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知財ニュース367号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.367)
発行年月日:2024年7月15日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2024年7月1日 智慧局ニュース全訳)
1-1 改訂された「専利審査基準」第二篇の特許実体審査第1章、3章、11章、14章及び第五篇の無効審判第1章が、2024年7月1日より発効
(2024年7月5日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「生成AIが直面する著作権議題の産業対応実務セミナー」が無事終了

2. 法律・制度
(2024年6月25日 聯合報第A7面全訳)
2-1 AI基本法草案を8月に予告 肖像権侵害不可

3. 模倣品関連
(2024年6月28日 中国時報第A9面全訳)
3-1 基隆 アカウントを貸与し模倣品販売 発達障害児の母執行猶予2年

1.智慧局ニュース

(2024.07.01 智慧局ニュース全訳)
1-1 改訂された「専利審査基準」第二篇の特許実体審査第1章、3章、11章、14章及び第5五篇の無効審判第1章が、2024年7月1日より発効
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-962661-e1b69-1.html
一、 「専利審査基準」第二篇の特許実体審査第1章、第3章、第11章、第14章、及び第五篇の無効審判第1章が改訂され、2024年7月1日より発効する。
二、 発布令、「専利審査基準」第二篇の特許実体審査第1章、第3章、第11章、第14章、及び第五篇の無効審判第1章、基準の各章改訂ポイント説明および改訂対照表は、上記リンク先の智慧局サイトの「檔案下載(ファイルダウンロード)」(中国語)」を参照。
※上記URLからダウンロードできる「附件11_113年專利實體審査基準各章修正重點説明」によれば、改訂のポイントは以下のとおりである。

2024年版専利審査基準各章改訂のポイント説明(公告版)

関連法令の改正への合致、審査実務のニーズの迅速な反映、統一した見解の整理及び審査の質の向上のため、審査基準の各章の内容をチェックし、審査原則及び事例を追加し、文言修正を行い、審査基準の完備を図る。改訂のポイントは以下のとおり:
一、 第二篇第1章 明細書、専利請求の範囲、要約及び図面
   1.3.1 実施可能要件において、送付する配列表の電子ファイルの言語について、専利法施行細則第17条第7項の条文内容と一致させるため改訂した。
二、 第二篇第3章 特許要件
   2.6.4 新規性の擬制喪失の判断基準について、例1を追加し、新規性の擬制喪失の判断について具体的に説明した。
三、 第二篇第11章 特許権存続期間の延長
農業委員会が農業部に改組されたことに対応して、章全体の内容の名称を修正した。
   3.1.3.1.1 医薬品の国内外における臨床期間に関し、(2)で国外の臨床試験報告書はICHの規範に符合すべきとしている点について、当該規範の英文名称の付記を削除し、現行のICH組織の英文名称を付記するように変更修正した。
四、 第二篇第14章 生物関連発明
   4.1及び4.3について、専利法施行細則第17条第7項の条文内容と本局がすでに実施しているWIPO標準ST.26に合わせて、基準の内容を改訂した。
   4.3.2の配列表の資料の送付について、出願を電子出願方式で提出した場合、添付する配列表をWIPO標準ST.26に符合したXML形式の電子ファイルとしなければならない点、書面で提出した場合、書面の配列表をWIPO標準ST.26 WIPO標準に符合したものとするか、WIPO標準ST.26に符合したXML形式の電子ファイルを送付することができる点を説明した。
五、 第五篇第1章 専利権の無効審判
   2.1.2利害関係者について、無効審判における利害関係者とは何かを説明し、また、利害関係者の審査は合理的な程度の調査と形式上の判断によって行われるべきである旨を説明した。
   9.無効審判と専利の権利侵害訴訟の関係について、知的財産案件審理法の旧第17条がすでに第44条に改正され、本局の訴訟参加補助の規定が削除され、また、専利主務官庁へ意見聴取する制度が新設されたことから、当該条文及びその立法説明に合わせて基準の関連内容を修正した。
六、 その他の改訂内容
法条文の内容に合わせ文言修正及び誤字脱字等を修正した。

