台湾知的財産権ニュース(No.223)
発行:特許庁委託(公財)交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.223)
発行年月日:2015年11月30日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2015年11月9日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2012~2014年の台湾と外国の特許出願趨勢と分析
2. 法律・制度
(2015年11月17日 工商時報第A17面要約)
2-1 競業避止条項を明文化した労働基準法が立法院の初審で可決
3. 知的財産権紛争
(2015年10月29日 経済日報第A17面要約)
3-1 メディアテックの元幹部夫婦を営業秘密法違反等で起訴
(2015年10月30日 聯合報第A11面要約)
3-2 中国石油化工の元総経理らを営業秘密法違反等で取調べ
(2015年11月13日 工商時報第A19面、判決文書の要約)
3-3 「クロコダイル」商標をめぐる許諾契約訴訟で台湾企業がシンガポールのクロコダイルに敗訴
(2015年11月14日 工商時報第A9面、判決文書の要約)
3-4 「Superdry」商標と類似するとして、商標維持審決取消訴訟で台湾の「Superfly」商標が敗訴
4. その他一般
(2015年11月13日 工商時報第A19面全訳)
4-1 TPP加盟でジェネリック医薬品の販売許可が遅延になる虞あり
1.智慧局ニュース
(2015.11.09 智慧局ニュース全訳)
1-1 2012~2014年の台湾と外国の特許出願趨勢と分析
(1) 台湾人による出願で特許出願の多い上位10分野は、長期的に「情報通信」、「半導体」及び「コンシューマーエレクトロニクス」等の電子産業に集中していた。ここ3年の出願数ランキングでは、「医療保健」が順位を上げ、「情報通信」が順位を下げるという変動が顕著である。外国からの出願が多い三大産業は「高級材料」、「半導体」及び「精密機械とオートメーション」であり、2013年と2014年には「高級材料」が「半導体」に取って代わり首位となり、ここ3年の出願数ランキングでは、「コンシューマーエレクトロニクス」と「医療保健」の順位変動が顕著である。
(2) 台湾における特許出願数上位10カ国(地域)では、日本と米国の出願数がその他各国を大きく引き離し、合計で外国からの出願総数の7割以上を占めている。
(3) 2014年の台湾における出願数の多い高等教育機関上位10校では、私立大学が7校に増えた。長年ランキング第一位であった遠東科技大学は、ここ3年の特許と実用新案の出願数は約3割減少したものの、特許の占める割合は上昇した(10.2%から12.7%に上昇)。国立清華大学のここ3年の特許と実用新案の出願数は1割近く成長しており、且つ特許の占める割合はほぼ100%が通例となっている。
(4) 2014年の台湾における出願数の多い公的機関・民間企業の上位10社はいずれも資本額250億台湾元(約942億円)を超える大企業であり、出願された特許の特許と実用新案に占める割合は9割以上であった。ランキング第一位の鴻海の2014年度の專利出願数は減少したものの、特許の比率は97%に増加した。
2.法律・制度
(2015.11.17 工商時報第A17面要約)
2-1 競業避止条項を明文化した労働基準法が立法院の初審で可決
立法院は11月16日の初審で「競業避止条項」を明文化した労働基準法改正草案を可決した。
競業避止条項は、国民党の江惠貞・立法委員らの提案により「労働基準法第9条の1」として新設されたもので、雇用主は労働者と書面により競業避止を約定しなければならず、競業避止期間は2年以内とし、並びに4つの規範に符合しない場合、その契約は無効となる旨が明文化された。
4つの規範には、①競業避止で保護する内容は、企業が法的保護を受けている営業秘密又は知的財産でなければならない、②労働者の元雇用主の職場における職務が営業秘密又は技術的優位性に接触する職務であって始めて制限することができる、③競業避止の期間、区域、職業的活動範囲、就業対象は合理的範囲を超えてはならない、④労働者の労働権の公平性に影響してはならない、なる事項が含まれている。
なお、草案では競業避止期間内に、元雇用主は離職した労働者に合理的な補償金を毎月支払わなければならず、且つ在職期間に支給済みの給与、ボーナス、株式などをこれに充てることはできず、また労働者の責任に帰すことのできない事情について違約責任を負わない旨についても定められた。
3.知的財産権紛争
(2015.10.29 経済日報第A17面要約)
3-1 メディアテックの元主任夫婦を営業秘密法違反等で起訴
