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知財ニュース369号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.369)
発行年月日:2024年8月15日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2024年7月29日 智慧局ニュース全訳)
1-1 本局の知的財産権eネットサイト「我的儀表板」サービスのインターフェースを即日より改訂・更新し、専利・商標の多数の案件情報ダウンロードを新設
(2024年7月30日 智慧局ニュース全訳)
1-2 2024年第2四半期の知的財産権趨勢
(2024年8月7日 智慧局ニュース全訳)
1-3 2024年第2四半期の各国における標準必須特許(SEP)に関する政策動向

2. 知的財産権紛争
(2024年7月30日 工商時報第A12面全訳)
2-1 迫りくる特許訴訟 AIブームで特許訴訟がテクノロジー企業の新しい戦場へ
(2024年7月31日 中国時報第A8面全訳)
2-2 テスラの充電ステーションの商業機密を無断で窃取し、ヘッドハンティングされた中国企業に漏洩した台湾人幹部に懲役2年の判決
(2024年8月6日 自由時報電子報要訳)
2-3 特許権侵害訴訟の被告となったTSMC パテントトロールから技術を守るとコメント
(2024年8月12日 工商時報第B3面全訳)
2-4 旺矽に提訴される 穎崴:企業運営に重大な影響は無し

3. 模倣品関連
(2024年8月1日 聯合報電子報要訳)
3-1 大儲け478万台湾元 Shopeeでクラッキング版Switch販売 ゲームワークステーションの経営者が提訴される
(2024年8月2日 中国時報第A7面全訳)
3-2 食通が告発 金門高粱酒を偽造販売していた3容疑者を摘発
(2024年8月8日 聯合報電子報要訳)
3-3 刑事局が違法テレビAPPソフトと海賊版録画室を摘発 権利侵害額は少なくとも10億台湾元

4. その他一般
(2024年8月7日 工商時報第A12面全訳)
4-1 イノベーションが要 損害保険業が専利、新保険の研究開発

1.智慧局ニュース

(2024.07.29 智慧局ニュース全訳)
1-1 本局の知的財産権eネットサイト「我的儀表板」サービスのインターフェースを即日より改訂・更新し、専利・商標の多数の案件情報ダウンロードを新設
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-970380-b7232-1.html
自発的でパーソナライズ化された専属情報、及び正確かつタイムリーな専利・商標案件情報を提供し、自身の所有する案件状況を簡単に素早く把握することができるよう、本局は2023年度に「我的儀表板(ダッシュボード)」サービスを対外的に公開し、認証を通じた電子公文書の署名・ダウンロード、手数料の納付及び領収書のダウンロード、出願中及び権利取得済みの案件検索等の情報を含む各機能を徐々に拡充し、ユーザーが新電子出願システム(E-SET)をインストールしなくても単一アクセスで案件情報を受け取ることができるようにした。
引き続きサービスの最適化をめざし、2024年7月29日より「我的儀表板(ダッシュボード)」インターフェースを改訂・更新し、操作の利便性を向上させると同時に、専利出願の優先権証明書類、商標登録のタイムライン、専利/商標の電子証書と公報等、個人に関連する案件情報を新設する。各界多いに利用していただきたい。

※智的財産権eネットサイト及び該サービス機能の紹介は、上記リンク先の智慧局サイトの「檔案下載(ファイルダウンロード)」の「智權管理數位服務平台-我的儀表板功能簡介(中国語)」を参照。

(2024.07.30 智慧局ニュース全訳)
1-2 2024年第2四半期の知的財産権趨勢
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-971420-59e07-1.html
1. 専利・商標全体の出願動向
2024年第2四半期に台湾が受理した特許、実用新案、意匠の三種類の専利出願件数は17,683件で前年同期比2%増となり、そのうち特許出願件数は11,988件、実用新案出願件数は3,766件、意匠出願件数は1,929件となった。台湾人による三種類の専利(特許、実用新案、意匠を含む)の出願件数が全体に占める割合は51%、外国人出願人の割合は49%となった。台湾人出願人は昨年(2023年)同期比2%減であったが、外国人出願人は6%増となり全体で2%増となり、直近2年の第2四半期における三種類の専利出願件数は小幅上昇している(図1参照)。

