発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.392)
発行年月日:2025年9月1日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2025年8月13日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2025年グリーン商標報告書の公表 統一企業が際立つ
(2025年8月13日 智慧局ニュース全訳)
1-2 台湾のグリーン商標登録出願件数の動向理解のため、2024年の「台湾における直近10年のグリーン商標産業の比較分析」に引き続き、最新年度の統計データを追加し研究・分析を行い、「台湾のグリーン商標産業ポートフォリオ分析-2025最新報告」を作成した。ご参考にしていただきたい。
(2025年8月25日 智慧局ニュース全訳)
1-3 特許再審査の加速審査(AEPRe)の成果は好評、本方案の試行を継続する!
2. 知的財産権紛争
(2025年8月18日 聯合報全訳)
2-1 TSMCの2ナノ漏洩事件 最高検察署:決定的な証拠があれば捜査を迅速に進める
(2025年8月25日 聯合報全訳)
2-2 大手製紙工場の栄成と永豊余の人材引き抜き争議 研究開発責任者が営業秘密違反で起訴
(2025年8月27日 中国時報第A9面全訳)
2-3 嘉義 金居開発に内部スパイ 5人の幹部が起訴、指名手配される
(2025年8月28日 聯合報第A1面全訳)
2-4 TSMCの2ナノ漏洩の3人に重刑を求刑 TSMC:ゼロトレランスで徹底追及の構え
3. 模倣品関連
(2025年8月14日 刑事警察局ニュース全訳)
3-1 日本の「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構」が刑事局を表敬訪問 海賊版の共同撲滅を宣言 知的財産権保護のために協力
(2025年8月14日 聯合報全訳)
3-2 「天堂」のプレイヤーがアイテムの価格差の不正を発見 警察は4人の容疑者を逮捕、15年間の権利侵害市場価格は50億台湾元超
1.智慧局ニュース
(2025.08.13 智慧局ニュース全訳)
1-1 2025年グリーン商標報告書の公表 統一企業が際立つ
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/891-55357.html
※図については智慧局ニュース原文(上記URL)を参照。
経済部智慧財産局は台湾のグリーン商標登録の出願動向に引き続き注目している。2024年の「台湾における直近10年のグリーン商標産業の比較分析」の報告書に続いて、本年(2025年)も最新年度の統計データを追加して研究を行い、新年度の「台湾のグリーン商標産業ポートフォリオ分析-2025最新報告」を完成させた。2015年から2024年までの台湾のグリーン商標登録出願の指定商品、役務の内容と傾向を分析しており、国際的な気候変動及びネットゼロ排出戦略に対応する企業がグリーン産業の商標ポートフォリオを計画する際の参考のために提供する。報告書では、台湾におけるグリーン商標が、主に統一企業、米国アップル及びケイマン諸島登記のアリババグループ・ホールディングのものであることが示されている。
分析報告書によると、直近10年で台湾のグリーン商標が全体の商標出願総数に占める割合は約14.30%で、前期(2015年~2017年)は平均約13.75%、中期(2018年~2021年)は平均約15.57%、後期(2022年~2024年)は平均約13.03%であり、後期のグリーン商標の件数と割合は、変動しながらも減少傾向にあるが、2024年の下げ幅は緩やかになった。長期的にみると、出願件数の大部分を「省エネ」、「汚染防止」、「エネルギー製品」が占め、合計でグリーン商標出願件数の8割近くとなっており、これらの三大分野がグリーン産業の中心となっていることが分かる。
9分野における上位3出願人のランキング(添付図3)には統一企業、米国アップル及びアリババグループ・ホールディングが何度も登場すると、智慧局は説明した。「エネルギー製品」、「省エネ」、「廃棄物管理」の三大分野の上位2位は、統一企業、アップルである。特に統一企業は、出願件数首位を維持しており、台湾におけるグリーン商標出願の先導者といえる。
