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知財ニュース355号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.355)
発行年月日:2023年11月30日発行

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2023年11月16日 智慧局ニュース全訳)
1-1 財団法人専利検索センターが専利分析報告2本を完成
(2023年11月17日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「世界の半導体産業廃棄物処理のコア技術と特許ポートフォリオ分析」報告書を作成
(2023年11月24日 智慧局ニュース全訳)
1-3 台米が専利情報の安全的交換MOUを締結 出願人の優先権主張がさらに便利に

2. 知的財産権紛争
(2023年11月17日 聯合報第A9面全訳)
2-1 Lenovoがノートパソコンの4つの専利権を侵害されたとして提訴 ASUSはノーコメント
(2023年11月22日 聯合報全訳)
2-2 ラーガンが専利戦始動 再びジニアスを提訴

3. 模倣品関連
(2023年11月14日 経済日報要訳)
3-1 今年1月から10月までの税関による輸入模倣品取締件数395件 直近10年の最高を記録
(2023年11月17日 中国時報要訳)
3-2 タオバオから有名化粧品の模倣品をネット購入し真正品の半額で販売 2人の男を書類送検

1.智慧局ニュース

(2023.11.16 智慧局ニュース全訳)
1-1 財団法人専利検索センターが専利分析報告2本を完成
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-930446-90a2e-1.html
人工知能(AI)の応用から派生した製品と次世代通信技術は、近年国際的に関心を集める主要な技術と産業発展項目であることから、本局は各界の参考のため、財団法人専利検索センターに関連するテーマの専利ポートフォリオの趨勢分析を委託し、国際主要マーケット及び台湾等の国家(区域)等の専利文献を収集して、「AIチャット(ChatGPT)」及び「低軌道衛星通信」の2つについて専利分析報告を完成させた。
同報告は上記智慧局ウェブサイトのリンク先からダウンロード可能(中国語)。

(2023.11.17 智慧局ニュース全訳)
1-2 「世界の半導体産業廃棄物処理のコア技術と特許ポートフォリオ分析」報告書を作成
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-930453-36daa-1.html
ESG(環境、社会及びガバナンス;Environmental、Social及びGovernance)は現在、半導体産業界で最も注目を集めている議題の一つであり、それと循環経済の概念とは密接な関係がある。従来のリニア・エコノミー(直線型経済)の概念では、資源は取得され、製品に転換されて使用され、最終的には廃棄物として捨てられるものであった。いかにして「製造過程における資源の浪費を減少させ、生じる廃棄物の管理とリサイクルを行うか」は、半導体産業の循環経済(又はESG)にとって極めて高い意義を有しており、廃棄資源を半導体級の化学品に純化し、製造過程に再度使用することは、「以緑養緑(グリーンでグリーンを養う)」永続的な目標を達成するものである。
本報告書は、半導体産業の廃棄物における「銅のリサイクル」、「シリコンスラッジのリサイクル」、「水素のリサイクル」をテーマに収集、整理、研究をしたもので、台湾内の半導体産業のグリーン循環経済の発展に寄与する、又はこれを啓蒙できるよう、関連する特許動向分析及び重要な技術を厳選したものである。

※同報告書は、智慧局の上記リンク先の「全球半導體産業廢棄物處理之關鍵技術及專利布局分析.pdf」をクリックしてダウンロード可能(中国語)。

(2023.11.24 智慧局ニュース全訳)
1-3 台米が専利情報の安全的交換MOUを締結 出願人の優先権主張がさらに便利に
www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-930479-f32b6-1.html
台湾と米国は今年(2023年)11月22日(米国東部時間)、「台米専利情報の安全的交換MOU(The Secure Exchange of Patent Data)」の締結を完成させた。今後台湾からの毎年2万件余りの米国への専利出願について、優先権を主張する場合、より便利によりコスト削減が可能となる。
国際専利の優先権制度に基づき、台湾で専利出願をした12か月以内に米国で出願する場合は優先権を主張することができ、先の出願の出願日に基づき専利要件を審査する権利が享受できるが、優先権を主張する場合には、優先権証明書類を提出しなければならない。現在、台湾人による近年の米国での専利出願件数はいずれも2万件ほどであり、昨年(2022年)は一昨年(2021年)に比べて6%近く増加した。これらの専利の優先権証明書類の越境申請は、出願人に多くの人的時間とコストを消耗させており、受理した特許庁の間で相互に情報検証をすることができれば、出願人の負担を大きく減少させることができる。
台湾、米国の両国は智慧局とUSPTOを通して、2016年から前述の優先権証明書類の電子的交換(Priority Document Exchange, PDX)について協力協議を展開し、情報セキュリティニーズを確保するため、両庁は情報設備、転送等、いずれにおいても詳細に確認し、双方の持続的な努力の下、ついに本年「台米専利情報の安全的交換MOU」の締結を完成させた。これは、台米が2011年に実施した「台米特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway, PPH)」計画に次ぐもので、また、2017年に「知的財産権法執行協力覚書」が締結された後、また一つ台米知財の提携を深化させるマイルストーンとなるものである。
智慧局は、出願人が国際特許のポートフォリオを展開する際に便利な環境を構築するため、2013年及び2016年にそれぞれ、日本、韓国と「特許及び実用新案の優先権証明書類の電子的交換」(PDX)の提携をしており、さらに、2019年と2021年には、より拡大してそれぞれ日本、韓国と「意匠の優先権証明書類の電子的交換」を締結している。そして今回のさらなる台米PDXは、台湾人の米国での専利出願の利便性が大幅に向上し、また、米国人の台湾での専利出願にも寄与するもので、台米双方の専利出願人にとってウィンウィンとなる。
本MOUは、駐米代表処の姜森・処長と米国在台協会ワシントン(AIT/W)のIngrid Larson代表が署名したもので、台湾の智慧局と米国USPTOは情報システムの検証テストに入り、両庁で情報安全設備のテストが完了するのを待って、智慧局から対外的に受理開始時間を公告する見込みである。

