NVIDIA Corporation)の黄仁勳・CEOの講演の背後には、半導体製造、システムアセンブリ及びインテグレーション、パッケージングとテスト、部品等の分野を含むパートナーリストが掲げられ、台湾が世界のAIサプライヤーチェーンの重要な地位にあることが示されている。政府は半導体、AI、軍事産業、セキュリティ、次世代通信の「5大信頼産業」を未来の重要投資産業に挙げている。台湾の半導体産業の優位性を引き続き推進・強化するだけでなく、各業種への応用のニーズによってAIスマートアプリの高付加価値化を促進する。また、AI技術を基礎として、新しい産業チェーンと生態系を構築し、産業のAI化とAIの産業化を促進し、台湾のデジタルトランスメーションと産業高度化を加速させる。
AI専利出願ガイドを公表
智慧局は、AIトレンドの中でAI関連の専利審査能力を絶えず向上させており、2025年に編集した「台湾AI関連の発明事例集」では、AI関連発明事例を通じて、台湾のAI関連発明の各専利要件の審査基準について深く分析した。この事例集は、2025年6月20日に智慧局が産・学・研で発明創作に従事している専門家・学者を招聘して開催した「台湾のAI関連発明事例集ワークショップ」において討論・意見交換が行われて修正意見も出されたものであり、2025年9月18日の説明会にて産業界に対してPRされた。産業界がAI関連発明の審査実務を更に理解し、AIイノベーション技術の専利明細書の品質を向上させ、グローバル専利のポートフォリオを強化することに寄与する。
(2025.10.27 智慧局ニュース全訳)
1-5 「特許及び意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業要点」改訂草案の予告
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-63159.html
一、 実体審査繰り延べ制度を出願人にとってさらに全面的かつ便利に利用できるものにして、専利ポートフォリオ及び専利の商品化の準備がスムーズに進むようにするため、本局は、「特許及び意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業要点」を改訂し、特許及び意匠出願の審査を繰り延べることができる期限を緩和する。また、実体審査繰り延べ制度を濫用することで審査手続が遅延しないよう、実体審査繰り延べに関する制限を新設する。改訂ポイントは以下のとおり:
(一) 特許出願の実体審査繰り延べ請求は1回限りと明記する。実体審査の繰り延べを請求することができる期間の期限と審査を続行する期日は、現行の3年から5年へ緩和する。(修正後の規定第2点、第4点)
(二) 意匠出願の実体審査繰り延べ請求は1回限りと明記する。実体審査の繰り延べを請求することができる期間の期限と審査を続行する期日は、現行の1年から2年に緩和する。(修正後の規定第3点、第4点)
(三) 専利主務官庁が実体審査の繰り延べ請求を受理しないか、実体審査繰り延べの手続を終了することができる根拠を、明記する。(修正後の規定第7点)
二、 上記の改訂草案の内容について意見や修正提案がある場合、14日以内に以下までご連絡いただきたい。
(一) 担当部署:智慧財産局専利争議審査組
(二) 住所:台北市辛亥路二段185号3F
(三) 担当者及び電話:葉哲維、(02)2376-7638
(四) E-mail:yeh20354@tipo.gov.tw
※上記改訂に関する説明と新旧対照表(中国語PDF)については、上記リンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能。
(2025.10.29 智慧局ニュース全訳)
1-6 標準必須特許(SEP)サービスプラットフォームを多いにご利用いただきたい
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-63163.html