(2024.07.05 智慧局ニュース全訳)
1-2 「生成AIが直面する著作権議題の産業対応実務セミナー」が無事終了
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-963677-e8be5-1.html
台湾内外の産業実務界がAIと著作権議題の対応策について更に理解するため、また公衆の意見交流を促進するため、経済部智慧財産局は2024年7月5日、台湾大学法律学院霖澤館にて「生成AIが直面する著作権議題の産業対応実務セミナー」を開催した。著作権専門学者の章忠信・助教授、頼文智・弁護士、国家科学及び技術委員会(以下「国科会」という。)の大規模言語モデルトレーニング組の蔡宗翰・コーディネーター、Microsoft台湾の楊千旻・法務協理、Google台湾の林品瑄・法務長、Adobeの黄耀興・香港及び台湾主席工程顧問等のAI産業界を代表する講師が招聘され、産・官・学界等から200名を超える参加者が集まり、生成AIに関する著作権議題についての深い討論や意見交流を通して、異なる産業間での相互対話と理解が促進された。
智慧局の廖承威・局長は、開会の挨拶において、AI技術の重要性と生成AIの急速な発展により課題がもたらされており、著作権者の利益の保護とAI産業の発展のはざまでいかにバランスをとるか、現在各国は依然として慎重に対応を検討中であるところ、今回のセミナーによって生成AIの著作権議題に対する産業界の戦略について各界に理解していただけると強調した。
セミナーは二つのテーマに分けて進められた。第一セッションのテーマは「生成AIの著作権についての挑戦と発展」で、まず東呉大学法学院の章忠信・助教授が生成AI関連の著作権問題について分析し、ユーザーの費用負担原則を重ねて表明し、ニューテクノロジーが生み出す利益を適切に分配し直すべきであると呼びかけた。次に益思科技法律事務所の頼文智・弁護士が、企業の生成AI導入について、企業が有する優良な自社データを利用すること等を含むサービスの構築から使用までにおける各段階のリスク評価と管理のアドバイスを提示した。最後に中央大学情報工学科の蔡宗翰・教授が、国科会中文大規模言語モデルTAIDEと官民の部署が協力し取得したトレーニングデータについて、モデルの調整及びトレーニングによって台湾の特徴を有するデータが生成できるという情報を共有した。
第二セッションのテーマは「著作権分野が担うAIの実践と応用」であった。AI産業界の代表らは、取得したライセンスの活用、パブリックドメインのデータ利用によりトレーニング可能な、安心して使用できるモデル、フィルタリングの運用等の技術による、第三者の権利を侵害するコンテンツ生成の回避、及び、モデルの学習段階における著作権問題の扱いと対応方法など、責任をもって生成AIを開発する方法について提示すると同時に、AI開発企業及びユーザーに対して著作権を尊重するよう呼びかけた。
智慧局は、知的財産(専利、商標、著作権)は高度な国際調和事項であり、AIと著作権法制は広範囲に影響を及ぼすところ、新興テクノロジーが産業に及ぼす影響及び実務を理解することは、AIテクノロジーがもたらすチャンスと課題への対応に役立つため、今後も引き続き各国の発展動向を注視し、台湾の施策制定の参考にすると述べた。

