発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.328)
発行年月日:2022年4月15日・29日合併号
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2022年4月15日 智慧局ニュース全訳)
1-1 CPTPP加盟推進のため立法院が知財三大法律の改正を最終可決
(2022年4月25日 智慧局ニュース全訳)
1-2 「専利法一部条文改正草案」及び「商標法一部条文改正草案」の第3稿を行政院へ送付
2. 法律・制度
(2022年4月27日 司法院ニュース全訳)
2-1 施行以来最大の法改正 司法院が「智慧財産案件審理法」の新制度公聴会を開催
3. 知的財産権紛争
(2022年4月19日 経済日報第A5面全訳)
3-1 先進光電が久禾光電を提訴 求償1億台湾元
1.智慧局ニュース
(2022.04.15 智慧局ニュース全訳)
1-1 CPTPP加盟推進のため立法院が知財三大法律の改正を最終可決
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-904940-2b6a6-1.html
立法院は15日、台湾の知的財産権に関する法律を「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の規定に合わせ、将来的なCPTPP加盟交渉に資するよう、「著作権法」一部条文改正草案、「商標法」一部条文改正草案及び「専利法第60条の1」改正草案を最終可決した。
1.「著作権法」改正ポイントは次のとおり
(1) 権利侵害の状況が深刻な不法デジタル海賊版、頒布及び公開送信行為を非親告罪(公訴罪)に改め、「他人が有償で提供している著作物の侵害」、「丸ごと複製」、「権利者に100万台湾元(約413万円)以上の損害をもたらした」を権利侵害が深刻な状況であるとする認定の三要件とした。
(2) 光ディスクが少なくなり、すでに主な権利侵害の主流ではなくなっていることから、一般の処罰規定に回帰することとし、現行法の光ディスクの複製、頒布に対する公訴罪の刑事罰の加重規定を削除すると共に関連する没収規定も削除した。
2.「商標法」改正ポイントは次のとおり
(1) 商標又は団体商標のタグ等の模倣行為を刑事罰とする規定を新設し、模倣商標タグ、包装を輸入し権利侵害を準備及び補助する行為に刑事責任を科すことで、商標権者の商品販売と利益確保を向上させ、商標保護を強化する。
(2) 現行商標法における行為者に対し「明らかに知っていた」ことを民事・刑事責任を構成するという主観要件について、「明らかに知っていたこと」という要件を削除し、民事権利侵害責任について「故意又は過失」を要件とすることにし、刑事処罰については「故意」を要件とすることとした。
3.「専利法」改正ポイントは次のとおり
(1) パテントリンケージ制度はCPTPP規定であり、ジェネリック医薬品と新薬特許権との間に権利侵害紛争があるかどうかについて、ジェネリック医薬品の販売許可証が申請される前に紛争解決するメカニズムである。薬事法ではすでに2019年8月20日に「パテントリンケージ」制度が施行されていることから、専利法においても新薬特許権者がジェネリック医薬品メーカーを提訴できる根拠について明確に規定する必要があった。
(2) ジェネリック医薬品メーカーの権益も両立させるため、新薬特許権者が規定の期限内に権利侵害訴訟を提起しない場合、ジェネリック医薬品が販売開始された後、権利侵害で提訴されるかもしれないリスク回避のため、ジェネリック医薬品メーカーも権利侵害を構成するか否かの確認訴訟を提起できることとした。
業務管轄:
(著作)毛浩吉組長02-23767135 行動電話0933-710850 mmm00340@tipo.gov.tw
(商標)劉蓁蓁組長02-23767503 行動電話0905-703068 jane00239@tipo.gov.tw
(專利)何燦成主任02-23767487行動電話0937-866208 cheng00277@tipo.gov.tw
新聞聯絡人員:余佩真 02-23766168 行動電話0963-689602 tulip00740@tipo.gov.tw
(2022.04.25 智慧局ニュース全訳)
1-2「専利法一部条文改正草案」及び「商標法一部条文改正草案」の第3稿を行政院へ送付
www.tipo.gov.tw/tw/cp-86-904977-18f99-1.html
智慧局は「専利・商標の二当事者対審制及び行政救済手続きの簡略化」の法改正推進のため、2021年6月に「専利法一部条文改正草案」及び「商標法一部条文改正草案」の第2稿を起草した。パブリックコメント期間に外界からいただいたご提案に感謝すると共にそれらを斟酌して一部草案内容に盛り込み、また、その後、司法院が起草した「智慧財産案件審理法(以下「審理法」と称する)」改正草案とも調整して、改正専利法及び商標法の第3稿を起草し、2022年4月19日、行政院での審理へと送付した。行政院報告版の草案(以下、「報院版」と称する)については、上記智慧局サイトのリンク先の添付資料(中国語)を参照のこと。