メディアテック(聯発科)で以前、人材資源管理プロジェクトの副マネージャーを担当していた林氏は28日、内部人事資料を窃取したとして、営業秘密法違反及び背任罪の疑いでメディアテックの現職エンジニアである夫と共に起訴された。
検察の調べによると、林氏は2012年に同社を離職する際に、メディアテック内部の人事資料を自分のプライベートメールアドレスに送信していた。これらの資料には学歴や専門、かつて担当した部署、現職、個人の連絡先など合計3,000~4,000件のデータが含まれており、さらに、これらのエンジニアの内線番号資料を入手するために、林氏はメディアテックでエンジニアとして勤務している夫のアカウントとパスワードを使ってシステムにログインしていた。
林氏は離職後、ヘッドハンティング会社「艾特」を設立し、手持ちの資料を利用してメディアテックの職員に電話し他のハイテク企業へのヘッドハンティングを行っていたところ、メディアテックの職員から個人情報の流出が疑われ、内部でのパソコンや郵便記録の調査後に告発された。
メディアテックは過去8年で営業秘密法にかかわる事件が計4件発生しており、その多くが元職員の離職に伴う機密情報の持ち出しとなっている。会社の重要な資産を保護するため、メディアテックでは内部に三つのチームを組織して内部監査しリスクマネジメントを進めている。なお、弁護士によると、いわゆる営業秘密とは必ずしもハイテク技術である必要はなく、「経済的価値を有し、相当の秘密保持措置を採った未公開のもの」という三つの条件を満たせば営業秘密となる。
(2015.10.30 聯合報第A11面要約)
3-2 中国石油化工の元総経理らを営業秘密法違反等で取調べ
中国石油化工は同社の前職員である蔡・元総経理と劉・元工場長が総経理任職期間中にその他のチームと手を組み、不法に営業秘密を窃取し、同社に営業利益で300億台湾元(約1,130億円)近くの損害をもたらした虞があると訴えた。
検察調査局の調査によると、中国石油化工は去年、苗栗地方検察署に同社に勤務していた劉氏が離職前に営業秘密を複製し窃取したとして訴えており、検察側は長期的な証拠集めを経て10月29日、高雄、新北市、台北、桃園など6箇所の拠点を一斉捜査し、劉氏など8名の現職、前職職員を取調べた。
検察の調べによると、現在某化学会社の総経理兼別の化学会社の大株主である蔡・元総経理は、中国石油化工を離職後、劉・元工場長と頻繁に会っており、劉・元工場長は一昨年の7月に工場から本社に異動になりしばらくしてから蔡・元総経理が投資する化学会社に総経理として就任し、中国石油化工と競業する業務に就いたと見られている。
劉・元工場長は離職する際に、中国石油化工の内部営業資料を窃取してUSBメモリ2個に保存して持ち出したとされており、検察がUSBメモリを調べたところ、生産に関する秘密、販売、経営資料、工場設立、工場拡大、工場移設に関する図面や文書等10万件以上の営業秘密に関する情報が含まれていた。また、蔡、劉の両氏は中国石油化工の陳・現職社員を通して営業秘密を収集していた疑いがある。
検察調査局は、営業秘密法違反、及び背任罪等で捜索・取調べを進めている。
(2015.11.13 工商時報第A19面、判決文書の要約)
3-3 「クロコダイル」商標をめぐる許諾契約訴訟で台湾企業がシンガポールのクロコダイルに敗訴
シンガポールのアパレル大手「クロコダイルインターナショナル」(以下、「クロコダイル」と略称)は、1963年から台湾で「ワニの図及びCrocodile」商標などを登録しており、1998年6月から台湾の亜鰐国際株式会社(以下、「亜鰐」と略称)と契約し台湾でのクロコダイル服飾品の製造と販売を亜鰐に任せてきた。
クロコダイルは1999年7月に亜鰐との契約は期限満了により終了したにもかかわらず、亜鰐がなおも許諾を得ていると称して別の工場2社にクロコダイルの服飾品を代理生産させ台湾で販売しており、2009年には市場に大量のクロコダイル商標をつけた質の悪い服飾品が出回っていることをクロコダイルが発見し、亜鰐に対し契約違反及び商標権侵害により400万台湾元(約1,500万円)の損害賠償を求めて訴訟を提起した。
これに対し亜鰐は、販売していたクロコダイルの服飾品は1999年の契約期間満了後の在庫品で、当時クロコダイル側も在庫処分を許可しており、品質チェックも済ませたもので劣悪品ではない。しかも、1999年の在庫について知っていたことを今になって提訴しても民事の2年の提訴期間を過ぎており無効であると答弁した。
智慧財産法院は2015年10月7日、以下の理由から亜鰐の敗訴とし、亜鰐とその責任者に対し、クロコダイルへの連帯賠償金229万台湾元(約860万円)の支払いを命じる判決を下した。
