台湾知的財産権ニュース(No.270)
発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.270)
発行年月日:2018年7月13日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2018年6月28日 智慧局ニュース全訳)
1-1 意匠出願に係る実体審査開始の延期申請を7月1日より開始
(2018年7月4日 智慧局ニュース全訳)
1-2 特許庁が「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を公表
2. 法律・制度
(2018年6月30日 聯合報第A1面、2018年7月1日 聨合報第A9面、2018年7月4日 関務署プレスリリースの要訳)
2-1 海外通販の購入で実名登録を義務化
3. 知的財産権紛争
(2018年7月4日 経済日報第A1面、2018年7月5日 聨合報第A13面の要訳)
3-1 米マイクロンに対し、中国裁判所が販売差し止め命令
4. その他一般
(2018年6月26日 聯合報第A14面要訳)
4-1 海賊版放送によりテレビ局9社が1億台湾元の損失
(2018年6月28日 経済日報第A3面要訳)
4-2 メディアテックが中国ビットメインに警告文書
1. 智慧局ニュース
(2018.06.28 智慧局ニュース全訳)
1-1 意匠出願に係る実体審査開始の延期申請を7月1日より開始
智慧局は2018年7月1日より、意匠登録出願に係る実体審査開始の延期申請の受付を開始する。作業方案及び申請書及び申請時の注意事項については、下記智慧局サイトのリンク先を参照のこと(中国語)
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=672548&ctNode=7127&mp=1
(2018.07.04 智慧局ニュース全訳)
1-2 特許庁が「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を公表
日本特許庁(JPO)が公式サイトにて2018年6月5日に公表した「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」は、透明性と予見可能性を高め、特許権者と実施者との間の交渉を円滑にし、標準必須特許(SEPs)に関する紛争の未然防止及び早期解決を目的としたものである。
当該手引きの策定に当たり、JPOは2017年9月29日から11月10日まで提案募集を行い、国内外から約50件の意見が寄せられ、2018年3月9日から4月10日にはパブリックコメントを募集し、国内外から約50件のコメントが寄せられた。また、JPOは産業界、学界、法曹界等の代表とも意見交換を行い、有益なコメントや意見を得られ当該手引きに取り入れた。
SEPのライセンス交渉を巡る環境が変化する中、JPOはオープンで透明性の高い手続きで、随時当該手引きの見直しを行っていくもので、その詳細な手引きの目的、ライセンス交渉の方法及び権利金の計算方法等の詳細については、日本語版と英語版で提供されている。
当該手引きのあとがきにおいて、SEPライセンス交渉の議題になぜJPOが取り組むのかが説明されている。:
「発端は、1年前、国内でSEPの実施条件を定める裁定制度を導入してはどうかという議論が浮上したことでした。私たちは、検討の結果、結論として、実施者側の申立てに基づく制度では、特許権者と実施者とのバランスをとることができないと判断しました。また、特許庁が特許権者を軽視しているとの誤ったメッセージを内外に伝えかねないという懸念もありました。
では、「標準必須特許の権利行使の在り方によっては、新しい技術の円滑な導入が妨げられるのではないか」という実施者側の不安にどう向き合うか。それは、この分野の経験がない実施者が、ライセンス交渉を効果的・効率的に進め、紛争を未然に防ぎ、早期に解決するにあたって役に立つような、バランスのとれた、信頼できる情報を提供することだと考えました。」
2. 法律・制度
(2018.06.30 聯合報第A1面、2018.07.01 聯合報第A9面、2018.07.04 関務署プレスリリースの要訳)
2-1 海外通販の購入で実名登録を義務化
海外のネット通販がますます便利になり、低価格の国際宅急便輸入小包が爆発的に増加したが、一部の荷受人は身分証明書番号等の個人情報を業者へ提供することに難色を示し、実名等を記載しないことからリスクが高まるばかりである。そこで関務署は5万台湾元(約18万円)以下の国際宅急便輸入小包に対し、本年6月20日から9月20日まで実名登録制度を試行している。
関務署は実名登録認証プラットフォームを設置して実名登録制度を推進しており、海外通販の利用者が携帯電話番号で実名登録を完了させると、将来的には発注後オンラインウェブサイト又はアプリで海外通販の荷物を輸入する際、携帯電話で内容確認を行い、即座に通関委任することができ、国際宅急便通関業者にとっても罰則を受けるリスクが減少することとなる。
関務署職員によると、実名登録は現在試験段階であり、抜き取り検査で実名登録をしていない場合、7日以内に依頼人の氏名、身分証明書番号等を含む「通関委任状」を税関に提出しなければならず、提出しない場合は業者に対し荷物1個当たり6,000台湾元(約22,000円)の罰金が科せられることになる。また依頼者はブラックリストに載り、今後輸入の荷物は毎回検査を受けることになる。
