台湾知的財産権ニュース(No.222)
発行:特許庁委託(公財)交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.222)
発行年月日:2015年11月15日発行
主要ニュース目次
1. 智慧局ニュース
(2015年10月30日 智慧局ニュース全訳)
1-1 著作権法改正草案第三稿を発表 各界からの意見募集は11月30日まで
(2015年10月30日 智慧局ニュース全訳)
1-2 2015年日台商標審査官交流が無事終了
(2015年11月4日 智慧局ニュース全訳)
1-3 台湾の高等教育機関による出願動向の分析
2. 知的財産権紛争
(2015年10月3日 工商時報第A9面、判決文書の要約)
2-1 「Monster」商標等の維持審決取消訴訟で米モンスターエナジーが台湾2社に敗訴
(2015年10月31日 工商時報第A9面、2015年11月4日 中国時報第B4面の要約)
2-2 ラーガンの企業秘密漏洩事件 智慧財産法院でラーガンが先進光電に勝訴
3. 模倣品関連
(2015年10月2日 中国時報第B2面要約)
3-1 授業で海賊版ソフトウエアを使用していた台南の職業訓練校を摘発
(2015年10月17日 中国時報第B2面要約)
3-2 コミュニティーサイト「星帝服飾坊」で模倣品を販売していた男性らを逮捕
4. その他一般
(2015年10月4日 工商時報第A3面要約)
4-1 ASUSのAndroidデバイスにMicrosoft Officeアプリのプリインストールが可能へ
1.智慧局ニュース
(2015.10.30 智慧局ニュース全訳)
1-1 著作権法改正草案第三稿を発表 各界からの意見募集は11月30日まで
1. インターネットおよびデジタルコンバージェンスの発展に応じ、2014年4月に著作権法改正草案第一稿を提出し、5回にわたり公聴会を開催した。公聴会で各界からの法改正についての意見を整理し、条項ごとに検討し、外界からの懸念について説明及び回答するため、更に8回にわたる学者・専門家による諮問会議を開催し、産業界及び権利者団体とのコミュニケーションを図ってきた。2015年5月には著作権法改正草案第二稿を提出し、2015年5月25日に著作権法改正草案第二稿公聴会を開催し、第二稿に対する各界から寄せられた法改正への意見について、積極的に研究分析し処理し、並びに改正草案の内容を調整し、ここに著作権法改正草案第三稿の条文対照表を完成させた。法改正に対する意見表示の参考とされたい。
2. 今回の改正草案第二稿は、公聴会で各界から寄せられた意見への回答となっており、その重点には、実演家の権利の調整、法令により編纂された教科書は公開伝送できるとする法定許諾規定の新設、第一稿の著作財産権の質権登記規定の復活及び著作権法の水際管理措置規定の改正などが含まれる。詳細な内容については、改正草案第三稿の説明と改正条文対照表の説明欄を参照していただければ、第二稿の内容調整の原因と理由の理解に一助となる。
3. 各界からの意見、衆知を広く集め盛り込むため、著作権に関する議題に関心をお持ちの各界の皆様には、11月30日までに書面にて以下の宛先まで法改正に関する意見をお寄せいただきたい。
住所:台北市大安区辛亥路2段185号3F 経済部智慧財産局
電子メール:ipocr@tipo.gov.tw
改正草案第三稿のダウンロードはこちら:
www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=568958&ctNode=7127&mp=1
(2015.10.30 智慧局ニュース全訳)
1-2 2015年日台商標審査官交流が無事終了