5G、人工知能(AI)及びIoT(モノのインターネット)技術の急速な発展に伴い、標準必須特許(Standard Essential Patent, SEP)は、世界的な産業競争においてますます重要な役割を果たしている。SEPとは技術標準において使用必須となる特許のことであり、これらの標準に準拠した製品やサービスを生産する企業は必ずその特許のライセンスを取得する必要がある。そのため、SEPは、国際貿易、技術提携、ライセンス交渉の重要な基盤となり、グローバルサプライチェーンにおける企業の競争力にも影響を与える。
台湾産業がSEPに関する理解を深め、主要市場における政策動向や専利ポートフォリオの動向を把握できるよう支援するため、SEPサービスプラットフォームを正式に開設した。プラットフォームは、「SEPとは何か」、「SEPと標準化団体」、「SEP専利ライセンス」、「SEP紛争・訴訟」、「SEP動向」、「参考情報」の6つの主要テーマを網羅している。体系的な知識フレームワークとデータの集積を通じて、主要な国際標準化団体(例:ETSI、ITU、IEEE)の知的財産政策を統合し、不定期に世界のSEP最新情報を公開して、企業が国際的な動向を把握できるよう支援する。
SEPサービスプラットフォームは、産業界のSEP問題への全面的対応力を強化し、技術標準と知的財産戦略の協調・発展を促進するために設立された。今後、プラットフォームのコンテンツを拡充し、台湾企業が世界的な標準化競争において更に強靭な知的財産ポートフォリオを構築できるように支援していく。
プラットフォームのリンク:https://www.tipo.gov.tw/tw/patents/1021.html
2.知的財産権紛争
(2025.10.20 聯合報全訳)
2-1 小雲電視盒で違法映画・ドラマ鑑賞 8,000台販売で権利侵害11億台湾元 警察は12人を逮捕・送検
桃園市の張という男らは、中国からセットトップボックス(STB)を輸入し、「小雲電視盒(小雲STB)」という名前で販売していた。張らはユーザーに違法ソフトウエアをダウンロードするよう指導し、権利侵害の映画・ドラマコンテンツを鑑賞させていた。2020年の営業開始から現在までに少なくとも8,000台を販売しており、1台の利益を3,000台湾元(約14,900円)として推算すると不法に取得した利益は2,400万台湾元(約1億1,880万円)を超える。刑事局は2年前に捜査網で犯人を特定し、事件に関与する張ら12人を次々と逮捕し、著作権法違反等の罪で送検した。権利者による鑑定後、権利侵害市場価格は11億台湾元(約54億4,700万円)を超えると推定された。検察は先日捜査を終結して起訴した。
刑事局知財大隊偵二隊は2023年にネットショップやSNSソフトの情報収集をしていた際、張(男、40歳)らがマンション内に会社を設立後、権利侵害の映画・ドラマコンテンツの鑑賞ができる「小雲電視盒SVI CLOUD」を1台約2,000台湾元(約9,900円)で中国から輸入し、5,000台湾元(約24,800円)でネットショップや店頭で販売していることを突き止めた。2020年の営業開始から取締りまでの間に少なくとも8,000台が販売され、不法に取得された利益は2,400万台湾元(約1億1,880万円)を超えた。
非凡傳播股份有限公司等15社のテレビ局、日本の一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)、創意與娛樂聯盟(Alliance for Creativity and Entertainment, ACE)、美國電影協會(Motion Picture Association, MPA)から委任された中華民国衛星広播電視事業商業同業公会(STBA)が告訴し、桃園地検署が事件の調査を指揮した。
検察・警察は一昨年8月、昨年8月及び今年4月の捜査網で犯人を追い詰めた。新北市中和区、桃園市桃園区、台中市西屯区及び南区等を捜索し、事件に関与した張ら12人を逮捕し、PC本体、モニター、パソコン、STB455台、保証書、納品書等の証拠物品を押収した。警察による取り調べの後、著作権法違反等の罪で、検察の捜査へ移送された。また権利者が算定した張らによる権利侵害の市場価格は、11億台湾元(約54億4,700万円)に達すると推定された。