2.法律・制度

(2024.06.25聯合報第A7面全訳)
2-1 AI基本法草案を8月に予告 肖像権侵害不可
AI(人工知能)の発展に伴い、欧州議会は先日AI規制法案を可決した。これは、AIを監視し、且つ拘束力を有する、世界初の法律となった。国家科学及び技術委員会(以下「国科会」という。)は今年末までに台湾で初となるAI基本法草案を提出する予定で、国科会の呉誠文・主任委員は、今年8月に予告を行い、産業イノベーションと人権保障を考慮するという前提の下、例えば肖像権等を侵害してはならない等の項目を明文化すると述べた。
国科会は昨年「行政院及び所属機関が生成AIを使用する際の参考手引」を提出した。機密文書の作成は業務担当者が自ら執筆しなければならず、生成AIの使用を禁止し、営業秘密等に係る質問を生成AIに投げかけてはならないことを明文化する等の内容が含まれている。
現在、各国のAI規制法案の厳格さは異なっており、一部の国家では比較的開放的な立法方式で産業の発展を過剰に抑えないという傾向がある。呉誠文・主任委員は本新聞社のインタビューを受けた際、AI基本法草案に関し、すでに産業界と意思疎通のための会議を2回開催し、省庁横断的な意思疎通や国会での意思疎通を行っている点、草案は10月末には行政院に送られる予定であり、8月にまず対外予告を行う点、予告の内容は産業発展、イノベーション及び人権保障を考慮するものとなる点について述べた。
呉誠文・主任委員は、現在産業側からは比較的緊急性が高いとの主張がされており、法案を制定しなければ、どのようにすべきかわからず、研究開発に着手することへの懸念や、のちに法に抵触する、あるいは処罰されるおそれもあるため、基本法草案では、例えば実在の人物の肖像を不適切に応用し利用してはならないとするなど、権利侵害してはならない人権項目について明文化すると発言した。
また、呉誠文・主任委員は以下のように述べた。一部の規範は民法、刑法、個人資料保護法、著作権法等に見られるところ、既存の法令規範内容が今回の草案に重複することはないが、生成AIの応用は他人の原作又は既存の資料の権利を侵害する可能性があるため、原則として規制される。近いうちに衛生福利部等の省庁が続々と生成AIの手引きを発表する。今後は各省庁と討論し、完璧な法規システムを構築する。

3.模倣品関連

(2024.06.28 中国時報第A9面全訳)
3-1 基隆 アカウントを貸与し模倣品販売 発達障害児の母執行猶予2年
インターネットオークションビジネスをしている基隆の李という女は、発達障害児を育てる家計の足しになるよう、夫のインターネットオークションアカウントを、模倣品のCANON及びEPSONのインクジェット商品販売のために張鋭という男に貸し、収益から手数料を差し引いた後、張という男にお金を振り込んだ。CANONはインターネットオークション経由で商品を購入し模倣品であると確認した後、告発した。基隆地方裁判所は、李という婦女の家庭状況及び模倣品販売の犯行を酌量し、30日間の拘留又は罰金・執行猶予2年の判決を言い渡した。
基隆検察署の起訴状は、李という女はインターネット出品場所のアカウントの貸与及び集金代行が詐欺又は模倣品販売等の犯行の幇助となる可能性があることを一般社会経験で知り得ていたが、報酬のため、張という容疑者とインターネット上で協力の交渉をし、李という女は何も知らない夫の名義であるShopee(蝦皮)の出品アカウントを張容疑者に提供し、商標を模倣した補充用インクボトルを張が代理販売したと指摘している。
検察側によると、商品を販売後、李という女は自分名義の3社の銀行アカウントで集金し、報酬として2%控除後、張容疑者の指定アカウントに振り込んでいた。
CANONの代理弁護士である李文傑氏は2022年9月1日、まずは李という女の出品場所に発注し、658台湾元(約3,430円)でCANON商標が使用された、「GI-790」で使用可能な補充用インクボトル1組を購入し、商品が届いた後、商標の模倣品であることを発見し、直ちに警察に告発した。
警察は2023年2月3日及び22日、李という女の出品場所でEPSONの商標を使用した補充用インクボトル合計5本をそれぞれ購入し、EPSONへ鑑定に送ったところ、いずれも模倣品であることが判明した。警察は両方の事件を地検に送り、検察は《刑法》及び《商標法》の模倣品販売の幇助罪で起訴した。
裁判所の判決では、李という女は罪を認めたほか、主犯の追跡調査に協力することを同意したと指摘した。裁判所は、李という女が犯行後の態度は良好で前科もないことから家庭状況を考慮し、《刑法》の幇助犯規定を減刑し、30日間の拘留又は罰金・執行猶予2年の判決を言い渡した。

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