台湾のグリーン商標の上位3出願人のランキング(添付図4)では、上位3出願人は順に統一企業、米国アップル、アリババグループ・ホールディングである。今回の集計期間(2015-2024)と前回の集計期間(2014-2023)を比べると、上位3出願人の順序は同じだが、首位の統一企業のグリーン商標出願件数は15.65%増と突出しており、上位3出願人のうち唯一出願件数がプラス成長した企業となった。
(2025.08.13 智慧局ニュース全訳)
1-2 台湾のグリーン商標登録出願件数の動向理解のため、2024年の「台湾における直近10年のグリーン商標産業の比較分析」に引き続き、最新年度の統計データを追加し研究・分析を行い、「台湾のグリーン商標産業ポートフォリオ分析-2025最新報告」を作成した。ご参考にしていただきたい。
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-52947.html
本報告書は、2024年の「台湾における直近10年のグリーン商標産業の比較分析」報告書に続くものである。今年(2025年)は、最新年度の統計データを追加して研究し、台湾のグリーン商標産業の最新状況について分析した「台湾のグリーン商標産業ポートフォリオ分析-2025最新報告」を作成した。グリーン産業の商標ポートフォリオを展開する業界がグローバルな気候変動及びネットゼロ戦略に対応するための参考資料として提供する。
欧州連合のグリーン商標統計方法を参考に、「グリーン商標」を「商標図案」ではなく商標登録出願を使用するニース分類の指定商品又は役務の名称に基づいて定義し、台湾における直近10年のグリーン商標について、「エネルギー製品」、「運輸」、「省エネ」、「リユース/リサイクル」、「汚染防止」、「廃棄物管理」、「農業」、「環境保護意識」、「気候変動」の9分野における出願件数、割合、出願動向等の分布状況を分析した。
直近の10年間、台湾のグリーン商標が全体の商標出願件数に占める割合は約14.30%であり、前期(2015~2017年)は平均13.75%、中期(2018年~2021年)は平均15.57%、後期(2022年~2024年)は平均13.03%である。後期については、グリーン商標の出願件数と割合は変動しながらも減少傾向にあるが、2024年の下げ幅は緩やかになっている。長期的にみると、出願件数上位は「省エネ」、「汚染防止」、「エネルギー製品」であり、この三つの合計でグリーン商標出願件数の8割近くを占めている。これら三大分野がグリーン産業の重点であることがわかる。
※「台湾のグリーン商標産業ポートフォリオ分析─2025最新報告」は、上記リンク先の「我國綠商標產業布局分析―2025最新報告(中国語PDF)」からダウンロード可能。
(2025.08.25 智慧局ニュース全訳)
1-3 特許再審査の加速審査(AEPRe)の成果は好評、本方案の試行を継続する!
www.tipo.gov.tw/tw/tipo1/799-55732.html
一、 経済部智慧財産局(以下「本局」という)は昨年(2024年)9月1日より「特許再審査の加速審査(AEPRe)」方案を実施している。AEPRe方案の試行から1年間の平均審査期間はわずか22.8日であり、申請は簡便で手数料も無料であることから、出願人・代理人から好評を博している。このことに鑑みて、本局は試行の継続を決定した。引き続き、多いにご利用いただきたい。
二、 AEPRe方案は、初審の査定理由で一部の請求項のみ拒絶され、一部の請求項は拒絶されていない案件を再審査する際、初審の意見に基づき出願人が自ら特許請求の範囲を初審で認定された登録査定の範囲に書き改めることを奨励する。出願人がAEPRe方案をその申請戦略として採用する場合、AEPRe方案により再審査案件は加速審査の対象となる。
三、 2024年9月1日から2025年8月25日の期間において、本局は合計45件のAEPRe申請を受理し、38件について審査結果を通知した。出願人がAEPRe申請を提出してから審査結果を受け取るまでの平均審査期間はわずか22.8日である。一般の再審査案件で審査結果の受け取りまで約10~13か月かかることと比較すると、AEPReを実施することは出願人にとって確実に大きな利益をもたらしており、出願人が専利を迅速に取得するのに有効である。
