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知財ニュース334号

発行:特許庁委託(公財)日本台湾交流協会
台湾知的財産権ニュース
(No.334)
発行年月日:2022年8月31日・9月15日合併号

主要ニュース目次

1. 智慧局ニュース
(2022年9月7日 智慧局ニュース全訳)
1-1 2021年の台湾及びWIPOにおける特許出願受理件数の趨勢比較分析
2. 知的財産権紛争
(2022年9月6日 聯合報全訳)
2-1 コピーライトトロール?ウルトラマラソンランナーの林義傑が訴訟肩代わりによる弁護士法違反の容疑で起訴

1.智慧局ニュース

(2022.09 .07 智慧局ニュース全訳)
1-1 2021年の台湾及びWIPOにおける特許出願受理件数の趨勢比較分析
www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-913095-802b7-1.html
2021年の台湾における特許出願受理件数は49,116件で2014年以来の最高となった。世界知的所有権機関(WIPO)の特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願件数は約277,500件と過去最高を記録した。台湾の技術分野は「半導体」(6,360件)が最も多く、「コンピュータテクノロジー」(4,283件)がそれに続き、WIPOでは「コンピュータテクノロジー」(26,092件)が最も多く、「半導体」(8,346件)はランキング10位となり、「半導体」は台湾において技術の優位性を有することを示した。台湾人による出願件数は台湾積体電路製造(TSMC)が1位となり、WIPOにおいてはファーウェイ(HUAWEI)が1位となった。このほか、クアルコムとサムスン電子はいずれも台湾及びWIPOの出願人上位10位にランクインした。
一、 台湾における特許出願件数はプラス成長に転じWIPOの成長率は減速
COVID-19感染爆発後、外国人による特許出願件数は激減し、台湾における2020年の総出願件数は減少したが、2021年はプラス成長(前年比5.3%増)に転じた。WIPOにおいては、中国の出願件数が大幅成長したことを受け、2020年の総出願件数は依然として前年比3.6%増となり、その後2021年3月と9月以降2度減少したことから、2021年の対前年比伸び率は0.9%にとどまった(図1、図2、図3参照)。
二、 台湾の特許出願における台湾人出願人は6直轄市及び新竹県市に集中、うち台北市、新北市、新竹市の合計は全体の56%を占める
台湾人による特許出願は主に6直轄市及び新竹県市からであり、2021年の合計は全体の93.5%を占め、そのうち台北市、新北市及び新竹市の合計は全体の56.3%に達し、2017年比6.2%増となった。件数でみると、新竹市が4,711件で1位となり、次いで台北市(3,282件)、新北市(3,007件)となった。6直轄市及び新竹県市の対前年比伸び率を詳しくみると、新竹市が前年比23.3%増と最も多く、次いで新竹県(前年比7.9%増)、新北市(前年比1.6%増)となった(図4参照)。
三、 台湾における特許出願技術分野は「半導体」が1位、WIPOは「コンピュータテクノロジー」が最多
2021年の台湾における特許出願件数は「半導体」分野が1位で、出願件数(6,360件)は前年比19.6%増の大幅成長となり、突出した成果が見られた。WIPOにおいては「コンピュータテクノロジー」(26,092件)が最も多く、こちらも前年比7.2%増となった。台湾とWIPOにおける技術分野上位10では、いずれも「半導体」、「コンピュータテクノロジー」、「電子機械エネルギー装置」、「音楽・映像技術」、「測量」及び「製薬」等6分野が含まれている(表1参照)。さらに比較すると、台湾における特許出願件数1位の「半導体」は全体の12.9%を占め、WIPOランキング10位(全体の3.2%)よりも遥かに多く、「半導体」は台湾において技術の優位性を有することを示した。WIPOにおいてランキング上位3位である「デジタル通信」、「医療技術」は台湾では上位10位にはランクインしなかった。
四、 台湾とWIPOにおける医薬関連技術分野はいずれも成長、また「製薬」の成長率は最高
台湾における「薬品」は、2021年には1,616件で特許出願技術分野ランキングの10位にランクインし前年比26.3%増となった。また、「バイオテクノロジー」も前年比19.1%増、「医療技術」は2020年の大幅成長後、2021年の出願件数は横ばい(前年比0.1%減)となった。WIPOにおいては、「医療技術」がランキング3位となったものの、「製薬」は前年比12.8%増となり「バイオテクノロジー」(前年比9.5%増)、「医療技術」(前年比6.0%増)を超えた。このほか、台湾とWIPOにおける上位10技術分野では、いずれも「製薬」の成長率が最高となった(表1、図5参照)。
五、 主要国(地域)の台湾における出願は「半導体」、「コンピュータテクノロジー」、及び「有機精密化学」が中心で、WIPOにおいては「コンピュータテクノロジー」、「デジタル通信」及び「電子機械エネルギー装置」を重視
台湾における出願主要国(地域)のうち、台湾、日本、米国、韓国はいずれも「半導体」分野の出願が最多で、12%~18.3%を占める。中国、ドイツについては、それぞれ「コンピュータテクノロジー」分野(13.9%)、「有機精密化学」分野(11.6%)が最も多く、その上位3技術分野にはいずれも「半導体」は含まれていない(表2参照)。
WIPOにおいては、中国(15.6%)、米国(12.4%)の出願最多技術分野は「コンピュータテクノロジー」で、韓国は「デジタル通信」分野(11.5%)、日本、ドイツは「電子機械エネルギー装置」分野(約10~11%)で、その上位3技術分野にはいずれも「半導体」は含まれていない(表2参照)。
六、 台湾における特許出願人はTSMCが1位、WIPOにおいてはファーウェイが1位
2021年、台湾における出願人はTSMC(1,950件)がトップとなり、次いでクアルコム(845件)、アプライド・マテリアルズ(758件)がそれに続き、ランキング10位の工業技術研究院(ITRI、392件)は唯一の研究機関である。WIPOにおいては、ファーウェイ(6,952件)が1位となり、次いでクアルコム(3,931件)、サムスン電子(3,041件)となり、上位10位の出願人はいずれも企業であった。このほか、クアルコム及びサムスン電子は台湾及びWIPOにおける出願人上位10社のいずれにもランクインとなった(図6参照)。
七、 台湾における上位10出願人のうち7社は「半導体」分野、WIPOにおける上位10出願人は「デジタル通信」分野の占める割合が最高
2021年の台湾における上位10出願人(図6参照)のうち、TSMC、クアルコム、アプライド・マテリアルズ、サムスン電子、東京エレクトロン、友達光電(
AUO)、キオクシア等7社は、いずれも「半導体」分野の上位10出願人である。このほか、TSMC、アプライド・マテリアルズ、ASML、友達光電はそれぞれ「コンピュータテクノロジー」、「電子機械エネルギー装置」、「光学」、「音楽・映像技術」分野のトップとなった(表3参照)。
WIPOにおける上位10出願人(図6参照)のうち、ファーウェイ、クアルコム、サムスン電子、LG電子、廣東OPPO及びLM艾瑞克生(エリクソン)等6つの出願人はいずれも「デジタル通信」分野での出願が最多であった。また一方で三菱電機は「熱処理及び装置」分野においてポートフォリオが最多で、京東方(BOEテクノロジー)は「半導体」分野で占める割合が最高となり、パナソニックIPマネジメント は「電子機械エネルギー装置」分野に重点を置き、ソニーは「コンピュータテクノロジー」分野に占める割合が最高となった(図7参照)。