また、受理された商標登録出願件数は23,885件(29,387区分)で、前年同期比3%増となり、そのうち台湾人が77%を占め、外国人は23%であった。直近2年の第2四半期における出願件数を見てみると、今年はプラス成長に転じた(図2参照)。

2. 台湾人出願人による専利出願概況
(1) 特許出願件数上位10出願人
台湾人出願人による特許出願件数は4,699件で、そのうち企業が3,734件となった。特許出願件数上位10位の出願人は、台湾積体電路製造(TSMC)が出願件数308件で第1位、次いで南亜科(NANYA)が136件、友達光電(AUO)が114件、英業達(INVENTEC)が90件、群創(INNOLUX)が80件、宏碁(ACER)が74件、瑞昱(REALTEK)が70件、聯電(UMC)が65件、聯發科(Media Tek)が49件、台達電(DELTA)が45件となった(図4参照)。TSMCは2017年第2四半期から連続8年で首位となっている。
(2) 意匠出願件数上位5出願人
台湾人出願人による意匠出願件数は855件で、出願件数上位5出願人について、樹徳科技大学が22件で第1位となり、次いで聯府塑膠(KEYWAY)が16件、仁寶(COMPAL)が15件、統亜電子科技が14件、台達電(DELTA)と萬能科技大学がいずれも13件となった(図5参照)。
(3) 高等教育機関による特許出願件数上位10出願人
台湾の高等教育機関による特許出願件数は436件で、出願人上位10位について、国立勤益科大が33件で1位となり、次いで国立成功大学が30件、国立台湾大学が26件、国立清華大学が19件、国立陽明交通大学が18件、樹徳科技大学が16件、台北医学大学が15件、長庚科技大学と崑山科技大学がいずれも14件、国立中興大学と国立中山大学がいずれも13件となった(表1参照)。
(4) 研究機関及び国営事業による特許出願人
台湾の研究機関による特許出願件数は95件で、出願人上位3位について、工業技術研究院(ITRI)が36件、国家原子能科技研究院(NARI)が11件、財団法人紡織産業総合研究所(TTRI)が9件となった(表2参照)。台湾の国営事業による特許出願件数は10件で、台湾金融ホールディングスが7件で最多となった。

3. 外国人による専利出願概況
(1) 特許出願件数上位10出願人
外国人出願人による特許出願件数は7,289件で、出願人上位10位のうち、米国のアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)の出願件数は208件で1位に返り咲き、その他は順に韓国のサムスン電子(SAMSUNG)が202件、米国のクアルコム(Qualcomm)が191件、日本の東京エレクトロンが128件、韓国の韓領が108件、日本のSCREENと日東電工がいずれも90件、日本の信越化学が73件、米国のLam Researchが69件、オランダのASMLが67件となった(図4参照)。
(2) 特許出願人の国籍分析
特許出願上位5か国(地域)について、日本は出願件数2,726件で1位となり、次いで米国の1,696件、中国の864件、韓国の677件、及びドイツの255件となった(図3参照)。そのうち、中国とドイツの件数の成長率が10%を超えており、急速な成長を見せた。
(3) 意匠出願件数上位5出願人
外国人出願人による意匠出願件数は1,074件で、出願件数上位5出願人については、中国の浙江智馬達(smart Automobile)が72件で最も多く、次いで米国のFord Global Technologiesが48件、ドイツのBMWが34件、米国のMOLEXと中国の明門幼童用品がいずれも29件となった(図5参照)。そのうち、中国の浙江智馬達(smart Automobile)は初めて上位5位にランクインした。
(4) 意匠出願人の国籍分析
意匠出願件数上位5か国(地域)について、日本が出願件数248件で最も多く、次いで米国が234件、中国が223件、スイスが97件、ドイツが75件となった(図3参照)。そのうち、米国の出願件数は今季、スイスと中国を上回り第2位に躍進した。