※AEPRe方案、Q&A及び請求項の補正例、並びに、AEPReの申請書、申請の注意事項及び記入例については、上記リンク先の「相關連接(関連リンク)」を参照。
2.知的財産権紛争
(2025.08.18 聯合報全訳)
2-1 TSMCの2ナノ漏洩事件 最高検察署:決定的な証拠があれば捜査を迅速に進める
台湾積体電路製造(TSMC)の2ナノ漏洩が国家的危機を引き起こし、台湾高等検察署が事件の捜査を進めている。最高検察署の邢泰釗・総長は本日(18日)取材を受けた際に、この事件はすでに司法調査段階に入っており、捜査内容は非公開のため、この事件についていかなるコメントもする立場にはないが、国家の安全に関わる重要な技術が関与している場合、証拠が明確であれば、検察・調査局と司法部門に対し捜査の迅速化を求めると述べた。
邢泰釗・総長は、新竹地方検察署、国家科学及び技術委員会新竹サイエンスパーク管理局、台湾サイエンスパーク科学産業公会及び工業技術研究院(ITRI)が共同開催したドキュメンタリー映画「造山者—世紀的賭注(A Chip Odyssey)」の特別上映会とシンポジウムに出席する前に行われたインタビューで、上記の見解を述べた。
邢泰釗・総長は、企業が営業秘密違反案件を告訴してから最終判断がされるまで、通常6か月もの時間がかかることに触れ、その主な原因は検察機関が国家安全保障事件の捜査について体系的な訓練を受けていないためであると述べた。その一方、営業秘密が国家安全保障と密接に関連していること、2012年から2025年6月までの台湾の営業秘密法の不起訴処分率が70%、30%の事件が起訴に至っていること、メーカーによる証拠収集が不十分であることがカギとなっていることを強調した。
起訴された30%の事件のうち68.7%が有罪判決となっており、100件中約20件の犯罪が認定されたことになる。
訴訟期間が長く起訴率が低いというデータの分析から、邢泰釗・総長は、企業、司法機関、検察機関が営業秘密事件の処理に関する専門知識を強化して初めて国の重要な技術と安全を守ることができるとの考えを示した。
TSMCの2ナノ漏洩事件は、「国家安全法」改正後初の漏洩事件として、広く注目を集めている。他の事件と同様に起訴決定まで半年かかるかどうかについて、邢泰釗・総長は、「現在のところ捜査は非公開だが、決定的な証拠があれば司法当局に迅速な判断を要請する」と述べた。邢泰釗・総長は、一般的に、事件の起訴後に違法かどうかが公表されると指摘した。
邢泰釗・総長は、今回のTSMCの漏洩事件について、検察はすでに3人のエンジニアを特定し逮捕しており、「今後の進展が遅れることはないと確信している」と述べた。
「国家安全法」の規定によると、「国家コア技術」に関わる営業秘密の違法取得又は漏洩は、重大な犯罪であれば5年以上12年以下の有期懲役が科され、500万台湾元(約2,414万円)以上1億台湾元(約4.8億円)以下の罰金が併科されることもある。軽微な犯罪であれば、3年以上10年以下の有期懲役が科せられる。
(2025.08.25 聯合報全訳)
2-2 大手製紙工場の栄成と永豊余の人材引き抜き争議 研究開発責任者が営業秘密違反で起訴
大手製紙工場の栄成紙業(Longchen Paper & Packaging Co., Ltd., 以下「栄成」という)と永豊余工業用紙(YFY PACKAGING INC., 以下「永豊余工紙」という)の二大製紙業者間で先日、人材引き抜き争議が勃発した。かつて研究開発責任者をしていた王氏は、栄成の業務用ノートパソコンにソフトウェアをインストールして外付けモバイルハードディスクに営業秘密をコピーし、2024年11月に退職した後、業務上の参考資料として永豊余工紙にデータを持ち込んだ疑いがある。台北地方検察署は捜査後、王氏を営業秘密法違反で起訴した。
王氏は2012年5月から2024年11月22日まで12年間栄成で勤務していた。工業紙研究開発化学研究所において、工業紙製品の製品管理者として勤務し、原料配合管理、コスト計算及び社内プロジェクト研究などを担当し、スタッフ部門の管理職も務めていた。
