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知財ニュース370号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.370)
発行年月日:2024年8月30日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2024年8月21日 智慧局ニュース全訳)
1-1 「補正明細書のヘッダーチェック」と「特許再審査の加速審査申請書」機能を新設した電子出願システムは9月2日より2.6.1改訂版プログラムの提供を開始
(2024年8月26日 智慧局ニュース全訳)
1-2 専利無効審判聴聞手続を迅速にし、審決の質を向上
(2024年8月26日 智慧局ニュース全訳)
1-3 「特許出願の実体審査繰り延べ請求作業方案」の改正草案予告
(2024年8月28日 智慧局ニュース全訳)
1-4 電話による意思疎通と遠隔ビデオ面談の新施策を9/1より試行 さらにユーザーフレンドリーな専利審査環境を構築

2. 法律・制度
(2024年8月19日 経済部プレスリリース)
2-1 專利資料收費標準の第4条及び第3条付表の改正草案予告
(2024年8月20日 工商時報第A6面全訳)
2-2 AI基本法の制定準備 情報セキュリティを注視 デジタル発展部は年末にリスク分類の枠組みを説明

3. 知的財産権紛争
(2024年8月21日 聯合報第A14面全訳)
3-1 TDKのコア技術漏洩 前部長、エンジニアが起訴される

4. 模倣品関連
(2024年8月23日 財政部プレスリリース全訳)
4-1 2024年上半期の税関による模倣品摘発件数23万件余、権利侵害市場価格は4億5千万台湾元越え

1.智慧局ニュース

(2024.08.21 智慧局ニュース全訳)
1-1 「補正明細書のヘッダーチェック」と「特許再審査の加速審査申請書」機能を新設した電子出願システムは9月2日より2.6.1改訂版プログラムの提供を開始
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-977438-0c286-1.html
専利電子出願の補正デジタル化推進座談会での各界からのご意見やご提案をふまえ、ユーザーが送信時に自ら補正期日を注記する必要のないよう、2024年9月より、本局での受理後自動的に補正明細書の右上の隅に受理期日情報が刻印されることになり、Html2Pdf変換ツール2.6.1版ではヘッダーが空白になっているか否かをチェックする「補正明細書ヘッダーチェック」機能が提供されることになる。業務推進のため、「特許再審査の加速審査」申請書も、今回新設される。関連機能の詳細については、上記URLの智慧局ウェブサイトの「檔案下載(ファイルダウンロード)」のリンク先「2.更新内容」を参照のこと(中国語)。
プログラム更新のため、新電子出願システム(HTML2PDF/WORDアドイン及びE-SET)のユーザーは、2024年9月2日より、HTML2PDFとE-SETプログラムを開いて手動で更新作業を始動するか、知的財産権e網通にアクセス ([01案件申請(出願案件)]>>[下載新電子申請系統(新電子出願システムのダウンロード)])して、「HTML2PDF/WORD增益集 2.6.1版」と「E-SET 2.6.1版」をダウンロードすること。

(2024.08.26 智慧局ニュース全訳)
1-2 専利無効審判聴聞手続を迅速にし、審決の質を向上
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-977614-b558d-1.html
智慧局が新たに改訂した「専利無効審判案件聴聞作業要点」は本年(2024年)6月11日に正式に公告済みである。聴聞に遠隔オンライン方式を採用できることにより当事者の移動の不便さを適時軽減でき、予備聴聞機能を強化して書面を両当事者に相互郵送することによる時間的な遅れを効果的に削減でき、聴聞記録の作成を簡素化しテクノロジー設備による記録補助を行うことにより、聴聞の状況を完全に復元することができ、聴聞作業をより迅速かつ効率的なものとすることができる。
2018年に専利無効審判案件聴聞作業を開始して以来、智慧局はすでに26件の聴聞無効審判案件を実施した。処分に不服がある場合、訴願手続を免除して直接行政訴訟を提起することができるところ、行政救済の階層を一つ省略することで得られる時間的な効果・利益は非常に大きい。
智慧局の統計によると、そのうち行政救済時に原処分を取り消して処分し直したものは2件のみである。これは、この種の案件の行政処分全体の安定度が9割以上に達していることを示している。
智慧局は、改訂後の新しい良質な聴聞環境は、参加者の利便性とニーズを満足させ、聴聞手続を更に簡潔にスムーズにし、両当事者が争点の攻防に集中できるメリットがあるため、産業界に広く利用していただきたいと述べた。改訂後の「専利無効審判案件聴聞作業要点」は、智慧局サイト「専利/聽證專區(※)」(中国語)からダウンロードあるいは検索して入手可能。

※「專利」>「快速連結」の「舉發案件聽證專區」(https://topic.tipo.gov.tw/patents-tw/np-763-101.html)を参照。