関務署は、公式サイトに同制度の専門コーナーを設け、業者向けにも説明会を開催するなどPRを強化しており、正式な施行日については試行状況を見て決定する見込み。
3. 知的財産権紛争
(2018.07.04 経済日報第A1面、2018.07.05 聯合報第A13面の要訳)
3-1 米マイクロンに対し、中国裁判所が販売差し止め命令
台湾の半導体製造ファウンドリ大手の聯華電子(UMC)が今年1月、中国における米マイクロン・テクノロジーの特許権侵害に対し訴訟を提起した件で、中国福州市中級人民裁判所は、マイクロン(西安、上海)に対し一部の製品の製造、販売の差し止めを命じた。UMCが3日発表した。
両社の特許侵害訴訟の発端は、かつて台湾マイクロンの2名の職員がUMCに転職したことに始まる。UMCは中国福建省の晉華集成電路(JHICC)と提携して32ナノメートルのDRAM工場の建設を計画しており、台湾マイクロンは当該2名の職員が機密技術ファイルを窃取したとして、昨年2月台湾においてUMCを告訴し、また、昨年9月にも米国においてUMCに対し同案件の特許訴訟を提起していた。これに反撃する形でUMCが今年1月、一部製品の製造、販売、及び輸入の禁止を求めて中国福州市中級人民裁判所に訴訟を提起していた。
UMCの劉啓東・税務部長兼スポークスマンは、同社とマイクロンの中国における特許侵害訴訟は進行中であり、福州市中級人民裁判所は今後の調査期間中も引き続きUMCが特許侵害を受ける可能性があるとして、案件調査期間は、マイクロンの一部の製品の生産、販売の禁止を命じたが、UMCが特許訴訟に勝訴したわけではないと示した。
市場調査会社のトレンドフォースによると、今回の中国福州市中級人民裁判所による差し止めは、マイクロンの中国での販売に影響が出るだけでなく、台湾企業である力成科技(パワーテック)や南茂科技(チップモス)等の川下の封止・検査企業も相当の打撃を受ける恐れがある。
市場においては、中国政府が米国勢力の弱体化のため企業をターゲットにし、米国側への圧力を狙っている可能性もささやかれているが、この点についてUMC側はコメントを差し控えている。
4. その他一般
(2018.06.26 聯合報第A14面要訳)
4-1 海賊版放送によりテレビ局9社が1億台湾元の損失
王と朱という二人の男は、約4,000万台湾元で海賊版放送設備を購入し、台湾のケーブルテレビ及び中華電信のMODチャンネルプログラムを不正録画し、セットトップボックス(STB)又は携帯電話のAPPのユーザーに提供しているとして今年3月から次々と台湾の中天、民視、TVBS等のテレビ局計9社から権利侵害で刑事局に告訴されていた。刑事局が捜査したところ、権利侵害は600チャンネル以上、損失は1億台湾元(約3.7億円)を越えるとみられ、2人を著作権法違反で逮捕した。
刑事局電信偵査大隊と保安警察第二総隊刑事警察大隊は、ネットワークパケットを追跡調査し22日、3箇所のサーバー室を捜索し二人を逮捕した。二人は電波を台湾南部の某STB業者と中国のSTBへ提供し、毎月の報酬額は20万台湾元(約70万円)になっていたことを認めた。
警察は294台のSTB、314台の衛星放送受信機を押収、国外のサーバーは中国と米国に設置されており、陰の犯罪組織があり電波提供は台湾だけでないことを発見した。STBは認証コードを設定して初めてサーバーにアクセスできるため、台湾内の数社のSTB業者がおそらく内情を知っていると思われることから現在追跡捜査中である。
(2018.06.28 経済日報第A3面要訳)
4-2 メディアテックが中国ビットメインに警告文書
IC設計最大手の聯發科(メディアテック)は先ごろ、中国のマイニング(採掘)ハードウェア最大手の比特大陸(ビットメイン)の台湾子会社である芯道互聯に営業秘密及び知財権を侵害せぬよう警告文書を送ったという。
デジタル通貨のブームにのり、ビットメインは世界のマイニング機市場の8割以上を占め、ビットコインが大幅に値上がりしている中、大ヒットとなった。また昨年下半期には、ビットメインが台積電(TSMC)に大口発注をしたことからも話題となった。
経営拡大と人材募集のため、ビットメインは中国において積極的な人材集めのほか、台湾にも子会社「芯道互聯」を設立し、ひそかにメディアテック、晨星(Mstar)、創意電子(GUC)等の台湾IC設計業のエリート達と接触していた。
メディアテックは警告文書において台湾法規を取り上げ、「不正な方法で営業秘密を取得又は取得後、使用・漏洩した場合、最高5年以下の有期懲役又は拘留に処し、100万台湾元(約370万円)の罰金を併科することができる。外国、中国又は香港・マカオでの使用を意図した場合、最高10年以下の有期懲役に処し、300万台湾元(約1,100万円)以上5千万台湾元(約1億8千万円)以下の罰金を併科することができる。」と説明。
法人は、メディアテックの今回の動きは、知的財産権と営業秘密が侵害されないよう、引き抜き企業と転職する従業員の双方に対して警告作用があるとみている。
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