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知財ニュース349号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.349)
発行年月日:2023年8月15日発行

主要ニュース目次

1. 模倣品関連
(2023年7月31日 自由時報要約)
1-1 中国の不法電池が台湾に流入!パナソニックによる海外通報で約1万5千個の模倣品を摘発
(2023年8月2日 関務署ニュース全訳)
1-2 税関による2023年上半期水際での模倣品摘発市場価格が5億台湾元以上 ネットショップでの購入は慎重に

2. その他一般
(2023年8月2日 中国時報第A12面全訳)
2-1 資策会がデータリスクを防備 生成AI導入の手引きを推進
(2023年8月3日 中国時報第A12面全訳)
2-2 法務部:域外機密窃取の9割は中国から

1.模倣品関連

(2023.07.31 自由時報要約)
1-1 中国の不法電池が台湾に流入!パナソニックによる海外通報で約1万5千個の模倣品を摘発
内政部警政署保安警察第二総隊刑事警察大隊(以下「保二総隊」と略称)は、国際的ブランドであるパナソニックからの通報を受け、商標権者の同意なしに無断で同社の電池の模倣品を販売しているとして、3名の不法業者を逮捕、約15,000個の模倣品電池を摘発し、詐欺罪及び商標法違反として書類送検した。
保二総隊によると、台湾の商標法第97条の規定に基づき、明らかに模倣商品と知りながら販売、又は販売を意図して所有、展示、輸出又は輸入した場合、1年以下の有期懲役、拘留に処し又は5万台湾元(約22万円)以下の罰金を併科することとなっており、電子メディア又はネットワーク方式を通じて行われた場合も同様となっている。
警察の調べによると、48歳の温、42歳の林及び48歳の鄭(いずれも男性)は、それぞれ2020年6月に中国の大手通販サイトアリババで模倣品電池を購入し、税関の摘発を逃れるため、深圳、柳州、廣州等からそれぞれ少量ずつ台湾へ運送し、貨物を受け取ってから露天、雅虎のオンラインショッピングサイトで販売していた。
警察が摘発したパナソニック商標の模倣品ボタン型電池は1万5,483個で、権利侵害市場価格は約100万台湾元(約450万円)になる。模倣品の販売価格は5~25台湾元(約22円~113円)であるが、正規品の価格は60~130元(約270~590元)で、正規品の10%~40%の価格で模倣品電池を販売していた。3人は逮捕された後、いずれも模倣品だとは知らなかったと供述したが、警察ではこれを信用しておらず、まとめて詐欺罪及び商標法違反として送検した。
警察によると、模倣品電池は正規メーカーの厳格な品質管理やテストを受けたものではなく、化学成分が不明な場合もあり、容易に発熱や液漏れ等の異常が生じやすく、電子製品が故障する可能性があるだけでなく、使用上の安全面にも懸念があるため、民衆に対し関連商品の購買する際には、品質が比較的保障された代理店にて購買するよう呼びかけている。