関連資料については下記リンク先の智慧局サイトの「2021年我國與 WIPO受理發明專利申請趨勢比較分析」(中国語)を参照。
www.tipo.gov.tw/tw/cp-174-219414-a1c98-1.html

2.知的財産権紛争

(2022.09.06 聯合報全訳)
2-1 コピーライトトロール?ウルトラマラソンランナーの林義傑が訴訟肩代わりによる弁護士法違反の容疑で起訴
ウルトラマラソンランナーの林義傑には、「真相知財顧問」という会社を経営して映像制作会社からの知的財産侵害事件の訴訟肩代わり(非弁行為に相当)により、無断使用した一般人を提訴し、和解金の中から利益を得ていた容疑がかかっている。台北地方検察署の調べによると、林義傑とパートナー弁護士、会計士の合計6名は、1年で1,000件近く訴訟を提起し100万台湾元(約466万円)近くの利益を得ていた疑いがあり、訴訟肩代わり等の罪で起訴された。また、別の3名の弁護士、会計士は起訴猶予となった。
林義傑(すでに林瀚駩と改名)は、国内外を問わずウルトラマラソンの世界的ランナーであり、2005年の「エジプトサハラ砂漠ウルトラマラソン」で第2位、2006年のサハラ砂漠徒歩横断では「4デザートウルトラマラソンシリーズ」では優勝し、「台湾の光」として讃えられていた。
検察の調べによると、林義傑は2021年7月16日に「真相知財顧問」を設立登記し、今年(2022年)初めに会社の責任者を許仁泰に変更したばかりで、6月にはコピーライトトロール案件で検察から捜査を受けていたが、当時犯罪については否認し、自分は罪を犯しておらず、違法な事もやっていないと示していた。
検察によると、林、許の2人は「真相知財顧問」を経営し、威視電影、甲上影視等の映像制作会社から許諾を受けた後、放送や上映で営利を得るのではなく、ネットユーザーがダウンロードできるように中国のインターネットサイトにアップロードし、それをダウンロード及びアップロードしたIPをサーチして、証拠が集まったら、数名の弁護士が各地方検察に提訴し、最終的にはダウンロードした者と和解して和解金を受け取り、映像制作会社にキックバックしていた。
調べによると、海賊版ユーザーを見つけて和解を迫ることが「真相知財顧問」の唯一の業務と利益源であり、会社設立から1年足らずで台湾全土に渡り1,000件近くの訴訟を提起していた。林義傑らは弁護士資格を持っていないにも関わらず、自発的に映像制作会社から海賊版事件を肩代わりし、和解金を取得したあと映像制作会社、弁護士、会計士にキックバックしていたため、検察により弁護士法違反の容疑が認定された。

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