4. 商標登録出願概況
(1) 台湾域内の商標登録出願上位10出願人
台湾域内の商標登録出願件数上位10出願人について、山邊媽祖宮が131件で1位となり、次いで遠雄巨蛋が100件、夠電科技が95件、蔡合旺事業と統一企業がいずれも78件、高嘉佑が54件、第一銀行と寶元紀生活がいずれも50件、神通資訊が44件、南一書局が40件となった(表3参照)。
(2) 台湾人による出願の区分
台湾人出願人による出願上位3区分について、順に第35類(広告、企業経営等)が3,518件、第43類(レストラン、宿泊施設等)が1,779件、第30類(コーヒー・茶及びケーキ等)が1,631件となっており(図6参照)、台湾企業における商標登録出願の多くが、企業経営及び民生消費に関する飲食、宿泊サービスとコーヒー・ケーキ等の商品区分に集中していることが分かる。
(3) 台湾域外の商標登録出願件数上位10出願人
台湾域外の商標登録出願件数上位10出願人について、イギリス領バージン諸島の富爾康(FULL COMFORT)が68件で1位となり、次いで中国のファーウェイ(HUAWEI)が62件、中国の浙江卡游文化ラジオが33件、ケイマン諸島の騰訊控股(TENCENT)が32件、中国の浙江図森定制家居とスイスのAbercrombie & Fitchがいずれも30件、中国の南陽鴻豊電気科技が28件、シンガポールの藍色起源管理諮詢(BLUE ORIGIN MANAGEMENT CONSULTANT)が26件、香港の初衣食午(ONEFIFTEEN)が22件、日本の資生堂が21件となった(表4参照)。
(4) 外国人出願人の国籍分析
商標登録出願件数上位5か国(地域)について、中国が1,528件と最も多く、次いで日本905件、米国726件、韓国438件、香港344件となった(図3参照)。
(5) 外国人による出願の区分
外国人による出願件数上位3区分について、第9類(コンピューター及びテクノロジー製品)が1,021件、第3類(化粧品、洗浄剤等)と第35類(広告、企業経営等)がいずれも634件、第5類(薬品等)が507件となった(図7参照)。そのうち、第9類のコンピューター及びテクノロジー商品が台湾における外国人による商標登録出願の太宗を占めた。
(6) 産業別分析
台湾が受理した商標出願において、「農業食材」が6,172件で各産業を遥かに超えて1位となり、次いで「健康医療事務」4,728件、「商業金融」4,661件となった(図8参照)。
上位3位の産業における商標登録出願については、台湾人出願人は「農業食材」産業(5,096件)に集中しており(図9参照)、主にレストラン及び宿泊施設の商標件数が比較的多かった。外国人出願人では「技術研究」産業が1,605件で最多であった(図10参照)。このほか、台湾人出願人と外国人出願人のいずれも「健康医療事務」で共にプラス成長しており、外国人出願人では「服飾アクセサリ」の件数が27%増加した。
注:上述の統計データは、その出願人及び国籍ランキングにおいて出願の「第1出願人」を計算の基礎とする。

2024年第2四半期の統計は、下記リンク先の智慧局サイト(https://www.tipo.gov.tw/tw/lp-167-1.html)の「四半期統計」を参照(中国語:「季統計」、「113年第2季」)。

(2024.08.07 智慧局ニュース全訳)
1-3 2024年第2四半期の各国における標準必須特許(SEP)に関する政策動向のニュース
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-974559-f4c4d-1.html
世界で標準必須特許(Standard Essential Patent, SEP)に関する議題が日増しに注目を集めている中、各国における施策動向も変化し続けている。智慧局は、欧州連合、世界知的所有権機関(WIPO)、英国、米国のSEPに関する事件と政策動向を引き続き追跡しており、インターネットに公開されたSEP関連ニュースを収集して分析整理し、SEPの動向調査報告書を完成させた。産業界がSEPの議題についてより一層理解し、主要マーケットでの専利ポートフォリオ展開戦略に役立つものとなることを期待する。
近年の各国におけるSEP関連政策の重要事項を以下に簡単に説明する。
(1) 欧州議会選挙後のSEPに関する規則草案の進展
欧州議会は今年(2024年)2月に欧州委員会で採択されたSEPに関する規則草案を採決したが、同議会は6月に選挙を行い、当該SEP規則草案はまだ制定されていない。このことを前提に、欧州委員会域内市場・産業・起業・中小企業総局(DG GROW)は今年7月11日、欧州連合公共調達サイトに「標準必須特許(SEP)に関する規則案施行細則」の入札情報を公表した。DG GROWは32万ユーロ(約5,150万円)を投じて欧州連合のSEP規則実施の研究支援を行っており、その中には設定された法規を遵守すべき技術標準とSEPの必要性の検査が含まれている。この入札の目的は、欧州連合のSEP規則実施の研究を支援し、課題解決の万能薬として必須性検査を利用することである。

