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知財ニュース368号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.368)
発行年月日:2024年7月31日発行

主要ニュース目次

1. 法律・制度
(2024年7月16日 中国時報第A3面全訳)
1-1 「AI基本法」草案の発表

2. 知的財産権紛争
(2024年7月15日 聯合報要訳)
2-1 約20億台湾元の営業秘密漏洩!職員が無断で「商品ファイル複製」、起訴される
(2024年7月20日 工商時報第A3面全訳)
2-2 特許権侵害 ファーウェイが5G等モバイル通信技術をめぐり、メディアテックを提訴
(2024年7月28日 工商時報第A2面全訳)
2-3 モバイル通信技術の特許攻防 メディアテックがファーウェイに反撃し英国で提訴

3. 模倣品関連
(2024年7月19日 中国時報第A9面全訳)
3-1 ブランド模倣品販売店を摘発 権利侵害価格2億台湾元超え

1.法律・制度

(2024.07.16中國時報第A3面全訳)
1-1 「AI基本法」草案発表
AI(人工知能)ブームの高まりにあわせ、国家科学及び技術委員会(以下「国科会」という。)は15日、「AI基本法」草案を予告し、持続可能な開発、人間の自律、プライバシー保護、情報セキュリティとセーフティー、透明性と説明可能性、公平性・無差別性、及び説明責任等の7大基本原則を制定し、政府によるAI関連産業の補助、委託、出資、奨励、指導、又は租税、金融等の財政優遇施策の提供を明文化する。
国科会は、AI技術の近年の急速な発展は、産業と社会活動全体に幅広い経済・社会効果をもたらしており、台湾産業及び国家発展のコア・コンピタンスであると指摘した。AI技術が直面するであろう困難に鑑み、国科会の呉誠文・主任委員は、自ら各界の意見を諮問し、「AI基本法」草案を提出した。
「AI基本法」草案は合計18条の条文からなり、9月13日までを予告期間とする。また、AI応用の発展を導くため、草案では、政府は積極的にAIの研究開発、応用及びインフラ構築を推進し、AI関連産業の補助、委託、出資、推奨、指導、又は租税、金融等の財政優遇施策の提供を実施すること、政府は民間と協力し、AIイノベーションの運用を推進し、国際共同開発・研究に参加すること、各レベルの高等教育機関、産業、社会及び公的機関のAI教育を引き続き推進し、国民の素養を向上させることを規定している。
AIが個人又は社会に新しいリスク又は影響をもたらす可能性について、草案では米国の立法例を参考にし、政府はAI応用により国民の生命、身体、自由又は財産の安全、社会秩序、生態環境に損害を与えることや、利益衝突、不均衡、差別、虚偽の広告、誤解を招く情報又は偽造等の事情がもたらされることを避けるべきであると規定している。
草案はEUの「AI基本法」の規範を手本とし、デジタル発展部が国際基準又は規範を参考に、AIリスク分類の枠組みを推進し、リスク分類に基づき、潜在的な弱点及び乱用状況を評価することで、AIによる意思決定の検証可能性及び人為的可制御性を高めることを明文化している。

2.知的財産権紛争

(2024.07.15 聯合報要訳)
2-1 約20億台湾元の営業秘密漏洩!職員が無断で「商品ファイル複製」、起訴される
桃園平鎮にある電池正極材料製造会社は、世界初のリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)正極材料メーカーであり、リチウム電池正極材料メーカーで唯一、電池材料の研究開発と設備開発力を有する企業である。60歳の鄒被告はかつてこの会社で材料事業所生産技術部プロジェクトマネージャーとして従事し、会社内部の研究開発プロジェクトに参加していたが、昨年12月8日から昨年12月26日までの間に、LMFP電池正極材料の生産技術、配合及び設備の研究開発機密情報に接触する機会を利用し、無断で会社商品に関する配合、生産プロセス、デザイン、及び5,861個の設備の研究開発営業秘密データファイルを個人のUSB、ポータブルストレージデバイスに複製し、離職した。鄒被告は大量の会社内部機密を複製し、19.44億台湾元(約93億円)相当の最新商品の営業秘密を漏洩し、企業に巨額の損失をもたらした。
先日、検察側の捜査が終結し、鄒被告が営業秘密法第13条の1第1項第2号、3号の使用許諾を超える複製、及び刑法第359条の正当な理由なく他人の電磁記録を取得した等の容疑を認め、公訴を提起し、鄒被告が引き起こした損害を考慮し、ハイテク産業の健全な発展を守り、国家産業の競争力を確保するため、裁判所へ重刑を科すよう求めた。