起訴状では次のとおり指摘されている。王氏は秘密保持誓約書、個人パソコンとインターネット使用管理等の規定に署名していたが、2024年8月から11月にかけて背信行為と営業秘密違反に関与した。栄成から支給された業務用ノートパソコンにソフトウェアをインストールし、同意や許諾を得ずに営業秘密を違法にソフトウェアにコピーした。同年11月中旬には、外付けUSBメモリやモバイルハードディスクを使用して営業秘密をコピーした。退社して3日後に永豊余工紙に就職し、業務上の参考としてUSBメモリとモバイルハードディスクの内容を永豊余の業務用パソコンにコピーした。
この事件は、王氏が業務用ノートパソコンを返却した際、ソフトウェアがインストールされ営業秘密が複製されていたことが判明し、栄成が台北市刑事警察大隊に通報したものである。
検察はノートパソコンを鑑識に送り復元したが、王氏が栄成の社内関係者以外の人物に情報を送信した証拠を発見することはできず、また、王氏が以前、スタッフ部門の管理職を務めており、他人のコンピュータの電磁的記録を無断で入手したとは認め難く、王氏がfoxmailを用いて営業秘密を送信した行為が営業秘密漏洩罪に該当するとは認定できなかった。
検察は、王氏を、許諾を得ずに、あるいは許諾範囲を超えて営業秘密を複製した罪と、刑法上の背信行為の罪に関与したと認定し、重大な営業秘密法違反であるとして起訴した。
(2025.08.27 中国時報第A9面全訳)
2-3 嘉義 金居開発に内部スパイ 5人の幹部が起訴、指名手配される
店頭会社(上櫃公司)である金居開発股份有限公司(CO-TECH DEVELOPMENT CORP.、金居)は、3.5億台湾元(約16億9千万円)を投じて研究開発した「RGシリーズ高周波高速銅箔」の情報が陳という前工場長、張、林等の幹部らによって盗まれて中国へ持ち出され、会社の利益が侵害されたと訴えた。嘉義地方検察署は営業秘密違反で3人を起訴し、事件に関与し中国に滞在している林・前総工場長、盧・組長を指名手配した。陳(男)、張(男)は勾留期間満了前に、各10万台湾元(約48万円)の保釈金で裁判所により保釈された。
台南市調査処は先日、金居からの通報を受け4月23日、捜査令状を持参し、陳・組長、張・アシスタントエンジニアの2名の雲林県の自宅を捜査し、証拠物品を押収した。
起訴状によると、金居は雲林県の工場で銅箔を製造しており、林・総工場長、盧・組長、陳・組長、張・アシスタントエンジニア、林・副理らが2014年から2024年まで工場内で上級幹部、中級幹部に就き、銅箔製造工程に携わっていた。
林・総工場長と盧は中国の某テクノロジー企業から高給で引き抜かれ、金居が生産している銅箔の関連資料を提供した。2024年11月以降、金居チームの元メンバーを次々と勧誘し、金居の営業秘密資料の提供を今後の転職における給与の交渉材料とするよう説いた。陳、張、林・総工場長、盧ら4名は共謀して営業秘密を複製、漏洩した。
林・副理は2023年2月の離職前に銅箔製造工程の配合データを複製した。今年2月、張はLINEを通じて林に問い合わせたところ、林は張にデータを提供し、張はさらに自分と陳、林・総工場長、盧の4名のLINEグループにそれを転送した。
金居が3億5,340万2,000元(約17億660万円)を投入し研究開発した「Rシリーズ高周波高速銅箔」は、年間売上高約68億台湾元(約328億円)、Rシリーズ銅箔の売上高全体の約50%を占め、約6億台湾元(約28億9,700万円)の営業利益を生み出しており、経済価値が非常に高い。
検察側は、現在20件の営業秘密資料が持ち出されているが、事件関係者は雇用契約書において秘密保持条項にサインしており、離職2年以内は会社の機密情報を利用して同業他社と競争させてはならないことになっていると述べた。陳、盧の勾留期間は22日に満了を迎え、裁判所は各10万台湾元(約48万円)の保釈金で保釈を認め、住居制限と8か月間の出国禁止制限を命じた。
(2025.08.28 聯合報第A1面全訳)
2-4 TSMCの2ナノ漏洩の3人に重刑を求刑 TSMC:ゼロトレランスで徹底追及の構え
台湾高等検察署はTSMCの2ナノコア技術の漏洩事件を捜査し、TSMCの元エンジニアの陳力銘が日本の東京エレクトロン(TEL)に転職した後、「エッチング装置」の量産テストデータを取得するため、当時TSMCに在籍していた呉秉駿と戈一平を通じてパラメータの調整情報を盗んでいたことが発覚した。台湾高等検察署は昨日、陳、呉、戈の3人を国家安全法違反および営業秘密の罪で起訴した。これは、国家安全法に違反する国家コア技術の営業秘密窃盗事件としての、初めての事件である。