(2) WIPOが「標準必須特許戦略(2024-2026)」を発表
WIPOの中期戦略計画(MTSP)の施行から2年が経過し、今年4月に標準必須特許戦略(2024-2026)(以下「SEP戦略」という)が発表され、SEP分野におけるWIPOの3年の戦略計画が制定された。WIPOのMTSPミッションによると、その中の「各方面の利益のバランスを図る」ことは、専利許諾と実施において非常に特殊な意味を持つことから、SEP戦略は中立性、補完性、自発性の3つのコア原則に基づき、WIPOを世界的な対話フォーラム、知識と資料の源、友好協定の場とし、また、サービス提供者とする戦略の方向性を設定した。

(3) 米国特許商標庁(USPTO)と英国知的財産庁(UKIPO)がSEPに関する協力覚書を締結
Kathi Vidal・米国商務部知財担当次官兼USPTO長官とUKIPOのAdam Williams長官は6月3日、協力覚書(MOU)を締結した。双方は利害関係者のSEP問題に対する認識を高めるためのアウトリーチ活動(outreach activity)の実施を含め、SEP 関連事項で協力していく。この覚書は署名した日から5年有効となっている。

本報告書では、2024年第2四半期において、各国及びWIPOが政策により充分なSEP情報を提供して情報の透明性の問題を改善していること、WIPOとUKIPOがより具体的な戦略の中でSEP専門ページを設置してSEPの情報が分散する問題を解決し、協力が必要な利害関係者が充分にコア問題を理解して争議解決コストを低減できるよう、専門知識と情報を提供していることが観察されている。EUのSEP規則草案では同じ目的を達成するためのコンピテンスセンターがある。また、注目に値するのが、必須性検査も各方面の政策文書において共通する部分であるということである。過去の訴訟事例及び欧州連合と英国の各界の意見調査報告においては、必須性検査の方法論に一致性はみられないが、これはSEP論争問題の核心であり、各国又は国際組織の政策が推進されるに伴い、各方面が受け入れることが可能な必須性検査の規則が出てくるだろうと楽観できる。
本稿の趣旨は、世界のSEPに関する政策動向の最新情報を提供することであり、各界多いに参考にしていただきたい。本稿に関する問い合わせやより詳しい情報については以下に連絡のこと。

專利審査二組通訊審査科徐雨弘科長
Tel :(02)2376-7216
E-mail:gogo20378@tipo.gov.tw

*「2024年第2四半期の標準必須特許の動向調査報告書(中国語)」は上記URLの「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能。

