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知財ニュース366号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.366)
発行年月日:2024年6月28日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2024年6月13日 智慧局ニュース全訳)
1-1 商標登録出願の加速審査開始 登録取得の緊急需要のある業者は有効活用可
(2024年6月18日 智慧局ニュース全訳)
1-2 商標登録出願にかかる使用を指定する商品・役務名称の更新及び検索参考資料の内容変更の公告
(2024年6月20日 智慧局ニュース全訳)
1-3 「2024新南向知的財産国際カンファレンス」に7か国の専門家が集結し産業の市場開拓を支援

2. その他一般
(2024年6月14日 関務署プレスリリース全訳)
2-1 知的財産権保護を強化するため関務署は国際組織Reactと「2024知的財産権保護ワークショップ」を共同開催

1.智慧局ニュース

(2024.06.13 智慧局ニュース全訳)
1-1 商標登録出願の加速審査開始 登録取得の緊急需要のある業者は有効活用可
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-952140-0da4e-1.html
智慧局の「商標登録出願加速審査メカニズム」が本年(2024年)5月1日に正式に実施され、直ちに商標登録を取得する必要がある出願人に、商標登録を迅速に取得するルートを提供している。智慧局は、加速審査メカニズムには二大条件があると述べている。一つ目は、権利の即時取得の必要性、つまり「緊急性」である。加速審査を申請する際、業者には確実な緊急性がなければならない。二つ目は「利用者の手数料負担原則」で、加速審査費用を別途徴収する必要がある。原則的に加速審査の要件に該当する出願は、加速審査の申請が受理されてから2か月以内に本局が該案件について最初の審査結果通知を行うが、審査過程で補正通知又は審査の一時見合せが必要となる場合、加速審査の効率に影響し、短期間内に審査結果を出すことができなくなる。
商標加速審査の申請条件及び方法は難しいものではない。商標を出願してから智慧局が最初の審査通知を発行するまでに、直ちに権利を取得する必要がある場合、出願人は加速審査を申請することが可能である。基本的には、出願で指定した全ての商品・役務がすでに実際に使用されているか使用のための相当の準備をしている場合、又は、一部の商品・役務についてすでに使用しており、その出願商標を第三者が同意なく使用している、第三者が使用許諾を請求している、すでに市場参入又は出展等の計画がある等のビジネス上の権利取得の必要性、若しくは緊急性の証拠を提出できる場合、加速審査の申請条件に該当する。
現在加速審査が申請されている案件の中で、加速審査条件に完全に該当する最初の申請案件は、本日登録査定を取得する。その登録案件を例に挙げると、2024年3月1日に商標登録出願されていたが、第三者がこの出願商標について使用許諾を請求していることから、権利を即時に取得する必要が生じ、出願人は2024年6月4日に加速審査申請を行い、一区分6,000台湾元(約29,300円)の加速審査手数料を納め、商標使用許諾契約書等の関連証明書類を提出し、審査されたところ、商標法上の不登録事由はないとして、2024年6月13日に登録査定書が発行された。現在の商標審査の平均FA通知期間約6.2か月、平均審査終結期間約7.5か月と比べて出願人の審査待ち期間が短縮され、商業ポートフォリオ及び権利保護に有益である。
智慧局は、非伝統的商標タイプの出願の場合、商標争議に関係する案件の場合、指定商品又は役務の名称が広範である又は不明確である場合等、個別案件の状況によっては短期間内で審査結果を出すことができず、審査過程において通常補正又は審査の一時見合わせが必要になり、加速審査の効率に影響が出るため、出願人は自身で判断しなければならない旨、特に注意喚起している。また、加速審査の条件に該当するためには、出願した商標の図案は必ず実際に使用している商標と完全に一致する必要があり、先願又は登録商標との衝突の可能性を減らし、加速審査の効率を向上させるため、出願人は出願前に自ら調査を行う必要がある。加速審査を申請した案件が加速審査の条件に該当しない場合、手数料は返還されない。
台湾商標法は先願主義を採用しており、出願順に審査されるが、商標登録出願は年を追うごとに成長しているところ、審査のマンパワーには限りがあり、審査期間の短縮には限界がある。しかし、産業の発展及び民衆の権利保護のニーズに合わせるため、新しく改正した商標法では、商標登録の出願人が権利を即時に取得する必要がある場合、一般の出願の審査日程を圧迫することを避け、利用者の手数料負担原則の下、加速審査メカニズムを新設・推進し、迅速に商標登録を取得するルートを提供することで、商標登録取得の効率を大幅にアップさせることができる。智慧局は、権利を即時に取得する必要がある出願人に対し、この制度の利用を呼びかけている。
関連情報については、上記智慧局ウェブサイトのリンク先の「檔案下載(ファイルダウンロード)」からダウンロード可能(商標註冊申請案加速審查作業程序發布版、中国語PDF文書)。