2.知的財産権紛争

(2023.11.17 聯合報第A9面全訳)
2-1 Lenovoがノートパソコンの4つの専利権を侵害されたとして提訴 ASUSはノーコメント
世界のPCメーカー最大手の聯想(Lenovo)は15日、米国カリフォルニアにおいて、華碩(ASUS)のノートパソコンがLenovoの多くの専利権を侵害しているとして提訴した。ASUS側は、進行中の法的訴訟については、コメントを控えるとし、これまでの経験から、弊社は法的手続に基づき、企業権益を適切に守ると表明した。
ロイターの報道によると、Lenovoは訴状において、ASUSのZenbookノートパソコンが侵害している4つの専利権は、無線通信、タッチパッドのスクロール、ノートパソコンをタブレット型に切り替える部品に関係するものであると述べた。
Lenovoは、ASUSのZenbook Pro及びZenbook Flip14において権利侵害を受けた技術を発見し、損失利益及びライセンス料を含む未開示金額の賠償金を請求し、また永久に権利侵害をしないよう裁判所に判決を下すよう請求したと述べた。
ASUSは世界のPCメーカー第5位であり、今回Lenovoに提訴されたZenbookシリーズ商品は、ASUSの消費者向けPCの主力機種である。

(2023.11.22 聯合報全訳)
2-2 ラーガンが専利戦始動 再びジニアスを提訴
ラーガン(LARGAN:大立光)が再び専利戦に着手し、先日、台湾知的財産及び商業裁判所に対し、宿敵のジニアス(GSEO:玉晶光)が特許侵害を起こしたとして訴訟を提起した。これはラーガンにとってジニアスに対する3度目の提訴であり、また初の台湾での特許権侵害訴訟の提訴でもある。外界は、両者はいずれもアップルのiPhoneレンズの主要サプライヤーであり、ラーガンがジニアスを権利侵害で提訴した意図は、大口顧客のアップルに対し声高に主張することで、より多くの注文を勝ち取るためだとみている。
情報筋によると、専利権はそれぞれ特許、実用新案及び改良特許であり、特許はハイレベルのオリジナル特許で、主務官庁の実体審査を経たものであることから、特許権侵害で提訴する強度は最高である。市場関係者は、ジニアスの生産基盤は中国アモイであるものの、経営・営業本部は台湾にあり、専利は主に他人の輸出入及び販売を防止するものであることから、ラーガンが権利侵害の戦場を台湾に戻したのは、ジニアスの受注及び顧客等のデータ等の証拠収集の機会をより高めるためと分析している。
ラーガンは直近10年において、サムスン、HP等のブランドメーカーから競合他社に至るまで、いくども専利戦を繰り広げており、最終的には和解で終わることが多く、順調に発注又はライセンス料を取得している。そのうち、ジニアスとの専利戦が最も多く、戦場は米国、中国をまわり台湾に戻ってきた。
ラーガンは2013年に初めて米国においてジニアスを権利侵害で提訴し、最後はアップルの仲介の下、2016年に双方は和解した。そして9年を経た2022年8月、再び中国アモイ中級人民裁判所において、ジニアス及びその子会社である玉晶廈門に対し、専利権侵害の訴訟を提起した。
ジニアスは昨日(11/21)、自社は相手側が提起しているような権利侵害を犯しておらず、現在すでに弁護士に後続の関連処理を依頼済みであり、更に進展した場合は、また外界に向けて説明を行うが、現在ジニアスが所有する専利件数の累計は約1,500件であると述べた。ジニアスは今週金曜日(11/24)、陳天慶・董事長によるオンライン法律説明会を開催する予定で、専利議題が会議の焦点となるとみられている。
ラーガンは21日、個別案件状況についてはコメントせず、会社はこれまでずっと積極的に必要な行動を採り、知的財産権を保護しており、また、会社のコア技術を保護するため、世界の主要マーケットにおいて専利出願をしてきたと強調した。
昨年(2022年)中国においてジニアスを提訴したことについて、ラーガンの林恩平・董事長は本年(2023年)6月の株式総会時に、「最終的に(サプライチェーンに)影響がないことを望む」と顧客が協議に訪れたことを漏らした。
ジニアスはアップルが全力でサポートしているサプライヤーであることから、林恩平・董事長が口にした「顧客」とはすなわち大口顧客のアップルであり、双方の勝負がどうであれ、ラーガンは再度アップルサプライヤーチェーンの敏感な神経を逆撫でしたこととなり、最終的な勝ち負けは裁判所にあらず、アップルとの交渉のテーブルにあると外界はみている。