第4回となる日台商標審査官交流が10月19日~23日まで開催され、日本特許庁から2名の商標審査官が智慧局に派遣された。今回の交流議題は、日本特許庁から書面にて質問のあった産地証明標章登録及び並存登録同意などの問題について台湾側がプレゼンテーション形式で説明したほか、特許庁からは2015年4月1日から受理が始まった非伝統的商標の審査の状況について紹介された。特許庁が非伝統的商標の受理を開始した初日には481件もの出願(立体商標は含まず)が殺到し、10月20日までの累計件数は1,036件となり、EUが1996年~2012年までに受理した非伝統的商標登録の出願数に匹敵するものとなった。日本側で受理された非伝統的商標の出願は数量が多いだけでなく、その態様も多様性に富んでおり、今回の審査官交流の中で、位置と音の商標について熱い討論が繰り広げられ、参加した局員にも大きな啓発となった。そのほか、日台両庁間における同一商標の出願について、実務見解上の差異について深い討論がなされ、具体的な個別案件による意見交換を通して双方の審査官がより周到な考えを有することとなった。本局はまた、台湾における商標権保護の実施状況について更なる理解を深めてもらうため、日本側と刑事警察大隊との会合をセッティングした。
今回の審査官交流での対話及び熱い討論について、日本側審査官から今回の交流の課程も多く大きな収穫を得ることができ、智慧局に非常に感謝を申し上げるとの言葉をいただいたが、智慧局審査官からもここに日本側にシェアしていただいた意見と経験から大きな収穫があったと示す。
(2015.11.04 智慧局ニュース全訳)
1-3 台湾の高等教育機関による出願動向の分析
ここ数年、台湾の專利出願数は引き続き減少している中、高等教育機関による出願の減少が目立っており、智慧局は現状と原因を理解するため、以下のような分析を行った。
直近5年の台湾の高等教育機関による專利出願件数は上昇から下降に転じており、2013年には4,817件でピークを迎えたが、2014年には4,275件まで減少し、年減少幅は11.3%となり、2015年第3四半期までの累積件数も昨年同期比10%減となった。国立大学では特許出願が多く、私立大学では実用新案の出願に集中している。学校では「医療保健」及び「医薬とバイオテクノロジー」分野の出願が突出している。
台湾の高等教育機関による出願数上位10位は、長らく私立学校が多くを占めていた。しかし、私立学校の出願件数は多いものの、主に実用新案に集中しており、南台科技大学、崑山科技大学及び建国科技大学を除いた他の私立大学では特許出願の占める割合は5割に満たない。一方、国立大学では特許出願がメインとなっており、歴代上位10位に入っている国立大学の特許出願の割合は5割以上であり、清華大学の特許出願の比率は長期に渡り95.5%以上となっている。
ここ5年の上位校である台湾大学、清華大学、交通大学、成功大学の出願件数の変化を分析してみると、4校の出願件数は年々減少しており、2011年には出願件数721件であったものが、2014年には僅か485件で減少幅は32.7%に達した。うち、交通大学と成功大学はいずれも年々急激に減少傾向にあり、交通大学は2011年の145件から2014年の98件まで減少し減少幅32.4%となり、成功大学は2011年の287件から2014年には93件まで減少し、減少幅はさらに高い67.6%となった。清華大学は4校のうち唯一出願件数が増加した大学で、且つ一貫して高い特許出願率を維持している。
出願分野については、台湾法人による「医療保健」と「医薬とバイオテクノロジー」分野の特許出願においては、高等教育機関が主力となっている。2014年を例として挙げると、台湾の上位10位のうち高等教育機関が6校ランクインし、それらは主に国立大学となっており、うち、中興大学と清華大学は出願件数と成長率のいずれにおいても優秀な成績を残している。
学校による出願件数減少の原因を理解するため、智慧局は今年7月から出願件数の減少した6校を訪問し、意見交換をしてきた。その内容は以下のとおりである。
1. 一部の学校は教育部の補助計画によるため:「邁向頂尖大学計画(一流大学目標計画)」の経費が年々削減され、学校から各教員への專利出願費用の補助も圧縮されており、專利出願件数を制限する又は專利出願費用の教員負担率を高く修正せざるを得ない。