警察側はSTBの専用APP「YOGURTTV」に対して別途分析を進め、STBの接続ログインのドメインを特定した。裁判所に強制執行を申し立て、ドメインの解析とブロックを行った。ソフトウエアについても継続的に監視を行い、違法STBと権利侵害を阻止する。
桃園地検署は先日捜査を終結し、著作権法違反等の罪で張ら12人を起訴した。
3.その他一般
(2025.10.5 中国時報第A5面全訳)
3-1 グリーン商標実らず 出願件数はこの10年で最少2024年は1万件に満たず エネルギー分野の減少が最多 智慧局はコーポレートガバナンスにおけるESGの変更を評価 企業のポートフォリオ展開を奨励
持続可能な環境で一時脚光を浴びた「グリーン商標」の魅力が後退してきたようだ。経済部智慧財産局(智慧局)の最新の10年間のグリーン商標出願統計によると、出願件数の累計は12万件を超えているものの、直近2年は減少傾向がみられ、2024年は1万件未満でピーク時に比べ36%減少し、件数、割合ともに直近10年間の最低を記録した。
グリーン商標が衰退傾向にあることについて、智慧局の廖承威・局長は、2025年にコーポレートガバナンスがESGで評価されるように変更され、全上場企業がサステナビリティレポートを作成するため、グリーン商標は必ずプラス評価になり、企業の注目と展開が促進されると強調した。
いわゆる「グリーン商標」とは、エネルギー製品、運輸、省エネ、リサイクル利用、汚染防止、廃棄物管理、農業、環境保護意識、気候変動といった9大分野にわたるグリーン商品又はサービスを指す。
智慧局がまとめた2015年から2024年の間の台湾におけるグリーン商標出願件数は合計12万5,781件であり、商標件数の14.3%を占める。つまり、約7件のうち1件はグリーン商標に属することになる。そのうち6割超が台湾内からの出願で、外国からの出願は4割に満たない。
全世界が2050年のネットゼロ排出目標に向かっているところであるが、この調査は一つの懸念を浮き彫りにしている。2015年のグリーン商標出願件数は1万812件であったがその後増加し、2020年のピークには1万5,108件に達した。続く3年間はいずれも高原期(プラトー期)を維持した。しかし2023年に突如1万1,317件に急落し、2024年は更に9,751件まで減少し、初めて1万件を割り込み、全体に占める割合も10.7%となった。ピークの年と比較して36%の大幅減少となり、件数、割合ともに直近10年で最低となった。
さらに、この10年間の商標出願総件数の平均成長率が1.5%であるのに対し、グリーン商標の成長率はマイナス0.42%であり、勢いの衰えが懸念材料となっている。ただし、廖承威・局長は、直近10年の台湾グリーン商標出願件数には確かに増減の起伏があるが、長期的に観察すると全体的な傾向としては概ね安定して成長していると述べた。
台湾グリーン商標の10年間の出願件数を分析すると、上位3位は順に「省エネ」、「汚染防止」、「エネルギー製品」であり、三者の合計で8割近くを占めている。これはEUの出願分野に似ている。更に詳細に見ると、「省エネ」、「太陽エネルギー」、「空気浄化」の3カテゴリーが最も多いが、昨年は「電力貯蔵」が3位に浮上し、空気浄化のカテゴリーを追い越した。
注目に値するのは、2024年のグリーン商標の減少と、エネルギー製品の昨年の出願件数がこの10年での最低を記録したことが、関連している点である。しかし、環境保護意識と気候変動の両分野は逆に成長しており、後者の年成長率は90%に達した。
国別に見ると、台湾における登録の統計であることから、2015年から2024年の最大の出願国は自ずと台湾となり、中国と日本がそれぞれ2位と3位となり、その後に米国、香港、韓国が続いた。日本はグリーン商標の9大分野のうち8分野で上位3位に入り、平均で第3位となってケイマン諸島を追い抜いており、積極的な努力と追い上げが見られる。しかし、2024年の台湾におけるグリーン商標はそれほど増加していない。これは、各国の占める割合が若干低下したことにも関係しており、なかでもドイツの減少が最も多かった。