陳力銘、呉秉駿、戈一平は国家コア技術の営業秘密を域外で使用した罪に関与したとして、検察はそれぞれ7年から14年の重刑を求刑した。3人は現在勾留中で、罪を認めており、来週、知的財産及び商業裁判所に移送される予定である。廖というエンジニアら3人については、営業秘密法上の親告罪にのみ該当するが、TSMCが告訴しなかったため、検察は事件を終結させた。法人(TEL)及び自然人の刑事責任の有無については、台湾高等検察署が引き続き別途捜査を行う。
TSMCは昨日、あらゆる営業秘密保護違反や同社の利益毀損行為に対してゼロトレランスを貫く方針を維持し、厳正に対処し、最後まで徹底追及すると述べた。TSMCは、今回の捜査結果により当社の貴重な営業秘密と技術が十分に保護されるものと信じており、当社は今後も社内管理及び監視メカニズムを強化し続け、コアコンピタンスと全従業員の共同利益を保護していくと述べた。
捜査によると、陳力銘はTSMCの第12工場で歩留まりの担当エンジニアを務めたことがあり、離職後はTSMCの半導体製造装置サプライヤーであるTELのマーケティング部門に転職した。TELには「13E計画」があり、これはTSMCの2ナノプロセスエッチング工場の量産装置供給の資格を勝ち取るためのものであった。
しかし、エッチング装置が資格を満たすには、事前に研究開発テスト、パイロット生産テスト、量産テストの三段階のテストに合格する必要がある。TELは最初の二段階には合格したが、生産量を拡大して量産化する段階で、テストを通過できていなかった。
捜査によると陳力銘は、TEL がTSMCの先端プロセス向け装置サプライヤーの地位を勝ち取れるよう、複数回呉秉駿と戈一平に協力を求めた。呉と戈はリモートワークの抜け穴を利用し、会社支給のノートパソコンでTSMCのイントラネットにログインし、陳力銘は、TELのエッチング装置の性能評価と改善に役立てるため、TSMCが他のメーカーの装置をテストした実験の歩留まりデータを携帯電話で撮影した。撮影されたファイルは、国家コア技術に関わるものであった。
廖ら3名のエンジニアは、携帯電話のメールとノートパソコンのメールの添付ファイルを開き、陳力銘に撮影させていたが、そのパラメータのデータはTSMCのコア技術の機密とは無関係であったため、親告罪である営業秘密漏洩にのみ該当する。
また、陳力銘は、TELの新たなエッチング装置の販売拠点を探しており、呉秉駿と戈一平にTSMCの工場の配置フローチャート(通称「Flow」)の提供を求めたが、画像ファイルには経済部が国家コア技術と認定している機密のラベルがされたものが多数含まれていた。検察は、陳力銘がTSMCのコア技術のテストデータとフローチャート画像ファイル合計14枚を撮影、複製したと認定した。
この事件は、TSMCが異変を検知して今年7月8日に台湾高等検察署に告訴したものであり、劉怡君・檢察官、朱立豪・檢察官が調査局を指揮して捜査した。陳力銘は、営業秘密法上の域外使用のために営業秘密を窃取した罪で有期懲役5年、営業秘密法上の営業秘密を窃取とした罪で有期懲役3年、国家安全法上の国家コア技術の営業秘密の域外使用の罪で有期懲役8年、合わせて有期懲役14年が求刑された。
呉秉駿は、営業秘密法上の域外使用のために営業秘密を窃取した罪で有期懲役4年、国家安全法上の国家コア技術の営業秘密の域外使用の罪で有期懲役7年、合わせて有期懲役9年が求刑された。戈一平は、国家安全法上の国家コア技術の営業秘密の域外使用の罪で有期懲役7年が求刑された。
3.模倣品関連
(2025.08.14 刑事警察局ニュース全訳)
3-1 日本の「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構」が刑事局を表敬訪問 海賊版の共同撲滅を宣言 知的財産権保護のために協力
www.cib.npa.gov.tw/ch/app/news/view?module=news&id=1887&serno=084e8abc-b85b-4388-9bf7-cad613954d7b
台湾の知的財産権を守るため、警政署刑事警察局は積極的に不法権利侵害案件の撲滅に努めている。日本の「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)は8月14日に刑事局を表敬訪問し、台湾の警察の積極的な取締りに対し感謝を述べたほか、引き続き警察の取締活動の実施に協力し、共同で海賊版を撲滅していくと表明した。