2. 教育部による補助計画:一流大学目標計画のキーとなる学術評価指数KPI(Key Performance Indicator)は、專利の技術移転成果を重視しており、一部の学校では厳格なチェックをし、計画を提出する前に、将来的な商品化又は技術移転潜在力を評価し、專利出願時にも技術移転成果報告を添付するよう、教員に対し求めている。
3. 経費に限りがあり、過去数年に出願した專利が次々と登録査定証書を獲得している状況の下、膨大な維持費が学校による出願の意思を保守的に転じさせることとなった。一部の学校では、支出を抑えるため、教員に一部出願費用の負担を要求し、それが出願の意思に影響することとなった。
4. 科技部は来年の補助費を80%から60%に削減するが、これが高等教育機関の專利出願件数に大きな影響を与えている。
補助に関する政策の転換により、学校による專利出願は量より質を重視するものとなり、各年の出願件数にも反映されている。優良で充分な量の專利ポートフォリオの維持においては、長期に渡る産学提携が重要な第一歩である。上述した專利出願への影響の要因について、智慧局は今後、政府関連部署と協力し、協力措置を共同で検討し、台湾の專利を質も量も優れたものにするという目標に向かって邁進していく予定である。
2.知的財産権紛争
(2015.10.03 工商時報第A9面、判決文書の要約)
2-1 「Monster」商標等の維持審決取消訴訟で米Monster Energyが台湾2社に敗訴
台湾のバイク部品メーカーである「M.P.R Monster Power Racing」は、2012年12月11日に「M.P.R Monster Power Racing及び図」商標を商品役務区分12類の「自動車、バイク、排気管、タイヤなど」への使用を指定して商標登録出願し、登録番号第1606268号で登録された。
また、台湾の服飾企業である「Crazy Zebra」は、2012年12月18日に「Crazy Zebra及び図」商標を、商品区分第14類の「貴金属、宝石、ネックレス、指輪など」及び第25類の「シャツ、スーツ、コート、スポーツウエアなど」への使用を指定して商標登録出願し、登録番号第1598333号で登録された。
その後、米国のエナジードリンク大手である「Monster Energy」は、自社は2002年の設立以来、世界ですでに70億缶を売り上げるエナジードリンク大手で国際的なブランドとなっており、台湾でも商標登録しているとして、上記2社の商標は、自社の「Monster」商標、「爪痕の図」商標等と類似し消費者に誤認・混同を引き起こすとしてそれぞれに対し異議を申し立てた。
智慧局はこれに対し、「Monster」は特殊ではなく且つ非専用で、エナジードリンクと自動車・バイク部品は商品も異なり、消費者に混同を引き起こさない。また「爪痕の図」商標も非専用で、且つ「Monster」と「Crazy Zebra」は文字も完全に異なるとして、どちらも維持審決とした。これを不服としたMonster Energyは、それぞれに対し訴願を経て行政訴訟を提起した。
智慧財産法院は2015年9月18日、それぞれの行政訴訟に対し、商標が著名であるか否かは国内の消費者の認識レベルで判断すべきであり、Monster Energyは自社のドリンク及び商標が台湾民衆に熟知されていることを証明することができず、しかも、商品・役務区分や商標の外観なども類似しないとして、Monster Energy敗訴の判決を下した。
<智慧財産法院の判決>
智慧財産法院判決「104年度行商訴字第5號」 判決日:2015/09/18
判決書検索サイト: jirs.judicial.gov.tw/FJUD/FJUDQRY03_1.aspx
裁判類別:行政 判決字号:104, 行商訴, 5 裁判案由:商標異議
検索キーワード:Monster
<智慧財産法院の判決>
智慧財産法院判決「104年度行商訴字第34號」 判決日:2015/09/18
判決書検索サイト: jirs.judicial.gov.tw/FJUD/FJUDQRY03_1.aspx
裁判類別:行政 判決字号:104, 行商訴, 34 裁判案由:商標異議
検索キーワード:Monster