(2025.10.23 聯合報全訳)
3-2 ITRIイノベーション知財フォーラム 企業は無形資産を活用して機会を掌握
世界経済はすでに「無形資産経済時代」に突入している。工業技術研究院(ITRI)のシニア副総裁兼法務長の王鵬瑜氏は、無形資産が企業総価値に占める割合が急速に高まっており、もはや単なる技術の防護ツールにとどまらず、イノベーションと資本市場との結びつきを牽引する重要な原動力となっていると指摘した。王氏は、台湾は豊富なイノベーションエネルギーを有しており、企業が知財戦略と無形資産を活用し、グローバル競争で優位に立つことができると強調した。
ITRIは9月15日に「2025 ITRI Innovation Week」シリーズイベントを開催し、第1セッションの「知財イノベーション1:変化する世界における知的財産権の発展と戦略」フォーラムでは、王鵬瑜氏が開会の挨拶を行い、経済部智慧財産局(智慧局)の廖承威・局長、台湾積体電路製造(TSMC)の副法務長兼首席知財弁護士である陳碧莉氏等の産官界の専門家が特別講演を行った。また、最後の座談会である「資本なき資本主義:無形資産の価値」では、ITRIのシニア副総裁兼法務長の王鵬瑜氏がモデレーターを務め、智慧局の廖承威・局長、TSMCの副法務長兼首席知財弁護士である陳碧莉氏、そして原見精機(Touché Solutions)の蘇瑞堯・董事長が、産業、政府、研究機関分野の観点から無形資産の価値とポートフォリオ展開についての考えを述べ、参加者にとって興味深い分野横断型の対話となった。
廖局長は国際研究機関の報告書を引用し、無形資産投資がすでに世界の経済発展の重要な原動力となっていると指摘した。データによると、1996年以降無形資産投資は継続的に増加しており、2009年には無形資産投資のGDPに占める割合が初めて有形資産投資のそれを上回り、その差は年々拡大している。
廖局長は、無形資産融資の核心は「テクノロジー市場と資本市場の橋渡し役」になることだと指摘した。信用保証基金はすでに無形資産をその重点事業に組み込み、最大100億台湾元(約500億円)の資金を準備しており、これは専利の活性化と活用に大きく役立つ。
また、廖局長は、海外の経験を例に挙げて、各国の政策と無形資産が企業に与える影響について説明した。例えば、日本はIPをコーポレートガバナンスに組み入れ、企業経営者が無形資産をより重視するよう促している。韓国の研究データによると、専利を保有するスタートアップ企業は企業価値を大幅に高められることが明らかとなっている。廖局長は、智慧局が国際舞台における国際協力に積極的に参加し、台湾企業に継続的にサービスを提供し、国際的な知財問題への対応を支援していくとの考えを述べた。
陳碧莉氏は、知財権が変動する現在の状況において、特に「パテントトロール」として知られる非実践的事業体(NPE)によって、専利はイノベーションを促進する制度から単なるマネーゲームの駒に堕落してしまったと考えている。陳氏は米国のデータを引用し、専利訴訟における原告の最大70%がNPEであり、賠償額は数十億米ドルに達することもあり、非常に収益性の高い産業チェーンを生み出していると指摘した。
陳碧莉氏は、TSMCがNPEの問題に立ち向かう戦略は、単独で戦うのではなく協同作戦を採用することであると述べた。陳碧莉氏は、企業が他の企業と力を合わせてNPE訴訟に対抗する訴訟防衛連盟を構築する等の、いくつかの予防策と解決策を挙げた。
さらに陳碧莉氏は、個々の企業に課される高額なロイヤリティを回避するために、共同購入により低価格で大量の専利ライセンスを取得する案も考えられると提案した。もう一つの重要な戦略はLOT(License on Transfer)契約である。TSMCとIntelは以前、いずれかの企業の専利がNPE(非独占的実体)の手に渡った場合、相手方が自動的にライセンスを取得することを規定して相互防衛メカニズムを構築する、LOT契約を締結した。両社はまた、常に臨戦態勢で競合他社を監視し、専利が安易に利用されないようにしている。