2.知的財産権紛争

(2024.07.30 工商時報第A12面全訳)
2-1 迫りくる特許訴訟 AIブームで特許訴訟がテクノロジー企業の新しい戦場へ
AIブームの中、特許訴訟が新たな戦場となっている。国立陽明交通大学科技法律学院の創始者・初代院長である劉尚志教授は、特許の排他権は従来テクノロジーメーカーの戦いの武器であったが、生成AIの誕生は特許の照会、出願、取消し等の行為における神の助けであり、特許権者はナイフに代わり銃を手に入れたようなもので、特許訴訟は大幅に増加し、より激化すると予測されると指摘した。
ファーウェイは近年、中国地方裁判所においてメディアテック(MediaTek)に対し5G特許権侵害訴訟を提起したが、メディアテック及び子会社のHFI InnovationとMTK Wirelessも反撃し、ファーウェイが特許を侵害しているとして英国の裁判所に訴訟を提起した。
3D NAND Flashの大手、長江存儲(YMTC)は、米国北カリフォルニアにおいて、11項目の特許侵害で再びマイクロン・テクノロジに対する訴訟を提起した。SKハイニックス、マイクロン・テクノロジ、サムスン電子等の企業は特許管理会社(NPE)を通して特許訴訟戦を繰り広げており、特許訴訟が雨後の筍の如く出現している。
劉尚志教授によると、特許訴訟は欧米、中国等の市場に対する特許所有者としての実力を示すもので、主に実体製品の販売と利益との関係であり、特許の歴史をみると、たとえば無線通信チップ大手のブロードコムがスマホチップ大手のクアルコムに対して提起した訴訟においては、ブロードコムは特許訴訟で強さをアピールするとともに一挙に市場の知名度をあげており、ファーウェイがメディアテックに目を付けたのも同じ道理だと予測される。
特許権の「使用」には、製造、販売の申し出、販売、使用、又はこれらを目的として輸入する行為が含まれる。つまり、上流のチップメーカーや部品を使用する下流のOEMメーカーといった関連する行為を行う者は、権利侵害があれば特許権者から訴えられる可能性がある。
ファーウェイの産業的立ち位置は特殊で、中国におけるTSMC、インテル、クアルコム、メディアテックに相当し、さらに通信プロバイダー業者でもある。ファーウェイは5G、6Gの標準必須特許を掌握しているため(特に5Gの特許件数は膨大)、たとえ品質は最強でなくとも、サプライチェーンにおいては、中程度又はより弱いライバルを選んで特許訴訟で圧力を加えており、そのような対象は実に多い。
ファーウェイの標準必須特許は規定により許諾必須のため、メディアテックのような被許諾者も必ず支払いをしなければならない。ファーウェイとメディアテックが合意していない原因は、主にライセンス料の価格が適切であるか否かであるが、90~95%の特許訴訟は最終的に和解していることから、双方が談判して和解に終わると予想される。
NPEの問題については、市場には①特許主張主体(Patent Assertion Entity;PAE)、②特許不実施主体(Non-Practicing Entity;NPEs)、③パテントトロール(Patent Troll)又はパテントゴキブリ(中国語「專利蟑螂」、Patent Trollの意味)の3種類があるところ、これら3つはいずれも製造も販売も行わないので、特許訴訟において反訴の対象とはならない。
市場に新たな競合他社が出現することを好まないテクノロジーメーカーもいるが、訴訟には多大な費用がかかり、訴訟合は割に合わないとの考えから、PAE又はNPEなどへ特許権を移転することを選択し、特許賠償金又はロイヤリティを取得するため、訴訟を通じて潜在的な特許権者に訴訟を提起する。
この3者は2000年代に増加し、米国では50%~60%の特許訴訟がNPE等を通してされたものであった。当時は特許買収事件が多く、NPEによる特許訴訟も大幅に増加し、一時は全世界で6,000件に達したが、現在はすでに特許売り手市場から買い手市場に転じており、特許の質が量より重要視されており、買い手もより慎重に選択している。
AIの議題に戻ると、生成AIの誕生後、テクノロジーイノベーションが加速し、特許件数の増加も加速した。企業は有用な特許を使いたいが、特許にお金を払わなければ、これはつまり権利侵害である。このような状況において、特許権者はロイヤリティの徴収、訴訟提起、又は訴訟を利用して競合他社を市場から追いやるという選択が可能である。
AIビッグデータの支援により、特許権の生態は大きく変化しており、過去の特許を数分の検索で1,000件以上も見つけることができ、発明者の設計回避、革新改良に役立っている。一方、特許権者及び商標権者もAIの力を借りて迅速に権利侵害者を見つけることができる。米国の中華レストランチェーン「Panda Express」は、AIで50~60の商標権利侵害店を見つけることができた。これはほんの一例だが、この数か月でもすでに大量の案件が発見されており、劉尚志教授は、今後特許出願がより多くなり、より容易に訴訟提起されることになるだろうと予測している。