専利法一部条文改正草案(報院版)は、合計76条文改正、商標法一部条文改正草案(報院版)は合計54条文改正となり、今回と前回の草案を比較して、主に調整されたポイントは以下のとおりとなる。:
一. 専利出願権及び専利権の帰属についての争いを民事救済とするための協力措置
1. 今回の法改正で新設された「手続きの一時停止」は、真正な権利者が民事救済を通じて権利帰属の争いを解決することを確保するための臨時的な保全手続きであり、現行の裁判所の実務を斟酌した後、「手続きの一時停止」は3ヵ月で、期間満了後に専利主務官庁は手続きを続行しなければならないと明文化された。よって、法改正後、専利出願権及び専利権の帰属の争いについては、当事者は民事保全手続きにより申し立てた仮処分又は暫定状態を定める処分の証明書類を添付して、智慧局に対し、その審査、審理及びその他の権利の異動に関わる手続きの一時停止を申請することはできるが、自身の権益の保障を確実にするため、当事者は依然としてできるだけ速やかに裁判所が許可した暫定状態を定める処分等の保全手続きの裁定を取得すべきである。
2. また、権利の帰属の争議の結論が出る前に、専利権が名義上の専利権者の悪意による放棄をされることがないよう、当該争議が裁判所の判決確定、調停成立又は仲裁手続き終了する前に、専利権者は専利権を放棄してはならない旨を新設した。
二. 専利又は商標の複審及び争議訴訟の訴訟代理について
専利及び商標案件の専門性及び訴訟効率の向上の考慮に基づき、今回の審理法が民事訴訟に関する事件に弁護士の強制代理を採用している精神を参考にし、専利又は商標の複審訴訟の控訴審及び争議訴訟において強制代理制度を採用し、当事者及び参加人は弁護士又は専利師に訴訟代理人として訴訟行為を行うよう委任しなければならないと明文化した。また、強制代理制度の訴訟救助、訴訟行為の効力、及び報酬金等の関連規定に関しては、知的財産民事事件に関する規定に準用する旨、審理法で規定する。
三. 専利又は商標の争議訴訟における新証拠に関する規定
専利又は商標争議案件の特殊性及び救済効率の向上を兼ね合わせるため、司法院と調整したところ、争議訴訟における新証拠の提出に関する規定は、審理法でこれを規定することとした。
2.法律・制度
(2022.04.27 司法院ニュース全訳)
2-1 施行以来最大規模の法改正 司法院が「智慧財産案件審理法」の新制度公聴会を開催
司法院は27日、「智慧財産案件審理法の新制度に関する公聴会」を開催し、審理、検察、弁護士、学術及び関連機関の各代表を招聘して、初歩検討が完了した「智慧財産案件審理法(以下「智審法」と称する)改正草案」について説明し、各界からの意見を聴取した。
司法院によると、智審法は2008年7月1日に施行されて以来、2011年、2014年に小幅な改正が行われたのみで、実務事例が累積されるにつれ、司法院は「智審法改正研究委員会」を発足し、18回に渡る会議を行い、学理と実務運用を総合し、国外の立法例を参考にし、施行から10数年以上で最大規模となる法改正を始動した。今回の改正は重要な時代的意義を有しており、専門的で効率のよい国際潮流とも合致した知的財産訴訟制度を構築することが期待されている。
司法院は、今回の法改正の重点の一つは、外界からの営業秘密保護に対する期待に応えるもので、専門的で迅速な審理終結の要求を満たすため、営業秘密罪の第一審刑事事件を智慧財産及び商業法院(以下「智商法院」と称する)での審理へと改め、また、国家安全法の改正に合わせて、国家の核心的技術を侵害する営業秘密刑事事件についても、智商法院の管轄とすることとしたと指摘した。
知的財産事件は高度な技術と法的専門性に関わるという特性を鑑み、知的財産民事事件の審理手続について、「弁護士の強制代理」、「審理計画」、「専門家による証人」制度を新設し、「査証」制度と「アミカス・キュリエ」制度を導入し、集中審理及び専門家参加の拡大により、裁判所が新興ハイテクノロジーと専門的な知的財産訴訟事件を審理する際に協力するものとした。
今回の法改正のポイントは以下のとおり:
1. 営業秘密法第13条の1、第13条の2及び第13条の4の罪に反する第一審刑事事件は、智商法院での審理へと改正する。
2. 行政院が今年(2022年)2月21日に立法院での審議へと送付した「国家安全法改正草案」に合わせ、国家の核心的技術を侵害する営業秘密刑事事件は、智商法院の管轄とする。
3. 営業秘密の書証を識別化するコード番号又は名称、書証情報を知る権利を新設。
4. 営業秘密刑事事件の審理保護メカニズムを向上させるため、「営業秘密保持令違反の罪の責任」を厳しくし、「域外の秘密保持命令違反の罪の責任」を新設する等した。