(2024.08 .26 智慧局ニュース全訳)
1-3 「特許出願の実体審査繰り延べ請求作業方案」の改正草案予告
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-977613-75051-1.html
一、 出願人の専利ポートフォリオ展開及び専利の商品化の推進のため、「特許出願の実体審査繰り延べ請求作業方案」を改正する。出願が再審査の審査意見通知を受ける前に、実体審査の繰り延べを申請できるよう緩和する。また、初審、再審査における分割出願には実体審査の繰り延べを請求できないとする制限を削除し、現行の「意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業方案」を統合し、名称を「特許及び意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業要点」に修正する。
二、 上述の改正草案について、ご意見又は改正のご提案があれば、本案公告の本局サイト「最新消息(最新情報)」(https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-977613-75051-1.html)に本案が公告された翌日から14日以内にご提供いただくか、ご連絡いただきたい。
(一) 担当部署:智慧財産局専利争議審査組
(二) 住所:台北市辛亥路二段185号3F
(三) 担当者及び電話:葉哲維(02)2376-7638
(四) E-mail:yeh20354@tipo.gov.tw

*「特許及び意匠出願の実体審査繰り延べ請求作業方案の改訂総説明及び対照表」は、上記智慧局ウェブサイトのリンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能(中国語PDF文書)

(2024.08.28 智慧局ニュース全訳)
1-4 電話による意思疎通と遠隔ビデオ面談の新施策を9/1より試行 さらにユーザーフレンドリーな専利審査環境を構築
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-977627-ad795-1.html
1. 本局は2024年9月1日より「外部審査官との電話による意思疎通及び遠隔ビデオ面談強化方案(中国語:外審委員電話溝通及遠距視訊面詢優化方案)」を試行する。特許出願人は、智慧局の電話システムの三者電話会議機能を利用して、出願人又はその代理人、外部審査委員、及び本局の担当者の間で即時に意思疎通・意見交換することができる。案件状況が複雑である場合、又は操作や展示の必要がある場合、遠隔ビデオ面談方式により直接外部審査委員及び本局の担当者との三者間の面談をすることができ、専利出願の質と審査効率の双方に有益なウィンウィンの方案であるといえる。
2. 詳細は以下リンク先(※)を参照。
※上記智慧局ウェブサイトのリンク先の「相關連結(関連リンク)」の「1.發明專利審查電話溝通與面詢作業答客問(特許審査の電話による意思疎通と面談作業についてのQ&A)」(当該資料は中国語)

2.法律・制度

(2024.08.19 経済部プレスリリース)
2-1 專利資料收費標準の第4条及び第3条付表の改正草案予告
経済部は「專利資料收費標準の第4条及び第3条付表の改正」を予告した。意見募集期間は、本公告が公報に掲載された日の翌日から起算して60日以内。
詳細は経済部の草案予告(https://law.moea.gov.tw/DraftForum.aspx)の「經濟部公告:預告「專利資料收費標準」第4條及第3條附表修正草案」のリンク先を参照。

(2024.08.20 工商時報第A6面全訳)
2-2 AI基本法の制定準備 情報セキュリティを注視 デジタル発展部は年末にリスク分類の枠組みを説明
昨年の台湾における情報セキュリティ産業の生産額は744億台湾元(約3,389億円)を超え、2025年は目標の800億台湾元(3,644億円)に達する見込みだが、それと同時に各種のリスクを伴う。デジタル発展部の黄彦男・部長は19日、情報セキュリティは人工知能(AI)発展の礎であることから、デジタル発展部は国際基準や規範を参考に、AIリスク分類の枠組みの起草に着手し、各目的事業の担当主務官庁に提供するリスク分類規範を制定し年末までに提出する予定であると述べた。
同部長は、「2024 GDDA/Baker McKenzie国際AI情報セキュリティフォーラム」のテーマ講演において、生成AIは各産業の形態を再構築していると同時に、偽情報、知的財産権侵害、国家安全への影響等の各種リスクを発生させ、またハッカーによるサイバー攻撃がより動的、迅速かつ効果的になることによる脅威的な状況を増大させていると語った。
また、同部長は、AIの発展は情報セキュリティを重視すべきであり、情報セキュリティにおける新しい攻撃態様の研究にAIを利用することが可能で、伝統的な方法と比較してリスクの優先順位を更に素早く判断することができ、より迅速、効率的に情報セキュリティの脅威に対応することができると指摘した。AIの安全かつ安定な運用を確保するため、国家科学及技術委員会はすでに「AI基本法」の草案の制定を予告している。草案では、デジタル発展部が国際基準又は規範を参考に、国際社会と結びついたAIリスク分類の枠組みを推進し、各目的事業の担当主務官庁が前項のリスク分類の枠組みに従い、その主務業務のリスク分類規範を制定することができると明文化されている。
同部長は、「AI基本法」の草案はプライバシーと人権の保護を強調しており、デジタル発展部は、これに基づいてリスク分類の枠組みを制定し、高リスク・中リスク・低リスクのそれぞれ異なるリスク要件に対して異なるAI応用を対応させ、テストを経て、年末までに提出予定であると説明した。
同部長は、AI応用の基準と規範の制定により、信頼性と安全性が向上し、台湾が国際市場において更に技術革新力を発揮し、国際競争力を高めることができる旨、AI技術の迅速な発展を確保すると同時に労働者の権益を保障し社会の安定と発展を促進することが必要である旨述べた。