(2015.10.31 工商時報第A9面、2015.11.04 中国時報第B4面の要約)
2-2 ラーガンの企業秘密漏洩事件 智慧財産法院でラーガンが先進光電に勝訴
光学デバイス大手のラーガン(大立光)の元職員5名が2013年、企業秘密を持ち出し同業ライバルの先進光電に転職し漏洩していた事件で、台中地方法院検察署はヘッドハンティングをした転職先の先進光電の羅・元総経理とラーガンの元職員5名の計6名を、著作権法違反、背任罪などで起訴していた。
それとは別にラーガンは著作権侵害排除訴訟と営業秘密漏洩訴訟を提起していたが、智慧財産法院は2015年10月30日、ラーガンの意匠図面を対比した後、先進光電は確かにラーガンの2項目の著作権及び7項目の営業秘密を侵害しているとして、ラーガン勝訴の判決を下し、並びに先進光電に当該專利を使用しないことを請求できることとなった。
なお、この事件について別途提起された損害賠償訴訟はまだ審理中である。
3.模倣品関連
(2015.10.02 中国時報第B2面要約)
3-1 授業で海賊版ソフトウエアを使用していた台南の職業訓練校を摘発
保安警察第二総隊偵3隊は、台湾ビジネスソフトウエア連盟(BSA)からの通報を受け8月18日、授業でライセンスを取得していない海賊版ソフトウエアを使用していた台南の職業訓練校を捜索し、海賊版のマイクロソフト279セット、オートデスク23セットとパソコン3台を押収した。
捜索時に職業訓練校の責任者である郭氏は、ソフトウエアはいずれも権利会社からライセンス取得した合法なものであると主張したが、警察が現場で確認したところ、多数のパソコンに同じシリアルナンバーが共通して使用されており、著作権法の複製権の侵害が明らかで、権利侵害総額は600万台湾元(約2,200万円)にのぼると見られる。
(2015.10.17 中国時報第B2面要約)
3-2 コミュニティーサイト「星帝服飾坊」で模倣品を販売していた男性らを逮捕
保安警察第二総隊刑事警察大隊偵2隊は、台湾中南部に3つのチェーン店を持つ、人気の高いコミュニティーサイト「星帝服飾坊」が、アクセサリーなどを正規品と模倣品を取り混ぜて販売している旨を発見した。
警察の調べによると、模倣品を販売していたのは董氏(58歳・男性)で、2年前に高雄でブティックを開店し、各著名ブランドの服飾及びアクセサリーを販売していたが、商売が繁盛しなかったため、中国の大手ショッピングサイト「淘寶網」からルイ・ヴィトン、グッチ及びエルメス等のブランド模倣品を1点につき2,000台湾元(約7,400日本円)で購入し、それを正規品と取り混ぜ、市場価格の1~4割引で販売していた。また、董氏らは代理メーカーを通して生産メーカーから直接製品を受注しているため低価格で販売できるとして消費者を取り込み、ここ2年間の不正利益は1,000万台湾元(約3,700日本円)に上ると見られる。
警察は、市場権利侵害額約2,000万台湾元(約7,400日本円)に上る、1,000点余りの模倣品を押収し、董氏ら4名を書類送検した。
4.その他一般
(2015.10.04 工商時報第A3面要約)
4-1 ASUSのAndroidデバイスにMicrosoft Officeアプリのプリインストールが可能へ
米MicrosoftとASUSは10月1日、特許ライセンス契約を拡大する旨を発表した。これにより、今後ASUSのAndroid搭載のスマートフォン及びタブレットにMicrosoftのOfficeアプリをプリインストールすることができるようになり、ASUS がMicrosoftの知的財産権を侵害する虞もなくなることとなる。
Microsoftは ASUSが販売するAndroid機器が自社の情報技術に関する特許権を侵害しているとして約4、5年前から交渉を続けてきたが、今回ようやくライセンス料について共通認識を達成することができた。ASUSはMicrosoftとのクロスライセンス協議についてプラス評価しているが、ライセンス料など契約の詳細については公開していない。
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