陳碧莉氏は、専利は数量だけでなく、その品質と強度により価値があると強調した。企業市民として、TSMCは国際組織に積極的に参加して意見を述べ、NPE 現象を抑制するための法改正を推進していく。
陳碧莉氏はまた、ITRIの知財戦略を高く評価し、ITRIは営利目的ではなく技術移転に重点を置き、産業界がスタートアップ企業を設立し、知財の道を歩み始めることを支援していると指摘した。
蘇瑞堯・董事長は、自身の経験を例に挙げ、ITRIの技術者がどのように研究開発成果を価値ある無形資産に転換しているのかについて紹介した。蘇瑞堯・董事長は、ITRIの環境のおかげで、研究開発の早い段階で専門的な知財権の概念と戦略的思考を構築することができたと述べた。蘇瑞堯・董事長は、「触覚センサー技術を開発していたとき、『営業秘密』と『公開専利』を区別することの重要性を認識した。」として、ITRI技術移転法律センターの支援により消極的な思考から積極的な専利戦略へ転換することができたと述べた。
(2025.10.23 聯合報全訳)
3-3 ITRIイノベーション知財フォーラム ITRIが「造山者」としての重要な役割を担う
工業技術研究院(ITRI)のシニア副総裁兼法務長の王鵬瑜氏は、知的財産はイノベーションを推進する鍵となる原動力であると述べ、ITRIは技術研究開発のパイオニアであるだけでなく、台湾産業が「造山者」となるために国際市場に参入することを支援する重要な推進力でもあると述べた。
王鵬瑜氏は、ITRIが15日に開催した「知財イノベーション1:変化する世界における知的財産権の発展と戦略」フォーラムに出席し、開会の挨拶にて上記の見解を示した。
王氏は、ITRIは、産業界よりもはるかに早くから知的財産権の重要性を認識し、20年以上前に研究開発成果の知的財産権化の重要性を確立し、「知財ウィーク」を創設して、職員の知的財産保護意識を高めてきたと指摘した。
王氏は、ドキュメンタリー映画「造山者(A Chip Odyssey)」を例に挙げ、台湾半導体産業の成功は、ITRIが0から1まで重要な役割を果たしただけでなく、TSMCなどの業界パートナーによる相乗効果でポートフォリオを拡大にしたことも起因しており、中でも知的財産権は、台湾の半導体が世界で優位に立つための武器になると強調した。
王氏は、実例を挙げて強固な知的財産保護システムが産業のリーダーシップの基盤であることを説明した。ITRIは当初、半導体の研究開発に投資しており、米国ラジオ会社(RCA)と締結した技術移転契約では、「技術移転指導」(契約の名称)だけでなく、人材育成にも重点が置かれていた。この技術移転と人材育成の契約は、台湾の半導体産業にとって重要な基盤となり、ITRIの知的財産戦略における研究開発のDNAを確立した。
国際専利訴訟の課題に対処するため、王鵬宇氏はITRIの対応戦略について説明した。王鵬宇氏は、ITRIは早くから台湾産業が国際化していく中で直面するであろう専利訴訟を予測し、AIビッグデータ分析を活用して数万件以上の価値の低い専利を迅速に抽出して排除して、台湾企業の対応コストを大幅に削減したと説明した。
ITRIはさらに9年連続で「Top 100 Global Innovators」を受賞しており、専利ポートフォリオ構築の実力を証明している。王氏は、ITRIの専利のほとんどは先進的かつ最先端の技術で、出願成功率は80%と世界でもトップクラスであり、これは、チームの的確なテーマ選択と常に的を射た記載戦略によるものであり、「小李飛刀(武侠小説に登場する百発百中の必殺投げナイフ)」に例えられていると述べた。
また、王氏は、TSMCの副法務長兼知的財産権弁護士である陳碧莉氏に、特別な感謝の意を表した。王鵬宇氏は、台湾産業界が国際的なパテントトロールの脅威に直面した際、陳碧莉氏の助言がきっかけで、真正面から対抗する連盟を結成したことを振り返った。この戦略は、パテントトロールへの効果的な対処になっただけでなく、国際社会に台湾メーカーの知的財産権尊重のコミットメントを示すこととなり、台湾専利連盟の模範となった。