(2024.06.18 智慧局ニュース全訳)
1-2 商標登録出願にかかる使用を指定する商品・役務名称の更新及び検索参考資料の内容変更の公告
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-953797-33ca3-1.html
「商品及び役務の(ニース)国際分類」第12-2024版の改訂に合わせ、商標登録出願にかかる使用を指定する商品・役務名称、総計114項目の追加、49項目の削除、また35項目のグループ・小類別名称又は備考事項の追加・削除・修正を行った(詳細は上記リンク先の「檔案下載(ファイルをダウンロード)」を参照(中国語))。
以上の変更は2024年7月1日より実施し、商標電子出願システム内の「使用を指定する商品・役務の類別及び名称」を同時に更新する(システムデータの正式な更新日程は、本局情報室の公告を基準とする)。
出願人が「ファストトラック」の運用を希望し、2024年7月1日以降、商標電子出願システムを通して登録出願する場合、願書に記載した使用を指定する商品・役務の名称と電子出願システム内の内容が異なり「ファストトラック」の条件に該当しないとして減免優待を受けられないことがないよう、出願前に最新の変更内容を確認すること。
「商標登録出願にかかる使用を指定する商品・役務名称(変更後の新バージョン)」の全ての類別資料は、本日より下記商標検索システム・ブーリアン検索よりダウンロード可。各界運用の参考にしていただきたい。
(https://cloud.tipo.gov.tw/S282/OS0/OS0303.jsp?l6=zh_TW&isReadBulletinen_US=&isReadBulletinzh_TW=true)