3.模倣品関連

(2023.11.14 経済日報要訳)
3-1 今年1月から10月までの税関による輸入模倣品取締件数395件 直近10年の最高を記録
財政部関務署が本日行った定例記者会見での発表内容は以下のとおり。
税関が摘発した知的財産権侵害事件の関務署統計によると、2021年度の行政処分件数は335件、罰金額は約208万台湾元(約987万円)、2022年度の行政処分件数は263件、罰金額は675万台湾元(約3,203万円)超。一方、今年1月から10月末までの行政処分件数は395件と直近10年で最多であるのに対し、罰金額は約75万台湾元(約355万円)と下降している。主として模倣品の価値が徐々に低下していることの影響による。
行政処分された貨物の種類は服飾、靴、ブランドバッグが中心、輸入先は中国、ベトナム等。
税関により取締まられた知的財産権侵害物品の輸入者は、刑事・法律責任の訴求、又は後続の行政処分を受けるおそれがある。輸入者は貨物の内容を確実に把握する必要がある。
税関は商標権侵害が疑われる貨物を取締る際、「税関による商標権益保護措置実施弁法」に基づき、商標権者又は合法の許諾代理人及び輸入者に認定の通知を行う。
模倣品が知的財産権侵害を構成していると認定された場合、司法機関の捜査に移送される。個別の刑事案件について不起訴、起訴猶予処分、又は無罪や執行猶予等の判決が確定したとしても、税関密輸取締条例規定により貨物価格の3倍以下の罰金を科し、貨物を没収することができる。
近年における単一で最大罰金額の事例は、ベトナム生産・製造のコーヒー粉の事例がある。総重量22トン近くの模倣品のコーヒー粉について、台北地検署へ捜査が移送され不起訴処分となったものの、2022年に194万台湾元(約920万円)の罰金が科され、模倣品のコーヒー粉は没収、破棄となった。

(2023.11.17 中国時報要訳)
3-2 タオバオから有名化粧品の模倣品をネット購入し真正品の半額で販売 2人の男を書類送検
化粧品の模倣品を販売しているネットオークション業者がいるとの通報を受け、保安警察第二総隊刑事警察大隊第一偵査隊が調査した結果、盧、黄という二人の男が昨年12月から今年4月の間にタオバオのネットショッピングから大量の有名ブランド化粧品の模倣品を購入し、商品入荷後、真正品と混在して一緒に販売していたことが分かった。模倣品の販売価格は真正品の3割から5割だった。
台北市南港及び新北市新店の2か所を捜索したところ、倉庫内にはEstee Lauder、MAC、CHANEL、SK-II、Innisfree、DIOR、Hermes、Guerlain等18種類のブランド2,880点の商品があり、リキッドファンデーション、リップ、美容液、洗顔料等全てが揃っており、権利侵害市場価格は100万台湾元(約470万円)を超えていた。
警察が押収した化粧品の模倣品はブランドに係るもので、種類も非常に多く、区別がつきにくく、供給元も不明であるところ、原料・成分も不明な模倣品には基準を超えた重金属が含まれるもあり、健康危害の問題をもたらす可能性もあるため、警察は、関連商品を購入する際はより保証されているブランドの専門カウンター等の販売拠点を選択する方がよいと注意喚起した。
また、警察は、商標法第97条の規定により、模倣品であると明らかに知りながら、販売、又は販売を意図して所持、展示、輸出又は輸入した場合は、1年以下の有期懲役刑、拘留又は5万台湾元(約23.6万円)以下の罰金に処し又は併処すると補足した。警察の調査後、盧、黄の二人の男を商標法及び刑法詐欺罪違反によりそれぞれ台北地検署、新北地検署に送検した。

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