今回のフォーラムのもう一つのハイライトは、成功したスタートアップ企業である原見精機(Touché Solutions)の蘇瑞堯・董事長による紹介である。王鵬瑜氏は、蘇瑞堯・董事長を例に挙げ、ITRIの職員に対し、エンジニアとしてキャリアをスタートする段階から市場志向のマインドセットを育み、研究開発成果と知的財産戦略を結び付けるよう、奨励した。王氏は、蘇瑞堯・董事長がITRI在籍中に起業家精神の確固たる基盤を築き、原見精機が毎年優れた研究開発成果を達成していることを称賛した。今回のイベントでは、スタートアップ企業が無形資産を活用して市場で生き残るための方法にも焦点が当てられた。蘇瑞堯・董事長は自身の経験を共有し、ITRIとスタートアップ企業の知財バリューの違いを分析し、台湾のスタートアップ企業にとって貴重な知見を提供した。
智慧財産局の廖承威・局長の出席は、フォーラムに公式の視点と支援をもたらした。王氏は廖局長を「たたき上げの親しみやすい局長」と評し、科長時代から知的財産権業務に注力し、率先的に取り組んでおり、専門性と実務性を兼ね備えていると述べた。
(2025.10.23 聯合報全訳)
3-4 ITRIイノベーション知財フォーラム 知財戦略を組み合わせて専利訴訟に対応
経済部智慧財産局(智慧局)の廖承威・局長は、人口当たりで計算すると、米国特許商標庁(USPTO)における台湾の専利獲得力はほぼ「世界一」であり、台湾の豊富な研究開発力が十分に実証されており、取引価値と防御力を備えた知的財産無形資産へ効果的に転換されていると述べた。
廖局長は15日、工業技術研究院(ITRI)が開催した「知財イノベーション1:変化する世界における知的財産権の発展と戦略」フォーラムに出席し、「国際知的財産権の発展動向の観察と分析」と題した特別講演を行った。まず、台湾における専利の平均審査期間が、ピーク時の46.7か月から約14か月にまで大幅に短縮され、イノベーション成果の迅速な利用が促進されていると指摘した。また、各国が米国で取得した専利の強度を「人口100万人当たり」で評価すると、台湾の現在人口2,350万人に対し、2023年の米国特許商標庁(USPTO)における専利取得件数は870件余りと900件近くの規模になっており、世界トップレベルである。
技術ロードマップを見ると、半導体は台湾にとって間違いなく最重要分野である。台湾内からの専利出願の大部分は長年IC製造・製造装置が占めており、海外から台湾への出願も半導体産業に集中している。韓国を例に挙げると、韓国から台湾への出願総件数の約3分の1が半導体分野である。台湾がグローバルサプライチェーンにおいて重要な地位を占めていることは明らかである。廖局長は、専利は産業発展の最先端の指標であり、ホットな分野では専利が急速に蓄積されることが多く、半導体は正に現在最も顕著な「ホットスポット」であると指摘した。
半導体産業の他、スマート医療も徐々に台湾の第二本目の成長曲線を形成している。台湾は情報通信(ICT)技術において優位であり、医療とエンジニアリングという分野間の橋渡しが徐々に進んでいるところである。
医師とエンジニアリングチームの連携により、医療機器、映像、データシステムは、臨床のニーズにさらに適合するようになる。廖局長は、「医療界が研究開発の最前線に参入することで、製品をより正確に臨床ニーズ(オンデマンド)に適合したものにできる」と述べ、製品の市場化と成功率を急速に向上させ、各分野の研究開発チームが継続的に努力し続ける価値があると指摘した。
また廖局長は、国際的な知的財産の動向を分析し、米国は台湾企業の最大の輸出市場であるが、近年審査待ち件数が上昇し続けており、USPTOは人員増とプロセスの改善を推進していると述べた。
一方で、専利審判・上訴委員会(Patent Trial and Appeal Board,PTAB)の専利登録査定後の当事者系レビュー(Inter Partes Review,IPR)について、審理手続きの開始要件や審理実務が変更され、今年上半期には手続き開始の拒否(procedural denial)が大幅に増加し、一部の企業は代替手段として査定系再審査手続(ex parte reexamination)を採用している。この傾向は、台湾企業にとって、「専利侵害訴訟における無効抗弁」、「複審手続き」、「再審査手続き」な等の専利無効化手段を活用する戦略を慎重にし、必要に応じて複数の戦略を組み合わせて事前に最適な計画を策定する必要があることを示唆している。