① 亜鰐と代理生産工場との契約書から、亜鰐がクロコダイルからの許諾を得ていると称していたことが分かり、これは契約違反である。
② 服飾の鑑定報告、卸売業者の証言によると、亜鰐のクロコダイル服飾は1件28台湾元(約110円)で在庫処分されており、劣悪品であると認められる。
<智慧財産法院の判決>
智慧財産法院判決「103年度民商訴字第29號」 判決日:2015/10/7
判決書検索サイト: jirs.judicial.gov.tw/FJUD/FJUDQRY03_1.aspx
裁判類別:民事 判決字号:103, 民商訴, 29 裁判案由:商標權授權契約事件等
検索キーワード:鱷魚
(2015.11.14 工商時報第A19面、判決文書の要約)
3-4 「Superdry」商標と類似するとして、商標維持審決取消訴訟で台湾の「Superfly」商標が敗訴
イギリスの人気ファッションブランド「SUPERDRY(極度乾燥)」を展開するDKH社は、1985年の設立以来、世界40カ国に店舗を展開しネット販売国家も101カ国を超えるなど国際的に有名なブランドに成長し、2005年から台湾でも「SUPERDRY」商標を登録している。
台北市の服飾店「勤美服飾行」(以下、「勤美」と略称)は2012年12月20日に「SUPERFLY」商標を「シャツ、ベスト、コート、パンツ、女性用服飾品、男性用服飾品等」の商品区分を指定して登録出願し、智慧局の審査を経て登録番号第1589080号で登録された。
その後、DKH社は2013年10月31日、勤美の「SUPERFLY」商標は著名商標である自社の商標に類似するとして異議申立を行ったが2014年10月14日、智慧局の審判により維持審決とされた。これを不服としたDKH社は訴願を経て行政訴訟を提起した。
智慧財産法院は2015年10月8日、「SUPERDRY」商標が「SUPERFLY」商標の出願前に著名商標であったということは証明できず、商標法第30条第1項第11、12号違反については認めることはできないが、両商標を対比観察すると6文字の横並びのスペルで文字のサイズや配置も同じであり、スペルも中間の「FL」と「DR」が違うだけで、関連する消費者に混同・誤認を引き起こす虞があるとして、商標法第30条第1項第10号を適用し、「SUPERFLY」商標を取消しすべきとの判決を下した。
<智慧財産法院の判決>
智慧財産法院判決「104年度行商訴字第41號」 判決日:2015/10/8
判決書検索サイト: jirs.judicial.gov.tw/FJUD/FJUDQRY03_1.aspx
裁判類別:行政 判決字号:104, 行商訴, 41 裁判案由:商標異議
検索キーワード:Superdry
4.その他一般
(2015.11.13 工商時報第A19面全訳)
4-1 TPP加盟でジェネリック医薬品の販売許可が遅延する虞あり
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の全文が先日公表され、経済部智慧財産局の王美花局長は昨日(12日)、TPPには特許リンケージの規定があり、即ち医薬品の販売許可審査と特許権の保護が相互リンクすることとなるが、台湾では現在それはなく、仮に台湾が将来的にTPPに加盟した場合、ジェネリック医薬品の販売許可に係る期間が延長することは免れず、衛生福利部は今年末までに業界から意見聴取を行い、年末前までには特許リンケージを含む改正草案を提出する予定であると述べた。
TPP全文の中の知的財産権に関する部分について、著作権の保護が本来の50年から70年に延期され、医薬品の特許リンケージと医薬品のデータ独占保護が導入された。うち、新適応症と生物学的製剤(バイオ医薬)に対しては、現在台湾ではデータ独占保護はないが、TPPではそれぞれ3年と8年と規定されている。言い換えれば、TPPが規定する医薬品の特許リンケージ、データ独占保護は、台湾のジェネリック医薬品メーカーの将来的な生存に影響を及ぼす恐れがあることとなる。
王局長は、衛生福利部は年内に、台湾内の業界が主に関心を持つ特許リンケージについて対話を行い、将来的には法改正をして特許リンケージを導入する見込みで、これは台米貿易投資枠組み協定(TIFA)の会議において米国から出された要求でもある。
経済部では、今後台湾の法令に特許リンケージを盛り込む場合、ジェネリック医薬品の販売許可取得までの期間が延びることは免れないが、台米TIFAとTPP等の国際的な環境による圧力の下、衛生福利部は医薬品の国際的な特許保護ルールを遵守することが、台湾におけるバイオテクノロジー分野での新薬研究開発と国際調和に有利となるものとして、早ければ年内に会議において検討して決定する見込みである。
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