(2023.08.02 関務署ニュース全訳)
1-2 税関による2023年上半期水際での模倣品摘発市場価格が5億台湾元以上 ネットショップでの購入は慎重に
財政部関務署によると、人類の知識活動の成果保護のため、各国で知的財産権の保護が重視されており、台湾も例外ではなく、税関は国境の守りを固め、水際での模倣品摘発に尽力している。2023年上半期の権利侵害模倣品の摘発件数はすでに3万件を超えており、権利侵害市場価格は5億台湾元(約22.4億円)以上となっており、優れた摘発効果を上げている。
関務署によると、税関が近年摘発した模倣品の多くは、民衆が海外のECサイトで購買し、宅配便形式で輸入したもので、そのうち単価が高価な著名ブランド(例:BURBERRY、CHANEL、ROLEX等)の皮革製品、服飾又は時計の模倣品が多く、また、アップルの商標を模倣したブルートゥースイヤホンのAir Pods Proも非常に多かった。このほかに、上半期に摘発件数の多かった模倣品は化粧品、医薬品及び食品で、数量と金額のいずれも多く、これらの権利侵害貨物が台湾市場に流入すると、台湾人の健康も危ぶまれるだけでなく、ソーシャルイノベーションが阻害され、経済発展の遅延等のマイナス影響にもつながることになる。
また、関務署の説明によると、近年海外とのECビジネスが勃興し、民衆が利便性のため、ECサイトで安価な著名ブランド商品を購買し、安くお得に購入できたと思ったら実は模倣品だったというケースがある。税関の摘発時に輸入者が悪気なく「模倣品と知らずに購入した」又は「自家用品としての購入で販売する意思はない」と述べても、権利者による鑑定結果で模倣品と認定された場合、税関は商標法第97条の規定により輸入者を司法機関での捜査に送検するだけでなく、個別案件の状況に応じて税関密輸摘発条例(中国語:海關緝私條例)第39条の1の規定により貨物価格の3倍以下の罰金並びに貨物没収とすることができるため、消費者は権益を損なうことのないよう、さらには刑事責任を負うことにならぬよう、ネットショップで購買する際には必ず慎重に検討するよう呼びかけている。
最後に関務署は、知的財産権保護の意識は公私が協力して共同で構築していく必要があるため、税関も模倣品の台湾への出入り撲滅のため積極的に摘発していくが、民衆にもECサイトでの購買の際にはより慎重になり、模倣品購買を拒絶するようお願いし、共同で個人の健康と権益を保護し、台湾業者の公正な経営環境と国家競争力の向上を維持して行く、と述べた。

2.その他一般

(2023.08.02 中国時報第A12面全訳)
2-1 資策会がデータリスクを防備 生成AI導入の手引きを推進
AIの挑戦に直面するなか、資訊工業策進会(資策会、III)は「生成AI導入の手引き」を推進している。各界が生成AIを開発及び使用する際に規範を遵守できるよう、企業にダウンロード提供を行っており、これは台湾産業がその土地に応じてとった対応策の初のAI手引きでもある。
近年注目されている生成AIは、演算速度の変化、人材削減、効率上昇及びビジネスモデルの変化をもたらした。今後は更に産業の発展と競争力の転換に深く影響を与えると思われる。
資策会は、大規模言語モデル(LLM)が各応用を形成し、今後2~3年以内にほとんど全ての管理者レベル又は一般社員の仕事がある程度の影響を受け、2023年~2025年はAIが「成熟に接近」する時期で、2030年になると「成熟の応用」の段階に到達するであろうと予測しており、産業応用の機会については、健康医療、デジタルコンテンツ、生産製造、金融税務及び学術教育等への見通しが明るい。
しかし、各地の法令又は監督・管理制度は依然として国情及び地域が原因で、実際の導入には時間差がでている。資策会は生成AIがもたらすチャンスと挑戦を正視し、企業発展において必ず掌握しなければならないキーポイントであるとみている。
資策会は、生成AIは強大な応用性を有するが、潜在的リスクに対し警戒感を持ち続けなければならないと注意を促している。AIがもたらす挑戦とAIに学習させるため不注意で組織の機密情報を漏洩したり、AIトレーニング時に使用したデータで知的財産権を侵害したりするなどのマイナスの衝撃も注目に値する。トレーニングデータに偏りがある際、AIの回答が虚実混交し、正確な認識に影響を与える可能性があるが、これらは企業組織がAIを応用する時にあらかじめ認知しておくべきことである。
個人にとって、生成AIの濫用は虚偽の情報をもたらし、悪意の内容又は他人に成りすます等の問題が出現し、プライバシーと安全に脅威をもたらす可能性がある。
AI時代の挑戦、衝撃及びリスクに鑑み、資策会は1日、「生成AI導入の手引き」を発表し、企業にダウンロード提供し、この手引きを企業に提供することでAIの素養を有するものとしての参考となることを期待している。また、企業の上層部や重要な決定権を有する者がまずはAIによる組織への影響を理解し、組織AIを如何に構築していくかの能力を検討する一助となることを期待しており、AI発展におけて検討すべき事項を理解するほか、その応用範囲内の使用における基礎を確立するものとなる。
台湾人工知能卓越中心(Taiwan AICoE)の許永真・副召集人はフォーラムにおいて、政府が人中心のAIを打ち出し、信頼のおける生成AIエンジンを発展させ、科学研究技術、人材、ガバナンス方面から国際規範と価値観を調和し、部会を超えた協力プラットフォームを構築すると共に専門コミュニティに介入し、台湾AIの国際的影響力を拡大していくことを望むと述べた。国立清華大学電気情報学院の頼尚宏・副学院長は、AIの応用は科学技術倫理に関連しており、AIの発展と使用に関する適度な法律規範を如何に定めるかが、非常に重要な課題であると示した。