(2024.06.20智慧局ニュース全訳)
1-3 「2024新南向知的財産国際カンファレンス」に7か国の専門家が集結し産業の市場開拓を支援
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-955478-c2bd9-1.html
「2024新南向知的財産国際カンファレンス」が2024年6月18日(火)から19日(水)午前、台湾大学法律学院霖澤館にて開催され、経済部智慧財産局(以下「智慧局と略す」)の廖承威・局長、中華民国専利師公会の林宗宏・理事長、アジア弁理士協会台湾総会(APAA Taiwan Group)の祁明輝・副理事長が貴賓の挨拶をつとめた。
今回のカンファレンスではインド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ及びベトナムの計7か国の知財庁の担当者及び専利代理業界のエリートを担当講師として招聘し、各国の専利法制の最新の発展状況及び実務動向を深く解析した。
6月18日午前、第1セッションはインドの講師がオープニングをつとめ、過去10年で9回の法改正を経たインド専利法のポイントを紹介した。中小及びスタートアップ企業(外国企業を含む)の専利出願を奨励するため、インド特許庁は資格を有する中小及びスタートアップ企業に最高80パーセントの手数料減免(一般企業:1万インド・ルピー(約18,940円)、中小企業:2,000インド・ルピー(約3,790円))を提供している。加速審査の申請、電子出願及び専利優先権書類の提出の簡素化が可能であり、専利出願の手続が主務官庁の指定する期間に間に合わない場合、費用を支払うことで権益確保の期間延長ができる。インド特許庁は「スタートアップ企業の知的財産保護(SIPP)制度」を実施しており、実施成果は良好で、スタートアップ企業による専利出願が大幅に増加した。
第2セッションでは、インドネシアの講師から、現在のインドネシア知的財産総局が全面的に電子出願を採用しており、一般の審査期間は4~6年であるが日・韓の特許審査ハイウェイ(PPH)と協力した場合2~3年に短縮でき、ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラムを利用すると、審査の迅速化に役立つことが紹介された。インドネシアでは、専利の権利侵害は民事責任と刑事責任を問われるが、特許権侵害訴訟は1年間にわずか5~10件しかなく、裁判官の案件処理の経験も少ない。特許及び意匠に同時に該当する場合、意匠権侵害をもって救済請求され、特許よりも早く権利侵害が判断される。つまり、外観意匠はより有効的に保護を受けることができる。
6月18日午後、第3セッションはマレーシアの講師によるマレーシアの2022年法改正の概要説明であり、特にマレーシアが2022年6月30日にブタペスト条約に加盟した後の微生物寄託に関する規定に特に焦点を当てて説明がなされた。出願人がブダペスト条約締約国の国際寄託機関に寄託する場合、国内の微生物寄託の義務を免除され、出願人は必ず出願前に寄託を完了させ、出願後16か月以内に寄託文書を補正して完備しなければならない。加速審査請求のチャネルにはPPH、EEP、ASPECがあり、そのうちEEPは権利侵害の事実がある又はその侵害のおそれがある場合に請求が可能で、マレーシア知的財産公社(MyIPO)が考慮する際の参考とするため、出願人は具体的な理由を説明しなければならない。
第4セッションはフィリピンの講師によるプレゼンテーションであった。フィリピン知的財産庁(IPOPHL)はIP政策を通じて国家のイノベーション発展を激励しているが、フィリピンの特許審査期間は長く、PPH及びASPECを申請し加速審査を行うと、約14か月で審査終結が可能である。IPOPHLは、審査官学習管理システム(LMS)、パフォーマンス品質評価尺度(PQRS)、審査意見書サンプル、3級品質チェック、及び「品質管理システム(QMS)」の構築など、専利の品質向上のため多くの改善施策を採用している。
第5セッションはシンガポールの講師によるプレゼンテーションであった。シンガポールは友好的なIPビジネス環境の構築に取り組んでおり、シンガポール知的財産庁(IPOS)は専利・商標の審査業務を担い、出願人は中文・英文での出願、検索が可能である。シンガポールはグローバル特許審査ハイウェイ(GPPH)に参加し、世界とアセアン諸国を結びつけており、出願人は各種の加速審査メカニズムを利用することで、審査結果を早く受け取ることができる。シンガポールは、2030知財戦略を推進しており、シンガポールを世界IP紛争解決センターとして位置づけ、2015年にアジアで唯一の国際商事裁判所を設立し、権利被侵害者は商事裁判所に権利侵害の損害賠償、専利の有効性、差止命令等を申し立てることが可能で、1.2年から2年内に審理を終結できる。該裁判所の裁判官はIT及びIP専門のバックグラウンドを兼ね備え、迅速な争議解決に寄与する。このほか、シンガポールは仲裁・調停制度も完備しており、仲裁人又は調停員は豊富な国際経験があり、迅速な紛争解決が可能である。
6月19日午前、第6セッションでは、タイの講師から、特許の実体審査請求期間の出願日から3年以内への短縮、登録査定前の公開制度等のメカニズムの新設、ハーグ協定加盟準備のための関連意匠及び部分意匠の導入、意匠権の存続期間の15年への延長等を含む2022年専利法改正草案の概要のほか、TRIPS 31bisに合わせた医薬品の強制実施許諾の導入や、WIPOの遺伝資源に関する規定の法改正手続が2024年の年末に完了する見込みである点について、情報が共有された。タイの専利実務においては、小特許(petty patent)の権利保護期間は最長10年で、保護対象には物品及び方法が含まれ、小特許は進歩性を審査しないため、特許審査期間の5~10年に対して小特許の審査期間はわずか1~3年であり、実務上出願人の多くは小特許を利用して専利保護を迅速に取得している。
第7セッションでは、ベトナムの講師から、新規性喪失の要件に関する規定の新設、遺伝資源又は関連の伝統知識の発明について出所を開示する書類を添付しなければならない旨の規定の新設、第三者意見の処理原則の新設、いかなる第三者も保護を受ける権利に対し公告後9か月以内に異議申立てを提出できる旨の規定の新設、専利審査の過程において外国の対応出願の検索と審査結果を参考にできる規定の新設、並びに、権利保護が与えられない拒絶理由に関する規定及び専利の無効に関する規定の新設を含む、ベトナムの2022年専利法の改正について、情報が共有された。
東南アジア国家及びインドは一般的に専利審査期間が長く審査待ち案件が蓄積する問題に直面しているが、近年の専利法改正により専利審査プロセスの効率改善及び審査の品質向上が期待される。本局の廖承威・局長は、台湾も10年前に審査期間の長期化及び未処理案件問題に直面したが、TIPOの審査期間は47か月から現在は14か月に短縮されており、専利未処理案件解消の経験を情報共有することができる旨、各知財庁の審査案件のストレスを軽減するため、積極的に各国とPPH共同協力を締結することが可能である旨述べた。
今回のカンファレンスには産・官・学界から210名を超える参加があり、東南アジア各国及びインドの専門家らと充分な意見交換及び経験交流が行われ、会場は熱気にあふれた。智慧局、専利師公会及びAPAA Taiwan Groupは、今回の法制紹介及び実務分析を通じて、各界が東南アジア及びインドの専利制度及び司法実務の全面的な理解の深化に協力すると同時に、台湾企業の専利出願及び市場ポートフォリオの参考となることを期待している。智慧局は専利師公会及びAPAA Taiwan Groupの経費支援及び分業・共同運営により今回のカンファレンスが成功し、各国の専門家、産業界が一同に集まり、さらに素晴らしい産業の発展を共創することができたことに対し、この場を借りて特別に感謝申し上げる。