(2024.07.20工商時報第A3面全訳)
2-2 特許権侵害 ファーウェイが5G等モバイル通信技術をめぐり、メディアテックを提訴
中国の情報通信・設備大手のファーウェイ(Huawei)が先日、特許権侵害を理由に、中国の地方裁判所に台湾IC設計メーカーのメディアテック(MediaTek)を提訴し、両岸のハイテク業界の注目を集めている。中国の知的財産権専門家は、ファーウェイが今回提訴したメディアテックの特許は、5G(又は4G、3G等を含む)等のモバイル通信技術に関わる可能性があると推測している。
中国メディアは19日、メディアテックに近い人物からの話として、メディアテックとファーウェイ間で2~3年前に関連特許の費用について齟齬が生じ始め、最近になっても双方は依然として価格問題で同意に至っていないと報道した。ファーウェイは端末価格に基づいてメディアテックに相応の要求を提出したが、メディアテック内部では価格が高すぎると考えた。上述の人物は、事態はファーウェイが和解を選択するか否かの様子見の方向に向かっていると指摘した。
中国メディア「企業専利観察」の18日の報道によると、専門家の推測が正しければ、これはファーウェイにとって現在の世界のスマホ業界における既存の特許ライセンスモデル下における新しい試みであり、スマートフォン端末メーカーから特許ライセンス料を徴収することからさらに進んで、チップメーカーからライセンス料を徴収する可能性を検討するものである。言い換えれば、特許ライセンスの階層が「端末レベル」から「部品レベル」に移行しているといえる。
報道では、現在3G/4G/5Gモバイル通信技術はチップだけに固定化されているが、費用徴収の面では、全ての特許権者はチップメーカーから費用徴収しているのではなく、スマホ端末メーカーから費用徴収していると指摘している。
消費者にとっては、将来的に費用徴収モデルが「部品レベル」に移行し、アップル、サムスン電子、ファーウェイ等のスマートフォンOEMメーカーの特許ライセンス料の支払いが減少し、サプライチェーンのチップメーカー、例えばメディアテック、クアルコム、ハイシリコン(HiSilicon)といった企業が主な特許の費用を処理することになる。このモデルの下では、消費者にとってスマートフォンのコストがさらに下がると期待される。
ファーウェイの特許収入は3年前から世界で拡大していると報道されている。2023年、ファーウェイ法務部の沈弘飛・副総裁は、ある知的財産権会議において、ファーウェイの特許収入は5G、WiFi6、4G等の情報通信技術(ICT)の主要な標準の技術で構成されていると述べた。
また沈弘飛・副総裁は、以下のように述べている。ファーウェイの2022年の特許ライセンス収入は約5.6億米ドル(約861億円)で、2年目に特許ライセンス収入がライセンス支出を超えた。過去の累計ライセンス料の支出は累計収入の3倍となった。ファーウェイはすでに世界で出願を展開し20%の5G、Wi-Fi6特許、また10%の4G特許、15%のNB-IoT、LTE-M特許を有しており、主要な特許ライセンス収入は上述の特許から成っている。ファーウェイは、特許は合理的な費用徴収をすべきであり、低すぎても高すぎてもいけないと常々主張している。