5. 知的財産民事事件の審理手続について、「弁護士の強制代理」、「審理計画」及び「専門家による証人」制度を新設した。
6. 日本特許法を参考にし、起訴後に裁判所に中立的な技術専門家の選任を申し立てでき、証拠収集手続を実施する「査証」制度を導入。
7. 「アミカス・キュリエ」制度について、当事者以外の民衆、機関又は団体に対し書面による意見提出を、今後は裁判所のウェブサイトで公開募集とする。
8. 「専利又は商標の複審及び争議事件手続」に関する規定を新設し、経済部が起草した「専利法一部条文改正草案」と「商標法一部条文改正草案」で、今後、専利・商標案件の救済手続が、現行の行政訴訟手続から民事訴訟手続の「対審制度」を採用することになることに対応した。
9. テクノロジー設備の運用と訴訟手続対象を拡大し、司法の電子化向上を推進するため、判決正本を電子書類で送達できることを明文化した。
10. 司法審理と行政審理との情報交換制度の構築、専用実施権の訴訟告知義務及び専利の有効性の判断の違いによる再審制限を新設し、裁判の違いの回避、実務争議の解決及び審理効率の促進のため、「訂正の再抗弁」制度等に関する規定を改正した。
3.知的財産権紛争
(2022.04.19 経済日報第A5面全訳)
3-1 先進光電が久禾光電を提訴 求償1億台湾元
光学レンズ産業で再び特許争いが起きている。世界のノートパソコン用レンズ最大手の先進光電科技(AOET、以下「先進光電」と略す)は18日、ノートパソコン用レンズメーカー第3位の久禾光電(PTIC)及び同社の王世岳・董事長に対し権利侵害で訴訟を提起した。先進光電は久禾光電が生産・販売した薄型ノートパソコン用の3枚式及び4枚式光学レンズの各シリーズの商品が、先進光電が所有する特許権を侵害しているとし、求償額は少なくとも1億台湾元(約4.39億円)になると主張した。
大立光電(LARGAN)が先進光電を相手に営業秘密侵害及びノートパソコン用レンズの権利侵害等で訴訟を提起し、8年ものあいだ裁判沙汰となっていたが、昨年3月双方和解となり、大立光電は先進光電の私募案への参加を通じて15.2%の株式を取得し、単一法人での筆頭株主となった。大立光電が株主になった後、先進光電は特許権争いのリーダーへ転換し、久禾光電を提訴したことから、外界では、先進光電は大立光電の黙認のもと提訴し、「世界のノートパソコン用レンズ最大手」として、業界3位の久禾光電に権利侵害訴訟を起こし大立光電の特許争いの延長戦とみなすことができると解釈している。
先進光電と久禾光電はいずれもノートパソコン用レンズのサプライヤーで、先進光電は市場の7割以上を占め、世界のノートパソコン用レンズの最大手である。久禾光電は現在興櫃(エマージング)登録会社で、今年上場申請する予定であるが、当該権利侵害案は久禾光電の上場計画に支障をもたらし、後続の資金調達等の作業スケジュールを滞らせる恐れがある。
先進光電の提訴に対し、久禾光電の鄭錫勳・総経理は、「相手方が訴訟提起前に先に発表した」ことは意外であり、不意を突かれ、現在はまだ資料を受け取っていないため正式にコメントすることはできず、弁護士と討論後、本日対外説明を行うと示した。上場計画に支障が出る恐れについて、鄭錫勳・総経理は、訴訟はビジネス戦略であり、各業界にいずれもあることで、理にかなっているならば、「我々はポジティブに対応していく」と述べた。
先進光電の高維亜・董事長は、久禾光電の権利侵害は事実であり、先進光電は何度も久禾光電に注意を促し誠意を尽くし対話のルートを示したが、相手側からは正式な回答はなく、求償1億台湾元はただの手始めで、今後その他の権利侵害の事実があれば、求償範囲を更に拡大することも辞さないと示した。
また高維亜・董事長は、先進光電と大立光電は和解し、関連の特許権利侵害についてはすでに大立光電が実施許諾を取得済みであるが、今回久禾光電に対して権利侵害の提訴を行ったのは、久禾光電が先進光電の特許を侵害したからであり、大立光電とは関係がなく、「だれもが特許で費やしたコストを必要としている」と直言した。
先進光電と大立光電は昨年3月に和解をしたが、先進光電は2020年の年末に賠償金及びライセンス料10.92億台湾元(約47.98億円)を提示したところ、毎年の1株当たりの純損益は8.9台湾元(約39円)にまで達した。新型コロナの影響でノートパソコンの需要の恩恵を受け、先進光電の昨年通年の営業収入は36.68億台湾元(約161億円)、前年比16.05%増と過去最高を記録したが、先進光電の粗利益は「20%台」を維持できず、EPSは0.03台湾元(約0.13円)となんとか損益のバランスを取ったのに比べ、久禾光電の昨年の最終利益は1.43億台湾元(約6.28億円)で史上最高となり、前年比26.5%増、EPSは4.25台湾元(約18.66円)となった。
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