2.その他一般

(2024.06.14 関務署プレスリリース全訳)
2-1 知的財産権保護を強化するため関務署は国際組織Reactと「2024知的財産権保護ワークショップ」を共同開催
財政部関務署は、知的財産権保護は権利者と法執行官の協力をよりどころとすることから、税関職員及び域内の法執行官の模倣品摘発技能のスキル向上のため、特別に国際組織Reactと本年(2024年)6月14日に「2024知的財産権保護ワークショップ」(2024 National Training Workshop on Protecting Intellectual Property Rights)を共同で開催し、知的財産権保護を強化し、知的財産権保護意識を高めると発表した。
関務署は次のように説明した。Reactは公的機関・私的機関を結合した非営利組織であり、知的財産権侵害の撲滅に取り組んでおり、知的財産権保護について30年以上の貴重な経験を有している。知的財産権侵害商品のグローバル市場への流通を途絶するため、該組織は長年にわたり各国政府と協力し、真贋鑑定トレーニングカリキュラムを開催し、法執行官と権利者に相互学習及び交流の機会を提供し、模倣品撲滅の成果を高めている。
関務署はさらに、次のように説明した。関務署とReactとのワークショップの共同開催は本年で14回目となった。AACS(Alliance Against Counterfeit Spirits)、BRITA、Bio-Oil、Canon、Dolby、EPSON、Haleon、HUGO BOSS、International Olympic Committee、Kering Group、Longchamp、MCM、NXP、Pandora、P&G、Samsung、SUPREME、WELLA Company及びWestern Digital等の多くの国内外の有名ブランド及びグループの代表を招聘し、商品の種類も多種多様であった。各ブランドの商標権専門家はワークショップにおいて、真贋鑑定のスキルを紹介し、実際の商品を使って説明した。税関職員もまた模倣品の水際摘発に関して積極的に経験を共有し、法執行機関と権利者の交流が深まったことは、知的財産権の保護に対し積極的なプラス効果をもたらした。
最後に関務署は、今回のワークショップでは税関の第一線の職員のほか、経済部智慧財産局、内政部警政署刑事警察局、法務部調査局及び地方検察署が代表を派遣して共同参加し、参加者との頻繁な講座・交流を通じて、法執行機関の摘発力を具体的に強化させただけでなく、台湾が模倣品摘発に取り組んでいるという国際的イメージを有効的に向上させたと述べた。

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