(2024.07.28工商時報第A2面全訳)
2-3 モバイル通信技術の特許攻防 メディアテックがファーウェイに反撃し英国で提訴
台湾IC設計大手のメディアテック(MediaTek)と中国情報通信巨頭のファーウェイ(Huawei)の特許戦争は、異国の地での戦いという新ステージに入った。ファーウェイは先ごろ中国地方裁判所において、メディアテックが5G(又は4G、3G等)モバイル通信技術の特許侵害を犯しているとして、訴訟を提起した。数日後、メディアテックが反撃を行い、英国の裁判所にファーウェイがメディアテックの特許を侵害したと提訴した。この一連の訴訟行為により、双方の特許戦争は激しさを増している。
ファーウェイに反撃するため、メディアテック及び子会社のHFI InnovationとMTK Wirelessは先日、ファーウェイが特許を侵害したとして、英国の裁判所にファーウェイに対する訴訟を提起したと、外国メディアは報道した。これについて、メディアテック側は、案件はすでに司法手続に入っているためコメントを差し控えるとし、ファーウェイ側もコメントを差し控えた。
中国メディアは18日、ファーウェイが中国の地方裁判所にメディアテックに対する特許権侵害訴訟を提起し、市場の注目を集めていると報道した。「ファーウェイがメディアテックに対しモバイル通信技術に関わる可能性がある特許訴訟を提起」したというニュースについて、メディアテックは19日、「この訴訟案件は弊社に影響を与えず、該案件はすでに司法手続きに入っていることからコメントを差し控える。」と即座に発表した。
情報筋によると、メディアテックとファーウェイは2~3年前に関連特許の費用について齟齬が生じ始めたファーウェイは端末価格に基づいてメディアテックへ相応の要求を提出したが、メディアテック側は価格が高すぎると考え、双方は合意に至っていなかった。
ファーウェイがメディアテックへ訴訟を提起したことについて、中国の業界内の専門家は、これはファーウェイにとって現在の世界のスマートフォン業界における既存の特許ライセンスモデル下での新しい試みであり、スマートフォン端末メーカーからのライセンス料徴収からさらに進んで、チップメーカーからのライセンス料徴収の可能性を検討するものである。言い換えれば、特許ライセンスの階層が「端末レベル」から「部品レベル」に移行しているといえる。
ファーウェイの特許収入は3年前から世界で拡大していると報道されている。2023年、ファーウェイ法務部の沈弘飛・副総裁は、ある知的財産権会議において、ファーウェイの特許収入は5G、WiFi6、4G等の情報通信技術(ICT)の主要な標準の技術で構成されていると述べた。
また、世界知識所有権機関(WIPO)が発表した最新の統計データによると、ファーウェイ、韓国のサムスン電子及び米国のクアルコムは、2023年WIPO国際特許制度の世界のリードユーザー(Lead User)であり、ファーウェイの2023年におけるPCT(WIPO「特許協力条約」)出願数は世界1位であった。

3.模倣品関連

(2024.07.19 中国時報第A9面全訳)
3-1 ブランド模倣品販売店を摘発 権利侵害価格2億台湾元超え
内政部警政署刑事警察局智慧財産権偵査大隊の偵二隊は、捜査の過程で台中のブランド品リサイクルショップで、模倣品の疑いのある商品が販売されていることを発見。プロジェクトチームを設置し今年4月、捜査令状を提示し2カ所の営業場所を捜索し、王という女性ら3人を摘発し、ブランド模倣品約5,000件を押収した。権利侵害市場価格は2億台湾元(約9.5億円)を超え、商標法違反として3人を台中地方検察署へ送検した。
偵二隊は、王(女53歳)、王(女40歳)及び邱(男48歳)は、去年9月に台中市西区でブランド品リサイクルショップを2店舗経営し、著名ブランドのリサイクル品を販売していたが、実際には海運、空輸で中国広州から「真正品そっくりの模倣品」を仕入れ、市場価格の90%オフで販売し利益を得ていた。
警察はプロジェクトチームを立ち上げて長期的に監視し、容疑者が輸入し在庫保管した場所を突き止め、4月に摘発したが、この期間で、王らはすでに5,000件以上を販売し、不法に60万台湾元(約288万円)の利益を得ていた。また、差し押さえた5,000件以上の模倣品のうち、エルメスの模倣品は、ブラックライト模倣防止、職人刻印等の技術も施されており、オリジナルメーカーも驚くほどの高度な模倣度合いであった。
警察によると、押収したリサイクル商品はオリジナルメーカーによる鑑定後に模倣品と確認されたが、一部の模倣品摘発物とオリジナルメーカーの模倣防止技術がほぼ同じで、真贋判別が難しく、オリジナルメーカーの機械でやっと識別できるほどであった。また、ブランド模倣品による権利侵害市場価格が2億台湾元(約9.5億円)を超えており、近年の摘発案件数及び権利侵害市場価格の中でも最も大規模な摘発案件となった。
知財大隊は、商標法の規定に基づき、他人の登録商標と類似すると明らかに知りながら販売、又は販売を意図して所持、展示、輸出又は輸入した場合は、1 年以下の有期懲役刑又は拘留に処し、あるいはそれぞれに5万台湾元(約24万円)以下の罰金を併処されるため、一般民衆に対し、模倣品商品を販売しようという出来心を持たないよう注意喚起を呼びかけている。

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