(2024.07.31 中国時報第A8面全訳)
2-2 テスラの充電ステーションの営業秘密を無断で窃取し、ヘッドハンティングされた中国企業に漏洩した台湾人幹部に、懲役2年の判決
テクノロジー大手の台達電子(デルタ電子:DELTA)の阮・元幹部は、デルタ電子が1.35億台湾元(約6.17億円)を投じて研究開発したテスラの充電ステーションの営業秘密を隙を見て個人のパソコンにダウンロードし中国の会社に転職した。検察が彼の中国から支給されたパソコンを調べたところ大量の機密資料が見つかり、桃園地方裁判所の裁判官は、台湾のハイテク産業の発展を脅かすものだと非難したが、未だに犯行を否認しているため、営業秘密法違反として2年の懲役の判決を下した。
検察の調べによると、阮はデルタ電子でテスラとの充電ステーションの研究開発プロジェクトを担当していながら、中国のハイテク企業に高額でヘッドハンティングされ、機密情報を持ち出して転職した。検察は通報を受け、阮が2021年末に中国から台湾に帰国した際に防疫ホテルで逮捕したところ、中国の会社から支給されたパソコン内からデルタ電子が研究開発したテスラの充電ステーションの技術ファイルが見つかった。
阮は、残業のための個人的使用でデルタ電子のファイルをクラウドと自分のパソコンに複製したもので、デルタ電子から支給されたパソコンのハードウエアが破損してデータを失うことも防止することができると弁明し、さらに、法規データを中国企業が支給したパソコンにダウンロードしたのは、辞典的用途のためで、不注意でデルタ電子のファイルも一緒に複製しただけであるとして、使用したのは公開されている照会可能なデータだと強調した。
しかし、桃園地方裁判所の裁判官は次のとおり判示した。デルタ電子は文書データを残業のために持ち帰る、個人のストレージデバイスに保存する、個人のクラウドにアップロードすることを禁止しており、阮が会社の機密ファイルを個人のパソコンに複製したことは台湾デルタの情報セキュリティ規範に明確に違反しており、一時的な残業のために持ち帰ったとしても、残業任務が完了する、又は離職届に署名する際にこれらを全て削除するべきであるが、会社の秘密保持施策に故意に違反して機密ファイルを削除せず、長期的に保管する理由はあるのか。公開されている法規ならば再度検索すればよいのにわざわざそうしたのは、法規データと営業秘密を同じフォルダに保存していたためであると推測される。阮の弁明は訴訟の際の責任逃れのための発言に過ぎず、採用するには足らない。
裁判官によると、阮がかつてデルタ電子の研究開発員であり、窃取した営業秘密はデルタ電子が1億3,495万台湾元(約6.17億円)を投じた自主研究開発において長期にわたり繰り返しテスト、検証した設計の成果であり、電動自動車の充電ステーション産業において独創的で技術的にリードしていることを考慮すると、これは極めて機密性の高いファイルであるところ、テスラ第2世代ウォールコネクターの販売利益は毎年1億6,000万米ドル(約239億3,000万円)に達しており、競合他社に奪われた場合、デルタ電子の世界における充電ステーション市場の競争力に影響し、台湾のハイテク産業のライフラインにも打撃となる。さらに、阮はいまだに謝罪もなく、犯行後の態度も悪いため、裁判官は中国地区で使用する意図で「営業秘密法」に違反したとして有期懲役2年の判決を下した。

(2024.08.06 自由時報電子報要訳)
2-3 特許権侵害訴訟の被告となったTSMC パテントトロールから技術を守るとコメント
米国で登記しているAICP社は先週木曜日(8月1日)、米国テキサス州東区地方裁判所へ、台湾積体電路製造(TSMC)が7件の集積回路に関する特許を侵害しているとして権利侵害訴訟を提起した。AICPは、TSMCがフリースケール・セミコンダクタ(現在のNXPセミコンダクターズ)用に生産したHMP製品、聯発科(メディアテック)用に生産した28nmプロセス製品、アップルA15 Bionicに搭載されたFinFETの5、7、10、16 nmプロセス製品が、いずれもAICPの特許を侵害しており、TSMCが6件の28nm特許を侵害し、1件のFinFET特許を侵害していると指摘。
提訴に対しTSMCは、この事件はいわゆるパテントトロールの特許不実施主体(Non-Practicing Entity;NPEs)による典型的な事例で、すでに法的手続に入っており、TSMCは司法手続を通じて自社技術を守っていくとの声明を発表した。

(2024.08.12工商時報第B3面全訳)
2-4 旺矽に提訴される 穎崴:企業運営に重大な影響は無し
穎崴科技(Win Way、以下「穎崴」という。)は11日、知的財産及び商業裁判所より郵送された旺矽科技(MPI、以下「旺矽」という。)の起訴状及び付属書類の謄本を8月9日に受け取り、原告の旺矽は昨年11月10日に知的財産及び商業裁判所へ当社及び責任者の王嘉煌等に対し、営業秘密の民事訴訟を提起し、連帯賠償請求2億台湾元(約9億円)及び法定利息の賠償を求めたと公告した。
穎崴と旺矽はともに半導体のインターフェーステストメーカーで、旺矽は以前穎崴及び旺矽を離職した元職員を営業秘密法違反で告訴したが、昨年下半期に新竹地方検察署が不起訴処分を下していた。
穎崴は9日に起訴状を受け取った後、企業権益を守るため、すでに弁護士に処理を依頼したと強調した。
穎崴は、事件は訴訟手続に入っており、現在得ている情報及び上述の金額からみると、この訴訟案件は企業財務及び業務に重大な影響を与えておらず、上述の訴訟については企業権益を守るため積極的に対応すると述べた。
穎崴は、弊社は他人の知的財産権及び技術の自立を尊重し、営業秘密を不法に窃取することはないと説明した。