警政署は知的財産権保護政策を継続的に実行し、各警察機関を監督・指揮して知的財産権関連の事件を取り締まっている。2024年から今年6月までの統計によると、取り締まった各種権利侵害案件は3,206件、4,185人であり、権利侵害額は459億8,000万台湾元(約2,255億5,000万円)を超えた。
知的財産権は国際社会が一貫して重視してきた議題である。台湾は、台米貿易及び投資枠組み協定(TIFA)を通じて知的財産権保護を強化し続けてきただけでなく、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)への加盟申請を積極的に進め、各国と実質的に協力し、国際調和を加速し、国際競争力を向上させている。知的財産権と民衆の真正品使用の権益を保護することは、台湾の国際的イメージ向上の一助となるだけでなく、台湾産業の良好な発展を促進する。昨今のテクノロジーの発展とネットワークコンバージェンスの急速な発展を受け、不法セットトップボックス(STB)やインターネット上の権利侵害APPによる著作権侵害行為の発生を効果的に阻止するため、刑事局は引き続き科学捜査人材を育成して捜査技能を強化すると同時に、国境や組織を越えた協力や民間レベルの協力により、不法STBの使用と域外からの権利侵害サイトを積極的に取り締まる。
警察は、不法STBを使用することや、権利侵害APPをダウンロードして合法的に許諾されていない映像コンテンツを視聴することで、法に違反することがないよう、注意喚起している。これらの行為は不法業者の映像の海賊版作成を助長するだけでなく、著作権者の権益も著しく侵害する。また、安価なSTB設備及び不法APPを域内のブロードバンドに接続することは情報セキュリティ漏洩の可能性もある。警察は引き続き各種権利侵害案件を取り締まり、台湾の知的財産権保護の決意を示していく。
(2025.08.14 聯合報全訳)
3-2 「天堂」のプレイヤーがアイテムの価格差の不正を発見 警察は4人の容疑者を逮捕、15年間の権利侵害市場価格は50億台湾元超
有名なオンラインゲーム「天堂(リネージュ)」のプレイヤーは、仮想アイテムの価格差を発見し、ゲームパブリッシャーに報告した。刑事局知的財産権偵査大隊の警察が通報を受け調査した結果、蔡という主犯格等4人がゲームサーバーを中華電信サーバールームに設置し、中国の容疑者から技術及びリモート管理の提供を受けて仮想アイテムを販売し、15年間の権利侵害市場価格は50億台湾元(約245億円)を超えることが判明した。
刑事警察局知的財産権偵査大隊三隊は1年前に遊戲橘子公司(ガマニア)から、個人のゲームサーバーを利用してリネージュのオンラインゲーム及び韓国のgamania NCSOFTが不正に複製され、プレイヤーへの仮想アイテムの販売で利益を上げられているとの通報を受け、調査プロジェクトチームを立ち上げた。
警察が追跡調査した結果、主犯格の蔡(44歳、男)と手下の蔡(30歳、男)、劉(47歳、男)及び黄(44歳、男)が共謀し、新北市新荘区の中華電信の2か所のサーバールームをレンタルし中国の容疑者から技術及びリモート接続管理の提供を受けて、オンラインプレイヤーに真正版の仮想アイテムと誤認させて海賊版を販売して、不法利益を得ていたことが判明した。
警察は今年3月と5月に証拠収集後、台北市信義区、新北市新荘区及び高雄大寮、前鎮区等で捜索を実施し、蔡ら4人の容疑者を逮捕し、サーバー6台、現金115万4,600台湾元(約563万円)、スマートフォン11台、タブレット2台、ノートパソコン2台、銀行通帳及びキャッシュカード1セット等を押収した。
警察による取り調べの後、著作権法及び商標法違反の疑いで蔡ら4人を高雄地方検察署へ送検した。ゲームパブリッシャーであるガマニア等の会社に確認し、蔡容疑者らの2010年から今年3月までの15年間の運営による権利侵害市場価格は、50億台湾元(約244億円)超と判明した。
前の記事 | ||
最新記事はこちら |
下のフィールドに受信可能なメールアドレスを入力し「登録する(登録解除)」をクリックして下さい。
協会より入力したメールアドレス宛に認証メールが届きます。
メールに記載されたURLをクリックする事で正式に配信登録(解除)されます。