3.知的財産権紛争

(2024.08.21 聯合報第A14面全訳)
3-1 TDKのコア技術漏洩 前部長、エンジニアが起訴される
台湾東電化(TDK)楊梅工場の呉・前部長は、中国の立訊精密(LUXSHARE-ICT)に高給でヘッドハンティングされ、TDK人材の立訊精密へのヘッドハンティングに協力しただけでなく、TDKの黄・前エンジニアとともに重要なコア技術を漏洩し、TDKに123億台湾元(約560億円)を超える損失をもたらした。桃園地検署は昨日、営業秘密法・著作憲法違反と刑法背信罪、電子計算機損壊等業務妨害罪等の罪で2人を、営業秘密法違反で台湾立訊精密を、それぞれ起訴し、いずれについても重刑を科すよう求めた。
TDKは台湾最大の総合電子部品サプライヤーである。起訴状では、TDKは日本のT1株式会社が投資して設立した会社で、主要商品は光学駆動素子、無線充電設備と電源ユニット等であること、楊梅工場は重要な研究開発基地であり、呉と黄(共に男性)は転職前にそれぞれ該工場の研究開発部長とスタッフエンジニアを務めていたことが指摘された。
検察側の調査によると、呉は2019年10月、中国立訊精密の王来春・董事長から台湾立訊精密の研究開発本部長のポストへのヘッドハンティングを受けた。会社側は年収500万台湾元(約2,276万円)を提示しただけでなく、呉の妻が入社し働かずして給料を受け取ることも承諾し、また中国立訊精密の株等を与える報酬にも同意したが、呉は短時間のうちに台湾立訊精密の競争力を高めることが必須であった。
呉は2020年に転職後、楊梅にある賃貸工場を事務所とし、10名のTDKの前研究開発幹部又は現職の研究開発職員を自分の下で仕事をするよう次々と引きこみ、立訊精密のためボイスコイルモータ(VCM)とスマートフォンのモジュールの研究開発を行った。
このほか、短期間で急速に競争力を高めるため、呉は黄と共謀し、TDKのコア技術を無断で複製、使用し、成果を中国立訊精密の上層部へ漏洩していた。
検察は、呉、黄の2人の行為が日本の多国籍企業にもたらした損失は甚大であり、ハイテク産業の健全な発展を守り、国家産業の競争力を確保するため、裁判所に対し重刑を科すよう求めたと説明した。

4.模倣品関連

(2024.08.23 財政部プレスリリース全訳)
4-1 2024年上半期の税関による模倣品摘発件数は23万件余、権利侵害市場価格は4億5千万台湾元超え
財政部の発表によると、知的財産権侵害貨物の輸出入撲滅のため、税関では引き続き水際措置を強化し、権利侵害貨物の摘発を厳格化しており、2024年上半期には230件の商標権侵害案件が水際で摘発された。模倣品の数量は23万件余り、権利侵害市場価格は4億5千万台湾元(約20億2千万円)超えとなり、目覚ましい摘発成果であった。
財政部は、知的財産権保護は政府の重要施策目標であり、摘発実績向上のため、税関は引き続き税関職員の摘発テクニックの向上に努めており、2023年上半期と比べ2024年上半期の摘発案件数は44%増加し、権利侵害貨物の摘発数量は5倍に増加し、摘発された商品は、類別では多くが消耗品(靴類、服飾、腕時計、バッグ、タバコ)、3C製品及び医薬品であり、これらの模倣品が市場に流入すると民衆の安全と健康に重大な危害をもたらすことから、税関ではそれらを重要摘発項目として挙げている、と説明した。
財政部はさらに、近年海外とのオンラインショッピングが盛んになっており、税関で摘発される模倣品の多くが宅配貨物の小口輸入で、2024年上半期の統計では、海運、空運の宅配貨物専門区の権利侵害摘発案件は合計205案件で、全体の89%を占めていることから、宅配オンラインショッピングは便利であるものの、模倣品を購入して自身の権益を損なうことのないよう注意する必要があると呼びかけた。
最後に財政部は、知的財産権侵害貨物の摘発は税関の重点業務であり、引き続き関連するトレーニングを行い税関職員の専門知識を高めるほか、水際の模倣品摘発成果の向上のため、知的財産権水際保護措置の実施も強化していくと述べた。

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