3.模倣品関連

(2024.08.01聯合報電子報要訳)
3-1 Shopeeでクラッキング版Switchを販売した販売者が起訴された
新北市新荘の林という男は、2022年の年末から2023年9月24日までShopee(蝦皮購物)に開設したゲームワークショップの出品場所において、ゲーマーに任天堂Switchの不正コピー防止機能をクラッキングしたMOD(ゲームのシステム改造)チップを提供し、また模倣ゲームソフトを販売して、利益を得た。
任天堂は昨年8月8日、林の出品場所で改造されたSwitch本体とメモリーを購入した。検察・警察は昨年11月29日、林の家宅捜索を行い、その場でMODチップモジュール11組、MODソフトケーブル9個を押収した。さらに昨年1月1日から9月24日までの取引記録578件がみつかり、利益は合計478万8761台湾元(約2,135万円)にのぼった。任天堂の訴えにより、新北地方検察署は著作権法違反等の罪で林を起訴した。

(2024.08.02 中国時報第A7面全訳)
3-2 食通が告発 金門高粱酒を偽造販売していた3容疑者を摘発
金門高粱酒好きのある食通が、去年の年末に飲んだ金門高粱酒の味がおかしいため、密造酒を飲まされたかもしれないと怒り心頭でわざわざ飛行機で金門島に渡り警察に告発した。刑事局知的財産偵査大隊が追跡調査したところ、この食通が飲んだのは本当に密造酒で、捜査の末、金門高粱酒の空き瓶を回収し、密造酒を入れて偽造ラベルで箱詰めしたあと販売していた鍾、洪、謝の3名の容疑者を摘発した。権利侵害市場価格は6,000万台湾元(約2億6,200万円)を超えるとみられている。
この金門高粱酒好きの食通は、去年の年末に高雄の某飲食店で食事をした際に飲んだ金門高粱酒に異変を感じ、密造酒ではないかと疑い、わざわざ金門まで飛び告発した。金門には私営の蒸留所はないため、金門県刑警大隊に告発された後、事件は刑事局知的財産偵査大隊に送られた。
警察の調べによると、高雄市烏松区でリサイクル業を営む51歳の洪容疑者は、拾ってきた金門高粱酒の空き瓶を溶剤で洗った後、72歳の鍾容疑者に下ろし、鍾容疑者が密造した金門高粱酒を空き瓶に入れていた。
密造が露呈しないよう、鍾容疑者は謝容疑者から高粱酒のベースとなる酒を購入したあと、香料などを調合して密造酒を調製し、瓶詰めしたボトルに中国から購入した金門高粱酒の偽ラベルを貼付し、金門高粱酒の偽蓋で封をして金門高粱酒58度として密造酒を偽造し、金門高粱酒の商標を模倣したシールテープで箱詰めし、市場価格を約1割下回る価格で飲食店や雑貨店に販売していた。
刑事局知的財産偵査大隊は、今年1月31日に捜索を開始し、現場で金門高粱酒の空き瓶8,159本、ラベル502枚、金門高粱酒の偽蓋309個、金門高粱酒の商標を模倣したシールテープ6巻きを押収した。金酒公司(注:金門県で高粱酒の製造と販売を行う公営企業)の鑑定によると、権利侵害市場価格は6,000万台湾元(約2億6,200万円)を超えるとみられている。鍾容疑者は逮捕後、密造酒供給の流れを詳細に話そうとしなかったが、密造酒販売に関する記録によると、密造酒販売の悪行はすでに10年以上に及んでおり、この間に300~400万台湾元(約1,300~1,750万円)の利益を得たとみられている。
警察の取り調べの後、商標法違反、詐欺等の罪により3名の容疑者は屏東地方検察署へ送致された。検察官の取り調べの後、鍾容疑者に5万台湾元(約22万円)、洪容疑者と謝容疑者にそれぞれ12万台湾元(約52万6,000円)の保釈金の支払いが命じられた。