(2025.10.23 聯合報全訳)
3-5 ITRIイノベーション知財フォーラム TSMCが研究開発と法務の戦線を構築
台湾積体電路製造(TSMC)の副法務長兼首席知財弁護士である陳碧莉氏は、TSMCの専利戦略は、技術的優位性の保護だけでなく、よりグローバルな運営の自由度を確保し、それと同時に、イノベーションを起点として優れたアイデアを戦える資産へと転換し、その後、管轄権、米国における特許無効審判手続(IPR)、連盟との提携を利用して、研究開発から法務に至るまでの一貫した戦線を構築していると述べた。
陳碧莉氏は工業技術研究院(ITRI)が15日に開催した「知財イノベーション1:変化する世界における知的財産権の発展と戦略」フォーラムに出席し、「グローバル企業の知的財産管理戦略への新アプローチ」と題した特別講演を行った。TSMCの最近の専利攻防の実務経験を通じ、体系的なイノベーションと戦略展開によりグローバルな事業運営の自由度とリスク許容度を高めていく方法について、共有した。
陳碧莉氏は冒頭で、「イノベーションがなければ消失するテクノロジー時代」と強調した。TSMCの2024年の研究開発組織は1万人を超え、研究開発費用は64億米ドルに達した。専利を論文に先行させ、「技術の先行指標」としている。7nm、5nm、3nm、そして今年の2nmに至るまで、TSMCは量産スピードにおいてリードし続けているが、これは、一瞬のひらめきではなく「優れたアイデア」を「戦える資産」へと育てる包括的な戦略によって推進されている。
第一段階は、発明の「複数経路からの発掘」である。当社は、年次アイデア賞、組織横断的な非公開ブレインストーミング、営業秘密データベースとの照合などを通じて、出願可能な対象を積極的に特定する。法務部門は「発明提案書」の作成をサポートし、親専利(parent case)が最初から拡張可能な厚みを持つようにして、その後に「子専利、孫専利」が派生して包括的な専利ファミリーネットワークを構築できるようにする。
第二段階は「階層型のガバナンス」である。陳氏は、社内では4つの重要要素評価レベルを用いて、明細書の密度に対する要求、特許請求項の範囲、国別出願戦略を決定していることに言及した。優先度の高い案件は、専利取得の登録前、審査中、登録後にいずれも再評価され、20年間という専利存続期間を「定期的レビューし」、運用上の戦力が最も高い20%のコア資産にリソースを集中させることができる。
第三段階は「ポートフォリオ管理」である。陳氏は、TSMCは膨大な半導体製造専利ポートフォリオを保有しているものの、業界横断型の紛争に直面しているため、非製造分野における「キラー」専利を買い取って活用可能な保有量と「専利の賞味期間」を毎年維持することが必要だと説明した。2014年から2025年にかけて、全体構造に占めるLicensed、LOT(License on Transfer)及びAcquisitionの区分が明らかに拡大し、市場ベースの専利リスク管理の有効性が実証されている。
非実施主体(NPE)、通称「パテントトロール」の問題について、陳氏は、「我々を彼らのATMにはさせない」と述べた。
同社の戦略は、まず米国の特許無効手続(IPR)を利用して相手方のコア専利を無効にすることである。同社の請求したIPRの受理率は約94%であり、「一旦受理されれば、相手方の専利の無効化は100%成功する」と述べた。
また、彼女は、最近状況が劇的に変化し、今年2月から3月にかけて米国特許庁は裁量的拒否(discretionary denial)を理由に多くのIPR申請を拒否しており、政策の調整を求めるためにチームが精力的に取り組んでいるところであると認めた。
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