(2023.08.03 中国時報第A12面全訳)
2-2 法務部:域外機密窃取の9割は中国から
域外勢力による台湾での機密窃取ヘッドハンティングが日増しに深刻になっている。法務部の蔡碧仲・政務次長は昨日(2日)、機密窃取行為の90%は中国からであり、国家安全コア技術を窃取し、これらの犯罪が国家安全に大きな危害をもたらす場合、3年から10年の有期懲役に処すことができ、量刑は重いと示した。
企業の機密漏洩、ひいては国家安全レベルの機密漏洩に至った場合、台湾地区及び中国地区人民関係条例、営業秘密法、国家安全法がすでに構築している「レベル化保護体系」により、営業秘密侵害罪、営業秘密の域外使用罪、コア技術の域外使用罪から経済スパイ罪まで調査の上処分し、量刑は最も軽くて有期懲役5年以下、最高で有期懲役5年~12年に処すことができる。
国家安全法によるコア技術域外使用罪の処罰は、国家安全保護の重要な一環と見なされ、法律は昨年(2022年)5月20日に三読通過(可決)、6月8日に公布されているものの、現時点において事例はまだない。法務部検察司の郭永発・司長は、何が国家コア技術に該当するのか、法務部は権限・責任のある機関ではないが、法執行に利するよう、国家科学及び技術委員会(NSTC)が承認・公告すべきであると述べた。
郭永発・司長は、科学技術力は国家安全の強みであり、営業秘密保護は企業の知的財産権を保護するばかりではなく、更には国脈及び国家安全を保障するものであると示した。
法務部のデータによると、機密が中国に渡った営業秘密法違反の事例は、桃園地区が全体の32.5%と最も多く、次いで新北市、新竹県・市、台北市で発生した事例が多かった。中国資本の企業が違法ヘッドハンティングで両岸条例を犯した事例は新竹県・市が50.4%と最も多く、次いで台北市、新北市、桃園市であった。
統計データでは、2014年~2022年までの検察・警察が捜査した営業秘密案件数は22件から162件に増加、約8倍の成長となり、犯罪者数は52人から393人に増加し、こちらも7倍成長を示した。
また調査局のデータによると、ここ3年で起訴した関連案件は、営業秘密法による起訴が13件、両岸条例による起訴が17件であった。営業秘密を搾取し、域外で使用した者は中国、香港、マカオが全体の95%以上を占め、ごくわずかに日本、イギリス、インドで発生した。
郭永発・司長は、両岸条例により調査した機密搾取ヘッドハンティング案件は従来、有期懲役1年以下が法定刑量であったが、現在は法改正により量刑を重くし、違反者は最高3年の有期懲役に処すことができると述べた。
また郭・司長は、法務部はかつて新竹科学園区の企業との交流に検察官を派遣したことがあったが、企業側は国家権力が営業秘密保護に介入することを望まず、権利侵害案件のほとんどを示談にした。これは業者が訴訟時に「2度以上の機密漏洩」を恐れたことからであり、検察官は如何にして保護措置を取るべきかを企業側にアドバイスするよりほかはなかったと示した。

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