(2024.08.08 聯合報電子報要訳)
3-3 刑事局が違法テレビAPPソフトと海賊版録画室を摘発 権利侵害額は少なくとも10億台湾元
ネットオークションサイトの捜査中、刑事局は違法にケーブルテレビ放送を鑑賞できるソフト「晴天TV APP」が販売されていることを発見した。警察の調査によると、容疑者は海賊版録画室を設置し、ツールを利用して中部のあるケーブルテレビ信号を盗み、Shopee、Facebook、LINEで有料ダウンロードして鑑賞できるようにしていた。警察は先月、録画室を摘発して容疑者らを逮捕し、その後著作権違反の罪で台中地方検察署へ送致した。
警察の調査によると、会員は約3,000人で、陳容疑者は不法に250万台湾元(約1,130万円)の利益を得ており、権利侵害市場価格は少なくとも10億台湾元(約45億円)を超えるとみられている。
容疑者らは日本のTBS、フジテレビ、NTV、テレビ朝日等を含むテレビ会社の著作財産権を侵害しており、すでに17社のテレビ会社が提訴している。

4.その他一般

(2024.08.07工商時報第A12面全訳)
4-1 イノベーションが要 損害保険業が専利、新保険の研究開発
金融監督管理委員会(以下「金管会」という。)の彭金隆・主任委員は6日、中華民国産物保険商業同業公会(以下「産険公会」という。)会員大会での挨拶の際、セキュリティ管理メカニズムが整っていさえすれば、金管会は損害保険業の新型保険の範囲を大幅に拡大すると発表した。金管会の今後の緩和施策について、多くの損害保険業者はすでに事前準備を行っており、新型コロナウイルス流行期間中に積極的に研究開発に取り組み、特許出願を行い、また新規保険の開発に努力してきた。
彭金隆・主任委員は、損害保険業の発展は安全と発展を並行して進めるべきであり、高度な自律とセキュリティ管理施策があれば、金管会は損害保険業の発展に全力で協力する旨、その他多くの国の損害保険及び生命保険の規模からみて台湾の損害保険業はまだまだ発展の余地がある旨述べた。
また、同主任委員は損害保険が以下の3方向へ発展するよう期待している。1つ目はグリーン保険、2つ目はフィンテック・イノベーション、3つ目はファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)である。同主任委員は、今後、金管会は保険業のテクノロジー・イノベーションを支援するため、業者が「縛られている」と感じている規定を緩和し、試行範囲を大幅に拡大する予定であると述べた。また、損害保険の保険期間は通常1年又は短期であり、生命保険のように長期契約期間であって間違うと後のコストが高くなるものとは異なり、過失を許容する余地が大きい旨、過失をおそれるなら新保険の試用期間を短縮することもできる旨述べた。
防疫保険(コロナ保険)は多くの損害保険業に莫大な損失を与えたが、大部分の損害保険業は研究開発への投資を続け、特許出願を行っている。損害保険業界によると、これらの発明及び専利は引受業務及び保険金給付業務を導入することで、マンパワーの削減ができるだけでなく、さらに引受業務、保険金給付業務をさらに正確に、迅速にすることができ、保険会社及び保険加入者に利便性及び安全性をもたらすことができる。
富邦産険(Fubon Insurance)、国泰産険(Cathay Century Insurance)、新安東京海上産険(Tokyo Marine Newa Insurance)、泰安産険(Taian Insurance)及び台湾産険(TFMI)等の多くの損害保険は、新型コロナウイルス流行期間中に多くの専利を取得し、現在までにそれぞれ38件、30件、19件、12件及び10件の専利を取得している。
このほか、産険公会の李松季・理事長は、直近5年に損害保険業の保険の契約金額は急速に成長しており、5年の内に1,760億台湾元(約7,978億円)から2,760億台湾元(約1兆2,511億円)に成長し、来年の次期理事長への交代時には3,000億台湾元(約1兆3,600億円)の大台に乗ることを期待すると述べた。
また、新規保険について、泰安産険の李松季・董事長は、地球温暖化に直面し、泰安産険は業界初のエネルギー技術サービス業界専門の「エネルギー技術サービス業の財産及び省エネ効果保険」を研究開発すると述べた。

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